●消費者金融とは?
消費者金融とは、金融システム全体を見ると、まず、日本全体の資金の流れを調整する「中央銀行」(日本銀行)、都銀・地銀・第二地銀などの商業銀行を中心とする「民間金融機関」、そして政府系金融機関などの「公的金融機関」に分けることができ、民間金融機関の中に「ノンバンク」が位置づけられており、このノンバンクの中にある「消費者向無担保(有担保)貸出業者」のことである。
●消費者金融業界の歩み
過去における消費者金融業には、必ずしも高い評価や信頼が社会から与えられていた訳ではなかった。もちろん、中世ヨーロッパで生まれた「金貸し」に対しても、高い評価が与えられていた訳ではないので、我が国の消費者金融業だけが社会から白い目で見られていたと言う訳ではない。しかし、第二次世界大戦終了後、我が国経済の高度成長が実現したため、大量消費社会が成立して消費者が経済の主役の座につくようになり、商品やサービスをローンによって購入する消費者信用や、それらの購入資金を借りる消費者金融に対するニーズが一段と強まった。
特に消費者金融の分野においては、銀行など既存の組織的金融機関が十分に対応してきたとは言えず、その分を多数の消費者金融業が補完してきたことは紛れもない事実である。本来であれば銀行などの金融機関が消費者金融にもきめ細かく対応すべきなのであるが、これらの金融機関は専ら資金効率の良い企業融資に向け、信用力が弱く融資コストの高い消費者金融は放置してきた感がある。
社会的ニーズが高まっているにも関わらず、それに対応しなかった銀行などに変わって消費者金融の分野に注力してきたのが消費者金融業なのだから、基本的には消費者金融業は一定の社会的役割を果たしてきたと言うことが出来るだろう。ところが、その方法論において、必ずしも正しい道を歩み続けてきたとは言えない部分があって、この点に対して社会から厳しく批判される結果を招いたのである。
その第1は異常とも言える高金利である。第2は厳しい返済請求・過酷な取立てである。更に第3は多重債務者を放置したことである。
これらの結果、貸金業規制法施行以前の昭和50年代前半、「サラ金地獄」と呼ばれる大きな社会問題にまで発展し、消費者金融業に対する対する厳しい批判が集中した。
前述の通り、日本経済の高度成長がかなり長期にわたって持続する中で、経済に対する消費者の影響がますます強大になるにつれて、消費者金融業もその規模を拡大するに至っていたから、消費者金融業に対するマイナス・イメージの発生は、消費者金融業の発展を阻害する原因にもなりかねない重大な問題であった。そこで、業界を挙げてこれらの問題の解決に全精力を傾注していった。しかも比較的短期間で課題の多くを解決したことは、高く評価されてよいと思われる。
なかでも、業界内部に情報センターを設立して、多重債務を解消ないし軽減することが出来るようにしたことは、消費者金融業の正常な発展に大きく寄与したと言うことが出来る。
消費者金融業の中には、経営規模の拡大に伴って、必要とする融資資金を証券市場から調達することを目的として、株式の公開を実現しようと試みる業者が出現したが、このことは、消費者金融業界の社会的信用の向上にとっても重要なことであった。
しかし、当時は株式公開のステップとして、直接に東京・大阪の証券取引所に上場することは困難であるため、まず店頭市場に公開することが常識とされていた。
ところが、店頭市場への株式公開を審査する機関である日本証券業協会では、消費者金融業に対する社会的認知の不足を理由に、簡単には消費者金融業の株式公開を認めようとしなかった。
この株式公開のために社会的認知を充足させる必要性も、情報センターの積極利用による多重債務の解消、貸付金利の引き下げ、あるいは強制取立ての禁止など、数々の是正措置の早期実現にあずかって力があったものであると推察される。
長期間にわたって、日本証券業協会では消費者金融業、商品先物取引業およびパチンコ業を、いずれも社会的認知の不足すなわち株式公開への疑問職種として、株式公開を承認しなかったが、消費者金融業界の自助努力を評価して、上記3業種のトップをきって株式公開を承認するに至った。現在では大手、中堅業者を含めて東証一部・二部、店頭市場に約30社が株式公開を果たしている。
◆無人(自動)契約機について
消費者金融業界は前述の通り、大幅に業績を伸ばしてきた。バブル崩壊後、個人所得は思うように伸びず、しかしそれでもレジャー・住宅・教育資金などの個人の資金需要は変わらない。また、続く不景気の中、中小企業では資金繰りが悪化するも、地銀や信金など貸し渋りから融資を受けることができず、物的担保を持たない事業者は必然的に人的担保を頼りに消費者金融の門を叩くことになる。
しかし、かつて「サラ金地獄」として社会問題にまでなった消費者金融に融資を受けにいくのは、多かれ少なかれ抵抗はあるはずである。その悪いイメージの問題を払拭させたのが、無人契約機・キャッシュディスペンサーの急激な増加である。窓口で店員と一対一で面と向かって融資の契約を受けることへの抵抗感という問題が、この無人契約機・キャッシュディスペンサーの導入によってなくなった。1993年の7月に、ある業界大手の消費者金融業者が導入したのを皮切りに、大手・中堅消費者金融業者を中心に次々と導入が進み、現在では全国で3000台を超える無人契約機が設置されている。各社平均店舗数で見ると(消費者金融白書による)平成9年3月の平均店舗数43店舗(内、無人店舗8店)と比べて平成10年3月では平均店舗数55店舗(内、無人店舗19店)となっており、店舗数の増加と共に無人店舗数の増加が著しいことが分かる。
●近年の好業績の要因
バブル経済崩壊後の景気低迷下にあって、消費者金融業界が急成長を遂げてきた要因としては、主として以下の諸点が挙げられる。
◆顧客側の借入ニーズの増大
所得の伸び悩み・減少にもかかわらずこれまでの生活水準を維持したいという顧客サイドの借入ニーズが存在したこと、若年層を中心に借金への抵抗感が薄らいでいたことなどが、消費者金融業者への借入ニーズの増大につながった。
◆消費者金融業者の経営戦略
中低所得者層への顧客セグメントの絞り込み、顧客ニーズに合致した店舗展開、自動契約機の導入、迅速な審査体制の構築など、顧客利便性にこたえる消費者金融業者の経営戦略が、銀行・信販会社などの金融サービスのすき間をつき、顧客ニーズの掘り起こしに成功した。
◆社会的認知度の向上
中堅クラス以上の消費者金融業者の相次ぐ株式公開などで、社会的認知度が向上したほか、多重債務問題の深刻化等に対し、大手を中心にその発生防止や顧客の啓発に向けた取り組み(消費者金融連絡会を設立してガイドラインを定めたり、カウンセリング基金を設立)を積極化したことが、顧客サイドからも一定の評価を受けてきた。
◆サービス提供体制の整備
消費者金融業者サイドのデータ整備やシステマティックな入り口審査・回収体制の構築が、比較的低コストでのサービス提供を可能としたほか、消費者金融専門業者が加盟している全国信用情報センター連合会の個人信用情報の充実もこれに大きく貢献した。
◆フォローの金融環境
比較的高めの貸出金利を維持できる一方で、バブル崩壊後の金利低下局面にあって資金調達コスト低下の恩恵をフルに享受できたほか、これまでは金融機関からの借り入れにより盛んな資金需要
◆ 貸出残高の伸び率鈍化
景気低迷の長期化に伴う顧客の借入ニーズ・借入余力の減少、消費者金融業者の新規出店効果の一巡や資金調達面での制約などから、最近では新規顧客数が減少し、営業貸付金の伸び率が鈍化している。
◆リスク管理状況
上記の各項目とも若干重複するが、今後消費者金融業界が安定成長期に移行していくプロセスでは、従来以上に「与信リスク管理」(新規与信審査、途上与信管理、回収体制強化等)、「流動性リスク管理」(資金調達基盤の拡充、調達手段の多様化等)、「金利リスク管理」(運用調達のミスマッチの軽減、ALMの強化)、「レピュテーション・リスク管理」(顧客との無用の摩擦の回避等)などを適切に行っていける状況にあるかどうかがポイントになろう。
◆ おわりに
これまでみてきた通り、消費者金融業界も今後は総じて成長が徐々に鈍化して、これまでのような高収益を挙げることは難しくなっていくものと予想される。また、今後は、営業基盤の強化、リスク管理の向上、資金調達手段の多様化などの施策の巧拙が業績に大きく響き、企業間格差が拡大していくと考えられる。
消費者金融業界においても、遅まきながらマーケットによる厳しい選別と優勝劣敗による業界再編というビッグバンが起こりつつあるわけであり、各社とも従来以上に強じんな経営体質の構築と他社との差別化(社会的認知度の向上や社会還元等を含む)に向けての不断の努力が必要な時代に入ったということができるであろう。
●消費者サイドの意見
本節では「日本消費者金融協会(JCFA)」が平成10年10月から11月にかけて、消費者金融への来店者を対象に行ったアンケートの結果を提示する。
1、生活費の充足度と消費者ローン利用状況
『調査結果の概要』
・ 生活費や小遣いに「余裕がある」は37%、これに対して「不足している」は63%。不足した場合は「預貯金をおろして充当する」が圧倒的。「消費者金融でキャッシングする」(5%)はまだまだ少数だが、調査毎に増加
・ クレジットカードなどのローン・キャッシング利用可能なカードはほぼ全員が所有。その7割近くが実際に利用しており、その主な目的は「自動車・家電製品・洋服・家具」などの購入資金。
・ 借入先は「信販」「銀行系クレジットカード会社」が上位(各4割強)。「消費者金融会社」は1割が利用し、増加傾向を示す。
『調査結果からうかがえる一般生活者の印象変化』
・ 消費者金融は借入機関のひとつの選択肢として意識され始めている
・ ローン・キャッシングは生活者に幅広く浸透
・ 実際の行動レベルでも消費者金融の利用率は徐々にアップ(今回は10%となった。)
2、消費者金融に対するイメージ
『調査結果の概要』
・ 金利イメージでは、消費者金融会社の金利に対しては71%が高いと感じている。しかし、クレジットカードの金利は60%前後、銀行の金利に対しても50%以上が高いと感じている。
・ 広告媒体との接触機会は拡大しており、「TVCM」「ビルなどの看板」「街頭のティッシュ」「雑誌広告」は8割を超える。印象としては、「最近多く見る」「目立つ」「イメージアップにつとめている」「明るいイメージになった」と評価される一方で、「金利や返済方法などの説明が不十分」との意見も多い。
・ 業務内容については、「自動契約機」「審査がOKならその場で貸してくれる」「夜間や休日でもキャッシングできる」といった利便性のほか、「上場企業もある」ことも認知されつつある。
『調査結果からうかがえる一般生活者の印象変化』
・ 消費者金融に限らず、全体的に金利に対する生活者の反応はシビア。
・ 消費者金融の社会的認知がさらに進行。
・ 生活者は業界の利便性努力を評価。
3、今後の利用意向
『調査結果の概要』
・ 今後の利用意向率は20%。95年(34%)に比べ利用意向は低下。
・ 利用したくない人の理由をみると、従来は「怖い」が主な理由であったが、今回は「基本的に借金が嫌い」(7割強)が他を圧倒。
『調査結果からうかがえる一般生活者の印象変化』
・ 利用意向率の低下は不況下における消費者心理が関係していると考えられる。
・ 非利用理由要因は内的要因から、外的要因に変化
4、業界への希望・要望・提言
『調査結果の概要』
・ 店舗に関しては、「外から内部が見えるようなオープンな店」、CD・ATMの設置場所は「駅の構内」「銀行や郵便局」「デパートやスーパーの中」が臨まれている。
・ 業界に対しては、「金利を下げて欲しい」「イメージアップを望む」「業務内容や利用の仕方をもっとわかり易く」等に加え、今回は「クリーンイメージをアピールして欲しい」との要望が目立つ。