| ワインゴット 年式不明 |
S.Weingott & Son のパイプについての資料は少ない。ネット上ではMike Leverette氏による簡単な歴史の紹介があるのみだ。1859年ロンドンにて開業とは古いメーカーである。ドイツ系の名前であろうが、アメリカではドイツの系統が極端に多いのはこれまで見てきたとおりである。一般に英国ではドイツ系は少ないように思われるが、いろいろ調べると早期消滅したメーカーには、ドイツ系もかなり散見される。Adolph Frankau は言うまでもないが、ざっと見渡しても下記のごときである。 Philip Weiswerg Bernhardt Meyers A.Grunfeld A.Friedlander Wetzler & Haas Hans Neuerburg H.J.Hollebrand Fraenkel Bros. M.Epstein Jos.Jaffe & Sohn Rudolf Lichtblau & Sons Salmon & Gluckstein Bernard Braunstein…………(おそらく大手のタバコニスト含む) サシエニやバーリングが60年代に家族経営を離れ品質が落ちるのと同様のことが、ワインゴットでは30年代前半に起きている。20年代中盤にBBB(Frankau)に起きたこととも言える。ただしワインゴットにおいては年式特定のヒントが今のところ確立されていないようだ。吸ってみてだいたいの年代を当てずっぽうするしかないのである。 以前紹介した Inkerman というパイプがSWの刻印を持つことから S.Weingott ではないか、と推測した。なかなか美味いキュアリング味のパイプで、あれ以来ワインゴットは気になる存在であった。だが e-Bay に稀に登場するワインゴットはどれも戦後のもののようで食指が動くものはなかった。しかし待つこと2年、現れたのがこの箱入り新品パイプである。 箱の雰囲気、パイプの造りからして30年代〜50年代初期くらいかと想像する。うまくすれば品質が落ちる前の “Family Era” の可能性もある、と見た。 届いてみるとニス塗りでピカピカと光っている。箱にしまわれていた為か、マウスピースに変色はない。そのマウスピースは高級ヴァルカナイトのハンドカット、吸口付近の造作も入念だ。咥えるとすこし厚めのビットが気になる。残念ながら四角いシャンクとMPの角をぴったり合わせると吸口はわずかに水平にならない。 木埋めは一箇所もない。煙道コンセントリシティーは完璧、段付きテノンはトランペット加工がされている。ハイグレードパイプであることは間違いない。新品の状態を記録するため、いつもより入念に撮影をしてからさっそく Dunhill LondonMixture を詰めて火を入れてみた…………。 煙は驚くほど軽い。瞭かにキュアリングされた味だ。それはコモイっぽくもあり、BBB・ブルイエルとも似ている。ちょうどふたつを合わせて二で割った感じであり、まぎれもない英国パイプの味と言える。そして個性的だ。むろんエアフロウはすこぶる良い。 さて年式についてはどう考えたら良いか? 立て続けに2ボウルを吸いながら思案にふける。このスモーキング・クオリティーは戦前と考えて良いかもしれない。しかし少し雑なスタンピングは戦後っぽくもある。 古いものは The Weingott と打ってあったような気もするが、これにも THE “S.W”PIPEのスタンプがある。いずれにせよ戦後にしても数年を経るくらいまで、と推察した次第である。リップ部の造形は20年代後期以降であろうか? マウスピースに小さくない筋状のキズが二本ある。おそらくこれが新品箱入りのまま売れ残った理由であろう。時空を超えて英国からやってきた古い未使用パイプ、今回ほどタイムカプセルを感じたことはない。手元に常喫できるブルドッグがなかったが、これはボウル内径も3/4インチ(19mm)と控えめなうえ、深さは40mmもあって、ダンヒルの#147ばりに長いMPだからコンストラクションとしてはビリヤードと同じであり、出番が多いパイプとなるだろう。 ****** ところで、あのインカーマンはワインゴット製だったのか? 興味があったので吸い比べてみた。味は似ているようであるが同じではない。個体差なのか、年代の差なのか、はたまた別メーカーか? もう少しワインゴットを集めなければ結論は出ない。 同時に戦前に姿を消した多くの英国メーカーにも、ますます興味が湧いてくる。結局一般にブリティッシュパイプとして収集対象になっているのは、戦後まで生き残ったメーカーに過ぎないことにも気付かされた。(ワインゴットは最近まで作っているようであるが、むろんクオリティーは低く、好事家の収集対象にはならない) 多くの忘れられたメーカーはカドガンやダンヒルといった資本に吸収されることなくひっそりと終焉を迎えたのだとすれば、それらを忘却の彼方から救い出してやりたいと思うのである。 |
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