ダンヒル Bruyere #59 1968年

60年代ブルイエルの探求が続いている。Shell Briar 同様60年代中・後期のものがもっともていねいにキュアリングが施され、味が濃いのではないか? と言う推論はすでに述べた。今回このパイプを吸ってみてそれは確信に変わったと言ってよい。



最初から最後まで、あのブルイエルの味がきっちりと楽しめる。管理の行き届いた手工業製品といった感じなのだ。木の材質=自然による偶然性を、限りなく人工的に味付けして均一化したと言っても良いだろう。その手法が優れているのはもちろんだが、作り上げた味の上品さにも感嘆せざるを得ない。



60年代後半、すでに他メーカーは品質が落ちてきている。その中でひとりダンヒルは歩を進め、自らの喫味を確立した。パイプを作り始めて半世紀で到達した境地である。この後70年代からは品質が下っていくから、この年代はダンヒルの頂点と言って良いだろう。頂点をきわめるのに50年というのは他のメーカーでも案外言えるこ
とかもしれない。BBBなどはまさしくそうではなかったか?



戦前のダンヒルも美味い。しかしそれは多く木の優秀性に助けられている。だが60年代ではブライヤーの材質が落ち初めているから、そこにキュアリングを丁寧にかけ、あの味を完成したところに感動するのである。戦前、戦後、ダンヒルはどちらも美味いが、その味わいの意味するところは大きく異なるのである。



造り込みも60年代のほうが丁寧なのではないか? 煙道コンセントリシティなどパテンツ期以前は感心しないものも多いが、この年代は精密である。フィッシュテイルビットの咥えの造形も芸術的だ。



ただしどうしても戦前にかなわない面がある。全体の造形だ。60年代のものは、特にスムース仕上げの場合きっちりとしすぎていて退屈である。20年代などでは同じシェイプでも前衛的とも言える妖しい魅力を湛えている。アール・デコのモダニズムとも無縁ではないだろう。当時の前衛は60年代ではクラシックの墨守、悪く言えばそういう感じでもある。



ともあれブルイエルに関しては今後自分が狙うべきラインは確定した。65年から69年、パテンツ期のキュアリングされているほう、のふたつだ。後者に関しては吸ってみるまでわからないのが悩みどころだが、納得できるシェイプ、コンディションが出るのを気長に待つ心境になれた訳である。


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