CPF 詳細不明 1890年代(?)

 八方手を尽くしても出所が不明のパイプ。おそらく所有するなかで最も古いパイプ
であらう。アンバー・マウスピースに銀巻きのパイプだがホールマークは打たれてゐ
ない。

 このパイプを吸つた時は脱力してしまつた。ブライヤーから発する煙といふもの
が、これほどまでドライで軽くなり得るとは驚きである。アルジェリア産であること
は間違ひない味だ。しかも煙が甘い。こんな経験は初めてである。通常ボウルが熱く
なるとやむなく小休止せざるを得ないのが、このパイプも熱くはなるが甘さが継続す
るのである。

初期のブライヤーパイプにおいては樹齢200年以上のものも使はれた、と言はれる
が、多分このパイプもそうなのだらう。ブライヤーの性能といふ点では、これ以上の
ものは吸つたことがない。

 このパイプを紹介した時点でこのページは終わりにしやうか、とも思つた。もうこ
れを大きく上回るものは出ないだらうし、20世紀になつてから、さらに戦後になつ
てからではこんなブライヤー素材は望むべくもないのである。始めに全ての答があ
り、後の世のものはそれを追ふのみ、極端だがそれがブライヤー・パイプの世界なの
かもしれぬ。

 だがこのパイプ、ブライヤーの質以外のところでは不満だらけである。まづネジを
切つてある角(ボーン)製テノンの内径が細すぎる。 1.6 mmしかないので煙の流
通が悪い。アンバーマウスピースも極厚で咥へにくい。かう見るとバルカナイトの採
用はパイプにとつて一大ブレークスルーだつたことがわかる。煙道の内径を大きくし
つつ、マウスピースは薄く作れるからだ。

 また上で紹介した1902年のRJがミリタリー(アーミー)マウントを採用して
ゐる理由もよくわかつた。素材的に脆いアンバーにネジを切るとなると、このやうに
細工が面倒になるからだ。アンバーをテーパー状にして銀を巻き、ステムに差し込む
あの方法はアンバーにとつては最良の方法と思はれる。煙道内径も大きく取れるの
だ。

 ところでこのボウルの形状、現代の作家系に比肩しうる感覚があると思ふ。また肉
厚が薄いのはクレイパイプの流れであるだらう。これほど薄いボウルにしてこの喫
味、つまり木が良いと造形も自由になるといふ点で、古いブライヤーは現代作家にす
れば、喉から手が出るほど欲しい材料であらう。

 古パイプの収集家なら19世紀のものを一度は吸ってみてほしい。

** CPFの身元判明。 1851年アメリカに創立された
Consolidated Pipe Factory のトレードマーク。この会社は
後にKB&Bに吸収される。






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