| ベッカー 30周年記念 |
パイプ界にベッカーが二人いる。ドイツのポール・ベッカーとイタリアのパオロ・ベッカーだ。これは後者、イタリアのベッカー、それもパオロの亡くなった父、フリッツ・ベッカーが1986年に限定で作りかけで残したボウルに、最近息子がマウスピースをつけて出した60本のうちの19本目のシリアル入りのパイプである。 このパイプは美味かったのでパオロにそのむねメールで感想を送った。すると「あのパイプはオヤジが念入りに キュアリングしたボウルだから美味い筈だ」と返事が来た。伐採、乾燥後のブライアーをオイルで煮たりするのがキュアリングで、その手法はだいたい秘密になっている。 チムニー(煙突)というボウルが高いシェイプはロングスモーク用に重宝している。上のバーリングと同じ手法、つまりボウルからマウスピースの間の穴が大径でボウルの底を濡らさない設計になっているが、これがちょっと極端で、吸った時の抵抗が少なすぎ、煙のまとまりがなくなるウラミがある。 マウスピースの形状はいかにもイタリアンで洒落たデザインだ。イタリアンパイプはマウスピースに英国勢のようにバルカナイト(硬質ゴム)を使わず、アクリルで作ることが多い。私は圧倒的にバルカナイト派だが、去年パオロからメールが来て、最近は希望者にはバルカナイト、それもダンヒルと同じドイツ製の最高級のもので作ってくれるようになったそうである。ステムの真鍮の細いバンドや、トレードマークの「b」のインレイも精密な作り。だがそれだけでなくスモーキングクオリティーも最高レベルにあるのがベッカーの人気の所以だろう。 私はフリーハンド・デザインの作家系パイプは嫌いだが、ベッカーはクラシック・シェイプを勉強した上で形を崩しているようで、まだ吸う気持ちになれる作家である。 |