ある日「月刊 秘伝」がやって来た!


2000年4月号(BAB出版)


これまで「取材をされる」ということは、ある意味一方通行的な行為であった。しかし、このようにネットが発達した現在、個人が情報の発信局となりうるのであり、取材された側の声というのも、こういった形で発信可能だ。
これは非常に楽しいことである!通常の誌面では多分載ることの無い、「取材される側の過程」を今回綴ってみようと思う。




最初は・・・・・

小生が世に出たきっかけは、ニフティーサーブという所のパソコン通信からであった。ここへの入会は、Win95が発売された翌年の夏であったと記憶しているが、すでに当時の記憶は定かではなくなってきている。
また、この時初めて通信におけるニフティーの武道フォーラムの情報に触れたのだが、さして興味を惹かれることはなかったし、また自分から書き込むようなこともしなかった。

さて時が経ち、訳あって師匠の下を離門した小生は、一緒に師匠の下から離れたK田クンと心いくまで自分達の考えていた形の練習を開始した。
また、当時「名古屋中国拳法倶楽部」を名乗っていたのだが、創設者のS田氏の意向で区切りよく一旦ここで会を解散して、新たに「新名古屋中国拳法倶楽部」を名乗ることとした。当時の練習会は、誰でも無料で参加できたのだが、その分指導よりも自分達の練習をメインにおいており、他のメンバーには誠に申し訳ないが、我々にとっては恰好の練習材料でもあった。

会名を「新名古屋中国拳法倶楽部」に移してからしばらく経ったある日、定例練習で「合気上げ」を女性のメンバーに指導している過程において「合気勁」という技術に小生は気が付くこととなったのである。

いま思い起こせば、自分の進歩発展は、この技術の発見から全てが始まったといっても過言ではない。
それ迄は週一回だった練習を、K田クンと相談して二回に増やすことにし、自分達の疑問に思うことを納得の行くまで練習するといったことを更に繰り返すようになった。と同時に、小生はこういった技術を習得されている方に今後の練習の方向性のアドバイスを頂きたいと思うようになり、久し振りにニフティーにアクセスし合気道系の「会議室」に質問をぶつけることにしたのである。
この時の小生の質問をきっかけに、ここで何人かの合気道系の友人を得ることができたことは非常に嬉しいことであった。しかし、誠に残念ながらここで技術のアドバイスを頂く事はできず、中には不愉快な返答もあったりしてこの会議室への書き込みをやめることにした。

突然のメール

ニフティーの会議室で「合気の定義」の満足の行く回答を得られなかった小生は、質問の場をインターネットに移すことにした。
こちらならば、ニフティーよりも沢山の人々が注目しているかもしれないという思い、適当な質問の場を探していると・・・・・そう、あの「座取り合気上げの掲示板(旧)」を見つけたのである。早速過去ロゴを拝見して、参加されている方々のその取り組み方の真面目さなどが気に入り、ここに決めて質問を発信することにした。。
このプロセスについては、現在も「座取り〜」の過去ログとして残っおり、また当「TanTan館」にも一部転載してあるのでどうぞご参照あれ。

さて、最初は「座取り〜」でもアドバイスを待っていたのだが、やはり期待通りのアドバイスを中々得ることがでなかった。
また、武術は武術でも分野違いの中国拳法家ということで、警戒されてしまったのかもしれない。(泣)しかたなく小生は、日々進行していく合気勁の「出来たこと」を書くことにより、それに応答してくれる方々から、色々な情報を聞き出す作戦に変更した。
ここでの会話により、それ迄よりも、より幅広い方々と知り合えるようになり、この時よりネットの掲示板を覗くのが日課となっていった。
そして1999年終了。

開けて2000年2月に、事象は突然動いた。小生のもとに、一通のメールが舞い込んだのである。
差出人はBABジャパン「秘伝」編集部のS副編集長から・・・・・その内容は「一度合気勁を取材したい」という趣旨が、実に簡潔に書いてあった。
最初に受け取ってこれを読んだ感想は、「おいおい!おいらなんかで良いのかい!?」であった。(笑)
当時の小生は自分のHPも持っておらず、丁度これまでの文字通信上(掲示板)における技術解説の限界を感じ始めていた。また、自分のこれまで掲示板で発言してきたきたことに責任を持つためにも、これは証明するよい機会到来と考えたのである。

当然返信のメールは「OK!」と書き送ることとなった。

TanTan困る!

数日後、編集部のSさんよりより自宅へ電話連絡が入り、「是非一度合気上げを体験したい」と切り出された。
正直これには困まってしまった!!
なぜかというと、当時の「小手の合気勁」は、掛かった本人に容易にその技術が取れるものだったからである。
せっかくK田クンと2人で開発してきたものが、あっさり雑誌で公開されたのではあまりにも面白くない。
一瞬返答に詰まった小生は、「合気上げそのものを掛けるのは嫌だが、もっと高度な技術である体の合気勁なら、いくらでも掛けますよ」と電話口で返事をすると、しばし相手のSさんが今度は沈黙・・・・・。

内心、「これは合気勁の真偽を疑われたかな?」 と思った。

しかし、それでもめげないところはさすが編集人。
電話口から思考を巡らす気配が数瞬して、「やはり一度名古屋に伺いたいです」とはっきりと言われ、こちらも「それなら一度、合気上げの体験も検討しておく」と返答したのであった。

さあ、それからが大変!
雑誌社から取材の依頼が入ったのは、「実演」を示せる良い機会なので喜ばしいことなのだが、せっかく見つけた技術を全国にばらまくのは、武術家として自分の首を絞めるようなもの・・・・・この矛盾を解決するには、小手の合気勁の掛け方を変える必要に迫られてしまったのである。
取材は、締め切りが迫っているとの事で、小生達にとっての猶予は一週間しか無い状況であった。
そして、こちらも取材に向けて、合気勁の感覚を磨くと共にK田クンと文字通り特訓に入ったのである。

「秘伝」が来た !!

2000年2月11日・・・・・東京からやって来られた編集部のSさんは、大きな荷物を抱えて、にこやかに待ち合わせ場所に立っておられた。
九星会が定例の練習に使っていた露橋スポーツセンターから、一番最寄りの駅へ愛車デリカSGでお迎えに上がった小生は、車を降りると早速右手を差し出した。
「こんにちは!遠い所ご苦労様です」
「TanTanさんですか?」
「はいはい!」
そして二人でしっかりシェークハンド。
Sさんは、編集者!といった雰囲気がとっても板に付いた感じで、第一印象から小生は好感を持った。ちなみに小生は地元の出版社で数年働いて、情報誌を作っていた経験があるので、早速出版社の仕事の苦労で語り合い盛り上がることとなった。(笑)

道場には、門弟のK田クン&K島クンが既に入っていて、いよいよ取材の準備を始める。
小生はおしゃべりな方なので、Sさんにああだこうだと途切れることなく話しかけていて、ふっと思いついて道場の畳に観客席から降りようとしていたK田クンを呼び停め、立ったままで数技合気上げの実演・・・・・そしていきなり、「Sさん握ってみますか?」とK田クンの腕を指差した。
Sさんが一瞬「良いんですか?」といったような表情をされる。
そして、覚悟を決めたようにK田クンの腕を掴みまれた・・・・・瞬間、「どかん!」といった感じでSさんの身体が後方に持っていかれる。
Sさんの目が見開かれて、その表情が「驚き」に変わった。(あくまで主観ね!)

柔らかく&力を抜いても・・・

Sさんの取材の仕方は、「まずは体験をされてから」といった感じで、色々な合気勁から生まれた技術を体験頂くこととなった。
また、門弟に「やらせ」が無いことを分かって頂くために、逆にこちらから合気上げで押さえる形をして、十分色々な形での「上げ」を相手側が阻止できるというところも見て頂いた。
そんな中でSさんが拘られた技が、合気上げにおいて軽く持つ相手にもちゃんと技が掛かるか?というところであった。。
通常の大東流などでは、基本的に相手がこちらに敵意を持って押え込む、といった仮定をするため、こういったシチュエーションに対応している所が少なく、Sさん自身こういった技で納得のいく状況に遭ったのは僅かとのこと。

さて、ここで持論を少し展開しよう。
まったく敵意もなく、むしろこちらを怖がっているような人には、「合気勁の考察」の把式房に書いた通り「指のロック(柔術)」が有効である。
しかし、こちらに対して攻撃する気持ちを持っていなくても、挑戦心を若干でも持っていると合気勁は掛かりやすくなるのである。人というのは不思議なもので、どうしても気分が技(運動)に出てしまう。
ちなみに、小生は敵意の弱い人に対して、よくその人の胸の表面をピシャ!ピシャ!と掌で数度叩くことをする。これをすると、相手は理不尽な痛みに対して「怒り」を覚えるので、無意識に攻撃心を燃やすこととなるのである。合気勁や化勁のように相手の力を逆用する技術は、この方が掛け易くなる。

さて、Sさんご依頼のこの「軽く掴む」状態で小生は、「秘伝」2000年三月号に掲載された通り、Sさんを「市中引き回し」の技で引張り倒した(掲載写真はK田クン)。
後日この技に付いて、「秘伝」編集部内でも一旦相手の方へ手を押して、それを引き戻して崩す「化勁」に近い技術ではないか?と推測されたようなので、その後にお会いした時には、はっきり技術が違うことをご確認頂いた。ちなみに、「クラブマガ講習会」に来られた「秘伝」のライターのAさんにも、この軽く掴んだ状態での引き回しをご体験頂いた。
もちろん通常に合気上げも掛けたし、また指のロックによる合気上げも解説した。また、タイミングを上手く取るとテクニックをあまり使わなくても相手を上げることが出来るといった部分も、それなりに共感頂いたようで嬉しい限りである。


BABジャパン/「秘伝」2000/4月号


TanTan館