| スカピ 年式不明 |
パイプ世界一周の旅、スウェーデン編。 Skandinaviska Pipfabriken = Skapiは1936年スウェーデンに創業。 しかしスカピ創業の背景を見ると、このパイプが厳密にはスェーデン製とは言い難いことがわかる。 以前フレンチ・パイプのシリーズで紹介したGBDの本に、サンクロードとの関係から見たドイツのパイプ・シーンの記述があり、スカピ創業のいきさつも書いてあるから要約しておく。 サンクロードのカドガンがドイツと多くの商売をするようになったのは第一次大戦後であった。大戦前いくつかの大きなパイプメーカー(すなわちファウエン、オルデンコット、ライヒ、ゲプルーダー・ツィークラー、シュヴァプなど)を擁していたドイツのパイプ産業は戦争では大きな被害を被った。戦後しばらくの間、ドイツ国内へのブライヤー輸入は禁じられていたが、およそ1924年頃、解禁になる。ドイツの諸メーカーは競って国外からパイプの半完成ボウルを求めようとしたのである。このときサンクロードのヴェルゲ(カドガン)は大量の二級品を抱えており、売却先を求めていたのでドイツへの輸出は渡りに船だった。 D.Schwab & Co は戦前から英国と取り引きがあり、輸出もしていた。だが今回はボウルの輸入のみに関心が集中していた。英国を通してシュヴァプはサンクロードに接近してきたのである。(英国オッペンハイマーからの連絡によりサンクロードのカドガンがシュヴァプと接触したようだ。)こうしてヴェルゲは格好の輸出先を得て、年間12万本のパイプをドイツに送るまでになる。 だがドイツの他のメーカーもサンクロードのパイプを必要としており、ドイツ勢のなかで奪い合いに近い状況を呈した。こうして1928年シュヴァプの社長 Carl Schwabが引退して、息子の Max Schwab が引き継ぐと同時に、新会社 Verguet-Schwab の創立を見る。 サンクロードのパイプを優先的に確保する為であったのは言うまでもないが、資本の大きさから見てもこの新会社はカドガンに率いられていたと言ってよい。つまりサンクロードの二級品をドイツに流すルートとなったのだ。 シュヴァプはドイツ最大の雑貨屋チェーンにパイプを卸しており、安いパイプを大量に必要とした。ヴェルゲ以外のサンクロードのメーカーは言うに及ばず、それより安いイタリア製のパイプも大量に扱い、それらを北欧、東欧にも輸出したのである。 シュヴァプはユダヤ人だったから、1930年代にナチスが台頭、ユダヤ人への迫害が強まり、同時にドイツへのパイプの輸入が禁止されると商売が出来なくなった。そこでかねてより多くの取り引きがあり、友人も多かったスウェーデンに逃げて国籍を取得、興したブランドがスカピである……….。 こういう歴史を知ればスカピ、なかんずくシュヴァプのパイプには何も期待する事ができないであろう。サンクロードから安物を何十万本も輸入し、さらにイタリアからはもっと多くの安物を仕入れて手当たり次第にばらまく商売。おそらくパイプメーカーと言うよりは単なるパイプ商社であったと見るのが妥当だろう。 案の定届いたパイプはひと目でサンクロードの安物であることがわかった。分厚いビットのマウスピースもその証拠である。吸い味から40年代以前と推測するが、サンクロードものではキュアリングなど望むべくもない。もっと後年の駄パイプより多少木が良いから吸えるというだけの味だが、自分はこういうパイプはとうに卒業している。 こうなると特徴は、ベサイカピシスのマウスピース・ロゴとスカピの刻印くらいであり、それ以上のコメントは不可能である。 ただし収穫もあったからここに紹介するのである。ドイツのパイプのことだ。 こうして見てくると、ドイツのパイプは少なくとも第一次大戦後は普及品しか存在し得なかったのではないか? そしてドイツ製とは名ばかりで多くはサンクロードのパイプか、せいぜいボウルにマウスピースをつけただけのものだったのではないか? 現に今まで吸った古いファウエンなど、多くがあからさまにサンクロード製を匂わせていた。 ドイツのパイプの品質が向上するのは第二次大戦後まで待たねばならないのかもしれない。 かつてこのページで紹介したファウエンのLuxusは戦後のようである。ああいう優れたクオリティーのパイプが戦間期のドイツに期待できるのだろうか? そしてまた、第一次大戦以前のジャーマン・パイプについても思う。全く未知の世界であるがそこまで遡れば真のジャーマン・ハイグレードに巡りあえるのだろうか?と。シュヴァプも父親の代まではまともなパイプを作っていたのかもしれない。 あるいはこうも思う。ドイツの優秀なパイプ職人は19世紀末までにアメリカ、イギリスへと散逸してしまったのだろうか………..。 同じ北欧でもノルウェーの宝石、リレハンメルの輝きがいや増したのは言うまでもない。 スカピは e-Bay で一年以上網を張ってやっとこれ一本が出てきたに過ぎない。 アメリカからの出品だったが競争入札者はスウェーデン人だった。愛国精神の発露であったろうが、吸えば自虐的になっていたかもしれない。しかし、ハスクバーナ、サーブ、ヴォルヴォ、ハッセルブラッドといった優れた工業製品を生み出すこの国のパイプを、スカピだけで語ることはおそらく出来ないだろう、という思いもある。 |
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