−陳家太極拳簡介 No.2−
[金剛搗碓] 使用法




今回は、前回紹介した陳家太極拳の開門式から金剛搗碓の使用法迄を紹介する。

太極拳の注目点はその化勁にあり、套路上の円を描く手法と独特の捻りにより実現されている。
化勁は相手の身体に接触した瞬間から発揮され、貼粘の手法により相手に粘りつき相手の中心軸(センター)の崩しを掛ける事がポイントである。中心軸に崩しを掛けるということは、相手の二撃目を封じたり、こちらの攻めがより有利な位置への誘導などが可能になる。

この化勁の技術も、進化してくると本来器用に動く手先より、次第に体幹部に近い位置でも可能となる。体幹部に近い位置で相手の攻撃を化かせるようになると、化勁にトルクを出せるようになりより、小さな動作でもさらに大きく崩せるようにもなるのである。
また一般的に化勁は、防御技術がメインと思われているが、九星会では「化勁による攻撃技術」という部分に着目しており、幾つかそれに繋がる技術の展開も実験により確認している。







使用法解説

参考) 黄色い点線→左手・緑の点線→右手・オレンジ実線→右脚・青実線→左脚
@ 相手と正対して立つ。
A 相手の右順歩捶に対して、こちらも右脚を後退させ間合いを確保する。この時、起式の要領で左手を下から上げて相手の攻撃を迎え入れる。(右手は下段で待機)

*ポイントは、まず必ず相手の突いてくるスピードに同調して下がること。速すぎても遅すぎてもいけない。
また、迎え入れる腕の上げ方は、あくまで下から摺り上げるよう「開門式」の通り行う必要がある。この二つのポイントを上手く守ると、相手は写真のように立身中正が崩れ、若干前傾姿勢となる。これらの技術は、「捨己従人」を実現するものである。


B 一旦相手の右腕をかぶせるように左手で小纏を掛け、写真のようなラインで受け流す。
C 左脚をサイドステップさせ、右脚を寄り足する。このボディーの動きに合わせて、右手を円圏ですくい上げるように受け代える。

* 左手の小円圏の方向性&角度と、右手による中円圏の方向性&角度をこの時同調させてはいけない。
ここでは、あえて角度や方向性にばらつきを出すことにより、相手のこちらの化勁の動きに対する「予測反撃」の効果を封じることが目的である。喩えるなら、電車などの一定な揺れに対して人は、素早く馴れて体勢の準備が整うが、がたがたとした道を走る車の不規則な揺れに対応するのが難しいのと同じ原理である。


D 自分の右手の捻じり(纏絲)を充分効かせながら相手のセンターに向かって、相手の右腕を跳ね上げるように持っていく。この時相手の頭部に当てるような軌跡を一旦描く。
E 先の化勁のラインのまま、更に相手の腕を回して崩す。
この位置に持っていくと、相手の左腕の攻撃を防ぐことができる。また反撃のバックブローなどを防ぐ為にも、単純な腰を切って起こす横方向の動作による崩しをしてはいけない。

* このように相手の腕を大きく動かすに時には、棒の様に自分の腕を使用したのでは、あっという間に崩しの運動方向を読まれて逃げられてしまう。これを回避するには、崩している腕より絶えず相手に中心軸に対する細かい力のベクトルが必要であり、そのベクトルこそを纏絲勁によって発揮するのである。


(ここより写真の位置が分かり易いよう、反対側に変わっているので注意!)
F 右脚をオレンジのラインのように移動させながら相手の足を扣馬する。また、円圏で崩した相手の右腕を、そのまま相手のボディーに密着させるように封手する。
左手は相手の背後より黄色のラインのように接近させる。
G 金剛搗碓の右手を突き上げる技である。ただ、この時も、単純に拳を突き上げたのでは威力が不足するので、必ず緑色のような軌跡を描いて内勁を発揮しつつ拳を突き上げるよう心掛ける。また、相手が逃げないように左手が相手の
肩に掛かって崩していることにも注目されたし。


(写真Iでは、また撮影の角度が変わっているので注意)
H 右脚より、相手の接触している右膝裏より纏絲を注入。下半身が一気に崩れるので、逃さぬようコントロールしつつ最後の極めの準備へ移行する。
I 左手で倒れる相手をコントロールし、右膝上に相手の脊椎(峡関穴)が落ちるようにする。また胸側より、金剛搗碓の要領で肘を落とし壇中穴を強打・・・・・結果として挟み撃ちとなる。







まとめとポイント

今回、手足の動きにできうる範囲でその運動の軌跡を描き込んだ。
これは太極拳の動作で相手を崩す時に、とても大事な「化勁のライン」を、読まれた方々に理解して頂きたいためである。もちろん、小生の画力不足で決して本当の動きそのものを現している訳ではないので、不足分はみなさんの経験より導き出して頂くしかない。
しかし、以前から小生が申しているように、人間というものの運動が本当の「円運動」ではなく、あくまで「擬似円運動」であることを認識し、左右の腕や体幹部の動きなどを足し算してできる、複合化した擬似円運動の一端でも今回ご理解頂ければ、と思うものである。



陳家太極拳簡介 No.1

「TanTan館」