阿佐ヶ谷の家(マンション)

 

WORKS

 

 

■建物データ
2003年7月竣工
・マンションの改修
(玄関、洗面所、便所)
・施工:軽部商店

クライアントがマンションを購入した時点で既に不動産屋による改装が終わっていた。不思議な「ふかし壁」や「段差」、「中途半端な隙間」が随所にあり、マンションの竣工当時(35年前)よりもかなり空間的に狭くなっていた。

■改修のポイント
・玄関を開放的に
・洗面所の段差の解消
・便所の段差の解消、拡張
・ふかし壁の撤去

 

 

玄関(施工前)

玄関(施工後)

 

 

洗面所(施工前)

洗面所(施工後)

 

 

洗面所・便所(施工後)

便所(施工後)

 

 

居間(施工前)

居間(施工後)

 

 

 

■玄関
玄関は住宅の導入部分なので、空間的なゆとりのほしいところ。
洗面所側にあったニッチを玄関側に開口して、装飾スペースを確保。袖壁を撤去して、杉錆丸太を立てた。
当初柱はドア側に立てる予定だったが現場でクライアント・職人と相談の上、廊下側に取り付けることに。結果として玄関のアクセントだけでなく、垂直方向の広がりも柱が主張してくれるようになった。

■洗面所・便所
上の写真の左側のドアを開けると洗面所という配置になっている。マンション購入時は、廊下から170mmも洗面所の床が高くなっていた。さらに洗面所の奥にある便所は洗面所床から200mm下がるという段差だらけの水廻り……。床を解体してみると35年前の床の上に更に根太を組んで、クッションフロアーを張っていたことが判明。また壁も既存の配管を隠すために100mm以上ふかして構成されていた。
今回の工事では、造作の家具の中にうまく配管が隠れるようにして、部屋の広さを最大限に確保し、洗面所と便所床の段差を解消した。廊下と洗面所との段差も75mmのに押さえることができた。

■居間
窓側のふかし壁を撤去すると、床に昔のセントラルヒーティングの配管が残っていた。配管は床上50mmで止まっていたので、造り付け家具で隠して対処。

家具を造らないところは、シナ合板で当木をし、フローリングの色に整えて、配管をそのまま露出させた。

 

■改修を終えて
 2月ころだっただろうが、マンションの内覧会に行くので立ち会ってほしいとクライアントから電話があった。なんとも築35年の中古マンションなので、専門家の目で見てもらいたいとの事。マンション(鉄筋コンクリート)の場合、目視(被破壊)検査程度では損傷状況はなかなか判断できないので、内装の善し悪しをチェックする程度ならばということで内覧会に同行させてもらった。
 そのマンションはクライアントの住んでいる場所から目と鼻の位置にある物件だった。不動産屋が既に内装の全面改装を終えていたにも関わらず、どうもしっくりいかない仕上がりで、クロスは所々浮いているし、不可解な段差が多く生活しづらそうだった。全面改装の仕方に疑問を感じたので、できるだけ他の物件を探した方がいいのではと素直に僕の意見を述べて内覧会を終えた。
 その後何日もしないうちにまた電話があり、あのマンションを購入することに決めたとの報告を頂いた。僕は一瞬耳を疑った。あれだけマイナス要因の多いマンションを何故?クライアントもそのデメリットはすべて承知の上での決断だった。今住んでいる生活圏を変えたくない、広い場所に移りたいという総合判断での結果なのだが、不動産屋の改装はやはり許容範囲を超えている部分も多いので、予算の許す範囲で更なる改修を行うこととなった。
 そんな経緯でこのマンションの改修をお手伝いすることとなったが、不動産屋の改装工事で気になるのは、何よりも必要以上にふかされた柱や壁、そして段差だった。35年前の竣工当初の図面と現況図を照らし合わせながら、撤去できるものと出来ない物を見極める作業から着手した。しかしながら床・壁・天井の下地の後ろに何があるのか判断しかねる部分が多く、設計段階から解体工事を平行して行わざるを得ない状況だったので、工事業者を初めから決めて、職人と二人三脚で実施設計を進めていった。
 工事期間中何回も現場に通っているうちに、クライアントの言うところの阿佐ヶ谷近辺の魅力も多少なりとも理解できたような気がする。大久保や高円寺ほどディープな感じもなく、年齢層を限定しないのどかな商店街があって、子供が遊べる空間が残っている。現場監理中もお子さんやその友人が現場を覗きにきたりしていた。ここは正に彼らのテリトリーの内なのである。
 設計の立場上どうしても建物を先行して住宅のことを考えてしまいがちだが、実はハード面の問題は予算をかければそれなりに解決できるものであるのに対し、築き上げたコミュニティーをリセットして再構築するための労力やデメリットは、改修の比ではないのかもしれない。その土地に住むということを改めて考えさせられた現場であった。

 今回の改修工事では、設計をしたと言えるところは玄関と水廻りくらいで、改装工事の不具合を解消する作業が多かったが、阿佐ヶ谷の地に住むと決めたクライアントの手助けはできたのではないかと思う。

■ふかし壁を見極める
解体までしなくても、壁にコンセントやスイッチがあれば、そのパネルを外すことによって、壁の内側を覗くことができる(+ドライバー一本あれば誰にでも取り外し可能)。 パネルの奥に空間がある場合は壁がふけている証拠。

■突貫工事の実体
それにしても不動産屋の改装工事は凄かった。解体撤去を行わずに既存の仕上げの上にそもままボードやクロスを張る工事となっていた。配管が残っているところなどは、適当な大きさの壁を立ち上げて、かくしてしてしまうのだ。
できるだけ、部屋を広くしようなどという発想は毛頭無く、うまく納まらなかった場合のリスクを回避するため、作業性のいい寸法でバンバン壁や天井を造っていく。
クライアントが入居後にガスの開栓をしたところ、キッチンコンロがガスの元栓と繋がっていなかったことも判明している!(われわの改修工事ではガス工事は無かった、念のため)
どうしてこういう工事が行われたのか理解できないが、ちまたで言うところの手抜き工事を体験することができて思いの外勉強になった。

 

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