ダンヒル Bruyere 1957・1963年

手持ちのパイプのほとんどを売却してブルイエルを買い漁り、あのキュアリングの味に惑溺したい、などという衝動に駆られることがある。しかし例の65年の142以後なかなか良いブルイエルには巡り会わない。

ここに紹介する二本も最近あいついで入手したもので、ストレートの116は57年、ベントブルドッグのPは63年である。だがどちらも喫味には納得が行かない。以前紹介した57年の54も今となっては落第である。そしてその気に入らない喫味の傾向は3本とも同じなのである。

どれも最初の三分の一ほどはブルイエル独特のキュアリング味が楽しめる。しかし中盤から不思議に味が消えてくる。やたらに無味乾燥でホットな煙になってしまうのだ。後半に至ってはタバコ葉の味は全くしない。一本のパイプで前半から後半へ向かうにしたがい、これほど味が劣化、と言うか消滅してしまうとは実に不思議なことである。最初から味が薄いというのも三本に共通している。

これはおそらくキュアリング不足なのではあるまいか?

年代が50年代後半から60年代前半、と言えば同じダンヒルの Shell でも同じような傾向がある。何本も持っていた Shell も、到底ダンヒルとは思えないほどカラくて吸えなかったものは、70年代以降を除けばこの年代に集中していた。今は全て手放してしまったが、不味いとは言えないが当たりでもない、というのも多いのがこの時期の Shell であるという結論である。

以前にも書いたことだが、およそ64年頃にダンヒルはキュアリングをより丁寧にかけ始めるのではないか?  Shell も Bruyere も、である。おそらく極上の木が手に入らなくなってくるのが50年代後半、そのまま従来の方法でキュアリングしているうちに客からクレームが付き始めた。「最近のダンヒルは不味くなった」と・・・

そこで危機感を募らせて手間をかけ始めるのが64年頃からだ、という推論が成り立ってくる。

Shell に関しては65〜68年頃の間は、いくぶんくどい Sasieni を思わせるキュアリングだが、sasieni より材料の木が良いぶん美味い。Shellはパテント期以前も美味いが、60年代の美味さとは種類が異なる。木の質とキュアリングの度合いが違うのである。

ブルイエルに関してもほぼ同様なことが言えると思う。65年の実に芳醇でいて透明感のある味は、やはりかなり人工的と言って良い。外観同様、木の質までをもじっくり手を加えて「料理」した感がある。手間をかけて完成させたパイプ、ということではダンヒルの黄金期は60年代中盤である、とは言えないだろうか?

最近もうひとつ気がついたことがある。煙道コンセントリシティの点で、パテント期以前のものは感心しないものが少なくない点だ。極上な喫味のボウルでありながら、テノンの穴が半分ほどもずれていて、ジュースを発生させてしまう Patents Shellを何本か持っている。この点においても60年代のほうが精度が高い。

こうしてブルイエル・ハンティングの日々は継続している。それはおそらく一生続くであろう。大いに迷うのは、五分五分以下の確率でBBB由来のキュアリングがされている、パテント期以前のブルイエルを狙うかどうかだ。

極上の Patents Bruyere は値段が高騰しており、それは一種の博打である。ハズれであればアメリカンと変わらぬ生味、しかし当たれば60年代を凌駕する優雅なキュアリング味、まことにダンヒル収集は悩みが多い。


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