きいたもんめも
2001/05
05/11 Fri
■『デュフィがオマージュを捧げた音楽家たち バッハ/モーツァルト/ドビュッシー』
宇都宮美術館
武久源造(ピアノ) 桐山建志(ヴァイオリン) 諸岡範澄(チェロ)宇都宮美術館へ、『デュフィ展』の関連イベントの一つとして催されたコンサートを聴きにいく。デュフィは、晩年、バッハ、モーツァルト、ドビュッシーへの「オマージュ」を、何点も描いている。今回の『デュフィ展』にも『バッハへのオマージュ』が出展されていて、図録の表紙にもなっている。
[演奏曲目]
J.S.Bach ■無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調
W.A.Mozart ■ピアノトリオ 第6番 ハ長調 Op15-3
−−−−−−アレグロ/アンダンテ・カンタービレ/アレグロ
J.S.Bach ■シャコンヌ(無伴奏パルティータ 第2番 ニ短調 より)
C.Debussy ベルガマスク組曲 より ■プレリュード ■月の光
−−−−−前奏曲集 第1集 より ■吟遊詩人 ■さえぎられたセレナード
J.S.Bach ■G線上のアリア
コンサート会場は、美術館の中央ホール。このホールを軸にして3方向に、プロペラの羽根のように、展示室が広がっている。オーディエンスの定員210名のコンサートだが、実際には、もう少し多くの人がホールに入っていたような気がする。それだけの数の椅子を並べて、まだ少し余裕があるかなあ、というぐらいの広さのホールだ。天井は高い。
少し早めに行って、絵を見たりしていたので、ホールで行われていたリハーサルの様子を、ちらりとうかがうことができた。桐山氏が、ホールのやや端のほうを移動しながら、『シャコンヌ』を弾いていた。武久氏が、ホールの中央寄りに立ち、その音に耳をかたむけている。
コンサートは、午後6時半から始まった。今の時季、ホールの大きなガラス窓から、青々と若葉を繁らせる林が見えるほどの、まだ明るい夕暮れ時である。
1曲目、諸岡氏の『無伴奏チェロ組曲』から始まる。楽器の足(?)を出さずに、脛にはさんで弾くのを、初めて見た。今の時代のように、チェロのつっかい棒というか、楽器の下の足を出して弾くようになったのは19世紀に入ってからで、それまでは、脛にはさんで弾いていたらしい。ちなみに、チェロが出現したのは1520年ごろで、『無伴奏チェロ組曲』が作られたのは1720年ごろ。間近で聴く諸岡氏の演奏は、息づかいまで聞こえて、力強かった。
バッハの『シャコンヌ』で、桐山氏は、ホールの後方から姿を現した。なるほど、リハーサルのときに見たのは、この演出の部分であったのだ。前から2列目で聴いていた私には、曲の中盤以降になるまで、桐山氏の姿は見えない。音だけが聴こえる。後ろのほうから聴こえてくる音は、とてもいい響き具合だった。ヴァイオリンの、かすれたような音も好きなのだが、それもとてもクリアに聴こえた。
武久氏から、今回使用しているピアノについて、説明があった。150年前のロンドン製のピアノで、現代のピアノは、弦を張っている部分が鋳物製になっているけれども、今回弾くピアノは、一部金属を使っているものの、大部分は木製なのだそうだ。弦の張力も今より弱くて、したがって音の響き具合も小さい。音に子音がついて、しゃべるように弾けるのだそうだ。音色が19世紀的で、ファンタジックというか……とのこと。そのピアノで武久氏が奏でる『月の光』は、ほんわかとした朧月夜を感じさせる、とてもよい音色だった。
今回のコンサートで、3氏の演奏を初めて聴き、そのすばらしさはもとより、美術館の中央ホールという、一般のコンサートホールよりも小さな空間で身近に聴けたことも、喜ばしいことであった。欲を言えば、デュフィが描いた3人の作曲家への「オマージュ」の絵を、本物とまでは言わないまでも、コンサート会場に展示してほしかったなっと。
05/24 Thu
■アルバン・ベルク四重奏団
紀尾井ホール
ギュンター・ビヒラー(第1ヴァイオリン) ゲルハルト・シュルツ(第2ヴァイオリン)
トマス・カクシュカ(ヴィオラ) ヴァレンティン・エルベン(チェロ)
[演奏曲目]
J.Haydn (1732-1809) ■弦楽四重奏曲第74番 ト短調作品74-3 「騎手」
A.Berg (1885-1935)■抒情組曲
L.v.Beethoven (1770-1827)■弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 作品95「セリオーソ」
(アンコール曲)
L.v.Beethoven (1770-1827)■弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 op.135から、第3楽章
弦楽四重奏の生演奏を聴きたくてチケット予約をしたのは、1月末のこと。それからずうっと楽しみにしていた。アルバン・ベルク四重奏団は、今年、結成30周年を迎えた。彼らが演奏する『抒情組曲』は、日本へのデビュー盤で何度も聴いていて、私にとっては思いでの曲でもあるので、このプログラムで彼らの演奏を聴けることはとてもうれしかった。ちなみに、このデビュー盤が日本で発売されたのは1976年。わたしがこの曲をよく聴いていたのはもっと後だけれども、たしかCDはまだなかった時代のことで、レコード盤で聴いていた。今回は平日の演奏会だったので、夫は仕事で時間的に無理だろうと思い、自分の分1枚のみチケットを手配して、「今度、アルバン・ベルク四重奏団のコンサートに行くの」と夫に言ったら、夫いわく「そういえば、結婚してすぐのころに、彼らの演奏を聴きにいったね」。がーーーん。全然、記憶に残ってないのだ、わたし。何やらいやな予感…。「演奏曲目は何だったっけ?」とたずねる私に、「バルトークの曲だったかなあ…」と、夫の記憶もあいまい。
演奏会当日。座席は1階後ろ寄りの、舞台に向かって右の端。『抒情組曲』では、レコードで聴くだけではわからなかった、主旋律を楽器間で受け渡す様子とか、左手の指で弦をはじいて弾く様子など、視覚的にも楽しむことができた。技巧的な演奏を生で聴くのは、やはり迫力があった。ゆっくりしたテンポのところではハーモニーを楽しもうと思ったのだけれども、何だかうまくいかなかった。
弦楽四重奏の曲は、ふだん家でもそう頻繁には聴かないけれども、ときどき無性に聴きたくなる。今回は生演奏を無性に聴きたくなり、とても楽しみにしていた演奏会だったので、逆に期待が大き過ぎたのがよくなかったのかなあ。家でレコードを聴いているのとほとんど同じだわ、というぐらいしか感じることができなかった。うむむ…。だから、以前にアルバン・ベルク四重奏団の演奏を聴いたことも、忘れてしまっていたのかもしれない。わからない。でも、今度は忘れないように、もう聴いてから1カ月もたってしまった演奏会だけれども、ここにこうして記しておこうと思う。四重奏の演奏を聴くには、座席がよくなかったのかなあ…。この演奏会前日の夕刊の音楽評には、「衰え見せぬ繊細な表現力」というタイトル付きで、彼らの今回の来日公演の様子を伝える記事が出ていたんだけど。(06/26 記)
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