化勁の深化 2


化勁による攻撃

小生がK田クンと八極拳の大纏を交互に掛け合う練習していた時の事である。
この大纏の対打練習で、ある種の具体的な意念を乗せて掛けると、その掛かりに相当の差違ができる事を掴んだばかりの頃のことであった。
その日の定例練習後、屋外におけるミッドナイト公園において、K田クンが「身体の内に右胸から腰の裏側に向けて、何か捻じったような威力が残っている」と言い出したのだ。
もともと中国拳法の打撃には、浸透勁という打法を用いるので、威力の残存感というのは失手や試し打ち後に頻繁にあったりするのだが、この時の大纏は、相手を打つことなく崩す事を重視しており、発勁や寸勁は一切用いていなかった。

一体何がK田クンの身体にそのような威力を残したのか?

ついぞ二人には思い当たる事がなく、検証の為色々二人でその時の状況を思いだしながら試技を重ねてみると、どうも大纏による崩しの時の、体幹部に対するひねりながらの極めの化勁の勁路が、彼の身体に残ったベクトルと一致する事が分かってきた。
本来化勁という技術は、太極拳の様に捨己従人による、相手の力に逆らわない技術である、という固定観念があったのだが、その他にも八卦掌のように積極的に相手の攻撃部位に触れながらも、さして力感を与える事無く崩す事が可能であり、これはこれで当然ある種の威力が化勁には最初からある訳である。
腕や足などの重量の比較的少ない部分に化勁を掛けている時は、その威力は素通りしてしまって、結果として掴む事無く相手を貼り付け、誘導する貼粘の技術となっているのだが、ボディーのように、その部位のの重量が相当ある個所に対して化勁を行使するという事は、今まで見逃されていた威力がクローズアップされてくるのではないか?と推察できるのである。
*八極拳の大纏とは、八極拳における化勁の一種である。この他にも小纏というより動くを小さくした化勁などがある。



◇ 八極拳大纏
(写真掲載予定!)

@ 平行立ちより相手の順歩捶を出してもらう。
A 提籠換歩にて間合いを外す。
B ほぼ同時に両手の大纏にて相手の腕から崩す。
C 入り身しながら大纏の腕の動きを止めずにボディーを挟み込む。
D 発勁せず、大纏の動きをそのまま止めないようにして、纏絲勁を送り込んでボディーを崩す。

参考技
E そのまま纏絲勁の威力を保持すると、相手は地面に縫い止められたようになり動きが制限される。

さて、この化勁による攻撃の利点を見てみよう。
まずこれまでは、相手を崩す→相手を打つといった、二つの技の流れが必要であった手順が、相手を崩す→そのままさらに崩すという一連の技術のみに収束する事ができる。
しかも、太極拳の様にただ引き崩したりしてバランスを崩すだけでは、相手が自己修正によって立ち直ってきてしまう可能性が大であるが、体幹部への直接化勁はその流れを止めない限り、自由を制限し拘束を続ける事が可能であり、先に示した大纏の参考技のように、相手を傷付けることなく捕縛する事もできるようになるのである。

合気勁Tと化勁

さて、小生が雑誌にに出るきっかけとなった技術である合気勁も崩しの一種である。
よくこの合気勁と化勁の類似性について尋ねられる事があるが、ここであえて断言すれば合気勁と化勁はその技術においてまったく異なるものである。
合気勁という技術は、積極的にこちらから働きかけていくものであり、通常相手が行動を起こす前にその崩しが達成される。
それに対して化勁とは、今まで書いてきたように相手の力を必要とするものであり、その力を上手く逆用していくものである。
例えば化勁を実際見せる時に太極拳の術者が、よく斉の形で構えて相手の両腕で押さえさせる、というものがある。この技術は、まず自分の力を抜く事により(放鬆)雑力を消して相手に手掛かりを与えさせず、自分の中心軸を巧みにずらして相手の押してくる力を逸らすものである。
しかし、合気勁においては、まず触れた所より相手に気付かれぬうちに骨格への歪みを形成し、基底面を一番後ろに持っていってしまうのである。こうする事により、相手自信の力が上手く入らなくなり、必然的に押せない状態になってしまうのである。
さらに余談になるが、合気勁は一般に言われる脱力の状態とも大きく異なるものである。
脱力状態というのは、中国拳法においては古くから放鬆と呼ばれ、その技術過程において最初に習得すべき身体の状態である事をまず御認識頂きたい。
なぜこの技術が最初に求められるかというと、この技術は他律ではなくて自律主体の動作だからである。
その上で以下の参考技を比べて頂けると理解しやすいと思う。

◇ 放鬆(脱力)(写真掲載予定!)

@ 放鬆による状態で後ろから持ち上げてもらう。
A 放鬆している為に重心が下がっており、またつかみどころがない為に上げにくい。
B もう一人後ろから力の強い者に抱えてもらい上げようとするが当然上がらない。


◇ 合気勁(写真掲載予定!)

@ 相手に掴まれた状態で合気勁を掛ける。
A 相手は基底面をずらされて崩されているので上がらない。
B もう一人後ろから放鬆の時と同じように持ってもらうと上がる。これは、合気勁を一人にしか掛けていないので当然もう一人は崩れておらず、また、放松の時のようにただのリラックス効果による重みは出ていないので、上げる事ができる。
*C 二人目にも合気勁を遠隔で掛けてしまえばやはり上がらない。

このように放鬆は、自律行為主体の為に相手へのコントロール性が乏しく、合気勁はあくまで他律技術なのでその効果の範囲のコントロールが可能なのである。

化勁の深化 1

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