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2000年4月8日 大阪市立美術館
(大阪市・毎日新聞・毎日放送主催)
桜が見事に咲き乱れ、ポカポカ陽気の中、待ちにまった「フェルメールとその時代」展にでかけてきました。大阪市立美術館は大阪のみなみ、通天閣のすぐそば、天王寺動物園のとなりにある。かなりゴミゴミとした感のある大阪でもあまりガラいいところではないのですが、この美術館では時々注目の展覧会をやるので楽しみなところなのです。
今回の絵画展は、日蘭交流400年を記念しての特別展で、オランダにとっては門外不出の作品「青いターバンの少女」を目玉に、17世紀のオランダ絵画をそろえてきました。オランダというとやはり、レンブラントを思い浮かべる人が多いのではないかと思いますが、レンブラント以外にもすばらしい作品がたくさんあることをこの絵画展で実感できることでしょう。
こういった楽しみな絵画展はいつものように、午前中に。お昼を過ぎるとやはり混んでくるので、と思ったんですが思ったよりそれほど混まなかったかな。美術展にしては大々的な宣伝に、注目度も高いかと思ったんですが、日本人はやはり印象派なのかなあ…。
さて、入場。ワクワクしながら足を踏み入れると、ありゃ?屏風絵に日本画がいくつか。私は頭の中が完全にオランダモードになってましたので、意表をつかれました。よく見るといい絵なんですが、もう気持ちはオランダ、オランダといってたので、簡単にみただけで、いよいよ本番。
まず目に入ってきたのが、「デルフトの眺望」。あ、フェルメール作じゃないですよ。フロームという人の横長のデルフトの遠景。いやあ、しょっぱなからゾクゾクッとさせられました。絵としてはそれほどすばらしいってこともないんでしょうが、デルフトの繁栄を思わせる頑強な城壁に囲まれた町。そして遠景といってもここらへんの作品で面白いのは、手前には人々の姿が描かれていて、当時の生活や風俗が垣間見れるのです。
続いての絵が、これはまた当時のオランダ絵画を語る上でははずせない作品。白黒のタイルの床に回廊を描いた「空想の回廊のあるデルフトの眺望」や、大きな柱を前面に高い天井、遠近法や透視図法というのでしょうか、大胆な空間づかいの教会内部を描いた作品群。そしてまたその教会内部にもいろんな姿の人々が描かれています。そこに光りと影が織り込まれるとタイヘン惹かれます。英雄の墓標や、記念碑なんかがしっかりと描かれていて、オランダの繁栄を誇る気持ちのつよさがうかがえます。
「デルフト市警団白旗部隊の仕官たち」を観るにつけても、レンブラントも市警団や、町の有力者などの絵をよく描いていましたが、市民が自らを誇る気持ちが伝わってくる。
さあ、そしていよいよフェルメール。まず1作目が「聖プラクセディス」。思っていたよりも結構大きな絵でした。この絵は近年1986年になってようやくフェルメールの真作として認知されるようになった作品だったと思います。他の代表作に比べると、主題的にも描き方にしてもだいぶ赴きが違うので、ちょっと戸惑う感じはあります。絵をぱっと見た感じは、女性が大きく描かれていて、静かな表情でスポンジをしぼっている穏やかな絵かと思いますが、左手奥には首の切られた死体が…
「天秤を持つ女」、小さい絵ながらその画面から受ける静寂の緊張感がすばらしいです。かなり薄暗い部屋で天秤をもつ女性が一人。窓から差し込むわずかな光が女性の顔を照らし、透き通るような白い肌が浮き上がり、ゾクゾクとさせられます。天秤を持ち、何を思うか一身に思いをめぐらす表情が魅力的。実物をみると意外と天秤が背景の暗さの中に埋もれ、はっきりとは見えない。あの天秤のお皿にはいったい何がのっているのか。研究者の間ではいろいろ論争にもなっていましたが、最近の研究では何ものってないってのが判明したそうです。皆さんも目をこらしてみてみて下さい。あの天秤はあの女性の心のはかりでしょうか…
「リュートを調弦する女」、この絵は保存状態の悪さが指摘されている絵です。初めて見られた方は、全体的にぼやけた感じで、色も悪いと思われたでしょう。ほとんどの色が失われテーブルクロスの色等も剥げ落ち、女性の顔などもかなりぼやけています。完全で残っていればどんな光の魔術がみれたかと残念です。この絵の女性はフェルメールの他の作品でもよく見られる黄色い服を着た姿。手前にはイスをおき、女性を奥に小さく描くことによって奥行きを出しています。楽器を弾いているような姿、楽器というのはよく恋愛の意味で使われたということです。奥行きのあるこの距離は女性の心情を映し出しているのでしょうか。
「地理学者」、フェルメールと親交があったも思われる当時デルフトにいた著名な科学者がモデルと云われています。完璧ともおもえる構図、先ほどの「リュートを調弦する女」とは格段にちがう絵の重厚さ。窓辺の机で仕事をしている地理学者がフッと一瞬顔をあげ、物思いにふける表情。窓からの鋭い光があたり静かな緊張感が全体を包みなんともいえない調和が漂っています。どの絵もフェルメールがとらえる見事な一瞬の表情は写真家を思わせるものもあります。この絵で手前の布の上あたりには、光の粒が白い点々でいくつか細かく描かれています。実物を見ると、おお〜ホントに小さな光の粒がテンテンと。光の魔術師フェルメールの技のヒトツが垣間見えます。こういった小さな描きによって絵の重厚さがでてるんでしょうね。
「青いターバンの少女」、他の絵を観てる時でも気になって気になって、でも今日は順番通りに観ていこうとおもってたので、ようやく絵の前まで来ると嬉しさ一杯。すでにこの絵の前には人だかりができていたので、なんとか順番待ちながら、ゴリゴリと一番前で観ることができました。今回この「青いターバンの少女」の絵を観るにおいて、何を一番観たかったかというとその色です。色ってみたまんまやと思われるでしょうが、私が持っているいくつかの画集では、画集ごとに微妙に色が違うのです。妙に黄色がかってたり赤っぽかったり、白々としていたりで、この絵のホントの色はどれだ〜?と以前からじっと気になっていたので、そこに注目してみました。
観た瞬間、ゾクゾクっと引き付けられたのは云うにおよびませんが、私がイメージしていた通りっていうか、少女の顔はわりと白っぽくって透き通るような色合い。顔の輪郭をわざと少しばかりはみ出した感じで描きぼやけた輪郭と、少女の背景が思っていたよりしっかりと暗く、少女の表情を一層浮かびあがらせています。青いターバンも思ってたより薄い感じで、天然のウルトラマリーンをふんだんに使ったという青で、しっかりとした色合いというよりも、ちょっとぼやけた感じが一層少女の表情の透明感を出しているように感じました。目の印象の強さ、真珠の耳飾りの輝き、画集ではわからなかったその光の筆のタッチも伺え、ああ光りはこうやって描かれているのかと感嘆。そして図録でも紹介されていましたが、口の両脇にほんの小さな白い点が。これがあることにより、効果的に表現されているということです。よく観るとホントにチョンと上から白い点がつけてあるだけでした。これだけのことで細かいそういう雰囲気がだせるのかとまたまた感嘆。でもそこばっかり観てたらなんだか妙にその点ばっかりが気になって、全体が観れなくなってしまった…。さらに画集では、唇のなまめかしい印象が強かったんですが、実物はそれほどなまめかしさは感じられず、すずやかな透明感が強かったです。少女の服は顔のすばらしい描写とは違い、あっさりと簡単に描かれているように感じました。
肩口からフッと振り向いた一瞬の表情。唇は半開きで微笑なのかわずかに口元がほころび、輝く瞳。画集では見飽きるかと思うほど観てましたが実物の前にはかないません。見飽きるということがありません。全作品を一回り観終わってからも、またフェルメールの部屋に戻ってきて今度は部屋の中央に立ってぐるりと作品を、ちょっと遠くから鑑賞。フェルメール作品は「聖プラクセディス」だけが別部屋で、他4作が一つの部屋に飾ってありましたが、こうやって遠くから眺めると、なるほどと納得。「聖プラクセディス」だけがちょっと大きい絵なんですね。他4作は同じくらいの小さ目の作品だから、バランス的にとっても上手く並べてあります。さすがにそこら辺は考えてありました。
遠くから眺めると、近くからとはまたちょっと違った印象です。「青いターバンの少女」、遠くからでもその瞳の強さ、耳飾りの真珠の輝きがとっても印象的。私と同じように部屋の中央あたりからじっと眺めてる人が何人もいてああ、フェルメール好きな人はたくさんいるんだなあって感慨深い。フェルメール作品が観られた嬉しさはもちろんですが、こうやって同じ部屋、同じ空間にいられるのがまたなんとも嬉しい。幸せ〜の気分です。
なんだかだらだらと長くなってしまいました。
フェルメールの部屋の次ぎは同時代の風俗画家の作品など並んでましたが、それについては、また次回。次回って、こんな展覧会を1回限りで観るのはもったいない。まだまだ何度も行く予定です。その時のために感想は後程…
フェルメールだけでなく、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーン、ハブリエル・メツー、ヘラルト・テル・ボルフ、ニコラース・マース…、ホントにこの時代のオランダ絵画を代表する画家の作品がしっかりそろっていて、日本だけでなく世界的にみてもこの絵画展は貴重だと思います。欲を云えば、カレル・ファブリティウスやロイスダールの作品も観たかったなあ…、そこまで云うと贅沢でしょうか。
なにはともあれ、まだまだ7月まで、じっくりと見に行きたいと思います。しかし、入場料1500円はちと高いぞ。スタッフの人数が多かったのと「青いターバンの少女」の価値を考えると仕方ないのかな。「青いターバンの少女」は今市場にでたらどんな値段がつくのかと、ちょっと野暮なことも考えてしまいますが、まあ天文学的数値に近くなるでしょう。
みなさんも是非足を運んでみて下さい。そうそう、あまり絵に顔や手を近づけすぎないように。防犯用センサーが働いているようで、ブザーがなっちゃいますよ。
スタッフの方々が着ていたあのスタッフジャンバーがほしいと思う私でした。 |