ベルトラム 1930年代(?)

 Bertram と言っても現代ドイツのパイプ作家、ベルトラム・ザッフェルリンクとは
なんの関係もない。1870年代に合衆国の首都、ワシントンDCに進出したドイツ
人の興したメーカーである。 アメリカのパイプマニヤの書いた本で絶賛されてい
たメーカーでどうしても吸ってみたくなった。 だが売り物は滅多に出ない。

 ベルトラムは三世代続いた後、1960年代後期に姿を消す。最初の二世代の
パイプは優れているが、問題は戦後の三代目になってクオリティーが極端に落ちるら
しい点。 刻印などでの年代特定はむずかしい、とその本に書いてあった。 

 そしてある日、e-Bay でついにベルトラムを発見。 さてこのパイプはどの年代か?

 心眼で何時間もパソコン画面を眺める..........。多分戦前だろう。いや、戦後だ
としても安いから買ってしまえ、と競争入札なし、9.9ドルで落札した。

 届いたパイプは最低のコンディション、マウスピースは噛み跡だらけ、ホゾはスポ
スポを通り越してガタガタである。 やむなくビニールテープを巻き、アルコールで消毒し
てから吸ってみる...............。

 長年パイプ収集をしているが、これほど驚いたことはない。生まれて初めてダンヒルを
吸った時以来かもしれない。スムース仕上げにしては驚異的にクール&ドライ、
だがそれは平均的なアーリーアメリカンなら珍しいことではない。
それにくわえてこのパイプは、煙が非常にお行儀よく口に入ってくる感じがあるのだ。
なんと言うか、全てがきっちり調教されたようで、ボウルや煙道の造り込みにも神経が
行き届いている。 事実ボウルは外観とは裏腹に下のほうはテ−パー状にすぼまって
いる。

 今までのところベルトラムはアメリカンパイプの最高峰と言ってよい。
パイプエンジニアリングは20世紀初頭に急速に洗練の度をくわえ、
第二次大戦前においておおむね完成されていたのだ、と思う。
 ダンヒルに比肩しうるパイプが商都ニューヨークではなく、首都ワシントンにおいて作られて
いた、というのも良い話ではないか。

 この後何本かのベルトラムを見たが大体どれも程度が極端に悪い。オーナーのお気
に入りパイプになってしまって、このパイプ同様、使用限界を超えたものが多かった、
と考えられる。

 明らかに戦後、というベルトラムも見たが、このパイプの繊細なマーク刻印が戦前
のものではないか?という結論に半ば達している。 

 例によって柘製作所に完全コピーのマウスピース製作を依頼した。オリジナルと並
べてご覧いただこう。