こんな本を読みました
掲載一覧表
掲載日時タイトル
2009/12/06炎立つ(壱〜伍)
2009/11/29緋い記憶
2009/11/29火怨(上下)
2009/11/22横道世之介
2009/11/22水神(上下)
2009/11/2246年目の光
2009/11/22ヤシガラ椀の外へ
2009/11/08世界でもっとも美しい10の科学実験
2009/11/01北斎殺人事件
2009/10/25出世花
2009/10/25写楽殺人事件
2009/10/25銀二貫
2009/10/18忘れられない脳
2009/10/18実践行動経済学
2009/10/18
2009/10/11ルポ資源大陸アフリカ
2009/10/11だましゑ歌麿
2009/10/04クローズド・ノート
2009/10/04栄光一途
2009/10/04虚貌(上下)
2009/9/27終末のフール
2009/9/20白銀を踏み荒らせ
2009/9/20犯人に告ぐ(上下)
2009/9/13火の粉
2009/9/13行方不明者
2009/9/13無名
2009/9/13クレイジーヘブン
2009/9/6セカンドライフ
2009/9/6血涙(上下)
2009/9/6八朔の雪
2009/9/6終の住処
2009/8/23ほかに誰がいる
2009/8/23田村はまだか
2009/8/16ゼロの王国
2009/8/16ひまわりの祝祭
2009/8/9向日葵の咲かない夏
2009/8/9インド特急便!
2009/8/2コーヒーの鬼がゆく
2009/7/26シリウスの道(上下)
2009/7/26蚊トンボ白髭の冒険(上下)
2009/7/19コロンブスそっくりそのまま航海記
2009/7/12仮の水
2009/7/12日本語が亡びるとき
2009/7/05古代ギリシアのコンピュータ
2009/7/05ゆびさきの宇宙
2009/7/05望遠鏡400年物語

過去の読書情報(2002年)
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炎立つ(壱〜伍)
高橋克彦
講談社文庫

 いわずと知れたNHK大河ドラマの原作だ。この作品は、 高橋克彦の東北蝦夷の三部作の一つだ。「火炎」、「炎立つ」 「天を衝く」なのだが、「火炎」は西暦800年ころの物語 で、「炎立つ」は1050年ころから鎌倉幕府ができる直前 までだ。蝦夷とはもともと出雲にいて、蘇我の勢力に敗れた 物部などの勢力が、東北に逃げた集団である。したがって、 蝦夷とはそのような勢力を指すとしている。

 壱から参までは実に面白い、初代藤原経清と源頼義、源義 家の戦いなど飽きない。四はなかだるみだと思う。経清から 清衡まで少し時間が飛ぶ、まだ理解できるが、その後100 年ほど時間が飛んでしまう。再び白熱するのは、泰衡、義経 が登場してからである。

 僕は昔から、なぜ平泉が栄えたのか理解できなかった。こ の作品を読んで初めて理解した次第だ。蝦夷とは天皇を中心 とする民族に敗れた民であって、天皇家の勢力の及ばない東 北だからこそ生き続け栄えることができたわけだ。伍巻の最 後で源頼朝が平泉の「武家政治」の仕組みについて感心する 件があるが、これは素晴らしい発想ではないか。これを知っ ただけでもこの作品を読んだ価値があると思う。四巻の中だ るみ以外に不満はない。

 宮城、岩手、津軽の出身者の必読書である。




緋い記憶
高橋克彦
文春文庫

 この本の主題は今一つ分からない。僕は元々世間の学生は どのような青春時代を過ごしたのかと興味があって、この本 を買ったのだがそれは間違っていたようだ。





火怨(上下)
高橋克彦
講談社文庫

 この本の主題は今一つ分からない。僕は元々世間の学生は どのような青春時代を過ごしたのかと興味があって、この本 を買ったのだがそれは間違っていたようだ。





横道世之介
吉田修一
毎日新聞社

 この本の主題は今一つ分からない。僕は元々世間の学生は どのような青春時代を過ごしたのかと興味があって、この本 を買ったのだがそれは間違っていたようだ。

 この本の主人公は、結局は写真家になったようだけど、そ の前歴はわからない。学生時代の話にしても、面白くはない。 この本は作者が有名でなければ売れない。結論は全く詰らな い、なぜ、日経の書評に載ったのか理解できない。





水神(上下)
帚木蓬生
新潮社

 なぜ、医学を志す人間がこの本を書くのかと思った。土木 屋が書くべきではないのか。あまたの土木屋がいながら何を しているのか。同業として恥ずかしい。

 江戸時代に、福岡地方で水不足に苦しんでいた地方の庄屋 が結束して、筑後川から水を引く工事を行った話。こう書く と簡単だが非常に苦労した。感動巨編だと思う。




46年目の光
ロバート・カーソン
NTT出版

 3歳で失明して46歳で手術を受けて、目が見えるようにな った人に関する物語。

 僕らは、今現在見えているので何も疑問がないのだが、実 は見るという行為は幼少期からの訓練が必要だと示されてい る。この訓練は大変に過酷だ、著者の人間性を含んで魅力的 な本になっている。




ヤシガラ椀の外へ
ベネディクト・アンダーソン
NTT出版

 ベネディクト・アンダーソンは社会学者である。なぜ、こ の本を選んだのか。amazonの書評ゆえである。この本の半分 までは楽しかったが、後半は、非常に専門的に読むをあきら めた。





世界でもっとも美しい10の科学実験
ジョージ・ジョンソン
日経BP社

 正確には「もうひとつの『世界でもっとも美しい10の科学 実験』」というタイトルだそうだ。『世界でもっとも美しい 10の科学実験』とは物理学誌の読者投票で選んだ物理実験だ とか。この本は、著者が物理実験に加えて化学実験も加えた ものだ。

 重要な実験というものは、確かめたい、実証したい事象が あるのだから、精魂こめて実験を組み立てているはずだ。だ からおのずと美しいのだと思う。しかし、この本を読んで思 うのは、理解が難しいということだ。大変な苦労をして実験 をやったことはわかるが、実験を考えた研究者と同じ思考な ど持てるはずがない。

 「世界でもっとも美しい10の科学実験」であっても、説明 も「世界でもっとも美しい10の科学実験」であるとは限らな い。




北斎殺人事件
高橋克彦
講談社文庫

 「北斎殺人事件」と「写楽殺人事件」のどちらができがい いかと問われれば、考え込まざるを得ない。どちらもできな いいのだ。「写楽殺人事件」は、江戸時代の圧政に対する住 民の反骨精神などが知れて楽しいが、北斎の方はミステリー の疑問が一点もない。ボストンと日本を結び、謎が徐々に解 き明かされるのだが、読者に疑問を抱かせるトリックがない。 実にうまくまた知的な作品だと思う。お勧めだ。




出世花
高田 郁
祥伝社文庫

 なにが出世なのか良くわからないような気がするが、わか ったような気もする。寺で死体を洗う仕事に従事する娘が主 人公。この作品には料理は珍しく出てこない。作者の新しい 傾向の作品か。内容は面白い。が、料理本の方が面白い。





写楽殺人事件
高橋克彦
講談社文庫

 この本は1986年に出されたものだが、僕が入手した時点で 41刷だ。大ベストセラーだと思う。高橋克彦は浮世絵の専 門家らしいが、浅学の身では知り得ない事実は次々と作中の 登場する。この作品では、写楽の秘密を追うのだが、その秘 密が明らかになると並行して、ミステリーが明らかになる。 ミステリーといいながら、浮世絵の勉強が出来る作品でどう して今まで手に取ることがなかったのかと反省している。





銀二貫
高田 郁
幻冬舎

 高田郁の時代小説は江戸時代に題材を取っているが、当時 の地名、風俗を実に丹念に描いている。この作品は、寒天料 理に関するものだが、寒天の作り方から料理方法まで、調理 の専門家でも及ばないほどに書かれている。

 もう一つの縦糸は、「銀二貫」だ。この銀二貫をめぐって 話が展開する。実に良くできた物語でお勧め。





忘れられない脳
ジル・プライス、バート・デイビス
ランダムハウス講談社

 この本は意外と面白かった。考えてみると僕らは、失敗し たとかの嫌な思い出をいつまでも覚えていない。この性格は 楽天的とか前向きと称される。いいことしか覚えていないの だ。

 この本の作者は、8歳頃からの自分の人生のすべてのシー ンを覚えている。あなたが、本当に好きだった彼女に振られ たとしよう。その場面が一生鮮明に思い出される。あるいは、 仕事で失敗した場合、人は普通年とともに忘れるものだ。が、 この作者はいつでもさっきのことのように悔恨の情とともに 思い出すのだ。それは自分で制御できない。

 この本は、本当にまれなことにそのような能力を持った女 性の苦悩を描いている。面白い。




実践行動経済学
リチャード・セイラー+キャス・サンスティーン
日経BP社

 最近、行動経済学に興味がある。その思いをついたかのよ うな本で早速購入したが、2/3で挫折した。その2/3にしても 良く読んだと思う。後半は、学位論文にでもしたらいいよう な内容で楽しめなかった。翻訳が悪いわけではなく、もとも との内容が悪く、出版自体がミスだったと思う。





曽根圭介
角川ホラー文庫

 この文庫に収められている「鼻」は日本推理作家協会賞短 編部門を受賞したそうだ。期待して読んだのだが、僕は正直 好きではない。おそらく、この作家の作品を自体を今後読ま ないと思う。

 「鼻」の欠点は最近の作品に多い、結末の意外性を狙った 点にある。小説とは所詮娯楽なんだから気楽に頭に入ってく る必要があると思う。まさか紙に相関図を書きながら読む人 はいないだろう。

 そういう点で、プロの評価は高いが僕は評価しない。僕が 評価したのは、暴落で、これは以前に同様のネタがあるよう だが素直に面白いと思う。




ルポ資源大陸アフリカ
白戸圭一
東洋経済新報社

 白戸圭一は毎日新聞の記者だ。4年間ヨハネスブルグの駐 在員として滞在して帰国後にルポルタージュを書いた。自分 自身で4年間にわたって取材した結果なので迫力がある。

 アフリカのどうしようもない貧困、については何冊か読ん だが、権力者の腐敗と教育制度の欠陥が問題だとする指摘が 多いと思う。この本は視点が違う。資源による国家収入とそ の基幹産業化がアフリカの貧困をもたらしていると主張する。 例えば、ナイジェリアは石油産業が基幹産業なのだが、政府 は石油に頼って石油産業を守るのに汲々としている。

 国営石油企業に努める幹部社員は、若い給料の安い社員の 500倍の給料をもらっている。幹部社員がだ。このような経済 格差がアフリカの暴力を生みだしているとする。南アフリカ にしてもあれだけの経済力があって、いまだに治安が悪いよ うだ。




だましゑ歌麿
高橋克彦
文春文庫

 高橋克彦は浮世絵の専門家らしいな、ここまで詳しいとは 知らなかった。寛永の時代(1790年頃)の実在の人物群に主 人公を初めとする数名を登場させて、当時の世相を描いてい る。いずれも歴史上に名を残しているので、かなり表現に苦 しい場面もあると思うのだが、そういうことはなく、楽しめ る作品になっている。トリックはトリックだが、謎解きの楽 しさではなく、展開の楽しさで読ませる。




クローズド・ノート
雫井脩介
角川文庫

 この作品はミステリー的な要素もあるが、恋愛小説だろう。 また質の高い恋愛小説だと思う。この作品には意外性はない。 最後に謎が解けるのだが、それも疑問はない。過去の雫井脩 介作品と違うのだ。最後は泣けてくる。また、主人公が文房 具やでアルバイトをしてペンを売るのだが、このペンの解説 には恐れ入った。問題なく推薦したい作品だ。




栄光一途
雫井脩介
幻冬舎文庫

 この作品がデビュー作らしい。「白銀を踏み荒らせ」はア ルペンスキーの世界が話題だった。この作品は、柔道が話題 なのだが、柔道をやったことのない僕にはわからないが、作 中の試合中の描写は真に迫っている。スキーならば理解でき ないことはなかったのだが、それでも100km以上の速度で滑降 する、滑降の世界なんぞ無縁である。まずは、その迫真の描 写が見事だといっておこう。

 さて、これも結末は意外だ。後半にはお目当ての人物が特 定できるような表現が多い。だからわかるのだが、最後の登 場するのは本当に意外な人物であって、なぜわからないかは その人物に言及した個所がないからだと思う。意外だなと思 う反面、ルールやぶりのような気もする。それでも面白いの は、登場人物によるし、人物表現も面白いからだろう。




虚貌(上下)
雫井脩介
幻冬舎文庫

 この読後感を書く段階で「雫井脩介」の作品群は読了した。 その結果、彼の書くミステリーはおそらく結末の意外性を一 番重視しているのではないかと感じた。そのために、トリッ クに甘い面が生じる。参考文献をきちんと示して、いちいち 勉強して書いている様子がうかがえるのは興味深い。

 本を読んでいない方がいるだろうからルール通り詳しくは 書かない。芸能界に絡んだ話題なのだろうか。仲間に騙され て主犯となった犯人が仮出所して、昔の仲間に復讐するよう に見える。そこまでは誰でもわかる。そこから先は最後まで わからない。なぜわからないかは、トリックに秘密があると 思う。雫井脩介作品の唯一の欠点だろう。




終末のフール
伊坂幸太郎
集英社文庫

 もしも地球が後8年で週末を迎えるとしたら、どう生きる ということをテーマにした小説だ。8年前に小惑星が、8年 後に地球に衝突することになった。それから地球、わが国は 大混乱した。そして5年たって住民もやっと落ち着いてきた。 お馴染みの仙台郊外の団地に住む住民の姿を描く。8人ある いは8家族はどう生きるのか、生きたのか。僕はこういうSF ものは好きではないが、それぞれも人生を描くのは好きだ。




白銀を踏み荒らせ
雫井脩介
幻冬舎文庫

 雫井脩介の作品は弱小の出版社からしか発売されていない、 本屋で探すのに苦労する。前2作がいたく気に入って名古屋 のた高島屋で買ったものだ。アルペンスキー界に話題をとり、 滑降競技で転倒して死んだ、有望日本選手の疑惑を追う。追 うのは雫井作品でお馴染みの二人の若い女性だが、その片方 の活躍がいささかドタバタで、作品の格調を下げているとい う指摘もあるようだが、その女性が解決のヒントをもたらす のだ。われわれの知らない世界をミステリーの舞台にするの は面白い。




犯人に告ぐ
雫井脩介
双葉社

 この小説は、小泉元首相の劇場型政治にヒントを得たのだ ろうか。テレビ番組を通じて、犯人と思わしき人物とメッセ ージの交換をするのだが、どう考えても手掛かりが得られそ うにない。(下巻)も残りが少なくなって、やっとそのヒン トが得られて驚いた。巧みだと思う。雫井脩介のストーリー はすごいと思った。この作品にしても、参考文献をすべて公 開しているが、雫井脩介の専門分野、得意分野などではなく、 すべて勉強したことをうかがわせている。ミステリーはスト ーリーと結末で決まるのだろう。しかし、確かに文章力もあ る。




行方不明者
折原一
文春文庫

 折原一(おりはらいち)の作品は、「天井男の奇想」に続 いて2冊目だった。この作品を読んで、「できないい」と思 ったのに、雫井脩介の作品を読み始めると、面白いことに 「行方不明者」の内容は忘れてしまった。




無名
沢木耕太郎
幻冬舎文庫

 沢木耕太郎の父親の死を追った記録だ。世間的に名を成し た人間ではないごく普通の人物の死が、沢木の手にかかると 物語になるという見本だろう。沢木が有名であるがゆえの物 語だと思う。




クレイジーヘブン
垣根涼介
幻冬舎文庫

 垣根涼介の書く小説の主人公は若くて何の権力も力も持た ないが、例外なくときどき狂気を感じさせる暴力を振るう。 そしてアブノーマルなセックスに走る。読みながら、読んで いる自分も転落していく恐怖を感じる。経験したことのない 無法行為に読みながら興奮する、緊張する。




火の粉
雫井脩介
幻冬舎文庫

 なぜ、「火の粉」を手にしたのか覚えていない。作者「雫 井脩介」の作品を読むのは初めてなのだが、ストーリーの巧 みさ、内容の不気味さに魅かれてしまった。文章もうまい。 主人公は殺人の裁判で無罪判決を言い渡した裁判官だ。この 裁判官をめぐって身辺でさまざまな物語が展開する。無罪に なった容疑者の犯罪が徐々に明らかになる。その展開が面白 い。ミステリーなのだが、嫁と姑、小姑の関係なども良く書 かれている。介護の現実も書かれている。この作者は、巻末 に参考文献を全部挙げているが、それを見たら、すべて自分 で勉強して書き込んでいることがわかって非常に感心した。 それを公開していることにも好感を持った。




セカンドライフ
藤田宜永
角川文庫

 藤田宜永の小説を読んだことはほとんどない、得意分野は 恋愛小説らしい。「幸せを売る男」の改題。主人公は57歳 で元大手建設会社の耐震を研究していた男だが、会社をリス トラされた。たまたまリストラ直前に妻に離婚を申し出られ、 離婚することになった。

 リストラされて離婚してむ向島に一人で暮らし始めると妙 にもてる。言い始めたら切りがないが、この辺の設定に無理 がないとはいえない。30代前半の未婚女性二人といい仲に なる。それをきっかけに味のある中年になる。もとの妻に会 うと「今のあなたなら離婚しない」とまでいわれる。

 この小説は、「中年男性への応援歌」とあるが、処方箋か も知れない。今の自分でも磨けば、若い女性にも人気が出る と。人気が出るだけじゃ仕方がないが。中年男性のあなたは、 一度読んでもいいだろう。




血涙(上下)
北方健三
PHP文庫

 北方謙三の「楊家将」の続編の位置づけ。僕は「楊家将」 は読んでいない。「楊家将」で再起不能なまでに敗れた 「楊家」が再興し、争うのは耶律休哥(やりつきゅうか)軍 で、そこに石幻果(せきげんか)が加わったが、石幻果は先 の戦で亡くなった思われた楊家の一員だった。




八朔の雪
高田郁
角川春樹事務所

 八朔というのは八月朔日で要は旧暦で8月1日のことです ね。八朔に吉原の遊女が「白無垢」で客を迎えるんだそうで す。それを八朔の雪、という。なんとも美しい日本語だと思 う。高田郁(たかだかおる)は最近知りました。他の本を買 おうと思ったら、amazonでもなかなか入荷しないのでキャン セルした。ただ、この本も面白いです。日本語はきれいだし、 副題が「みをつくし料理帖」なんだけど、料理の内容がこれ またしっかりしている。何度か書いたけど、単に舞台を江戸 に移しただけじゃ駄目だと思う。この作品のように、料理も 言葉も風俗もきちんと書くというのは至難であって、現代文 学の方が楽だと思う。お勧めです。




終の住処
磯崎憲一郎
新潮社

 最近まれになった純文学らしい純文学ですね、私小説とい うか。好きな人は好きだろうけど僕は好きじゃない、と思い ながら読んだ。




他に誰がいる
朝倉かすみ
光文社

 女が女に一目ぼれする小説だが、一目ぼれしたあまりに自 分を精神的、肉体的に追いこんでしまう。宗教の場合にはあ りそうな、惚れ込みを同性にささげる。途中で、読むのが嫌 になるほど、惚れている。作品的には完結しているが、ちょ っと気になるのは、主人公の行動と主人公の家族、友人たち の関係だ。特に主人公と家族、対象の女性とその家族の関係 が希薄であって、この小説は周囲から二人の関係だけを切り 取って成立している。だからこそ、ここまで恐ろしい破滅に 向かうのだろう。




田村はまだか
朝倉かすみ
光文社

 北海道生まれで札幌市で生活している作家らしい。当年、 49才だろうか。この作品は、2009年の吉川英治文学新人賞を 受賞したものだ。表題他で6作の連作となっている。小学校の 同級生が開店して年目のバーに流れてくる。三次会だ。来る 予定の田村が来ない。連作の各編はメンバーの小学校から今 までの人生を語るのだ。その各編で「ところで、田村はまだ か」と叫ぶ。この連絡の落ちは、「話は明日にしてくれない か」にあるのだが、詳しくは書かない。これがあるので、傑 作となっているのだろう。




ゼロの王国
鹿島田真希
講談社

 今年の4月に出版されてまだ第一刷だった。この作品は、 日経新聞の書評で見た。非常に変わった小説で主人公の饒舌 が長々と続くが一気に読める、とあった。最初から主人公の 饒舌が続くのは確かだが、一気に読めるというのは嘘だろう。 やっと半分ほど読んだのだが、この分厚い本の残りの半分を 読むを放棄しようかと考えている。なぜなら先が見えないし、 読者を引き込むほどのストーリーでもないし、好奇心を持た せるわけでもないのだ。新聞の書評に絶対的な信頼を置いて いるわけでないし、書評子によって好みは違うだろう。でも、 この例は、読者を考えない書評子がいるという好例だと思う。 途中で読むを辞める本は年に3冊もない。そうそう内容はゼ ロなのだ、基本的には最終的に無になる会話を数人で延々と 続けるのだ。  




ひまわりの祝祭
藤原伊織
講談社文庫

 9年間で18刷売っているんだがなるほどと思う。現在の わが国で銃砲等がどの程度自由に手に入るかは知らないが、 藤原伊織の小説では入手に事欠かない。この小説の主人公は 甘党だが、やはり自堕落な生活を送っている、優秀だが自堕 落だ。自堕落になる理由は毎回変わるがある程度は納得でき る。小説だもの。

 ハードボイルドだからなのか必ず暴力、バイオレンスが入 る。それもいいだろう、そちらが真実かも知れない。だけど 読むのは読ませる力があるからだろう。藤原伊織の文章は美 しい。読者を引き込む力がある。この文庫で彼の作品は全部 読んだことになるが、亡くなったのは誠に惜しいと思う。




向日葵の咲かない夏
道尾秀介
新潮文庫

 例えば、藤原伊織の文章を読んでからこの作家の文章を目 にしたら呆れるくらいに稚拙な文章だと思える。ここ数年、 賞を取った若い作家には、同様の傾向がある。だから、次作 が出てこない。この作家は文章は下手だが、アイディアは持 っているようだ。しかし、この幻想的なストーリーは僕は好 きではない。江戸時代に背景を取って、それに怪奇物にする などという作家だと同じだと思う。

 最後まで読んでそれなりに楽しんだけど、上に書いたよう な不満が残ったし、もう手に取ることもないだろうと思う。 一作だけなら経験してもいいかなと思う。




インド特急便!
ダニエル・ラク
光文社

 日経新聞の書評で見てamazonのマーケットプレイスで購入 した。1990年代以降のインドについて分析しているので、早 かれ遅かれ内容的には古くなるだろう。BRICSの一員であるイ ンドの成長の源泉はどこになるのか、ということだ。インド がかつて英国の植民地であって、そのために英語が普及した。 それが皮肉にも成長に一役買っているのは疑いのない事実な のだ。では、カースト制度はどうなのか。現代のインドで活 躍しているエリートの大きな部分はバラモンの出身だそうだ。 これはわが国でいえば、武士階級が頑張っているようなもの で要は精神性が高いのだろう。つまりは、カーストも成長に 貢献したということだろう。カーストについては、まだまだ 先を見なければならない。この本はわれわれの知らないイン ドを教えてくれる。




コーヒーの鬼がゆく
嶋中労
中央公論新社

 吉祥寺「もか」店主・標交紀(しめぎゆきとし)の生涯を 嶋中労が綴る。標交紀の人生を語りながら、コーヒー豆につ いての知識、コーヒーの入れ方を語る。僕もコーヒー好きで 高校時代から浪人中にかけては自分でドリップ式コーヒーで 入れていた。それからはずっとペーパーを使っている。世の 中の喫茶店で飲むコーヒーのほとんどには満足していない。 うまいコーヒーは飲んでなくてもまずいコーヒーはわかる。

 コーヒーにかけた珍しい人生も読んでいて面白いが、どう いうコーヒーが旨いかもわかった。標交紀の人生は、誰でも ができることではないが、理想的なうらやましい人生を語っ ていると思う。




シリウスの道(上下)
藤原伊織
文春文庫

 「蚊トンボ白髭の冒険」と比べたらまともな作品で、こち らは版を重ねている。読者は正直なのだ。この作品は電通を 思わせる広告会社の企業小説となっていて、実態を知らない ものには面白い。男女の会話も気が利いている。いつもいつ も僕のような凡人が気になるのは、主人公の無鉄砲さだ。限 界を超えさせることで、共感を呼ぼうというのか。

 藤原伊織の年齢からいっても、この作品も僕らの子供時代 を引きずるものだと思う。読みながら自分の子供時代を思い 浮かべてしまった。みな同時代の作家を読むのだろうか。そ こに自分の過去を見るのだろうか。




蚊トンボ白髭の冒険(上下)
藤原伊織
文春文庫

 amazonでそれほど考えずに藤原伊織の作品を買い込んだ。 その内の一つの作品だ。「蚊トンボ白髭」とは何のことか全 く分からなかったが、この部分はSF的な超能力のことだ。大 体、SF作品を書くならいいけど、そうでもない作品に妖怪と か超能力等が登場するのは逃げだと思う。苦し紛れだと思う。 藤原伊織のこの作品もそうで、読者は正直だから第一刷のま まだ。

 ネタ切れを別にすれば、他の部分は藤原伊織らしい作品だ と思う。




コロンブスそっくりそのまま航海記
ロバート・F・マークス
朝日新聞出版

 原題は「ニーニャ2号機の航海」なんだろうね。これは、 1492年にコロンブスがたどった大西洋横断を「そっく りそのまま」やってやろうと思った連中の航海記だ。

 やったのは1962年。記録があるから成功したわけだ。 シャクルトンの冒険記も面白いけど、欧米人の面白さは探 検の精神だと思う。この本を書いたロバートはいわゆる 「トレジャーハンター」でありながら、あるときコロンブ スの冒険に気をひかれ、あらゆる文献を調べ、その上で探 検に乗り出した。

 何が面白いかというのは、最近の日本人にはない、そう 明治維新の頃にはあったと思う、冒険精神の発露の物語だ からと思う。実はすでに46年も昔の話なのだが、「最新 機器」を持ちこんでいないので、全く古くなっていない。 その意味で、ロバートの考えは正解だったのだろう。




仮の水
リービ英雄
講談社

 リービ英雄は1950年生まれだというから僕と同世代とい うことになる。16歳から日本に住んでいる。50代のリービ 英雄が中国本土の奥地に歩いた記録。中国の内陸では「外 人」は目立つらしい。まだわれわれも知らない中国の姿が 私小説風に書かれている。





日本語が亡びるとき
水村美苗
筑摩書房

 リービ英雄に対して、こちらは12歳で米国にわたり32 歳で日本に戻ってきたそうだ。日本語という言葉は本当に ラッキーなことに生き残って来たらしい。四囲を海に囲ま れているがゆえに救われたのだそうだ。それが、インター ネットの普及でもうどうしようもないという。日本語とい うのは世界でも例を見ない表現力の豊かな言語であるという。

 敗戦後を中心に「漢字廃止」の議論があった。それは最 近まで続いていたのだが、なんとインターネットを普及さ せたパソコンのせいで漢字の表現の負担が減り生き延びた のだ。中国は簡体略字で、朝鮮はハングル、台湾と日本の みが漢字なのだ。

 かのフランスでさえも国語の危機だという。公用語が英 語になろうとも国語としての日本語を守りたいという著者 の熱意がひしひしと伝わってくる。





古代ギリシアのコンピュータ
ジョー・マーチャント
文藝春秋

 amazonで注文したのだが、品薄で配達まで2週間以上かか ったのではないだろうか。奥付を見たら、今年の5月15日に 第一刷、6月30日に第二刷だった。僕は第二刷になるわけだ。

 1900年頃、ギリシアの海綿を採取して生計を立てている男 たちが、大昔の難破船を見つけた。男たちはギリシア政府に 報告して、政府が積み荷を回収することにした。回収された 船荷の中には数多くの美術品があった。その中に、小型の今 でいえば置時計のように見える、半ば腐食した物体があった。

 その謎の物体はブロンズ製であり、多数の歯車で構成され ていた。時計が発明されたのは18世紀である。回収されたの はギリシアのアンテキテラ島の先の海だ。この時計のような 物体に興味を持った男たちの物語である。後に放射性炭素年 代測定法で、紀元前100年頃のものとわかり、さらにさまざ まな記録を調べて、ポンペイウスがイスラム世界から船をロ ードス島を経て、ローマに運ぶ途中で沈没したのだろうと推 定された。





ゆびさきの宇宙
生井久美子
岩波書店

 この本の主人公の福島智さんは、わが国で初めて「盲ろう」 で東大の教授になった人物だ。大学に入学したのも二人目だ。 彼は初めから音と光を失っていたわけではない。4歳で左目 を失い、9歳で右目を失い、14歳で左耳が聞こえなくなり、 とうとう18歳で右耳も聞こえなくなった。

 この本は、福島さんの人生を著者である生井が追い記録し たものであり、福島さんの努力を広く訴え、「盲ろう」に対 する理解を深めようとするものだ。

 わが国には、「盲ろう」者は1万人〜2万人いるそうだが、 老人が多くほとんどは家に閉じこもっているので実態はわか らない。この数字には驚かされる。さらに、障害者となると 20人に1人だそうだ。福島さんが「盲ろう」になるまでは 他の人との意思疎通に苦労したらしい。福島さんのお母さん がたまたま指で点字を持つ方法を考えて、それから意思疎通 がやりやすくなったらしい。また、電子メールの普及で飛躍 的に楽になったらしい。




望遠鏡400年物語
フレッド・ワトソン
地人書館

 本書の最初の方には、ティコ・ブラーエが登場する。とい ってもティコ・ブラーエの名前にしても、科学技術史に興味 のない方にはわからないだろう。人生をかけて天体観測を行 って、その膨大なデータを天文台をかのケプラーに譲った男 である。ケプラーの大発見はティコがあってのものなのだ。 そのティコを初めとして400年前からの著名な物理学者の ほとんどが本書に登場する。

 望遠鏡といえば、レンズだし、反射鏡といえば鏡である。 質の良い、制度の良いレンズと鏡は当時はできなかった。理 屈がわかっても作ることができなかった。この本の主人公は、 天体観測をしたいがために望遠鏡を改造した人たちと、純粋 に大口径の制度の高い望遠鏡を作りたかった男たちの物語だ。

 著者は、オーストラリアのアングロオーストラリア天文台 の天文学者のフレッド・ワトソンだが、彼の文章には英国流 の修飾が頻用されており、読みにくい表現も多い。








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