002:階段

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 階段をイメージすると、上から覗き込む映像と、下から見上げる映像どちらが先に浮かぶだろう。

 

 

「僕、上から覗き込んでる」

 俯きながら呟く。まるでそこに、本物のそれが見えているかのように。

「凄く長い。果てが見えない。下の方は、まっくらだ。でも、何だか行かなきゃいけない気がする」
「何で?」
「わかんない」

 でもそういうイメージ。言いながら、しかも螺旋なんだとぐるぐる指を回した。

「いっぺんに飛び降りれたら、楽なのにね」
「でも死んじまうだろ、そんな高さなら」
「…そうだね」

 木陰からこぼれる日の光や、足元をゆるやかにさらって行く川の流れはまるで絵本の中の1ページのように爽やかで健康的だ。でも、そんな中2人座ってやってる事はどこか哲学的と言うか、何と言うか。なんだか訳のわからない会話。
 エブラは鮮やか過ぎて、日に透けると自分でも眩しくて仕様がない緑色の髪を後ろで一本にくくりながら、うーん、とゴム紐をくわえたまま小さく唸った。

「何で急にそんなこと言うんだよ?」
「夢、見たから」
「夢?」
「ゆうべ」
「階段の?」
「僕、落っこちた」

 ぽつり、言った横顔はいつもの悪友の顔ではなかった。ついさっきまで馬鹿みたいにぎゃあぎゃあわめき散らしながら川の中でひっくり返ってったってのに。むしろ、いつもよりずっと元気を撒き散らしてるくらいだったのに。
 そう、思って。
 はた、と「そうか」と気付き、エブラは彼の性格を思い出し、一気に胸が苦しくなった。

「…ごめんな」
「何で謝るの?」 
「や、…気付いてやれなくて」
「そんなの、だって…エブラだって寝てたんだから、しょうがないじゃない」
「でも、お前がくるしい時にはさ」

 となりに。
 せめて、となりにいたいじゃんか。

「…うん」

 ダレンの笑顔が、少し、泣き顔だった。
 頭を撫でたら安心したように目を閉じたので、撫でながらキスをした。水の匂いがした。頬の産毛がきらきら日に照ってきれいで、思わず撫でるとくすぐったいよとうひひ、色気のない声を漏らす。

 

 

 そうだね、とダレンはこっそり頷いた。
 となりにいてくれたら。ずっとそうであるなら、どんなにいいか。
 でも、夢の中で。

 君は、段のてっぺんに立っていたんだ。

 

 

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