六分儀について


作:鐵太郎 

1.六分儀って、なに?
 六分儀とは、簡単に言うと角度を測る器具です。英語で、「sextant」と言います。

 六分儀は、普通の使い方ですと、水平線から空の天体への角度を測るために使われます。空の天体とは、太陽、月、星などです。また、寝かせて水平角を測定したりすることもできます。
 また、山の高さを測定したりするのにも使われますが、特別な使い方としてはこの応用で、他の船の水平線からマストの頂点までの高さを測定して、おおよその距離を測ることもできます。

 この器具は、角度を非常に精密に測定できます。条件が良ければ、だいたい、20分、つまり180分の1度ぐらいの精度で測定できます。この角度はどのくらいかと言いますと、1メートル離れて0.1ミリぐらい開いた程度の角度です。

 17世紀の昔にそんな精密技術があったのか、と疑われる人もいると思われますが、このくらいの器具ですと、精密金属加工技術それ自体については、コストの問題さえ解決すれば、あまり変わりません。




2.六分儀って、どういうもの?
  図1
 筆者の持っている、ミニ六分儀(インテリアのおもちゃ)で説明します(図1、2)。

 外形は、おおむね円を6等分したぐらいの形をしています。だから、六分儀です。四分儀とか、八分儀とかも存在しますが、とりあえず割愛。

 小さな望遠鏡がついていますね。これを覗きますと、望遠鏡のまっすぐ正面と、ミラーによって斜め上も見ることができます。つまり、片眼で角度のついた二つのものを同時に見ることがでるのです。
       図2


 覗き込みますと、わかりますか? 筆者の六分儀ですと、最初のミラーの左半分は素通しで、そのまままっすぐ正面が見えます。
 右半分は、ミラーをもう一つ経由して、別な角度を見ることができるのです。


3.六分儀って、なぜ必要なの?
 季節が春分の時の真昼に、赤道上にいる時と、北極にいる時を考えましょう。

 赤道上では、太陽は真上にあり、水平線からの角度は90度です。北極では、太陽は水平線に半分隠れています。(細かい誤差は無視!) 赤道上では緯度は 0度、北極では緯度90度です。
 
ロンドンは約北緯51度30分ですから、このときの太陽高度は38度30分になるはずです。東京は、緯度約35度40分ですので高度は54度20分。精度が上がれば、位置はもっと正確に出ます。

 また、南北の1分の長さは1852mですから、東京はロンドンのほぼ950分、つまり約1760km南にあることがわかります。この1852mとは、地球の円周である約4万kmを360で割り、さらに60で割ったものにほぼ等しい距離で、1海里と呼びます。つまり、海里とは地球の大きさから割り出された距離の単位なのですね。

 つまり、太陽や星(主に北極星)の高度を測ることによって、自分の緯度(地図上の上下)が正確にわかるわけです。
 
さらに精度の良い時計と、季節による太陽高度を示した資料を持っていれば、経度(つまり地図上の左右の位置)も出すことができます。




4.六分儀って、どう使うの?
  図3
 星や太陽の高度を測るには、六分儀の原理を知らなくてはいけません。


 高度を測る、と言うイメージで、高く上を見て測定するものだろうと考えるかもしれませんが、六分儀は真横に向けて構えます。 図3、4、5はそれぞれ、高度0度、45度、90度の時の六分儀の角度を示しています。



 まず、だいたいの星(太陽)の高さを調べ、おおよそ目盛を合わせておきます。それから六分儀を取り、望遠鏡をのぞき、星が(筆者のもので言うと)右側から見えるように構えます。それから、太陽を視野に入れたまま、今度は左側に水平線が見えるところまでハンドルを回します。この、「ハンドルを回す」という動作は、機械によって違います。
  図4
  図5
  図6
 測定する時、太陽の光や海面のきらめきなどがありますので、それを避けるためにミラー用にインデックス・フィルタ、直視用にホライズン・フィルタが付いています(図6)。
  図7

 さて、めでたく星と水平線が同時に視野に入った状態が、図7です。



 ここからが忍耐と熟練。この、星と水平線をぴたり同じ高さにそろえるのです。簡単なようで、なかなか難しい。
  図8
 ここでぴったり合わせたら、目盛で高度を読み取ります(図8)。


 筆者の六分儀は、クォーターサイズのインテリアですから、精度もへったくれもありませんが、一応バーニア
(副尺のこと)がついていて、1/10度まで計れることになっています。

 実際のものは、ウォームギアなどの高精度な微調整の送り機構が付いていて、前述しましたように条件が良ければ20"、つまり180分の1度の精度で測定できます。これは、地球のスケールで考えると、なんと約620mの精度で測定できることになります。





5.六分儀って、どのくらい正確だったの?
 原理的に言いますと、熟練した観測者が、きちんと手入れをされた六分儀を使うと、非常に正確な太陽高度を測れます。太陽の高さを正確に測れることが何を意味するかといいますと、船がどこにあっても、太陽が南中する時刻を正確に知ることができると言うことです。

 おおよそ正午ごろに、30分ずつ時間を空けて3回から4回測定すると、太陽が描く軌道曲線が計算できます。そこから、「2回目の測定の12分後が正午だった」とわかるわけですね。そしてそのときの計算上の高度を90度から引いたものが、船のいる緯度です。




6.六分儀って、今でも使っているの?
 筆者は海や船員の仕事については素人ですので、あまり偉そうなことは言えません。悪しからず。

 現在は、衛星を利用したGPSを含め、さまざまな航海用の船舶位置決め方法があり、精度の高いデータが手に入ります。しかし、六分儀による測定は、高度な熟練はいりますが、近代的な機器がまったく使えないところでも行えます。そのため、海運関係の基礎教養として、今も使われているそうです。

 価格は、簡単なプラスチックの練習用のもので数千円ですね。筆者の持っているインテリア用のおもちゃも、そのぐらいのものです。普通に測定に使えるものは、50,000〜200,000円ほどで入手できるようです... マニアのおもちゃとしては、高いでしょうか?(笑)





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