合気勁Tに関する考察 Vol.1


上&右下 引用写真:「月刊秘伝」2000/4月号掲載(BABジャパン)



合気勁Tとは・・・?

小生の見つけた合気勁Tという技術は、まず三種に分類できる。
即ち小手の合気勁・胸の合気勁・体の合気勁である。
この三つの技術は、相手の体内にある種の歪みを起こす事により、その重心を操作する技法であるといえる。また、この歪みは相手の力の出所への干渉も可能で、相手の力の連携を阻止して上手く働かせないようにするコントロールも可能である。

◆ 小手の合気勁とは、いわゆる合気上げで使われる技術であり自己の腕より相手に直接歪みを送り込む。

◆ 胸の合気勁とは、合気勁の収束率を上げるものであり相手の歪みを下方に下げる効果がある。

◆ 体の合気勁とは、腕を媒介とせず直接ボディより相手に働きかけるものである。

この技術の発見習得については、小生達の学ぶ中国拳法の観念的思想が強く影響しており、その思想とは、人体の構成の大部分を水(液体)として捉えるものである。
具体的に述べると、人体とは皮膚という皮袋の内側に、液体に浸った骨が漂っているというような考え方である。
この体液中の骨というものは、ゆらゆらと絶えず重力や慣性の力により揺れ動いていると考える事ができ、この揺れに対しての修正は、その殆どが脳内の無意識領域に任されていると考えられる。逆にそれは、表層意識における認知がしづらいという事でもある。
通常の崩しとは、この相手の体表面の筋肉とその内部を分ける事無く掛けるものであり、掛けられた本人にも自分の状況を判断する事が可能である。
ただ、伸筋系の力とボディーの力(重さ)を上手く伝達した場合(後述の雑力の無い力)より大きな力が発揮できる為、相手が想像以上に崩されるという事はある。

ちなみに、最近合気の技術として紹介されている方々は、こちらの力が多いのではないかと個人的には思う。(2000年当時)
余談ついでに、こういった合気に近い技術として中国拳法の化勁の存在が上げられる。
化勁とは、一般的に中国拳法で使う受けの技術の総称でありであり、小さな力で相手を化する技法群である。小生も合気上げを行う時に、太極拳などの技術で相手を一旦引き崩して発勁を用いれば現象的にはよく似た事が起こすことが可能である。
さて、話を戻して合気勁とは、こういった力の類とはまったく異なるものである。また、中国拳法の化勁とも異なるといえる。
この合気勁とは、あくまで相手の骨格に気付かれぬように歪みをかける技術であり、非常に微妙な操法を行なう必要があるため、上手く掛けないと相手の筋肉群に察知されてしまう事になり、その時は無効となってしまう。(相手に自分が崩されようとしている」という認識が生まれる)
合気勁Tの発見において大いに役立ったのは、相手の反応を探る技術として存在する「聴勁」という中国拳法の技術であった。聴勁は相手の体内の動きを察知したり、反射や反応に対して皮膚感覚の鋭敏化により察する技術であり、高性能な人体レーダーシステムと考えることができる。
この聴勁は中国拳法において、「塔手と呼ばれる状態での攻防や有名な太極拳の「推手」などから習得していく。

「崩し」と「基底面」の概念

さて、みなさんは「基底面」と言う存在をご存知であろうか?
「月刊 秘伝」の2000年9月号で紹介されたのだが、小生はこれをネットで知り合うことのできた合気道家HN:どんべい氏よりお聞きする機会を得た。
このどんべい氏より、詳しいコメントを頂いているのでここに引用したいと思う。

『 (基底面は)両足の親指と親指、踵と踵を線で結んだ4角形の面を指します。(中略) リハビリテーションで使う運動学での重心の取り方の考え方です。 
お年寄りなど基底面の中に重心を納めながらどのように立ち上がらせるかなどのようなものに使うものです。さて、基底面は先に書きましたように、”両足の親指どうし、小指どうしをむすんだ四角形が基底面となります。
人間の重心は人間の腰の位置にあります。ここから、地面に対して垂線を下ろしていきます。基底面の中に点が表れます。この点が基底面の中にあれば重心を保つことができます。
当たり前のことなのですが、歩幅を狭めると基底面が狭くなります、おまけに重心の位置は高くなるのでバランスを崩しやすくなります。(HN.どんべい氏) 』

つまりこの足底で描かれる四角形の基底面より重心の垂線が外れると、人は外れた方向に足を踏み出すなどの補正動作を必要とするわけである。
当然本来的には、人はこの基底面からのずれを絶えず自動補正しており、通常立っていても転倒する事はないし、また安易にバランスを崩そうとしても自然に修復動作を行う。
だが、もし仮にこの基底面が知らぬ間にバランスを崩すラインギリギリのところに固定されていたとしたらどうであろうか?
この時の崩されている相手は、ほんの僅かな力で大きく崩れるというようないわば限界値に居る事になるのである。
合気勁Tは、この基底面に強く働き掛けるものであり、その方法は前出した通り相手の体内の骨格を操作して気付かれぬ程度の歪みを形成し、基底面をその枠ぎりぎりのラインに持っていく技法といって良いであろう。
この骨格の歪みを受けた者は、こちらの接触部に知らぬ間にぶら下がるような形(重心配分)となり、「雑力の無い力(後述)」による崩しの最中はこちらの手を外す事が即自分の転倒、またはより不利な体勢への形成に繋がる為、手を離すという行為が本能的(生理的)に行い難くなる。

小生のところでは、この状態を相手と自分の間に「アーチを掛ける」と表現している。

参考技:体の合気勁

秘伝誌9月号で「妖怪子泣き爺」が紹介されたが、合気勁は「合気上げ」オンリーの技術ではない。
もし、仮にそうであるなら、拳法家の小生はさして興味を持たなかっただろう。
下の「首取りの合気勁」は、体の合気勁の応用である。合気勁が掛かると、相手はまずこちらの首を締める力が上手く入らなくなる。
その後、合気勁Uで力を逆流させてふっとばす。
ちなみに、中国拳法の硬気功でも首を締められて耐えることができるが、このように前に出ると通常相手は後ろへ下がってしまう。



合気勁Tの考察Vol.2

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