とつ風「熊野古道散策記」
Koyama Totsu
4.出来事(2)-熊野古道-中辺路-
・朝の紀伊田辺
6:00起床。天気予報通り快晴。海が近いからか、朝の空気が涼しくて気持ちいい。最近、7:00まで寝こけていることが多いけれど、これからは早起きしようかな、と思った。あいかわらず、店は閉まっているので、朝御飯もコンビニ。サンドウィッチとリンゴジュースを朝食に、おにぎり2個を昼食用に購入。7:00発のバス(始発)が来るまで、紀伊田辺駅で朝食。隣にいた二人組も旅行者風だなあと思ったら、昨日、同じユースに泊まっていたとのこと。なんと、本日本宮まで「走って」行くのだという。みてくれはあんまり若くないが、心がけが私より若いといえるだろう。
・JRバス=主要交通機関?
7:00定刻通りにバスは発車。だいたい満席であるが、旅行者風の乗客はほとんどいない一方、若者(=高校生以下小学生まで)がめっぽう多い。途中のバス停で三々五々乗ってくるのは、どうも小学生ばかりである。皆、プールのご用意を持っている。20分ほどバスに揺られると大きな建物=スクール??の前で、ごっそり降りていった。日本中何処へ行っても、水泳というのは「習うも」のなんだなあと、しばし感慨に耽る。熊野古道入り口の「滝尻王子」で、先に挙げたマラソン中年氏らは降りていった。私は、バスの終点まで行って、熊野古道の途中に合流する予定である。
・栗栖川のバス停
7:46終点栗栖川に到着。\1,000也。何十軒か家がかたまっていて、萬屋さんもあるといった、町である。まだまだ朝の筈なのだが、力一杯蝉は鳴き、太陽もキラキラである。湿度はあまり高くないが、暑い一日になりそうだ。さて、熊野古道への登り口だが、なーんにも表示がない。ついでに、人気もない。唯一開いていた酒屋さんに道を聞こうと入ったが、店番さんもいなかった。しょうがないので、方向的にはこれしかない、という道を谷に向かって進むと、川が流れていて、橋があった。橋の上から眺めると熊野古道とこの町との間に流れる川をつないでいるのはこの橋だけのようである。「一本道」→「きっとこの先に熊野古道がある。」との論法で、前進することにする。
・めざせ熊野古道
歩いても歩いても、アスファルトの林道が続く。上り道である。予定では10分ほどで、熊野古道に合流するはずだったのだが、一向につかない。バス停でもだいぶんおたおたしたし、こんなところで時間がかかってはまずいなぁと思う私の横を無常にもいろんな車やバイクが、前から後ろから通り過ぎて行く。実は生活道路の林道なのだろうか。帽子を忘れたので、日よけにタオルを頭からかぶって、おまけにサングラスなので、きっと端から見ると怪しい姿だろう。背中が汗でじっとりとなったころ、急に目の前が開けて、遠景は空と連なる山でいっぱいになった。そして、道は、上りと下りの二又に分かれていた。案の定、標識はない。とまっていても埒があかないので、とりあえず広いほうの下り道を選択した。てくてくてく。集落が見えてきた。熊野古道には町の中を通り抜けている部分もあるというし、こんなもんだろう。下り終えたところに乳母車を押している新妻風のお姉さんがいたので、念のため聞いてみると。「熊野古道は、上りのほうですよ。」と、気の毒そうに教えてくれた。上り坂を逆戻りである。
・やっと古道到着
予定より20分程度のロスで8:30頃やっと熊野古道に到着。まずはUP!、というか、ここまで、ずっと上りである。整備された山道で、まだ朝露が残っており、道の傍らには色とりどりの野草が花を咲かせ一群の蜻蛉も飛んでいる。尾根のようなものなのか視界もいったって広く、夏の風景を満喫する。まずは「高原熊野神社」を目指す。1k余り先のようなのだが、きつめの上りということもあって、なかなかたどり着けない。先にバスから下りて正規の上り口から走っている筈のマラソン二人組みはまだここまで来ていないらしく、道には蜘蛛の巣が…。実は熊野古道って寂れているのだろうか。
・謎のおぶじぇと水場
途中、炭焼き場に木を丸ごと使った不思議なオブジェと水場があったので立ち休憩を取る。「無料 やすんでって」。冷たくて美味しい水である。こういう心づくしは、とても嬉しくなってしまう。ついでに手袋もぬらして、涼しく出発する。相変わらずの上り道をてくてくと歩いて行くと今度はNHKの増幅受信機ととうぼしきものが突然ある。どうやってここまで持ってきたのだろう、やっぱりヘリかなぁと、思っていると、そこから先の道は平らにならされていて軽トラならどうにか通れそうである。私も歩くのがとっても楽なので、遅れを取り返すためにピッチをあげて進む。
・高原熊野神社と旧宿場町
10分ほど進むと高原熊野神社(高原王子)に到着。「平安時代の創建と伝えられる桧皮葺春日造りの神社。一度も改築移設されることなく往時の姿のままで保存されている貴重な古社である。」という神社。そこから集落が始まるが、森を抜けると日差しが暑い。てくてく。「姉ちゃん歩くの速いなぁ。」と、バイクの老人に声をかけられる。たぶん、栗栖川の舗装林道で私を抜かしていった人の一人なのだろう。「近露王子はそんなに遠くないよ。」とのありがたい言葉を信じてまた歩き出す。集落をぬけると、古道の真中に用水路(ミゾ)がずっと通っていて水が流れている。それはいいのだが、おかげで道幅が、水路の両脇各35cm程しかない。それでも時折道に沿って人家がある。何軒かには「旧宿場」との表示も。ここまで建築資材を運ぶのは大変だったろうなぁと下世話な心配をしてしまった。
・再会??
時々あった人家も終わり、「ここからは近露王子まで人家はありません。」との表示があり、そこから道が石畳になった。しつこいようだが、ずっとUPである。まだ9:00すぎだが少し疲れてきた。休憩である。座りこんで、お茶を飲むとじわっと汗が流れ出す。と、そこへ二人組みの中年ランナー歩いて現れる。短パン姿で、汗ぐっしょりである。しばらく同行するが少し道が緩やかになったところで走り去っていった。その後は大門王子まで緩やかなUP/DOWNがつづく。天気も上々、せみが胸を振るわせ、うぐいすが絶間なくさえずっている。午前中なので、それほど気温も高くないし、快適に歩みを進める。
・大門王子
小さな社がある。「現在の王子社は、平成元年(1989年)に復元して建てられたもの。この王子社は、建仁元年(1201年)の御幸記には見えないので、それ以後に設けられた王子社といわれている。ここに松の大木があったが枯れて今はなく大門王子と刻まれた碑が笠塔婆と並んでいる。」ということである。さすがにだいぶペースダウンして歩いていると後ろから人が走ってくる。速い速い。続けさまにあと二人。おそろいの蛍光色ゼッケンをつけて走っている。最近熊野古道マラソンが流行っているのだろうか??
・峠の地蔵さん・月が3つ出る話・悪四郎山
熊野古道、昔はかなりの難所だったらしく、たくさんの民話が残っている。バスの時間を気にして斜め読みしたら、鳥頭なので、ストーリーがあやふやになってしまった。(確かな資料を手に入れたら更新予定。)
・十丈王子休憩所
丸太でできた休憩所と水場がある。広っとしていて、風通しもすこぶる良い。休憩を取り、水をがぶ飲みして、顔も洗って、日よけにしていたタオルをぬらして頭にのせるととても気持ちいい。所要時間を示した看板に近露まで1:35+35分とある、これなら何とか12:00には近露まで行けそうである。十丈王子を過ぎて10分ほど歩くと、道が下りになる。はじめは良いのだが、30分もすると足がガクガク、膝が笑い出す。ケラケラ。そんな私の横を今度は女性ランナーが追い抜いていった。
・大坂本王子
周りは間伐されたばかりの様子。遠くのほうで、チェーンソーの音がする。下りに次ぐくだりの後、森の中にぽつんとある王子である。
・牛馬童子像
「近露の1キロほど手前、箸折峠に花山院の旅姿だという牛と馬にまたがった高さ36cmほどの小さな石仏がある。牛と馬に片足づつ跨った童子の像で、『苦しい道は牛の粘り強さで、楽しい道は馬の軽快さで歩け』という教えを示している。」とのこと。林の向こうに自動車道路が透けて見え出す。町が近づいてきたようだ。もうすぐ近露なので、ひざは笑うものの、足は軽快に進むのだった。
・近露王子
到着12:00。街である。熊野古道=メインストリート。王子は木陰になっていて、風通しもよくベンチがあって、昼食にちょうどいい。「Aコープ」でプチトマトとお茶を購入して、朝買ったおにぎり二個とともに昼食にする。この王子に斎藤茂吉の歌碑がある筈で、今回の旅の主目的のひとつだったのだが、見当たらない。他のいろんな人の歌碑はあるのだが・・。「花山院が熊野詣の途中、現在の馬牛童子像の所で昼食を取った際、箸のかわりにと茅の茎を折ったとき、茎から赤い露がで、その露を見て「血か露」と言ったことが、近露の地名の由来とされている。」とのこと。今回はここからバスを利用してショートカットである。中辺路は本宮まで本来2日かけてゆく路なので、それこそマラソンにでもしないと一日では到着できないのである。バスの時間を気にして、猛スピードで進んできたが、思わぬ所で時間が余ってしまった。14:20発予定。一日3本のバスなので乗りそこなうと後が怖い。夏の熊野で路頭に迷ったら、きっと夜は薮蚊に襲われるに違いない…。近露の町の中を往復して、ゆっくり木陰で休んでから炎天下のバス停で待つこと定刻より7分、バスがやってきた。
・熊野のバス
冷房である。涼しい。うわさどおり、バスは客の指定した場所でとまる。どちらにしても道は一本しかないのだから、タクシーよりも快適といえるだろう。途中、バス停でない所で、野草の類をずしりと背負った三婆ぁーさんが乗ってきた。運転手とは顔なじみらしく世間話をしている。とにかく爺さん婆ぁさんと学生ばかり目に付くのである。工事中のトラックをのかせたりしながら、バスは一路湯の峰を目指す。
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