| フランス駄パイプ群 (ボヤージュ #4) |
高級パイプがきわめて少ないフレンチ・パイプ、駄モノがこれだけ集まった。 特に紹介するべきパイプもないのでまとめて紹介するにとどめる。 おおむねサンクロードの製品であろうが、どれも似たような味である。 時代は戦前が中心、新しくても1950 年代だろう。このうちの何本かは将来 詳細がわかれば個別に解説するかもしれない。 「さぬきうどん」よろしく木質は良いから、吸えるパイプたちであるが、これだ け吸ってみると不満も湧いてくる。あまりにも芸がないのだ。英国パイプはお そらくなんらかのキュアリングを施して独自の味付けをしている。フレンチが生 醤油だとすれば、英国は煮切り醤油、すなわち江戸前寿司のようにひと手間 かけているのだ。 フレンチを吸えば吸うほど英国パイプの凄さが身にしみてわかるようになる。 初めのうちこそアルジェリアンの生の味に感動するがだんだん飽きてくるのだ。 いっぽう英国パイプの味はくすんでおり、ブライヤーの質を一瞬疑うこともある が、吸っていくうちに底知れぬ奥深さを味わうことになる。この点、皮肉だが フレンチを味わって初めて理解し得るのがブリティッシュの真骨頂であろう。 いろいろ調べていくと、もともとフランスはパイプ人口が少なく、シガレットの 国のようである。1940年に書かれたアルベール・カミュの小説「異邦人」も アルジェリアが舞台だが、主人公・登場人物はしきりにタバコを吸うがパイプ は出てこない。 国内のパイプ需要がないから多くは輸出に向かう。その輸出先は英国、アメ リカ、ドイツ、ベネルクス、はもちろんだが意外にカナダが多いこともわかった。 確かにカナダ東部はフランス語圏であり、現在も作家・メーカーが散見される のである。(カナディアン・クラシックパイプが新たな研究ジャンルとして浮上 してきた。) これだけ集まったパイプだが、ブランド名が刻印されていないものやどこを探し ても不明の名前のパイプが多い。これも調べてゆくうちにわかったことだが、 フランスの主要メーカーの多くは自分の名前をパイプに冠することはなく、その かわり多くのブランドネーム(時に100以上)を持っていたのである。 あるいはどこにもブランドネームがなく、 French Bruyere だの Algerian だ のの刻印のみのパイプも多い。ロップ、ラクロワ、ジャンテ、ブツ・ショーカン、 シャコムなど、自社名をスタンプするのはむしろ少数派だし、多くは戦後になっ てからそうしている。 サンクロードでは分業が進んでおり、マウスピースとボウルは別の会社のもの であることが多かった。似たような吸いにくいマウスピースが多いのも二流品 の証であろう。 パイプ界全体を富士山に例えれば7合目以下の広大な底辺を占めるのがフレ ンチ・パイプである。迷い込んだら生きては出られぬ、青木が原の樹海のような 部分を通過しなければならない。このレベルにおいて個別のパイプを収集する のは無駄であり、かわりにひたすら資料集めに専念することにした。 求めよ、さらば与えられん、こうして素晴らしい本と出会うことになる………..。 |
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