| G.Larsens Pipefabrik 100年史 |
Lillehammer を吸いながら、G.Larsen すなわちリレハンメルの魅力とはなんだろう、と考えてみる。 北欧・ノルウエー。 ブライヤー産地からも、英国という高級パイプの中心地からも離れた土地で、あのように優れた高級パイプを造り続けた精神にまず感服する。 個性という点でも申し分ない。しかもその個性はよほどパイプを吸いなれたベテランでないと認めにくい、という点でピーターソンなどの判り易い個性とは対極にある。 手元に三本のリレハンメルがある。どれもなんの変哲もないビリヤードだ。しかしそこには瞭かにこのメーカー独特のシェイプ感覚がある。嫌味のない個性と、静謐な存在感を控えめに主張している。不思議と後年の北欧作家系パイプとの共通点はない。 (60年代から一世を風靡した北欧発のフリーハンド・シェイプとは、当時世界を席巻したリベラル革命と通底している、軽薄な個人主義の発露ではなかったか? 対してリレハンメルは保守そのものだ。歴史を体現し古典的様式美を守っている。しかし古臭くはなく、モダンな味わいもある。このあたり、北欧文化の良質な側面を見る思いがする。) 造り込みもきわめて丁寧だ。英国、イタリア以外でこれほど精緻に作られたパイプはないであろう。 優れたエア・フロウから発せられる煙がお行儀良く口腔と鼻に満ちてくる。 喫味はどうか? 個人的には好きなタイプの木質ではない。しかしそれは木が低級であることを指さない。高級だが好みからは外れる、私的にはチャラタンやダンヒル・ルートブライヤーなどと共通の範疇に入る。したがって将来自分の好みの幅が広がった時には、リレハンメルを今より美味く吸えるだろう、という予感がある。パイプ喫煙趣味とは、深まるほどに守備範囲が広がるものだからだ。 結局手放せない。そして定期的に引っ張り出しては吸ってみる。毎回なんとなくその味が好きになってくる。こうしてリレハンメルは自分に何かを教えてくれるパイプであろうかと考えると、その魅力は神秘性を帯びてくる。自分にとってこういうパイプは他にはない。 心の片隅に常にリレハンメルが住んでいる。けっして声高に主張はしないが、なんとなく気になるパイプがリレハンメルだ。かと言って本数は増えない。誠に不思議な存在感と言ってよい。 ここに紹介するのはリレハンメルの100年史である。創業1844年から一世紀たった1944年刊行は社内記念事業などの非売品であったろうか。残念ながらノルウエー語は皆目わからない。文字が多く解読が待たれるが、自分にはお手上げである。 期待したようなシェイプ・チャート、年表などは残念ながら見当たらない。だが少ない写真を眺めていると、リレハンメルという小さな町でひっそりと作られていた雰囲気が伝わってくる。従業員数は多くとも2〜30人と言った規模の会社であったようだ。 バイキングの後裔といった大きな男がパイプを作っている写真もある。無骨にして繊細と言った感じが面白い。 現在インターネットではパイプの情報も多く、信じられないような未知の歴史が、瞬時に立ち現れることも珍しくない。しかし私はあくまで実際の資料や書籍にこだわっている。そこにはPCのディスプレイを通しては得られない緊張感、興奮、充実感があるからだ。 なによりこの本は愛すべきリレハンメル= G.Larsen の本社に一度は積まれていたのではないか? などと想像するとたまらない。ノルウエー語が読めなくても、手元にあるだけで充分満足できる宝物になった。 (1944年オスロで刊行、スエーデンの古書店より入手) |
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