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 真夏の夜のアコウ

■夏休みのこの時期、日本海に飛ばし込むのに、行き帰り、けっして海水浴客の渋滞に巻き込まれてはならない。8月2日(土)夕方5時前に家を出た。春日より舞鶴自動車道に乗り、東舞鶴で降りて、釣り場には8時前に着いた。

ちょうど辺りは暗くなり、餌取りもいなくなって、これからが夜釣りの地合いである。早速、仕掛けをし、シラサをつけてほり込む。長良、太公、嫁はんと、電気ウキの明かりが三つ、ユラユラと波間に並んだ。

最近は同じ一匹を釣るのなら、私自身が釣るよりも子どもらが一匹釣り上げる方がよほど嬉しいことに気づいた。私の人生において「魚釣りをして過ごす父と子の時間」は大切な時間になった。

ほどなく太公が「とーと、来たあ〜!」と叫ぶ。見ると太公の竿が満月に曲がっている。両手で竿を持ち、万歳の姿勢である。私は、アコウのでっかいのが来たと思い、急いで駆けつけた。すると水面で大きなタコが足を広げてバシャバシャしていた。 道糸を持ち、一気に波止にほりあげてからがさあ大変。タコの吸盤に吸い付かれ、ワーワー言いながら、ようやくタコの頭をひっくり返した。

最初から「タコ坊主」が釣れると縁起が悪いのか、しばらくアタリもなく、まとわり着く蚊の羽音がうるさい。そのうち海が少しざわつき、潮が流れ始めた。最初に長良が本命のアコウを釣った。アコウ(キジハタ)は、美味い魚である。メバルが美味い、ガシラが美味いと言ってもアコウの比ではない。姫路でチヌ師やメバル師に言うと、「何、アコウが釣れたやと!」と目の色が変わる魚である。

続いて太公にも来た。しかし懐中電灯で照らしてみると、アコウとよく似ているが、これはガシラであった。しかし、でかい。

車の中で一家4人寝苦しい一夜を過ごした。

■翌朝、空が刻々と濃い群青色からだんだん明るくなり始める。この餌取りが出てくるまでがアコウの朝の地合いである。この時は長良が調子よく、ポンポンとアコウを2匹追加した。完全に夜が明けてフグやベラが出てきたのか、シラサを入れるとすぐにコツコツと餌を取られ、とても数秒も持たない。場所を移動し、アイゴ釣りに切り替えた。ところが撒き餌を打てども打てども、いっこうにアイゴが出てこない。木っ端グレ・オセン・イソベラ・アジゴの五目釣りになった。

10時ごろ暑くなってきたので、磯遊びにする。泳ぐのは砂浜の方がよいが、ゴソゴソと生き物を探すのは岩場の方が面白い。

■久しぶりに子どもらと海の風に吹かれた。渓流の風と違い、潮風は疲れるのか、家に帰ってきてからどっと疲れが出た。私は「まるでナメクジみたいな釣り師やなあ」と一人ごちた。そしてタコの魚拓を初めて取った。何やら一幅の水墨画のようで、表装して床の間に掛けるとええような趣きである。寄せ書きには「蛸入道まさか抜かりの 子ども竿」と一句添えてみたい。

子どもらの夏休みの自由研究「魚拓帳」が一気に増えた。



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