「UHC・MOS−FETパワーアンプ」 1999年2月製作


CDプレイヤー:VRDS-25X(TEAC)について...


 モノラルなので2台製作

 

UHC・MOS−FETアンプ回路図(PDFファイル)

1.はじめに

 ’99年1月末某日、平安堂書店へ行ったとき、なにげなく見た「ラジオ技術2月号」の木塚茂氏の製作記事が、最近なまいきにも(^^;)クラシック音楽を聴くようになり、もう10年以上ほとんど変わってないオーデ ィオセットをもう少しなんとかしたいと思っていた、私の製作熱に火をつけてしまいました。

子供の頃の愛読誌「ラジオの製作」に掲載されていた、ステレオアンプを中学生のとき苦労して作った思いがあり、HI−FIオーディオとは別の意味で自作オーディオアンプに対する思い入れが強いのかもしれません。 

注)お恥ずかしい話ですが、私自身良い音に接する機会があまりないので(^^;)本当に良い音とは? またHI−FIオーディオについての知識もあまりないし...自分なりに良い音にしようと工夫はしているつもりですが、一種芸術品ともいえるオーディオ機器と一緒にするのは失礼でもあり? 今のところ電子工作の一環として見ていただきたいです。

中学生のころの私は、あたりまえですが電気知識に乏しく、電線は電気抵抗0Ω、絶縁はショートしていなければOK、電気じゃないけど、取り付けのビス類につけるスプリングワッシャーなぞどの程度効果があるかわからず面倒なので省略!

結構恐ろしい電気機器に仕上がっておりました(^^;)  

 


 2.UHC・MOS−FET

UHC(Ultra High Current)・MOS−FET そう、最近のDENONがさかんに使用しているデバイスです。耐圧は低いがON抵抗が猛烈に低く大電流がとれますので、これをシングルでプッシュプルします。(シングルでプッシュプルできるからパラレルの様にデバイス間のばらつきの補正の必要がなく音質的に有利)

ラオックスへ行ってカタログをもらってきて見ると、DENONでは、大出力をシングルプッシュプルで使用するためBTL接続しているアンプもありました。

ちなみに使用したFETの定格概要
   2SK1665(日立)  VDSS = 60V Pc=125W ID= 45A
   2SJ217 (日立)  VDSS =-60V Pc=150W ID=-45A
と、すごいドレイン電流定格です耐圧は低いけど。これを見ただけでダンピングファクタの良いアンプができそう....

     ダンピングファクタ:アンプの出力インピーダンスとスピーカインピーダンスとの比。
                 ようするにダンピングファクタが良いということはアンプの出力インピーダンス
                 が低く電気的にじゃじゃ馬のスピーカをねじ伏せ
る制動力が大きいということ。


3.部品の入手

ということで早速記事を詳細に読んでから、部品の入手です。しかしこの手の記事はそもそもマイナーなだけに、誤字脱字、おまけに回路の間違いなどが多いものですね。
ある程度の電気的知識と経験(回路図をだいたい理解できる)人でないと製作にはそうとう苦労するかもしれません。
使用する部品はケース、ヒートシンクなど、目にふれる部分以外は、会社にある試作残部品などかなり流用できるかな?と思っていたのですが。私のいる会社は産業用機器を設計製造しているので、使える部品が以外に少なくまた、どうせ作るならきちんとオーディオ用の部品を使おうと思い、思っていた以上の出費になってしまいました。 

部品の購入はだいたい以下のとうりです。

秋葉原からは通信販売で部品を購入しました。Webで秋葉原の東京ラジオデパートのHPから店の取扱い商品をみて問い合わせ、注文しました。  

 部品

 数        

 小計

 購入先    

 ケース(タカチ製)

 2   

  16,380-

 小森電機

 ヒートシンク

 4

  17,300-

 鈴蘭堂(秋葉原)

 トランジスタ、OSコン等

 1式

  13,000-

 若松通商(秋葉原)

 オーディオ電源用ケミコン

 1式

   9,240-

 小森電機

 タンゴ電源トランス

 2

  33,222-

 ノグチトランス販売(秋葉原)

 基板エッチングキット他

 1式

   4,000-

 アサヒ電子部品(地元のパーツ屋)

 そのほか端子、OFC線等

 1式

   4,000-

 秋葉原で物色

        合計

 

  97,172-

 

会社に転がっていた残部品  1式  金額にして2,000くらいかな??

なお、今回のアンプの製作中に東京へ出張があり、秋葉原へ行くことができ小物部品を購入する事ができました。
しかし、個人で電子機器を作るとき地方(長野)に住んでいる者は、部品の入手が大変です。部品が一通りそろったら、製作の半分以上は終わったようなもの?ですね。

上記で購入先「小森電機」とありますが、私のいる会社の取引会社で、総合電子部品商社です。個人的に現金で取引してもらえるということになり大変助かりました。感謝々。
なにせ巨大なオーディオ電源用ケミコン:商品名:スーパースルー(ニチコン)が2種類全8本で 9,240- で手に入ったのですから。通常は50個単位でしか扱わないそうですが、特別にサンプルということで分けてもらいました。(ニチコンにも感謝)

同等品(エルナー・セラファイン等)を秋葉原で購入すると \30,000 くらいになります。(^-^) 


4.回路、仕様の検討.....解説

回路の検討とは言っても「ラジオ技術」木塚氏の2番煎じなので、エラそうなことは言えないので、解説とします。(まちがってたら木塚さんスイマセン)

・ 最大出力

アンプの最大出力は、出力段のFETの電源電圧の2乗に比例します。つまり、最大出力は、電圧を上げるほど大きくすることができます。

ただし今回使用するFETの VDS は60Vしかないので、最大±30Vが限界です。

                        2
                       E
     そこで最大出力は P= ---------- の式で求められるので
                      8・RL

    RL:スピーカインピーダンス
    E :電源電圧(±合計)

         P= 56W at 8Ω負荷
         P=112W at 4Ω負荷(ほんとに出るかわからないけど)

・アンプ動作点

基本的にA級動作としたいのですが、発熱 ---> 放熱 の問題があるのでAB級アンプとします。どこまでA級かというとFETに常時流すバイアス電流できまります。

                            2
       A級動作最大出力:Pa=2・RL・Id      (Id:バイアス電流)

       バイアス電流を1.8Aとしたとき8Ω負荷で  Pa=52W

       つまりスピーカが8Ωのときほぼ完全なA級アンプとなります。

バイアス電流1.8A ということは常時108Wが2個のFETから放出されるということです。本アンプはモノラルなので、2台分で216Wとなります.......ひえ〜

上記から言えることですが、アンプの出力を上げるには、スピーカのインピーダンスを下げる必要があり。アンプの特性を良くするには逆にスピーカのインピーダンスを上げると良くなります。2つがあい反しており、おもしろいですね。


5.製作

製作でもっとも大変だったのは、基板のエッチングでした。一度経験して要領がわかってしまえばなんてことないのですが...
そういえば中学生くらいの時にも基板のエッチングに失敗したっけ....

エッチング行程
    1) 版下を遮光性マジックで透明フィルムへ作成する。
    2) 感光基板へ版下をセットして蛍光灯で焼き付けする。
    3) 現像液で現像
    4) エッチング
    5) 穴をあけて完成

    失敗1:2)の焼き付けが不十分で現像時に、不要なレジストが解けない。
         ----> 規定時間より少し長めに焼き付けした方が良い(10分ほど長く) 

    失敗2:3) 現像時間が短かった。現像完了状態がどのような状態なのか
         わからずに早めに現像液から引き上げてしまった。不要なレジス
         ト
でも残っていると、エッチングができない。

やはり先を急がず、サンハヤトから出ているテスト基板を使って試験するべきだったと思います。
今回上記の理由から不要レジストが完全にとりきれず、エッチングできないので不要レジストが残っている箇所をマイクログラインダー(基板のパターンカットに使う道具)を使用して削りとりました。全部削りとるのに半日以上かかりすごい大変でした。

基板ができてしまえばあとはそれほど大変ではありません、作業をすすめればすすめるほど形になっていくので、楽しいひとときを味わえました。

 今回製作したパワーアンプ
       外形寸法:W:230 H:133 D:320(突起物:ヒートシンク等を含まず)
       重量  :約12Kg/台
     となりました。 


6.火入れ

期待と不安と恐怖の火入れ(オーディオアンプは半導体でもこう言う表現になりますね)です。
一応念のため、FETにかかる電源線は外し、電源をいれました。

一応ヒューズも切れず一安心...各電圧を確認しFETの電源線を接続します....あれ、バイアス電流設定用のトリマを回してもバイアス電流が流れない???良く見る...アッ...FETをドライブしているトランジスタのエミッタとベースが逆だ!!
ああ壊れなくて良かった。

      修正して電源ON!
      ”プッシュン” 白煙が少々
      やってしまった!!

バイアス電流設定のトリマを最大にしたままだった!!!!
なんと回路は正常だったのだが、バイアス電流設定を最大にしたので、大電流がMOS−FETに流れ、FETが壊れてしまった!
かわいそうにFETを外し、ドレイン−ソース間をテスターであたると 「0.1Ω」........短絡している.......涙 (T_T)
このUHC−MOSはペアの \2,000- かつ送料+代引き手数料で合計 約\3,500- 高すぎる......
やってしまったのはしょうがないので、もう1台のアンプに火を入れてみる。同じ失敗はしまいと注意深く確認をする。バイアス電流設定トリマを徐々に回すと、バイアス電流が増えていきます。おぉぉ〜動いているみたいだぞ!

とりあえず、すぐに鳴らしてみたいのですが、会社の時間外にコソコソやっているので、信号ソースも、スピーカも自宅へ帰らなくてはない。
そうだ!ファンクションジェネレータを信号源に、周波数特性を見てみよう!
負荷にダミーのセメント抵抗を接続、ファンクションジェネレータからサイン波を入力、出力をとりあえずオシロスコープで観察する。
お、出力しているゾ

100Hz、1K、10K、20K、100KHz すごい全然減衰しないじゃん、よーしどのへんから減衰するんだろう...
200K、500K、800KHz  まだ減衰しない、すごいな〜 1Mまでいくかなあ...
あっ
プッツン.....」(注:実際に音がしたわけではないが、こんな雰囲気)
          
どひゃ〜ん!またやってしまった......涙涙(T_T)

いけないことに、最大出力に近い状態で試験してしまい、FETを破壊してしまいました。
出力数W程度で試験すればこんなことにならなかったと思います。
かわいそうに、初代 UHC・MOS−FET たちはたった一度も音楽を奏でることなく、また1ペアはせっかく動作したのに、つまらないSin波の再生のみで他界してしまいました........合掌...

このようわけで、製作費用は「3.部品の入手」で書いた金額プラス¥6,000 となってしまいました、とほほ...

また、ほんとは音質的には良くないのですが、怖いので、UHC−MOSへ供給する電源ラインへヒューズを追加しました。(やはり音質的に良いわけないので、後日削除)


7.試聴

FAXで若松通商へFETを注文すると、代引きで翌日に2代目UHC・MOS−FET 2ペアが送られてきました。
早速組み込み、調整を済ませ、実際にオーディオセットへ組み込んでみました。
最初に再生したのは ビバルディの「四季」 です。
再生を開始して、すぐに違いがわかりました

          正直いってパワーアンプの違いのみで、こんなに違うものか!
          と驚きました。一皮むけたというか音が澄み、音の立上りも
          良くなりました。非常に満足 (^_^)v 

それまで使用していたアンプは、ケンウッドのプリメインでKA−990Vという型式です。今から13、4年前に6〜7万で購入した物で、購入価格が6〜7万ということは、使用している部品の金額はだいたい2万ちょっとくらい?でしょうか.....大量購入で非常に割安に部品を購入しているとは思いますが2万円の部品ではやむおえないのかもしれません。それに10年以上もたってるので電解コンはへたっているだろうし、比較するのは少々酷かもしれません。


8.考察

A級アンプはあきれるほど発熱します。計算上でわかってはいたつもりですが...実際に動作させてみて思いましたが、ヒートシンクはもう1サイズ大きいのにしておけば良かったと思っています。放射温度計でFETのパッケージ表面温度を測定してみると100℃ほどになっており、あまり余裕がありません。(あまり余裕がないと言うより追加の放熱対策が必要)

実使用では、今のところそれほど出力がいらないので、バイアス電流を1.8Aから1.2Aへ下げました。これでも約23WまでA級で動作するので今のところ十分です(エネルギーの節約にもなりますしね)

また近々、このアンプの特性、特にTHD(全高調波歪率)を計測しケンウッドのプリメインアンプと比較をぜひしてみたいと思っています。

しかし計測器がないので、何とか会社にある測定器で、付加回路をつけて測定できないか検討中です。

すぐに思いつくのが、C−Rを使用したπ型バンドパスフィルタを作りアンプ出力部へ入れ、基本波のSin波をアンプへ入力し、フィルタで基本波をカット残りの高調波やノイズを計測する方法ですが、そんなんじゃダメかな?


9.今後の製作

今回のパワーアンプには音量調節がついてないので、現在今まで使用していたプリメインアンプのプリアウト端子出力を、今回製作したパワーアンプへ接続して使用しています。
そこで、コントロールアンプ(昔で言うプリアンプ)を製作したいと思います。パワーアンプをけっこう本格的に作ったので、部品にはこだわりたいと思っています。
コントロールアンプの入力切替えのロータリスイッチは、なんと会社の試作残部品のなかに、高級オーディオアンプに使用できるアルプス製(SRRYシリーズ)のが、なぜかあったのでひそかに使わせていただきます...うひひひ(^^)(もう確保している)

ボリュームですが、色々調べてみるとオーディオ用で最高級品が、これもアルプスから出ています、しかもアルプスの試作支援の部品供給サービス「電即納」扱いになっているではありませんか!(「電即納」とは電即納指定部品ならば、FAX注文で約3日後には届くというアルプスのサービス)
早速FAXで資料を取りよせてみる.....オっ最低発注数量1個からと書いてある、すごい珍しいなと思い金額を見ると.....「¥30,000」(@_@)
なるほど1個から売るわけだ。いやーアルプスにもこんなパーツがあるんですんね。(3〜4万出せば安いMDデッキが買えますね)

あと、アルプスでオーディオアンプ用で「商品名:デテント」というボリュームもあります。これは秋葉原で1個¥3000−くらいなので、こちらの方が私には現実的かもしれません。
トーンコントロール、RIAAアンプは、とりあえずいらないので、バッファアンプのみ内蔵しようと思います。
JRCの4580DD、2114にしようか?それともバーブラウンのOPA2602かな?


10.改造 

バイアス電流が、A級動作領域を決め、かつバイアス電流は電源ONから安定するまで結構時間がかかります。
これはFETとFETの温度ドリフトを補償するためのトランジスタ間の温度の遅れによるものですが、現在のバイアス電流がどのくらいか気になるのでバイアス電流を表示する様に、パネルへメータを追加しました。

回路図は、改造後の物です。本当は、大型アナログメータで、バイアス電流、パワー表示を、パネル切替できるのが理想なのですが、そこまでは元気がないので、手持ちの部品でバイアス電流のみの表示としました。


11.FETの予備入手

今のところ特に必要ではないのですが、私のいる会社購買部経由で、今回使用したMOS・FETのほぼ互換品(2SK2955/2SJ554)を予備の為入手しました。
各々10個ずつサンプルで購入したのですが、なんと若松通商で購入した値段の1/10の金額でした!
まあ若松通商では、いつ売れるかわからない部品をストックし、バラ売りなのでいちがいに高いといえないのかもしれませんが。

若松通商から購入したFETはコンプリのペアでの販売なのでもしかしたらFETの特性を選別しているのでしょうか(まさかねぇ)でももしそうなら高いとはいえませんね。



フレーム表示されていない場合はここを押して下さい