八卦掌基本功 No.1

TanTan的「八卦掌簡介」


数ある中国拳法の中において、この日本における紹介が一番不可思議に伝わった拳法こそ、この八卦掌であろう。
その是非は別として、小生が始めてその名前を目にしたのが、やはり松田隆智氏の著作である「中国拳法入門(新星出版社)」内に設けられたコラムであった。当時小生の記憶に強く残っているのは、そのコラムの文章ではなく、松田氏の演じる一枚の八卦掌の写真であった。そこに掲載されていた写真は、多分台湾武壇系に伝わる伊福派の「翻身掌」を演じている1カットだと思うのだが、松田氏が独特に身をひねった姿勢は、その時の小生にとって充分不可思議で魅力的であった。

さてその後、あの中国拳法を志す者のほとんどが手にしたことのあると言われるほど有名な、「謎の拳法を求めて(東京新聞出版局)」/松田隆智著の中で紹介されている八卦掌の項に接することとなる。
この書籍の中で紹介されている沢山の武術の中でも、やはり小生の気を惹いた八卦掌であるが、そこでの紹介には「千変万化」という言葉が入っており、元々人の意表を突くことが生来好きな性格ゆえ、必ずこの拳法を将来学びたいという欲望に強く取り付かれることとなる。(笑)

ちなみに余談になるが、この書籍で紹介されていた八極拳には、小生はまったくと言ってよいほど興味を抱かなかった。
これはやはり多分に性格的な面が多く影響しているのであろうが、現在においてもこの八極拳は自分にあまり向いていない様に感じる。ついでに言うと、九星会で教練(コーチ)役をしてくれているK田クンは、性格上この剛法磊落な拳法が非常に合っているようである。彼にとっては、ひねったり捻じったりと螺旋をいつも意識していなければならない八卦掌などは、反対に身体が戸惑うそうである。
もっとも、小生も八極拳を学習することにより、大きな威力の習得と共に優れた戦闘思想にも気が付くことができたのは確かである。

さて、その後小生は自分の武壇系の師匠に当たる方が八卦掌をあまり学ばれていなかったこともあり、武壇系八卦掌の正式学習というものは現在に至るもしていない。
正確に言えば、「拝師」もしていないので、あくまで小生は武壇系の外様であり、堂々亜流であることをここに申し上げておく。
ただここで述べておきたいのだが、日本の中国拳法学習者は「本物」という言葉に弱すぎるように思う。自分が学んだ拳法の基本すらろくにできない状態の者が、将来の保証に「本物」をやっているからといって、その上にすっかり安心してあぐらをかいてしまうのはどこかおかしい気がする。また「本物」を学ぶ機会があれば、当然それを活かすべきではあるが、それにとらわれることにより、「三年掛かって良師を探す」間に何の基礎体力の養成すらしない様では、この道は不向きであると言わざるを得ない。
あくまで私見であるが、拳法とは自分を確立するための道であり、少しでも学び、そこから得るものがあれば、自分で進歩発展させていくことこそが「秘伝」や「奥義」に通じるのではないだろうか?

何から何まで習った秘伝では、自分の師匠が衰えない限り師に勝つ事はできまい。

尚、これは自己流我流を推奨するものではない。問題は「使えるか、使えないか」であることを忘れてはいけない。







*資料
「謎の拳法を求めて」東京新聞出版局
松田隆智著/¥950
昭和50年7月初版

謎の中国拳法「迷踪芸」を求めて、昭和の武術界を
彷徨する著者の自伝。

小生は先達て、この著者が捜し求めていた「迷踪芸」
そのもである上海精武会に伝わった「霍氏練拳」を、
ネットで知り合った方より御厚意で見学させて頂き触
りだけであるが、数動作を学ぶことができた。
小生の学習してきた台湾武壇系などとは大幅に異な
る独特の雰囲気があり、その套路構成は非常に素晴
らしいものであることを感じた。





八卦掌歩法(定式)

「扣歩」は、両足の爪先を内側に向けて「八」の字になるようにする。両脚には、内側に向かう螺旋勁が充満しており、足底の摩擦が減少すれば一気にどちらかの足が外側に弾き出され、次に紹介する擺歩に変化できるような状態でもある。
この陰陽の反発するベクトルは八卦掌の大抵の姿勢に内在されており、この弾けるような独特の勁力を理解できれば、八極拳などとは異なる威力のある打撃も身に付くこととなる。





「擺歩」は、扣歩より進行方向の足先を外側に開いた状態になる。これは、扣歩によって溜められていた螺旋勁の開放であり、その勁力は開いている途上が一番強大となり、開ききった状態は今度は反対側の蓄勁となっている事に注目!
通常は踵を中心点として、爪先を軽く浮かべた形で足底を回転させる。ただ、暗脚などの一種の脚歩として使用する時には、空中で一瞬に旋回させることもある。後脚は扣歩の時の纏絲勁の力を維持して、前脚との陰陽のバランスに注意しつつ開放して、歩を進め再び扣歩となる。





*走圏について

この他の定式の歩法には、丁字歩や反丁字歩等が存在するが、これは扣歩と擺歩の角度を変えたバリエーョンといえる。
この定式の連続として、いわゆる八卦掌の看板でもある「走圏」が行われる。
当然「平起平落」と呼ばれる、足底を僅かに持ち上げて地面を移動させていく歩法であり、ショウ泥歩とはぬかるみを足を引き抜きながら歩く訳ではなく、足を抜かずに泥の中を移動させるようにイメージする。ちなみに中国拳法の意念の運用法として、水中の中で強い抵抗を受けながら套路を演じるというイメージを持ちつつ行う錬法があるが、これなどもショウ泥歩と同じ事であり、大きな抵抗の中を体を移動させるイメージが皮膚感覚の鋭敏化や、細かい筋肉群へのコントロールにつながっていくのである。

さて、この様な意念の練習を行いながら通常八卦掌は八歩で一周する円周上を廻る。これは東西南北(四正)に、さらに四つの方位(四隅)を加えた易の八卦の影響から決まった数字だと考えられる。武術的には、この「8」という数字に特に意味はないのかもしれないが、気功などのトレーニングも兼ねるようになるとやはり無視できない数である。(ただし、これに付いては本ページでは触れない)
八卦掌の走圏には、八歩で一周する走圏の他に三歩や四歩といったより小さい円を廻る練習も行われる。
戦闘技術や体能のアップには、この円周を縮めた練功法は欠かすことができない。なお、集団で八卦掌を練習する時に皆で一つの大きな円を作ることがあるが、あれは特に武術的効果がある訳ではない。(ただし、一人で練習する時には円のサイズを変えることは非常に重要な意味を持つ)

この他に八卦掌では、自然歩と呼ばれる普通の人の歩き方のまま円周上を廻ったり、「鶏形歩」「鶴形歩」といった足を鳥類が歩く時のように一旦大きく持ち上げてから降ろす歩法が存在する。この歩き方には、平起平落と踵から降ろす二つがそれぞれにある。
武術的な錬功の意味もあるが、単純に足場の悪い所においての戦闘にも応用できる。

時々、地面を擦るように歩く平起平落のショウ泥歩では、足場が悪いと闘えないとの心配をされる方がいるが、誠に杞憂である。


八卦掌 No.2

TanTan館