2001年5月 23.『一夢庵風流記』 隆慶一朗著 読売新聞社 1991.3.19 17刷 ★★★★☆ 稀代の『かぶき者』(『傾き者』あるいは『傾奇者』とも書く)で有名を馳せた前田慶次郎の物語。この『かぶき者』なる意味は異風の姿形を好み、異様な振る舞いで人を驚かせるのを信条とし、特にこの男、時の権力に逆らうことをもってその存在理由とした。 いやはやその破天荒ぶりは並みではない。この男の『かぶきかた』は天下の秀吉すらうならせ、「かぶきの御免状」すら頂いてしまうほど。一風変わった時代ものといえる。 24.『海の伽[イ耶]琴』・雑賀鉄砲衆がゆく(上・下) 神坂次郎著 講談社文庫 2000.1.15 1刷 ★★★☆☆ このところ雑賀の鉄砲衆に魅せられたように関連小説を漁ってしまった。本編は孫市の息子孫市郎の物語。時代背景は先に読んだ『雑賀六字の城』と同じであり、一向宗の石山本山をめぐる織田信長との凄まじい攻防戦を描く。さらに雑賀の里を追われ、形の上では天下統一を成した秀吉の人質として生き延びる。 本編の最大の特徴は、かの秀吉が行なった「朝鮮出兵」に雑賀の鉄砲衆を連れ参戦することであり、【ある特別な理由】でこの秀吉の軍勢に叛旗を翻すことである。海を渡った雑賀鉄砲衆の信念と反骨を貫く熱き物語の結末や如何に? 25.『キャッツキルの鷲』 ロバート・B・パーカー著 ハヤカヤ文庫 1992.12.15 1刷 ★★☆☆☆ スペンサーとの仲がおかしくなり、西海岸へひとり去っていったスーズがある日手紙をよこしたことから本編の荒唐無稽な物語が始まる。なんとスーズは向こうでくっついた男と別れたがっているような事態が全ての問題の端緒となった訳だ。 いきなりの“牢破り”や“凶状持ち”になる経緯には唖然とさせられるは、FBIやらCIAのこのシリーズではけっしてお馴染みでない機関は登場するはで、ある種型破りなシリーズもの、と言えるかも。 スペンサーって、しょせんアメリカ東部・ボストン(都会といってもアメリカのメジャーな都会ではもはやない)の一匹狼探偵だし、ホークは借金取り立て屋だし。ストーリーの荒唐無稽さは構わないのだけど、必然性を感じないものに対してはやはり興ざめ。 イギリスまで渡ってドンパチする『ユダの山羊』程度までは目をつむったけど、どうも今回はイカンぞなぁ。 それと、つくずく今回はスーズが「バカ女」に思われ、そんな「バカ女」なんてラッセルにくれてやれぇー、なんて思うだにスペンサーはケツを追いまわす。 本編ではホークのほうがよっぽど光っているし、レイチェル・ウォーレスのほうがイイ女に思えるぞぉ。 26.『鬼麿斬人剣』 隆慶一郎著 新潮文庫 平成10年.6.20 20刷 ★★★★☆ 生まれてまもなく山中に捨てられ「山窩」に拾われ育てられた鬼麿。大人になると身の丈197cmもある巨漢である。鬼麿がまだ少年の頃、名刀工・源清麿に出会い師事することに。師匠はまもなく自刃するのだが、いまわの際に心ならずも数打ちの駄刀を何本か残したことを告白し、鬼麿にこの駄刀を探し出し全て折ることを命じて果てた。 物語はこの駄刀を探し出し折るために勝負せねばならなかった八つの勝負=八番勝負から構成されている。それにしても鬼麿の剣法は異様だ。構えは「足を』真横に開き、腹をつきだすようにして、大きく大太刀を振りかぶっている。大太刀の切尖が尻に触れるほどである。切り柄を握った双の拳はぴったりくっついている。どうみても不恰好としかいいようがない」と。つまり独自に編み出した据物(すえもの)斬りの構えなのだ。この異様な巨漢にからむ脇役陣がまた良い。途中からくっつく山窩の少年。そして鬼麿の行状を阻止せんとする伊賀同心の頭領の娘お吟。 鬼麿の師匠である源清麿の魅力が印象的。なにか『かくれさと苦界行』の松永誠一郎を彷彿とさせるイイ男なのだなぁ。最後は主人公であるはずの鬼麿よりもむしろ清麿の魅力が光彩を放つ。 27.『地獄の静かな夜』 A.J.クィネル著 集英社 2001.4.10 1刷 ★★★☆☆ 『手錠』 『愛馬グラディエーター』 『バッファロー』 『ヴィーナス・カプセル』 『六十四時間』 『ニューヨーク、ニューイヤー』 『地獄の静かな夜』 の7編からなる短編集。クィネル・ファンの読者のひとりとして言わせてもらえば、やはりこの作家は長編でなければしっくりこない。 敢えてどれが良いか?と問われれば『愛馬グラディエーター』と答えようか。だって“彼”が出て来るんだもんねぇ。(ボソッ) 28.『鳥の歌』(上・下) 五木寛之著 講談社 昭和57.6.30 1刷 ★★☆☆☆ 13才になる娘を持つ謡子とラジオ局に勤める谷昌平。ふたりは互いにひかれあいながらながらもなかなか踏ん切りがつかない。謡子には愛しながらもわかれた夫、サクがおり、今でも年に一度はやって来る関係だ。しかしもう男と女の関係はない。さらにもうひとりの女性、谷昌平と同じラジオ局に勤める森田みつ子が登場し、男女4人のからむ恋愛小説かと思われるのだが、単なる恋愛小説ではない。 ある日、謡子は死んだ鳩を見付けるのだが、その足には通信用金管がつけられていた。それは謎の「鳥文字」で書かれたものであった。それを谷に見せようと約束の喫茶店へ向かう途中、過激派によると思われる爆弾テロに巻き込まれる。 この謎の「謎の鳥文字」に関係してくるのが謡子の前夫・サクであった。サクは「全国野鳥保護の会」、通称「鳥の会」のメンバーであった。さて、この「鳥の会」とは?一体何を目指す組織なのか?爆弾テロとの関連は?と一種ミステリー仕立てでストーリーは展開する。 「鳥の会」についてはその後五木の小説『風の王国』で登場する「天武仁神講」のような団体、基本理念は古来この国に存在したといわれる山窩(さんか)の共同体をイメージさせる。 本編中の表現では「この国の中で国境を超えて新しい文化を、文字や、言葉や、物語などを作ろうとすうる。いわば、国家のコントロールに対する反逆に当る」となっている。 平たく言えば、農耕などして定住し、税金をもれなく納める「住民」に対し、常に移動をし、住民の間を行き来しながら活力を与える“動民”=ホモ・モーベンスであると・・・。 題名『鳥の歌』はかの流浪のスペイン人チェロ奏者、パブロ・カザルスの「鳥の歌」から引用している。これで五木寛之のカザルス三部作といえようか。『戒厳令の夜』『風の王国』『鳥の歌』と・・・。 尚、☆の評価が低いのはやはりちょっと甘めの“恋愛小説”っぽい理由からです。 29.『犬の夜』 杏藤知樹著 英治出版 2001.5.30 1刷 ★★★☆☆
【5月の読後感】 やっとスランプを脱しての7作品9冊読了。今月はあと、長部日出男著のノンフィクション『天皇はどこから来たか』を読んだが、内容的には今ひとつか。 |
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