ブラッター ブラザース 1940年代以前

クラシック・カナディアンに興味を持ったので調べていたら Blatter
というメーカーが気になってきた。例のカドガンの本で知ったメーカ
ーである。カナダにおける最重要メーカーと言って良い。

数奇な歴史を持つメーカーである。フランス出身のブラッター一家は
19世紀末、ロンドンで開業する。50人の従業員が居たというから
大メーカーであった。しかし工場が火事に見舞われて南アフリカ、
ケープタウンに工場を移転、ダーバンに店を構える。1907年、今
度はカナダのモントリオールに移転して喫煙具店を開業、パイプ製
造の規模は縮小させる。おそらく高級パイプだけを作ったのであろう
、20年代にはカナダで登録されたダンヒルの特許を買ってパイプを
製造していたと言うから驚きである。

1964年にいったんパイプ製造をストップするが創業者の曾孫、ロベ
ルト・ブラッターがハンドメイド・パイプを引き継ぎ、現在も5代目が
Blatter & Blatter としてモントリオールで営業中である。

e-bay で網を張っていたら早速引っかかったのがこのパイプ。 グリ
ーンドットは1950年以前であるから古さの点で申し分ない。注目度
が低いから格安でもあった。サシエニのラスティックを思わせる筋状
の加工は、木目を活かしているようでもあり、また一部サンドブラスト
のようでもあり、不思議なフィニッシュである。いずれにしても手間を
かけたハイグレード・パイプであるのは疑いない。

マウスピースも手間がかかっている。吸い口開口部の内側はていね
いに広げられ、入り口も若干トランペット加工がしてある。グリーンド
ットはダンヒルとの縁を感じさせる。丁寧に作られてはいるが、咥え
心地はパイプが存在感を主張するタイプだ。厚めで広いうえに立派な
ブルドッグであるから軽くはないのである。だが作り手の主張がある
パイプだから譲歩する気持ちになれるのが面白い。歩み寄れるのだ。

喫味も良い。キュアリングを施している感じはせず、同時代のダンヒル
・シェルよりは劣るが、この時代は木が良いから問題ない。作りが丁寧
であるぶん吸わせるパイプになっているのだ。

最近、初期の作家系パイプに興味が湧いてきている。 一般にハンド
メイド作家の嚆矢は50年代に始まるデンマークのイヴァルソンである
ように言われるが、果たしてそうか?実際「作家」や「ハンドメイド」をど
う定義するかは微妙な問題であるが、40年代のこのブラッターなど、
作家系の範疇に入れても良いと思う。ダンヒルとの関係などから最高
のパイプを作ろうとしていたことがわかり、量産メーカーから一歩踏み
出した感がある。エンジニアリングの点でも見るべきものがあるパイプ
なのだ。


暫定的な結論を先に言ってしまうと、作家系の源流はアメリカやカナダ
にもあるのではないか? と思いはじめている。 



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