ユトリロとヴァラドン展
 
  2000年10月1日  大丸ミュージアム梅田

大丸ミュージアム梅田は実に久しぶりでしたねえ。ちょうど1年になるのかあ。ここはいつも結構いいのをやってくれるので今までも一番通っている美術館なんですが、ここのところはいいのがなかったですね。不況のあおりをくってるんでしょうか。
しかし、久しぶりに、おお〜っとこれは行かねばってのが登場したのでさっそくと行ってきました。
今回の展覧会は、「ユトリロとヴァラドン」、ユトリロとその母親の作品をそれぞれ展示するという、ちょっと興味引かれる内容でした。ユトリロは一昨年、京都での展覧会をみてから一気に好きになってしまいまして、今回はどういった作品が観られるのか楽しみでした。
入場していきなりユトリロの「雪のサン=リュスティック通り」とヴァラドンの「自画像」。ウ〜ン。いきなりにユトリロの質のいい作品に釘付け。どんよりと暗い空、通りに面する家々の壁の暗さ。それとは対照的な道に積もる雪と、中央にそびえる教会の白さ。落ち着いた雰囲気とその味わい深さ。やっぱりユトリロいいなあと再確認。さらに、ヴァラドンの自画像はしっかりとした輪郭の線に、力強いタッチ。ヴァラドンの写真も紹介されていましたが、かなり自我をしっかりと持った感じの芯の強さとたくましさが感じられる。美人かどうかはよく分かりませんが…
  まずはユトリロ作品から。初期の頃は結構筆のタッチも荒いところがありますが、その色合いが暖かい。ユトリロの色といえばなんでしょうか。やっぱり白なのかなあ。漆喰や卵の殻をも混ぜたというその白は、雪の白、街並みの壁の白、教会の壁の白、すごく際立っています。ギラギラ感のある白ではなくって何故だか暖かみをも感じでしまう白です。パリの街並みの絵は結構似通った構図とかあるんですが、よっぽどパリの街が好きだったんでしょうか。建物の輪郭をしっかりとした線で、窓枠も強調して、そして1階の鮮やかなショウウィンドウ、建物の表情を丁寧に描かれています。特に後期の作品になると、建物の構造的な物にも興味を持っていたとかで、当時の写真を見ると、ホントそのまんま描かれています。私としては前期の粗いタッチでの描きかたも好きでした。
描かれたもので多いのが、「モンマルトル」の様々な表情、教会、カフェ、そしてなんといっても、「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」に「ラパン・アジル」。ムーラン・ド・ラ・ギャレットは水車が特徴ですが、その建物の全体を描かれていて、今回は新たな発見でした。また居酒屋「ラパン・アジル」。やはり今回も数点あり、足繁く通ったこの居酒屋をこよなく愛していたユトリロの姿が浮かびます。晴れた日、曇った日、雪の日、数知れず様々な表情を描きつづけたところ。もう建物を実際に見なくてもその細部まで描けたんじゃないかと思われるほどです。今回は「雪のラパン・アジル」がとっても良かったです。
一つ面白いのが、ユトリロの描く人物像。建物の間に、ほとんど動きも無く、粗く簡単に描かれていて、小さくホント配置されているってだけ。それに、女性のお尻がやったらまんまるに膨らんでいるのが特徴。ユトリロの性的抑圧が原因だともいわれていますが、あんまし人間には興味なかったのでしょうか。

今回は構成的に、ユトリロの前期作品、ヴァラドン作品、ユトリロ後期作品、といった具合に並んでいました。で、ヴァラドン作品。まあユトリロは精神的にはかなり荒れていたようですが、絵としては暖かみも感じてしまう、そんな作品とはまた違った、とってもしっかりとした意志を感じる作品ばかりでした。力強い太い線に、はっきりとした色調、お城の絵のように何点かは柔らかなイメージの作品もあったけど、女性とは思えない力強さでした。多くの有名画家にもモデルとしても愛されていたといいます。驚いたのはあの、ルノワールの傑作、「都会のダンス」とか、あのダンスの女性、あれがユトリロの母親だったとは。なんだか感動です。絵ではとっても愛らしい表情が印象的だったのに、ヴァラドンの写真とか見てるとなんだかイメージ変わるなあ。強く自立した、自由奔放の女性と云った感じでした。

父親は定かでなく、自分のことで忙しい母親の愛情にも飢えて育ったユトリロ。絵を見ているだけでは、精神を病んでいたユトリロの印象はあんまし感じられない。でも精神を病まないといい絵は描けないのかとも思ってしまいます。今回はユトリロと母親との関係を通してユトリロの人間像も垣間見え、そういった背景を感じながら絵を見ていると、いままでとはまた違った印象をうけてしまいました。作品的にも結構充実していて、とっても満足の展覧会でした。
また今回、入口でチケット買おうとサイフを取り出し、うろうろしていると、「ちょっと、お兄さん!」と一人のご婦人が。何かと思っていると、「チケット余ったから、あげる」と、招待券を譲っていただきました。こういうの2度目だなあ。なんかごっつう得した気分でした。どこの方が存じませんが、ありがとうでした。
 
 
  Created : 8 Oct 2000