グヨー 年式不明  (ボヤージュ#7)

フレンチパイプの歴史をGBDを軸に見てゆくと、英国に主導権を握られてゆく
歴史が見えて複雑な思いになる。パリのGBDの最期がどのような状況だった
かは今のところ調査中だが、その途上で気になるパイプが浮かびあがってきた。
 Guyotである。

「フランスのパイプ」というそのものズバリの書名の稀購本がある。1991年発刊
で著者はジルベール・グヨーという人、本人もパイプ作家であり、またフレンチパイ
プの収集家・ヒストリアンでもある。(1938年生まれ)

さらに調べてゆくと、この人の父親、H. Guyot という人もパイプ作家で、1921年
から23年までパリのGBDで修行していたことが判った。 

その後、自らの名前 H Guyot を冠したパイプをパリで作り始める。パリGBDの
実力を推し量る格好のパイプ、またおそらく戦前からスタートしていたフランスの
作家系パイプの源流として、どうしても吸っておかなくてはならないパイプに思え
てきた。

e-Bay France で網を張ること数ヶ月、ついに一本出品されたのがこのパイプだ。

競争入札なし、わずか5ユーロ(800円)で落札する。

だが、ここからがひと苦労、PayPal が使えないので出品者に住所を聞き出し(フラ
ンス語翻訳ソフト)、郵便局から送金、またフランスからの航空便は不当に高価で
35ユーロもする。結局送金手数料を加えるとパイプの値段の何倍もコストがかか
った。

届いたパイプはご覧のように程度が良い。わずかに噛み跡がある程度でボウルト
ップのカーボンも落としたらきれいになった。

観察してみると取り外し可能のアルミ・フィルター、これはグヨーのオリジナルでな
く量産向けの汎用品であろう。

ボウルからマウスピースまでの穴がかなり大きいのは、このアルミフィルターを通す
ためである。このページで紹介したバーリングやベッカーのようなエンジニアリング
があってのことではないと思う。マウスピースは高級ヴァルカナイト、だが残念なが
らマシンメイドのようである。ステムには H Guyot 銘のあとにパリの住所、番地ま
でが刻印されているのが面白い。パリ製を強調しているようだ。

喫味は驚くほど上等だが私の好みからは少しはずれる。クール&ドライではなく、
ホット&ドライと言うべきか、なんとなくダンヒルの Root Briar の味に似ている。
きわめてドライだが少々辛口なのだ。しかし極度にスローに吸えばこの欠点はカバ
ーされる。

ひとつだけ確実なのはサンクロード製安パイプの、あの生アルジェリアンの味がしな
いこと。かと言って、おそらくキュアリングもしてはいないだろう。製作年代は不詳
だが木のクオリティーから判断して、戦後の早い時期のもの以前かと思われる。

苦労して手に入れた甲斐があったパイプだ。サンクロード製にはないパリ製パイプの
クオリティーを感じる。ひょっとするとグヨー氏はサンクロードの駄物ばかりがフレン
チパイプではない、と言いたかったのではないか? 伝統あるパリGBDは53年に消
滅するが、これを引き継ぐくらいの矜持を持っていたのかもしれない。

だとすればグヨー氏、パリでのパイプ造りは孤立無援の状況だったことが想像され
る。

フレンチ特有のシェイプは洗練されており、入念な細工は高級品の範疇に入れて良
い。

のちの作家系への源流をここにも見るのである。

ますますパリのパイプを集めたくなった。

フレンチの頂点はパリにあり、と痛感したからだ。



(付記)

息子である Gilbert Guyot のパイプも吸ってみたいと思っている。

この人の本 ”Les Pipiers Francais” と “Le Pipier de Paris” は父親のこの
パイプほど苦労した挙句手に入れたが、未解読。文字が多い研究書の趣きだが、
概要がわかりしだい紹介する予定である。


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