ツーリングレポート

日本列島お気楽ツーリング日記
−北海道編2−

九州・沖縄中国関西中部関東東北北海道1北海道2東北2中部2関西2・中国2

2001年5月26日(土)〜6月11日(月)

明け方、目が覚めると外は一面の霧。
風はピタリと止んでいて、不気味なほど静かである。
テントはびしょ濡れ。
そのうち日が差し込んで乾くだろうと、また寝る。

75■5月26日(土)晴れ

霧が晴れると「ああー」やはり風が吹く。
今日も風に向かって走り出す。
猿払の道の駅はサイクリングターミナルになっていて、
「北オホーツクサイクリングロード」が、
浜頓別まで通じているようだが、入口が分かりづらい。
この先で国道に接する場所があるみたいなので、
そこから入ることにする。

猿払村は道内一広い村らしく、大規模な牧場を見ながら走る。
川では朝早くから大勢の人がフライフィッシングを楽しんでいる。
浅芽野の交差点を右に入ったところに自転車道があった。
国道に平行して、いかにも廃線跡らしい一直線な道が続く。
「いやあ快適快適」
両脇の木々が風を遮ってくれて、さらに快適。

天気は上々、青い空に雲が流れる
旧山軽駅の朽ちたホーム跡を過ぎると、右手にクッチャロ湖を見下ろし、
熊が出そうな静寂な湖畔を進んで、浜頓別の町中に出る。

さて、浜頓別で道はふた手に分かれる。
このまま国道238号線をオホーツク海沿いに進む道、
強風から逃れられそうな中頓別から音威子府へ抜ける山間の道。
セイコマの店先で、うだうだと思案する。
「逃げちゃあイカン」
覚悟を決めてオホーツク側に進む。

「なんじゃコリャあああ!」
予想以上の風に恐れをなし、すごすごとUターン。
「情けない・・・明日まで様子をみよう」
結局、今日は走るのを止めて、
クッチャロ湖畔キャンプ場に留まることにする。

湖面に白鳥が3羽。頭上にカラスが1羽。
そして一人、夕暮れ時を待つ。
湖が夕日で赤く染まってゆく様は何とも言えず、
ツーリングマップルでお馴染みの写真を真似てみたりする。
隣接の温泉施設「ウイング」で一日を締めくくり、
満天の星空を仰いで眠りにつく。
(走行距離42km)

76■5月27日(日)晴れ

ゆっくり時間が流れて、何する気力も薄れてしまう。
「北海道時間」「北海道シンドローム」とでも言おうか、
のんびりキャンプ場で過ごしていると、
次第にそんな気分になってしまう。

太陽はすっかり頭の上、もう10時前である。
売店のおばちゃんが、
白鳥に食パンを食べさせるのを見届けてから出発する。

湖畔は全く風は無かったが、
海沿いに出ると相変わらずの風、しかも昨日よりひどい。
何がなんでも今日は進まねば。
「オラオラ、かかってこんかい!」
容赦なく吹き付ける風に立ち向かい、
たかだか10km走るのに午前中いっぱいを費やす。

枝幸町に入ったとたん風は弱まり、
やっとオホーツクの風景を見て走るゆとりが出てくる。
道路の左は漁村、右は牧場、
といった何となく不思議な光景がしばらく続き、
進むにつれて広大な牧草地に変わってくる。

今日は紋別市を目指していたが、手前の興部町で打ち切る。
道の駅「おこっぺ」は町のど真ん中。
列車を利用した無料宿泊施設があるらしいので行ってみる。
「HOTELおこっぺ」と名の付いた列車ハウスは、
掃除も行き届いていて思ったよりキレイ。
洗面所に水洗トイレ、コンセントもあり、居心地よさそうなのだが、
場所が町ん中っていうのが、どうも落ち着かない。
「雨の日に利用するにはいいだろうな・・・」
町外れの公園にテントを張ることにした。
(走行距離109km)

77■5月28日(月)晴れ

「やばいっ」
あまりの暖かさに寝過ごしたか!と思ったが5時半。
この時間で既に太陽はさんさんとテントを照らしている。
「今日は早出して網走まで走るぞ!」
と気合いを入れていたが、いざ出発は8時半。
せいぜい、こんなもんである。

雲ひとつない青空、もう風向きのことは諦めるしかない。
これが追い風なら時速10kmは得しているハズである。
興部から紋別へ、久しぶりに大きな町に入る。
「あー、ドーナツ食いてえ〜」
ミスタードーナツから漂う匂いに堪らなく腹が減るが、開店前。
「アイスクリームでも食うべ・・・」
絶品のアイスクリームがあるらしい道の駅「オホーツク紋別」
に行ってみるが定休日。
いかんせんタイミングが悪い。

海を離れて、緩やかな起伏を繰り返す丘陵地帯を延々走り、
あまり余裕はないが、湧別の道の駅で1時間の昼休みをとる。
「ま、網走までどうにか着けるだろう・・・」
ところが、サロマ湖畔をたどる道が思いのほかアップダウンがあり、
半ば諦め気分で残り40kmの道のりを向かう。

「おおっ!」
常呂町から網走までサイクリングロードがあるではないか。
国道に着かず離れず通じている。
ここも線路跡だけに、無駄な起伏もカーブもなく快適そのもの。
今日はただただ走るだけの一日だったが、
最後に楽しい気分にさせてもらって大満足。
この道のおかげで、どうにか網走に到着する。

今日の寝床は網走湖畔の呼人浦キャンプ場。
町に近くて便利である。
サイトには既にテントが数張り。
「ん?あれは」
見覚えのある黄色いママチャリが見える。
房総半島で出会った野人さんである。
同じ道内を回っているから、いずれ会えるかな?
と思っていたが、まさかここで会えるとは。
(走行距離138km)

78■5月29日(火)晴れ

こんな良い天気に動かないのは、もったいない気がするが本日休業。
洗濯して、自転車洗って、HPを更新して、
のんびりと一日を過ごす。
(走行距離5km)

79■5月30日(水)晴れ

野人さんと別れ、開陽台を目指して再びオホーツクの海に出る。
開陽台(キャンプ場)は初めての道東ツーリングの時、
行けずに悔いが残った場所だけに、今回はどうしても立ち寄りたい。

知床連山を正面に見ながら、国道244号線を快走、
小清水原生花園で一休みしたあと、止別の交差点まで来る。
開陽台へは根北峠で行くか、清里峠で行くか、決めずにここまで来た。
「さてと・・・」
直進か右折か、もう一度地図を眺めて、
「道としては、こっちがおもしろそうだな」
清里峠を選ぶ。

どこまでも広がる畑、その向こうに斜里岳を見ながら、
丘陵上を一直線に貫いて走る。
JR釧綱本線沿いに出てしばらく進み、
次第に山間へ入って行く。

今日は真夏並みの日差しだが、風は冷んやりして気持ち良い。
登りを感じさせない緩やかな道をダラダラ進み、
まだかまだかと思いながら、やっと神の子池の進入口が見えてきた。

「神の子池」は摩周湖の水が湧き出た池で、
マリンブルーの色をして神秘的らしい。
ガタガタとダート道を約2km、
「ん?これがそうか?」
泥と倒木が堆積して、綺麗とは言い難い池が現れる
残念なことにマリンブルーは、ほんの一部分でしか見られない。

「無駄足だったかな?」
と思いながら清里峠に登り詰め、
「ここはどうだ?」
と期待して、急坂で取り付く裏摩周湖展望台まで上がってみる。
訪れる人は少なく、確かに穴場かもしれないが、
湖面の広がり方や雄大さは、第1展望台にかなわないだろう。

清里峠を越え、これまた下りを感じない道を漕いで進み、
やがて養老牛の交差点に出る。
ここに商店が1軒。
今夜の食料を買っておくべきか迷ったが、
開陽台はまだまだ先、買わずに進む。
やはりこれが失敗。
開陽台付近に店はなく、わざわざ4km先まで、
買い出しに行くこともなかろうと断念する。

開陽台がどんな所か見れただけで満足としよう。
そのまま中標津に向かい、町中の公園にテントを張る。
(走行距離130km)

80■5月31日(木)曇り時々雨

ポタポタとテントを打つ滴の音。霧雨が降っている。
「どうしようか・・・」
納沙布岬を目指して、せめて根室まで今日中に移動しておきたい。
天気予報は昼から降水確率が高いが、降られ覚悟で出発する。

中標津を出てひたすら南下。別海町の広大な牧草地帯を進む。
視界の上半分は灰色一色、今にも雨が落ちてきそうな雲が流れる。
以前来た時は夏真っ盛り。
繰り返すアップダウンに四苦八苦したのを思い出しながら、
別海市街に入ってゆく。

「おや」
こんな所にセブンイレブンができている。
トイレを借りてウ○コして出てくると、小雨が降っているではないか。
しばらく様子を見て出発。
もう濡れてもいいから早く根室に着いて、今日は宿に泊まろう。
暖かい部屋で、くつろいでいる自分を想像しながらペダルを漕ぐ。

延々続いた牧草地帯を抜け、国道44号線に出てホッとする。
ひとまずJR厚床駅に行って、冷えた体を暖めよう。
厚岸駅は有人駅らしく駅員が一人。
「ん、客か?・・・違うな」
って感じで、一度出した顔を引っ込め、机でうたた寝をしている。
退屈過ぎる仕事も楽じゃない。

さて、追い風に助けられ、久しぶりにいいペースで走る。
途中、風蓮湖の畔にある道の駅「スワン44ねむろ」に寄ってみる。
設備が充実していてインターネット端末もある。
1時間の長居をしてしまったが、それでも2時に根室に到着する。

駅前の観光案内所で宿リストを貰い、宿探し。
その前にライダーハウスに行ってみるが、
カニを1000円以上買わないと泊まれないらしい。
ま、そういうシステムならしょうがないが、
カニを食いたくない人もいるだろうに。

民宿探しもバカらしくなり、結局、銭湯入って近くの公園に向かう。
駐車場で石川ナンバーのトラックの物干し竿屋が炊事をしている。
「おう、どっから来たい」
荒っぽい口調で声を掛けられるが、
こんな天気に、ここで寝泊まりする同輩が居てホッとする。
(走行距離87km)

81■6月1日(金)晴れ

大雨警報が出たほどの、夕べの雨と雷も何とか凌ぎ、
晴れ間が覗くまでテントの中で過ごす。
9時半。
ようやく出発の準備が整ったところで、
「おたくサイクリングかい?」
と、ご老人が現れ傍らに腰掛けた。
「ギクっ」
やはり長話が始まった。
富山から列車で一人旅をしているらしく、旅の自慢話を語り続ける。

さて、1時間遅れで根室を出発、半島を時計回りで納沙布岬に向かう。
遠く国後島を見ながら、遮る物がなく風が吹き抜ける大草原を走る。
岬への道は太平洋側がメインらしく、こちらはほとんど車が通らない。

11時47分、本土最東端に到着。
これで東西南北の最端を押さえたことになる。
別にこだわりはないが、日本一周の条件の一つは、
とりあえずクリアしたことになる。

岬を折り返して、太平洋側を根室に戻ろうとするが、
強烈な西風をもろに受け、全く前に進まない。
風に乗って前方から、物干し竿のアナウンスが聞こえてくる。
昨日の石川ナンバーである。
「おう、回ってきたんかい」
わざわざ車から降りてきて、道端で立ち話。
「北海道は梅雨がないからいいでしょう」
と言うと
「霧や曇りばっかりで、てんで商売にならんわ」
と嘆いていた。
サイクリスト以上に天候に左右される人がここにいた。

とりあえず最東端の駅に寄ってから根室を離れ、
風に負けじと、道道142号線(北太平洋シーサイドライン)を行く。
できることなら浜中町の霧多布岬まで行きたかったが、この風では到底無理。
分かっていながら少しでも先に行こうと、中途半端に進んだのがアダとなり、
食料調達さえままならなくなる。

民家もまばらな別当賀の駅に行き、
風がゴウゴウと窓を叩く駅舎で、寂しい夜を過ごす。
(走行距離81km)

82■6月2日(土)曇りのち晴れ

6時28分の始発が来る前に出発。
ただでさえ車の少ない142号線、
こんな早朝だと独り占め状態で気分がいい。
道端のタンポポが、はち切れんばかりに花びらを広げている。
台地状の草原の向こうは真っ青な太平洋、
切れ込んだ谷へ下っては上り、上っては下る。
そんな苦労を知る由もなく、馬はのんびり草を噛む。

海と牧草地が織りなす、絶妙なシーサイドラインをポタポタ進み、
最後、林の中を抜けて霧多布の海岸に下る。
まだ10時を回ったところだが、
今日はお気に入りの霧多布岬キャンプ場でのんびりするつもりだ。

明日までの食料を買い込んで、台地の上にあるキャンプ場に行く。
早くも先客のテントが一張りある。
「ん?」
おそらく網走で一緒だった、スーパーカブに乗った人である。

今日の仕事は、すり減ったタイヤの前後を入れ替えただけ。
あとはテントで一日を過ごし、
温泉施設「ゆうゆ」で沈む夕日を眺めて、
波の音を聞きながら月夜の晩が更けて行く。
(走行距離45km)

83■6月3日(日)晴れ

今日は釧路に移動するだけ。
霧多布から厚岸までのシーサイドラインは一度走っているので、
湿原の中を通るMGロードで国道44号線に出る。

茶内から厚岸まで、まるで観光道路のような雰囲気のいい道が続き、
車やバイクがバンバン飛ばしてゆく。
今日は日曜日、RV車やライダー集団が目立つ。

厚岸の道の駅で休憩して、釧路に向かう。
「この坂が苦しかったなあ」
2年前を思い出しながら峠の高台を進み、釧路市街に下ってゆく。
買いたいものがあるので、先ずは100円ショップを探す。

「あるある」
探さなくても、おなじみD社の看板が現れる。
さて次の買い物はガスカートリッジ。
キャンプ用品を売っている店はどこだろう・・・。
「SPORTS・DEPO」なる店があるので入ってみる。
どうやらスポーツの大型安売り店のようだ。
「おお!すげー」
あるわあるわ、しかも安い。

店探しに苦労することなく、買い物を済ますことができて満足。
前回泊まった駅前のBHに向かう。
(走行距離90km)

84■6月4日(月)晴れ

PHS圏内に来て、HPの更新作業をするつもりが爆睡してしまい朝7時。
チェックアウトぎりぎりまで通信して、荷物をまとめて服を着る。
すぐに汗でベトベトになるのは分かっていても、
やっぱり洗濯仕立ての服は、サラッとして気持のいいものだ。

出発が遅いと気合いも入らず、ホームセンターなどに寄り道して、
釧路市街を出ただけで、すでに11時を回っていた。
白糠町、音別町と過ぎ、直別から国道を離れて、
海岸線をたどる県道に入る。
これより先は、集落もなさそうな寂しい道を行くので、
厚内の集落で、早めに食料を調達してゆく。

波打ち際を走った後、高さ3m以上は通れない狭いトンネルを抜けると、
ダート道に変わる。

この辺りが昆布刈石海岸。
急坂をあえぎながら高台に上がれば、それはもう素晴らしい眺め。
あえいだ甲斐があるってもんだ。
見渡す水平線に地球の丸さを感じながら、約6kmのダートを楽しむ。

大満足で最後はするする下って、延長工事中の国道に出る。
どこまで延びるのか知らないが、
さっきのダート道はなくなってしまうのだろうか。

ほとんど車が通らず、不安感さえ覚える国道を走り、十勝川を渡って左折。
この辺りで唯一の集落、大津に向かう。
向かう先はへんぴな場所にある、長節湖キャンプ場。
海水浴場系のキャンプ場は、シーズン以外は閉まっていることが多く、
あまり好きではないが、この辺りに他にないから仕方がない。

案の定、殺伐とした感じでトイレも閉ざされている。
「やばいなあ」
手持ちの水は少ない。
かろうじて、別のトイレに水道が通じていたのでひと安心。
常夜灯もちゃんと点いてくれたではないか。
(走行距離95km)

85■6月5日(火)晴れ

やはり夕べ来ました。ローリングしに車が1台。
続いて打ち上げ花火隊と深夜にカップル。
こんな辺ぴな所に・・・まさかと思っていたけど、
どこにでも出没するのですね、彼らは。

海沿いは深い霧に覆われていたが、
国道に戻って山間部に入ると、快晴な天気で一安心。
相変わらず交通量は皆無に近い道を行く。
通る車は工事車両とダンプがほとんど。
その工事現場を過ぎ、静かな牧草地帯を抜け、
やがて広尾町に入って帯広から来た道と合流する。

広尾市街を過ぎれば、いよいよ襟裳岬に至る海岸線。
追い風でスイスイ進むが、工事で片側通行が多くイライラする。
黄金道路と呼ばれるこの区間。
期待していたが景観はいまいち、積丹半島ほどの感動はない。
「二度と来んぞー」
おそらく北海道で一番つまらないだろう道に、
ぶつぶつ言いながら走る。

庶野で県道にそれて、
荒涼とした百人浜の防風林を走り抜ければ、襟裳岬に到達する。
「旅館には泊まらないでしょうかね」
と、いきなり客引きに声をかけられる。

道路の発達で時間が短縮されると、今まで宿泊地だった所も、
昼休みに立ち寄るだけの通過点になってしまう。
ここもそんな所だろう。周りには廃業している宿屋も目立つ。
エンドレスで流れる森進一の歌が、過ぎてしまった良き時代を感じさせる。

岬の西側に回り、寝床を求めてえりも町まで移動するが、
一日の終盤にしては苦しいアップダウンが続く。
「おっ」
運動公園なるものがあるではないか、
しかも前はセイコーマート。
(走行距離129km)

86■6月6日(水)曇りのち晴れ

ソフトクリームのように波うねった雲が、空一面に垂れ込めている。
初めて見る異様な空模様に不気味さを感じる。
風は進行方向に向かって強烈に吹いている。
「待ってました」
とばかりに、7時前から走り出す。

今日は午後から天気が崩れるらしいので、
行けるところまで行っておきたい。
朝早くから、冷たい海に入って昆布を採っている漁師さんに、
「ごくろうさま」とつぶやいて、
ぐんぐん進んで三石町の道の駅で休憩する。

ここは海浜公園キャンプ場の管理棟を兼ねていて、
シャワーやコインランドリーも備えている。
隣接して三石温泉があり、なかなか快適そうな所である。

空はみるみる晴れ渡り、天気予報を疑いたくなる。
日高地方と言えば馬と牧場。青い空と緑の牧場そして広がる海。
「なかなかいいやんけ〜」
均整な体つきをした馬の親子を左右に見ながら、
サラブレッド街道を走り抜けて行く。

鵡川町に入ると次第にコンビニが目立ち始め、生活臭さが出てくる。
前方に大きな煙突と石油タンク、
路肩には工業部品の破片が散乱し、
大型車がバンバンと脇をかすめてゆく。

「こんな道、もうイヤじゃあー!」
何もない殺伐とした産業道路をひた走り、
やっとのことで苫小牧市街に入る。
「今日は走ったなあ〜」
もうヘトヘトで、寝床探しは後回し。
すかさず銭湯に飛び込み、汗と埃を洗い落す。
(走行距離176km)

87■6月7日(木)曇りのち晴れ

広くて立派な苫小牧の総合運動公園を出発。
通勤通学の自転車に混じって市街部を出て行く。
国道36号線は広い4車線、車はブンブンかっ飛んで走ってゆく。
そんな流れに乗って、こちらもハイペースでペダルを回す。

やがて道筋に安宿や小さな飲み屋などが並び始め、登別に入る。
たった今、消防署から救急車が出ていったと思ったら、
前方で車が大破している。
車の平均速度が速いから、一旦事故を起こすと派手なもんだ。
交通死亡事故全国第1位も無理はない。

室蘭市からはアップダウンを避けて裏道を進み、
有珠山を正面に見ながら伊達市に入る。
さっそくサティに寄って、ぐったりベンチで休憩する。
サティやジャスコはお気に入り、
コンビニと違ってベンチがあるから休憩にいい。
「おっ」
後ろの壁にコンセントが・・・
2時間も長居してしまい、走る気が萎えてしまう。

サティのテーマソングがすっかり耳について離れない。
そのテンポがいいもんだから、ペダル踏むのに乗り乗りである。
豊浦町まで進み、無駄な山越えをしなくて済む海側の道を行く。
途中にキャンプ場もあるようだから、
手前の集落に店があったらそこで終えよう。

JR大岸駅前に、割としっかりした商店があった。
キャンプ場と思しき所は「こんな場所」にしては、
綺麗なトイレと炊事場を備えていた。
正確には「駐車公園」となっているが構わずテントを張り、
さっき買った食料を広げる。
「おいおい」
賞味期限は3ヶ月前の日付である。
(走行距離129km)

88■6月8日(金)晴れ

公園のすぐ横に室蘭本線が走っていて、
最初は列車を見ては喜んでいたが、さすがに夜中はうるさく、
おまけに得体の知れない虫がそこら中を這い回り、
落ち着いて眠れるもんでなかった。

テントを撤収していると、掃除をしに老夫婦がやって来た。
ここの綺麗さはこの人たちのおかげである。
「気持ちよく使わせていただきました」
とお礼を言う。
聞けばキャンプ場は海側で、この公園はテント禁止らしい。
「まだシーズン前だからいいよ」
とは言っていたが・・・。

列車を見ながら、しばらくベンチでボーっとする。
「さて行くか」
9時半を回り、重い腰をあげる。
寝不足のうえ、走りづくめで疲れた体を引きずり走る。
まずは長万部に越える長い峠である。
じりじりと、標高200mまで登り切った頃には、
アドレナリンが分泌されたか、はたまた脂肪が燃え始めたか、
いつものペースに戻る。

浜に沿って豪快に続く道を南下、
噴火湾(内浦湾)を巻くように進んで行く。
これからが旬の北海道。
梅雨入りした本州を逃れてか、
先日からチャリダーやライダーとよくすれ違う。

八雲町のダイエーで休んでいると、
知らぬ間に泥除けに「日本一周」と書かれた、
赤いスペシャライズドのMTBが停めてあった。
持ち主が出てくるまで待ってみようかと思ったが、
先を急ぐので出発する。

「ビッビッ」
オンボロ軽トラックが、クラクションを鳴らして追い越して行く。
「あっ!」
荷台に乗っている大きな白い犬はひょっとしてレオか?
「やっぱり」
向こうも気がついたのか急停車する。

函館入りしたとき泊まった安宿のオーナーだった。
温泉の水を汲みに行ってたらしく、
「飲めや、体にいいぞ」
と、おもむろに荷台に積まれたポリタンクを取り出し、分けてくれた。
「函館来たらまた寄れや」
そう言って走り去っていった。

目の前に堂々とした駒ヶ岳がそびえ、
海の向こうには羊蹄山が霞んで見える。
この噴火湾を一望するコースは、ダイナミックでいい感じ、
走るのを止めてしばし見とれる。

森町からは駒ヶ岳の裾野を緩やかに登り詰め、大沼に向かう。
ひっそり佇む大きな沼と、それを囲む新緑の森。
さすが道内屈指のリゾート地だけあって素晴らしい。
でも、夏になれば人でごった返すだろうと想像すると、
今のうちに来て良かったと思う。
(走行距離119km)

89■6月9日(土)晴れのち曇り

東大沼キャンプ場は人気スポットらしく、ぜひ来てみたかった。
確かに静かでいい所。
でも、あまり広くはないので、
ハイシーズンにはテントの団地状態になるかもしれない。

いい天気だし、連泊するつもりで昼前まで居留まるが、
週末を楽しもうと家族連れの大型テントが建ち始め、
次第に賑やかになってきた。
「行ってみるか・・・」
北海道で最後の場所となった亀田半島に行くことにした。

「あちゃー」
鹿部で海に出ると強烈な向かい風。
またしても忍耐の走行が始まる。
この辺は川汲コンブの産地で、海沿いに集落が延々と続いている。
進むにつれ次第に霧で曇り、寒さも増してきた。
下手に動いてしまったことを後悔するが後の祭り。
いっそ函館まで行っちまおうか、と思ったが、
今からじゃあ時間が足りず、恵山の海浜公園キャンプ場でリタイヤする。

道の駅で利用料300円払い、シャワー室(200円)も使わせてもらう。
「げっ」
湯が出んじゃないか。
ただでさえ冷え切っているのに、これじゃあ風邪ひいちまうぜい。
こんな天気に、ここでキャンプする馬鹿はいないだろう。
「一緒にどう?」
チラっとこっちを見て通り過ぎてゆくライダー達につぶやきながら、
霧が立ちこめるキャンプ場に一人ぽつんとテントを張る。
(走行距離60km)

90■6月10日(日)曇りのち雨

夜、雨がパタパタとテントをたたく。
どうにか朝には止んでくれたが、依然深い霧は漂ったまま。
今日はフェリーで青森に渡るつもりだ。

炊事場で朝の支度をしていると、
壮年夫婦が乗った横浜ナンバーのRV車が乗りつけてきた。
「あら、ここいいわ」
と言うやいなや、全てのキャンプ道具を車から引きずり出し、
水道の水を流しっぱなしでバシャバシャと洗い始めた。
(ここは有料と知ってのことか、それともいつもこんな調子なのだろうか)
そして「持ち込みお断り」と大きく書かれたゴミ箱に、
遠慮無くゴミを捨ててゆく。
たまりかねて、
「ここにゴミ捨てていいんですか?」
と聞いてみた。
「あーいいでしょう、あの人も捨ててましたよ。皆捨ててるから。」

「皆がしてるから・・・」
このおかげで成り立っている日本社会だが、
良くも悪くも日本人である以上治らない習性である。
ここまで走ってきて強く印象に残ったのは、
風景でも、人とのふれあいでもなく、ゴミだった。
どこに行っても道端にはゴミが投げ捨てられ、それを見ながら走る。
行く先々で、無神経なゴミの捨て方をする人達を目の当りにしてきた。

楽しかった北海道だったが、
最後にこんな光景に出くわしてブルーな気分になる。
そして、このツーリングを振り返り、いろんな事を考えながら走る。
気がつくと函館市街に入っていた。

「あのボロ宿に挨拶だけして行くか」
と立寄ってみるが留守のよう、レオの姿もない。
チンタラ走ってフェリー乗り場に向かうが、大事な事を忘れていた。
「行けばあるわ」
と出航時間のことを全然気にとめていなかった。

「あ〜れ〜」
12時10分発青森行きは積み込みを終え、
無情にもゲートが閉まっているとこだった。

次の便は14時50分。2時間半近く待たなければならない。
情けないやら、悔しいやらで、そのうち雨も降り出した。
この様子だと向こうに渡っても雨に濡れるだけだし、日も暮れる。
「明朝の便で行くか・・・」
結局、北海道離脱は明日に持ち越された。
(走行距離48km)

91■6月11日(月)曇り

泊まった宿はフェリー乗り場のすぐ近くだが、油断は禁物。
乗り遅れないように、早めに出て行く。
昨日と違って待合室はガラガラ。7時30分発青森行に乗船する。

今日、所用で再び帰県するため、どこかに自転車を預けなければならない。
自転車はどうにでもなるが、荷物が問題。
駅に行っても最近は手荷物預かり所がないから、甚だ不便である。
方々当たってみたが見つからず、結局、BHを予約して、
戻ってくるまで預かってもらうことにした。
JR青森駅16時44分発の寝台特急「日本海2号」に乗車する。
(走行距離8km)

▼東北編2へ


雑記帳「日本列島お気楽ツーリング」へ

歳時記に戻る