| 掲載日時 | タイトル |
|---|---|
| 2009/12/06 | 炎立つ(壱〜伍) |
| 2009/11/29 | 緋い記憶 |
| 2009/11/29 | 火怨(上下) |
| 2009/11/22 | 横道世之介 |
| 2009/11/22 | 水神(上下) |
| 2009/11/22 | 46年目の光 |
| 2009/11/22 | ヤシガラ椀の外へ |
| 2009/11/08 | 世界でもっとも美しい10の科学実験 |
| 2009/11/01 | 北斎殺人事件 |
| 2009/10/25 | 出世花 |
| 2009/10/25 | 写楽殺人事件 |
| 2009/10/25 | 銀二貫 |
| 2009/10/18 | 忘れられない脳 |
| 2009/10/18 | 実践行動経済学 |
| 2009/10/18 | 鼻 |
| 2009/10/11 | ルポ資源大陸アフリカ |
| 2009/10/11 | だましゑ歌麿 |
| 2009/10/04 | クローズド・ノート |
| 2009/10/04 | 栄光一途 |
| 2009/10/04 | 虚貌(上下) |
| 2009/9/27 | 終末のフール |
| 2009/9/20 | 白銀を踏み荒らせ |
| 2009/9/20 | 犯人に告ぐ(上下) |
| 2009/9/13 | 火の粉 |
| 2009/9/13 | 行方不明者 |
| 2009/9/13 | 無名 |
| 2009/9/13 | クレイジーヘブン |
| 2009/9/6 | セカンドライフ |
| 2009/9/6 | 血涙(上下) |
| 2009/9/6 | 八朔の雪 |
| 2009/9/6 | 終の住処 |
| 2009/8/23 | ほかに誰がいる |
| 2009/8/23 | 田村はまだか |
| 2009/8/16 | ゼロの王国 |
| 2009/8/16 | ひまわりの祝祭 |
| 2009/8/9 | 向日葵の咲かない夏 |
| 2009/8/9 | インド特急便! |
| 2009/8/2 | コーヒーの鬼がゆく |
| 2009/7/26 | シリウスの道(上下) |
| 2009/7/26 | 蚊トンボ白髭の冒険(上下) |
| 2009/7/19 | コロンブスそっくりそのまま航海記 |
| 2009/7/12 | 仮の水 |
| 2009/7/12 | 日本語が亡びるとき |
| 2009/7/05 | 古代ギリシアのコンピュータ |
| 2009/7/05 | ゆびさきの宇宙 |
| 2009/7/05 | 望遠鏡400年物語 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 08月〜10月分 | 11月〜12月分 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 07月〜09月分 | 10月〜12月分 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 07月〜09月分 | 10月〜12月分 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 07月〜09月分 | 10月〜12月分 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 07月〜09月分 | 10月〜12月分 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 07月〜09月分 | 10月〜12月分 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 07月〜09月分 | 10月〜12月分 |
| 01月〜03月分 | 04月〜06月分 | 07月〜09月分 | 10月〜12月分 |
| 炎立つ(壱〜伍) |
| 高橋克彦 |
| 講談社文庫 |
|
いわずと知れたNHK大河ドラマの原作だ。この作品は、 高橋克彦の東北蝦夷の三部作の一つだ。「火炎」、「炎立つ」 「天を衝く」なのだが、「火炎」は西暦800年ころの物語 で、「炎立つ」は1050年ころから鎌倉幕府ができる直前 までだ。蝦夷とはもともと出雲にいて、蘇我の勢力に敗れた 物部などの勢力が、東北に逃げた集団である。したがって、 蝦夷とはそのような勢力を指すとしている。 壱から参までは実に面白い、初代藤原経清と源頼義、源義 家の戦いなど飽きない。四はなかだるみだと思う。経清から 清衡まで少し時間が飛ぶ、まだ理解できるが、その後100 年ほど時間が飛んでしまう。再び白熱するのは、泰衡、義経 が登場してからである。 僕は昔から、なぜ平泉が栄えたのか理解できなかった。こ の作品を読んで初めて理解した次第だ。蝦夷とは天皇を中心 とする民族に敗れた民であって、天皇家の勢力の及ばない東 北だからこそ生き続け栄えることができたわけだ。伍巻の最 後で源頼朝が平泉の「武家政治」の仕組みについて感心する 件があるが、これは素晴らしい発想ではないか。これを知っ ただけでもこの作品を読んだ価値があると思う。四巻の中だ るみ以外に不満はない。 宮城、岩手、津軽の出身者の必読書である。 |
| 緋い記憶 |
| 高橋克彦 |
| 文春文庫 |
|
この本の主題は今一つ分からない。僕は元々世間の学生は どのような青春時代を過ごしたのかと興味があって、この本 を買ったのだがそれは間違っていたようだ。 |
| 火怨(上下) |
| 高橋克彦 |
| 講談社文庫 |
|
この本の主題は今一つ分からない。僕は元々世間の学生は どのような青春時代を過ごしたのかと興味があって、この本 を買ったのだがそれは間違っていたようだ。 |
| 横道世之介 |
| 吉田修一 |
| 毎日新聞社 |
|
この本の主題は今一つ分からない。僕は元々世間の学生は どのような青春時代を過ごしたのかと興味があって、この本 を買ったのだがそれは間違っていたようだ。 この本の主人公は、結局は写真家になったようだけど、そ の前歴はわからない。学生時代の話にしても、面白くはない。 この本は作者が有名でなければ売れない。結論は全く詰らな い、なぜ、日経の書評に載ったのか理解できない。 |
| 水神(上下) |
| 帚木蓬生 |
| 新潮社 |
|
なぜ、医学を志す人間がこの本を書くのかと思った。土木 屋が書くべきではないのか。あまたの土木屋がいながら何を しているのか。同業として恥ずかしい。 江戸時代に、福岡地方で水不足に苦しんでいた地方の庄屋 が結束して、筑後川から水を引く工事を行った話。こう書く と簡単だが非常に苦労した。感動巨編だと思う。 |
| 46年目の光 |
| ロバート・カーソン |
| NTT出版 |
|
3歳で失明して46歳で手術を受けて、目が見えるようにな った人に関する物語。 僕らは、今現在見えているので何も疑問がないのだが、実 は見るという行為は幼少期からの訓練が必要だと示されてい る。この訓練は大変に過酷だ、著者の人間性を含んで魅力的 な本になっている。 |
| ヤシガラ椀の外へ |
| ベネディクト・アンダーソン |
| NTT出版 |
|
ベネディクト・アンダーソンは社会学者である。なぜ、こ の本を選んだのか。amazonの書評ゆえである。この本の半分 までは楽しかったが、後半は、非常に専門的に読むをあきら めた。 |
| 世界でもっとも美しい10の科学実験 |
| ジョージ・ジョンソン |
| 日経BP社 |
|
正確には「もうひとつの『世界でもっとも美しい10の科学 実験』」というタイトルだそうだ。『世界でもっとも美しい 10の科学実験』とは物理学誌の読者投票で選んだ物理実験だ とか。この本は、著者が物理実験に加えて化学実験も加えた ものだ。 重要な実験というものは、確かめたい、実証したい事象が あるのだから、精魂こめて実験を組み立てているはずだ。だ からおのずと美しいのだと思う。しかし、この本を読んで思 うのは、理解が難しいということだ。大変な苦労をして実験 をやったことはわかるが、実験を考えた研究者と同じ思考な ど持てるはずがない。 「世界でもっとも美しい10の科学実験」であっても、説明 も「世界でもっとも美しい10の科学実験」であるとは限らな い。 |
| 北斎殺人事件 |
| 高橋克彦 |
| 講談社文庫 |
|
「北斎殺人事件」と「写楽殺人事件」のどちらができがい いかと問われれば、考え込まざるを得ない。どちらもできな いいのだ。「写楽殺人事件」は、江戸時代の圧政に対する住 民の反骨精神などが知れて楽しいが、北斎の方はミステリー の疑問が一点もない。ボストンと日本を結び、謎が徐々に解 き明かされるのだが、読者に疑問を抱かせるトリックがない。 実にうまくまた知的な作品だと思う。お勧めだ。 |
| 出世花 |
| 高田 郁 |
| 祥伝社文庫 |
|
なにが出世なのか良くわからないような気がするが、わか ったような気もする。寺で死体を洗う仕事に従事する娘が主 人公。この作品には料理は珍しく出てこない。作者の新しい 傾向の作品か。内容は面白い。が、料理本の方が面白い。 |
| 写楽殺人事件 |
| 高橋克彦 |
| 講談社文庫 |
|
この本は1986年に出されたものだが、僕が入手した時点で 41刷だ。大ベストセラーだと思う。高橋克彦は浮世絵の専 門家らしいが、浅学の身では知り得ない事実は次々と作中の 登場する。この作品では、写楽の秘密を追うのだが、その秘 密が明らかになると並行して、ミステリーが明らかになる。 ミステリーといいながら、浮世絵の勉強が出来る作品でどう して今まで手に取ることがなかったのかと反省している。 |
| 銀二貫 |
| 高田 郁 |
| 幻冬舎 |
|
高田郁の時代小説は江戸時代に題材を取っているが、当時 の地名、風俗を実に丹念に描いている。この作品は、寒天料 理に関するものだが、寒天の作り方から料理方法まで、調理 の専門家でも及ばないほどに書かれている。 もう一つの縦糸は、「銀二貫」だ。この銀二貫をめぐって 話が展開する。実に良くできた物語でお勧め。 |
| 忘れられない脳 |
| ジル・プライス、バート・デイビス |
| ランダムハウス講談社 |
|
この本は意外と面白かった。考えてみると僕らは、失敗し たとかの嫌な思い出をいつまでも覚えていない。この性格は 楽天的とか前向きと称される。いいことしか覚えていないの だ。 この本の作者は、8歳頃からの自分の人生のすべてのシー ンを覚えている。あなたが、本当に好きだった彼女に振られ たとしよう。その場面が一生鮮明に思い出される。あるいは、 仕事で失敗した場合、人は普通年とともに忘れるものだ。が、 この作者はいつでもさっきのことのように悔恨の情とともに 思い出すのだ。それは自分で制御できない。 この本は、本当にまれなことにそのような能力を持った女 性の苦悩を描いている。面白い。 |
| 実践行動経済学 |
| リチャード・セイラー+キャス・サンスティーン |
| 日経BP社 |
|
最近、行動経済学に興味がある。その思いをついたかのよ うな本で早速購入したが、2/3で挫折した。その2/3にしても 良く読んだと思う。後半は、学位論文にでもしたらいいよう な内容で楽しめなかった。翻訳が悪いわけではなく、もとも との内容が悪く、出版自体がミスだったと思う。 |
| 鼻 |
| 曽根圭介 |
| 角川ホラー文庫 |
|
この文庫に収められている「鼻」は日本推理作家協会賞短 編部門を受賞したそうだ。期待して読んだのだが、僕は正直 好きではない。おそらく、この作家の作品を自体を今後読ま ないと思う。 「鼻」の欠点は最近の作品に多い、結末の意外性を狙った 点にある。小説とは所詮娯楽なんだから気楽に頭に入ってく る必要があると思う。まさか紙に相関図を書きながら読む人 はいないだろう。 そういう点で、プロの評価は高いが僕は評価しない。僕が 評価したのは、暴落で、これは以前に同様のネタがあるよう だが素直に面白いと思う。 |
| ルポ資源大陸アフリカ |
| 白戸圭一 |
| 東洋経済新報社 |
|
白戸圭一は毎日新聞の記者だ。4年間ヨハネスブルグの駐 在員として滞在して帰国後にルポルタージュを書いた。自分 自身で4年間にわたって取材した結果なので迫力がある。 アフリカのどうしようもない貧困、については何冊か読ん だが、権力者の腐敗と教育制度の欠陥が問題だとする指摘が 多いと思う。この本は視点が違う。資源による国家収入とそ の基幹産業化がアフリカの貧困をもたらしていると主張する。 例えば、ナイジェリアは石油産業が基幹産業なのだが、政府 は石油に頼って石油産業を守るのに汲々としている。 国営石油企業に努める幹部社員は、若い給料の安い社員の 500倍の給料をもらっている。幹部社員がだ。このような経済 格差がアフリカの暴力を生みだしているとする。南アフリカ にしてもあれだけの経済力があって、いまだに治安が悪いよ うだ。 |
| だましゑ歌麿 |
| 高橋克彦 |
| 文春文庫 |
|
高橋克彦は浮世絵の専門家らしいな、ここまで詳しいとは 知らなかった。寛永の時代(1790年頃)の実在の人物群に主 人公を初めとする数名を登場させて、当時の世相を描いてい る。いずれも歴史上に名を残しているので、かなり表現に苦 しい場面もあると思うのだが、そういうことはなく、楽しめ る作品になっている。トリックはトリックだが、謎解きの楽 しさではなく、展開の楽しさで読ませる。 |
| クローズド・ノート |
| 雫井脩介 |
| 角川文庫 |
|
この作品はミステリー的な要素もあるが、恋愛小説だろう。 また質の高い恋愛小説だと思う。この作品には意外性はない。 最後に謎が解けるのだが、それも疑問はない。過去の雫井脩 介作品と違うのだ。最後は泣けてくる。また、主人公が文房 具やでアルバイトをしてペンを売るのだが、このペンの解説 には恐れ入った。問題なく推薦したい作品だ。 |
| 栄光一途 |
| 雫井脩介 |
| 幻冬舎文庫 |
|
この作品がデビュー作らしい。「白銀を踏み荒らせ」はア ルペンスキーの世界が話題だった。この作品は、柔道が話題 なのだが、柔道をやったことのない僕にはわからないが、作 中の試合中の描写は真に迫っている。スキーならば理解でき ないことはなかったのだが、それでも100km以上の速度で滑降 する、滑降の世界なんぞ無縁である。まずは、その迫真の描 写が見事だといっておこう。 さて、これも結末は意外だ。後半にはお目当ての人物が特 定できるような表現が多い。だからわかるのだが、最後の登 場するのは本当に意外な人物であって、なぜわからないかは その人物に言及した個所がないからだと思う。意外だなと思 う反面、ルールやぶりのような気もする。それでも面白いの は、登場人物によるし、人物表現も面白いからだろう。 |
| 虚貌(上下) |
| 雫井脩介 |
| 幻冬舎文庫 |
|
この読後感を書く段階で「雫井脩介」の作品群は読了した。 その結果、彼の書くミステリーはおそらく結末の意外性を一 番重視しているのではないかと感じた。そのために、トリッ クに甘い面が生じる。参考文献をきちんと示して、いちいち 勉強して書いている様子がうかがえるのは興味深い。 本を読んでいない方がいるだろうからルール通り詳しくは 書かない。芸能界に絡んだ話題なのだろうか。仲間に騙され て主犯となった犯人が仮出所して、昔の仲間に復讐するよう に見える。そこまでは誰でもわかる。そこから先は最後まで わからない。なぜわからないかは、トリックに秘密があると 思う。雫井脩介作品の唯一の欠点だろう。 |
| 終末のフール |
| 伊坂幸太郎 |
| 集英社文庫 |
|
もしも地球が後8年で週末を迎えるとしたら、どう生きる ということをテーマにした小説だ。8年前に小惑星が、8年 後に地球に衝突することになった。それから地球、わが国は 大混乱した。そして5年たって住民もやっと落ち着いてきた。 お馴染みの仙台郊外の団地に住む住民の姿を描く。8人ある いは8家族はどう生きるのか、生きたのか。僕はこういうSF ものは好きではないが、それぞれも人生を描くのは好きだ。 |
| 白銀を踏み荒らせ |
| 雫井脩介 |
| 幻冬舎文庫 |
|
雫井脩介の作品は弱小の出版社からしか発売されていない、 本屋で探すのに苦労する。前2作がいたく気に入って名古屋 のた高島屋で買ったものだ。アルペンスキー界に話題をとり、 滑降競技で転倒して死んだ、有望日本選手の疑惑を追う。追 うのは雫井作品でお馴染みの二人の若い女性だが、その片方 の活躍がいささかドタバタで、作品の格調を下げているとい う指摘もあるようだが、その女性が解決のヒントをもたらす のだ。われわれの知らない世界をミステリーの舞台にするの は面白い。 |
| 犯人に告ぐ |
| 雫井脩介 |
| 双葉社 |
|
この小説は、小泉元首相の劇場型政治にヒントを得たのだ ろうか。テレビ番組を通じて、犯人と思わしき人物とメッセ ージの交換をするのだが、どう考えても手掛かりが得られそ うにない。(下巻)も残りが少なくなって、やっとそのヒン トが得られて驚いた。巧みだと思う。雫井脩介のストーリー はすごいと思った。この作品にしても、参考文献をすべて公 開しているが、雫井脩介の専門分野、得意分野などではなく、 すべて勉強したことをうかがわせている。ミステリーはスト ーリーと結末で決まるのだろう。しかし、確かに文章力もあ る。 |
| 行方不明者 |
| 折原一 |
| 文春文庫 |
|
折原一(おりはらいち)の作品は、「天井男の奇想」に続 いて2冊目だった。この作品を読んで、「できないい」と思 ったのに、雫井脩介の作品を読み始めると、面白いことに 「行方不明者」の内容は忘れてしまった。 |
| 無名 |
| 沢木耕太郎 |
| 幻冬舎文庫 |
|
沢木耕太郎の父親の死を追った記録だ。世間的に名を成し た人間ではないごく普通の人物の死が、沢木の手にかかると 物語になるという見本だろう。沢木が有名であるがゆえの物 語だと思う。 |
| クレイジーヘブン |
| 垣根涼介 |
| 幻冬舎文庫 |
|
垣根涼介の書く小説の主人公は若くて何の権力も力も持た ないが、例外なくときどき狂気を感じさせる暴力を振るう。 そしてアブノーマルなセックスに走る。読みながら、読んで いる自分も転落していく恐怖を感じる。経験したことのない 無法行為に読みながら興奮する、緊張する。 |
| 火の粉 |
| 雫井脩介 |
| 幻冬舎文庫 |
|
なぜ、「火の粉」を手にしたのか覚えていない。作者「雫 井脩介」の作品を読むのは初めてなのだが、ストーリーの巧 みさ、内容の不気味さに魅かれてしまった。文章もうまい。 主人公は殺人の裁判で無罪判決を言い渡した裁判官だ。この 裁判官をめぐって身辺でさまざまな物語が展開する。無罪に なった容疑者の犯罪が徐々に明らかになる。その展開が面白 い。ミステリーなのだが、嫁と姑、小姑の関係なども良く書 かれている。介護の現実も書かれている。この作者は、巻末 に参考文献を全部挙げているが、それを見たら、すべて自分 で勉強して書き込んでいることがわかって非常に感心した。 それを公開していることにも好感を持った。 |
| セカンドライフ |
| 藤田宜永 |
| 角川文庫 |
|
藤田宜永の小説を読んだことはほとんどない、得意分野は 恋愛小説らしい。「幸せを売る男」の改題。主人公は57歳 で元大手建設会社の耐震を研究していた男だが、会社をリス トラされた。たまたまリストラ直前に妻に離婚を申し出られ、 離婚することになった。 リストラされて離婚してむ向島に一人で暮らし始めると妙 にもてる。言い始めたら切りがないが、この辺の設定に無理 がないとはいえない。30代前半の未婚女性二人といい仲に なる。それをきっかけに味のある中年になる。もとの妻に会 うと「今のあなたなら離婚しない」とまでいわれる。 この小説は、「中年男性への応援歌」とあるが、処方箋か も知れない。今の自分でも磨けば、若い女性にも人気が出る と。人気が出るだけじゃ仕方がないが。中年男性のあなたは、 一度読んでもいいだろう。 |
| 血涙(上下) |
| 北方健三 |
| PHP文庫 |
|
北方謙三の「楊家将」の続編の位置づけ。僕は「楊家将」 は読んでいない。「楊家将」で再起不能なまでに敗れた 「楊家」が再興し、争うのは耶律休哥(やりつきゅうか)軍 で、そこに石幻果(せきげんか)が加わったが、石幻果は先 の戦で亡くなった思われた楊家の一員だった。 |
| 八朔の雪 |
| 高田郁 |
| 角川春樹事務所 |
|
八朔というのは八月朔日で要は旧暦で8月1日のことです ね。八朔に吉原の遊女が「白無垢」で客を迎えるんだそうで す。それを八朔の雪、という。なんとも美しい日本語だと思 う。高田郁(たかだかおる)は最近知りました。他の本を買 おうと思ったら、amazonでもなかなか入荷しないのでキャン セルした。ただ、この本も面白いです。日本語はきれいだし、 副題が「みをつくし料理帖」なんだけど、料理の内容がこれ またしっかりしている。何度か書いたけど、単に舞台を江戸 に移しただけじゃ駄目だと思う。この作品のように、料理も 言葉も風俗もきちんと書くというのは至難であって、現代文 学の方が楽だと思う。お勧めです。 |
| 終の住処 |
| 磯崎憲一郎 |
| 新潮社 |
|
最近まれになった純文学らしい純文学ですね、私小説とい うか。好きな人は好きだろうけど僕は好きじゃない、と思い ながら読んだ。 |
| 他に誰がいる |
| 朝倉かすみ |
| 光文社 |
|
女が女に一目ぼれする小説だが、一目ぼれしたあまりに自 分を精神的、肉体的に追いこんでしまう。宗教の場合にはあ りそうな、惚れ込みを同性にささげる。途中で、読むのが嫌 になるほど、惚れている。作品的には完結しているが、ちょ っと気になるのは、主人公の行動と主人公の家族、友人たち の関係だ。特に主人公と家族、対象の女性とその家族の関係 が希薄であって、この小説は周囲から二人の関係だけを切り 取って成立している。だからこそ、ここまで恐ろしい破滅に 向かうのだろう。 |
| 田村はまだか |
| 朝倉かすみ |
| 光文社 |
|
北海道生まれで札幌市で生活している作家らしい。当年、 49才だろうか。この作品は、2009年の吉川英治文学新人賞を 受賞したものだ。表題他で6作の連作となっている。小学校の 同級生が開店して年目のバーに流れてくる。三次会だ。来る 予定の田村が来ない。連作の各編はメンバーの小学校から今 までの人生を語るのだ。その各編で「ところで、田村はまだ か」と叫ぶ。この連絡の落ちは、「話は明日にしてくれない か」にあるのだが、詳しくは書かない。これがあるので、傑 作となっているのだろう。 |
| ゼロの王国 |
| 鹿島田真希 |
| 講談社 |
|
今年の4月に出版されてまだ第一刷だった。この作品は、 日経新聞の書評で見た。非常に変わった小説で主人公の饒舌 が長々と続くが一気に読める、とあった。最初から主人公の 饒舌が続くのは確かだが、一気に読めるというのは嘘だろう。 やっと半分ほど読んだのだが、この分厚い本の残りの半分を 読むを放棄しようかと考えている。なぜなら先が見えないし、 読者を引き込むほどのストーリーでもないし、好奇心を持た せるわけでもないのだ。新聞の書評に絶対的な信頼を置いて いるわけでないし、書評子によって好みは違うだろう。でも、 この例は、読者を考えない書評子がいるという好例だと思う。 途中で読むを辞める本は年に3冊もない。そうそう内容はゼ ロなのだ、基本的には最終的に無になる会話を数人で延々と 続けるのだ。 |
| ひまわりの祝祭 |
| 藤原伊織 |
| 講談社文庫 |
|
9年間で18刷売っているんだがなるほどと思う。現在の わが国で銃砲等がどの程度自由に手に入るかは知らないが、 藤原伊織の小説では入手に事欠かない。この小説の主人公は 甘党だが、やはり自堕落な生活を送っている、優秀だが自堕 落だ。自堕落になる理由は毎回変わるがある程度は納得でき る。小説だもの。 ハードボイルドだからなのか必ず暴力、バイオレンスが入 る。それもいいだろう、そちらが真実かも知れない。だけど 読むのは読ませる力があるからだろう。藤原伊織の文章は美 しい。読者を引き込む力がある。この文庫で彼の作品は全部 読んだことになるが、亡くなったのは誠に惜しいと思う。 |
| 向日葵の咲かない夏 |
| 道尾秀介 |
| 新潮文庫 |
|
例えば、藤原伊織の文章を読んでからこの作家の文章を目 にしたら呆れるくらいに稚拙な文章だと思える。ここ数年、 賞を取った若い作家には、同様の傾向がある。だから、次作 が出てこない。この作家は文章は下手だが、アイディアは持 っているようだ。しかし、この幻想的なストーリーは僕は好 きではない。江戸時代に背景を取って、それに怪奇物にする などという作家だと同じだと思う。 最後まで読んでそれなりに楽しんだけど、上に書いたよう な不満が残ったし、もう手に取ることもないだろうと思う。 一作だけなら経験してもいいかなと思う。 |
| インド特急便! |
| ダニエル・ラク |
| 光文社 |
|
日経新聞の書評で見てamazonのマーケットプレイスで購入 した。1990年代以降のインドについて分析しているので、早 かれ遅かれ内容的には古くなるだろう。BRICSの一員であるイ ンドの成長の源泉はどこになるのか、ということだ。インド がかつて英国の植民地であって、そのために英語が普及した。 それが皮肉にも成長に一役買っているのは疑いのない事実な のだ。では、カースト制度はどうなのか。現代のインドで活 躍しているエリートの大きな部分はバラモンの出身だそうだ。 これはわが国でいえば、武士階級が頑張っているようなもの で要は精神性が高いのだろう。つまりは、カーストも成長に 貢献したということだろう。カーストについては、まだまだ 先を見なければならない。この本はわれわれの知らないイン ドを教えてくれる。 |
| コーヒーの鬼がゆく |
| 嶋中労 |
| 中央公論新社 |
|
吉祥寺「もか」店主・標交紀(しめぎゆきとし)の生涯を 嶋中労が綴る。標交紀の人生を語りながら、コーヒー豆につ いての知識、コーヒーの入れ方を語る。僕もコーヒー好きで 高校時代から浪人中にかけては自分でドリップ式コーヒーで 入れていた。それからはずっとペーパーを使っている。世の 中の喫茶店で飲むコーヒーのほとんどには満足していない。 うまいコーヒーは飲んでなくてもまずいコーヒーはわかる。 コーヒーにかけた珍しい人生も読んでいて面白いが、どう いうコーヒーが旨いかもわかった。標交紀の人生は、誰でも ができることではないが、理想的なうらやましい人生を語っ ていると思う。 |
| シリウスの道(上下) |
| 藤原伊織 |
| 文春文庫 |
|
「蚊トンボ白髭の冒険」と比べたらまともな作品で、こち らは版を重ねている。読者は正直なのだ。この作品は電通を 思わせる広告会社の企業小説となっていて、実態を知らない ものには面白い。男女の会話も気が利いている。いつもいつ も僕のような凡人が気になるのは、主人公の無鉄砲さだ。限 界を超えさせることで、共感を呼ぼうというのか。 藤原伊織の年齢からいっても、この作品も僕らの子供時代 を引きずるものだと思う。読みながら自分の子供時代を思い 浮かべてしまった。みな同時代の作家を読むのだろうか。そ こに自分の過去を見るのだろうか。 |
| 仮の水 | リービ英雄 | 講談社
|
| リービ英雄は1950年生まれだというから僕と同世代とい うことになる。16歳から日本に住んでいる。50代のリービ 英雄が中国本土の奥地に歩いた記録。中国の内陸では「外 人」は目立つらしい。まだわれわれも知らない中国の姿が 私小説風に書かれている。 |

![]() | お問い合わせはこちらまで |