012:ガードレール
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目に見えない邪魔者がいる。外れようと思うとすぐに跳ね返される。
2人にとって互いは、そんな存在だった。
だからどうしても、自分達は3人で歩いて行かなければならない。彼を間に挟み。もちろん面白くはない。隙あらば、そう、文字通りその邪魔者に隙間さえあれば。すぐさま間の彼の手を取り、そこからすり抜けて行くつもりである。
けれど、2人…パーシヴァルも、ボルスも。困ったことに互いにそう思いながらも、互いのことを認め合い、そしてそれどころか大切な友人だとまで思っていた。付き合いも長く、共に苦難を乗り越えて来、こうして現在、突然狭くるしい小部屋に住めと押し込まれても。それなりに上手くやって行けるほどの。
だから2人は困り果てる。お前は大事な友人だ。けれど。
…けれど、この子に関してだけは。
譲れないんだ。絶対に。
「…それは、こちらも同じだ」
椅子に腰掛け、ため息混じりに。けれど真っ直ぐな声で返す友人の、苦しげな表情を見、パーシヴァルも眉根にしわを寄せる。そうして思い返す、あのやわらかな笑みを、優しい、けれど凛とした声を。あれが自分だけのものだったら。あさましい考えだとは思う。が、止められないのだ。まして親友に譲ってやるだなんて、仮にも考えられないほど、今の自分も、そしてこいつも。追い詰められている。
「どうしたものかな」
呟いた自分に、
「…そうだな」
覇気のない声が返る。全く、らしくない。思わず笑ってしまった。すると驚いたことに、奴も笑みを浮かべていた。
馬鹿らしい。まったく馬鹿らしい。
そもそもがあの子供本人に、まだ互いに気持ちすら伝えていないのだ。もしもどちらかが、どちらかに席を譲ってやったとして、その向かいに彼が座ってくれるかどうかも分からないのに。それなのにその席を争い、二人、こうして押しのけ合っているだなんて。それも至極真剣に。
十も歳の離れたあの子に。「選んで貰えれば、一番手っ取り早いんだがな」
「…何と言うんだ。どっちの方が好みだ?とでも聞いてやるのか」
「まあ、そういう事だな」
「きついな」
「ああ、おまけにかなり恥ずかしい」
「しかも馬鹿丸出しだ」
「それでももし彼が選んでくれるなら、俺は一向に構わんがな」
「それも、そうか」
「そうさ」
ただ問題は。
仮に彼がどちらかを選んだとして、
…それで。今まで保てていた均衡は、保たれるのかということ。ヤジロベエの重りは、両腕でなくてはならない。
ガードレールは、それほど強固でもない。
けれど、ぶち破りたいと思っている訳ではないのだ。…決して。
「…いっそ2人でというのはどうだろう」
ふと、パーシヴァルが漏らした名案。しかして、…酷過ぎる提案。
当然の如く。ボルスの背筋はあっさり強張る。「…パ、パーシヴァル?」
「うん、我ながら名案だな」
「そ、いや、…俺は嫌だぞ」
「仕方ないだろう。俺はお前と彼のこと、両方が好きなのだから」
「気色悪いことを言うな!」
「…失礼な。俺だってなにも、お前を抱きたいとか考えている訳ではないぞ。変な意味に取るな、むっつりめ」
「だ、だ、…抱く、いや、むっつり、何だと!?」
「よし、そうしよう。うん、それでは週交代ということで。とりあえず今週は俺で良いか?」
「勝手に決めるな!大体何でお前が先なんだ!」ははは、と朗らかな笑い。
ビュッデヒュッケは今日も平和である。
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