A Field of Wisteria
スペインの映画
 

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ビクトル・エリセの世界
ミツバチのささやき
エル・スール
マルメロの陽光

  

ミツバチのささやき スペイン 1973年 監督:ビクトル・エリセ チラシ:[1] [2] [3] [4]
とにかく可愛いアナ・トレント、誰もがこの少女の魅力に引き込まれずにはいられないでしょう。ビクトル・エリセの処女作にして、この名作。スペインの内戦の問題をも視野に入れ、繊細で詩情豊かに、しみじみと語り掛けてきます。
1940年頃スペインの片田舎、巡回映画がやってきます。なぜか「フランケン・シュタイン」。映画では少女が殺され、そしてフランケンシュタインも殺され…、なぜ殺されたの?アナは姉に聞きます。姉のイザベルにフランケンは怪物でなく妖精で草原の朽ち果てた一軒家に生きていると言われ、すっかり信じてしまったアナ。”ソイ・アナ”(私はアナよ)、”ソイ・アナ”、と精霊に呼びかけます。すると或る日その一軒家に…
せっせと手紙を書きつづけ心家に有らずの母、ミツバチのささやきの中で養蜂の仕事をする言葉少ない父、いつもよそよそしげな両親、そんな家庭もアナの失踪を機に変化が…
全編を覆う幻想の世界。見事なカット、シーンの数々、多くを語らず最小限の単純な映画表現。そしてなにより、アナ・トレント。ほとんど無表情ながら何かを思いつめる眼差し、時折みせる無邪気な笑顔。昨年、嬉しいことに映画館での上映があり、すっかりはまって1週間で3回観に行ってしまいました。お金をやたらかけたり、スケールの大きさばかりで大味な作品が多いどこかの映画と違い、小さな大傑作と言えます。

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エル・スール スペイン 1983年 監督:ビクトル・エリセ チラシ
ビクトル・エリセ制作の第2作目。実に前作より10年と云う歳月。前作「ミツバチのささやき」ファンを裏切らぬ内容。いやそれ以上かもしれません。さらに美しく、さらに深く。
バスク地方の川ぞいの城壁に囲まれた町、少女エストレリャの成長と、彼女の目に映る父親の姿。「星」を意味するエストレリャ、彼女の8才から15才までの成長を追いながら、父がなぜ自らの故郷を捨ててきたのか。いつも心に影を持ち続ける父、南、「エル・スール」とは父が捨ててきた故郷。最後には過去に呼び戻されるようにひとり命を絶つ父、成長したエストレリャはその謎を見極めに「エル・スール」へ…。
ミツバチ同様、多くの謎をふくませながらの物語、説明的な映像を極力はぶき、映像と音楽により詩のように語り掛けてきます。
冒頭のシーン、明け方父がもう戻らないと予感するエストレリャ、その時室内の暗闇にしみこむようにさしこむ外の明かり…、いきなりのこの映像美、しびれます。聖体拝受式の日父と娘が踊るパソ・ドブレ、カフェで窓越しに出会う父と娘、草原で水脈を占う父と娘、どのシーンも言葉では語り尽くせない美しさには、もう感動がじわじわと押し寄せてきます。
この映画もミツバチ同様、映画館で観られたのは幸せでした。

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マルメロの陽光 スペイン 1992年 監督:ビクトル・エリセ チラシ
エリセ作品第三弾。またまた前作後長き沈黙の後の作品。
前2作とは、ちょっと赴きの違った内容。ドキュメンタリー的な内容。一層強調されたのは、その光と影の映像美。
画家アントニオ・ロペス、彼がいまだに描けない油絵。秋になると陽光を浴びて金色に輝くマルメロ、これまでに描けたのはわずか2点、それも夜の光りを浴びたマルメロ。なんとか今年こそはそのマルメロを描きたいと挑みます。画家でもある妻、娘たち、画家の親友、そんな愛情あふれる人たちに囲まれ、アントニオはキャンバスに向かいます。しだいにマルメロの実に光りがやどりはじめます。
前2作と違い、ストーリーの展開は少なく、ほとんど1本のマルメロの樹が植わっている庭の風景。そしてそれに対峙する画家。かなり退屈なところもあり、観ていて眠たくなってしまいました…。しかし、その映像は光りの魔術師エリセの真骨頂が随所に見られます。マルメロの実にあたる光が刻々と移り変わる映像は見事。至福の映像美です。

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Last Update : 8 Jan 2001