きいたもんめも
2001/02
02/08 Thu
■『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・プレゼンツ
イブライム・フェレール,ルベーン・ゴンサレス&オマーラ・ポルトゥオンド』
東京国際フォーラム・ホールA 2001/02/08−2001/02/10
アメリカのギタリスト、ライ・クーダーが、1997年に、キューバ音楽界の古老たちにスポットをあてたCDアルバム、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を発表した。ライ・クーダーとコラボレーションを組んで仕事をしたことのある映画監督のヴィム・ヴェンダースは、このアルバムに触発されて、1999年に映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を制作する。昨年、日本でもヒットした映画である。
これらのアルバムや映画で活躍しているキューバの3人のミュージシャン、イブライム・フェレール(1927年生まれ)、ルベーン・ゴンサレス(1919年生まれ)、オマーラ・ポルトゥオンド(1930年生まれ)のコンサートに行ってきた。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』に出演したミュージシャンのコンサートを聴きにいくのは、昨年暮れのコンパイ・セグンド(1907年生まれ)に続いて2回目。コンパイ・セグンドも楽しいステージを見せてくれたけれども、今回はなんといっても、3人のスター、フェレール、ゴンサレス、オマーラが1つのステージに上がる。楽しさも3倍。パワフルでチャーミングなステージだった。
まず最初に登場したのはピアニストのルベーン・ゴンサレス。ややおぼつかない足取りで、介添えの人を伴って登場する。(それでも、コンパイ・セグンドよりはちゃんと歩いていた)指はよく動く。もう体に染みついているのであろうリズム感もすごい。ときどき高音の鍵盤をユーモラスに連打する。バックバンドの編成は、ボンゴ、コンガ、ティンバレスのパーカッション陣と、ウッドベース、4、5本の管楽器。そしてボーカルも加わり、4、5曲演奏した。ピアノは下手側に置いてあって、そのすぐそばでトロンボーンを吹いている人がバックバンドの指揮者も兼ねていたのだけれど、彼が演奏中にときどきゴンサレスの近くに寄って、体をつついてるのか、何か合図をしているふうだったのが気になった。ゴンサレスは耳か目も悪くなりつつあるのかもしれないと思う。でもでも、演奏はスウィング感あふれるものであったし、ゴンサレスがピアノを弾くことを純粋に楽しんでいるのがこちらにも伝わってくる、よい演奏だった。
その後、バックバンドだけの演奏が、3、4曲続いたのだろうか。各演奏者のソロもすばらしくて、ラテン系ジャズも好きな私はとても嬉しかったのだけれども、フェレールとオマーラの登場はまだなの? とちょっと思ってしまう。
そしていよいよ歌姫、オマーラの登場。バックバンドにさらにトランペットやトロンボーン、サックスなどが5、6人加わる。ホーンセクションは総勢10人近くいたのだろうか。こういうバックバンドは想像していなかった。ゴージャスな編成だ。オマーラは白いパンツドレスで、ちょっとおどけた踊りをしながら舞台に現れる。足を上げたり、体をのけぞらせたり、ご機嫌だ。歌は、アップテンポの曲も、ゆっくりしたテンポの曲もさすがにうまい。たしかゴンサレスとフェレールは、いろいろ事情があって、ライ・クーダーに見出されるまで演奏活動を中断していたはず。オマーラだけは現役でずうっと50年間歌い続けてきた。オマーラにはもっとたくさん歌って欲しかった。4、5曲歌ったのだと思う。
最後に、オマーラと入れ替わって、“黄金の声”を持つ男、フェレールが真っ赤なジャケットを着て登場。眼鏡をかけている。映画の中では、あまりにも自分の環境が変わってしまったこと対する戸惑いがあったのか、コンサートの場面でもどちらかというおとなしいイメージがあったフェレールだけれども、今回はステップを踏み、踊り、よく動いていた。コンサートが行われた東京国際フォーラムのホールAは、サックスのソロなどのときにも音が割れなくて、1階席の後ろの端っこの席でもきれいな音で聞こえるなあと感じていたのだけれども、フェレールの声は、声質によるものなのか、ちょっとキンキンした音に聴こえることがあった。今回のツアーはフェレールが一番フィーチャーされているようで、3人のうちでソロに一番時間を割いていた。3人とも舞台から去るときに、観客から握手を求められたり、プレゼントを受け取ったりして、もてもてだった。フェレールは「ドラえもん」のお面をプレゼントされて、それを顔にあててみせるシーンもあった。おちゃめ。
アンコールで、再びゴンサレスとオマーラも登場。このとき初めて3人で一緒に舞台に乗る。このあたりから、あの広いホール( 5,000席。うち1階席は 3,000席!)の客席が総立ちになったのだったか。確認できたのは1階席のみだけど、みんな踊ったり、手拍子を打ったり、掛け声をかけたりして、盛り上がる。2時間半たっぷり楽しめたステージだった。3日間連続して行われるコンサートの初日であったし、何よりも演奏する側がみんな高齢であるためか、アンコールに何度も応えることはなく、客席の照明は明るくなってしまった。
キューバの人々の国民性なのか何なのかわからないけれども、みんなまず自分たちが音楽を楽しみ、聴いている人々をも楽しませることがうまいのだ。例えばホーンセクションの人たちも、自分が演奏していないときでも、4、5人一緒に音楽に合わせて右や左に体を動かしたり、ときにはちゃめっけのある振り付けをしたりする。こんなに楽しいコンサートは初めてではないかと思うぐらい楽しいコンサートだった。終わってみれば、その余韻を楽しみながらも、祭りの後のような脱力感。
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