022:MD
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やばい、見つかった。
あからさまにそんな台詞を顔に貼り付けたハヤトを、ソルはじとりと見下ろした。「…何してんだよお前は」
「…う」その姿はまるでみの虫だ。赤茶けた色の毛布にぐるりとくるまり、ベッドの上でもぞもぞと。何をしているのかと、声をかけた瞬間ビクリと思い切り跳ねたさまは、面白いとか笑えるとかいう感情を通り越して心底の呆れをソルにもたらした。…ホントに何やってるんだこいつは。
思い、ほぼ無理矢理に毛布をひっぺがした先には、
何故か赤い顔をして。大急ぎでなにかを毛布の中へと隠している、ハヤト。
ソルの口元が、…口元のみが、うっすらと笑みを浮かべた。「それ、何?」
「…い、いや…その」えーとえーとえーと。必死に自分を何と誤魔化せば良いか考えている彼を見て、可哀想に思って深く詮索せずにおいてやるか、それとも尚のこと探究心に火が点くか、人それぞれだろうが。
ソルは、ハヤトにとっては災難なことに、完璧に後者の人間だった。
問答無用にその胸元に、手を突っ込んだ。うわっと悲鳴が上がったが、知ったことか。探し物はすぐに見つかった。小さな四角い、硬質のもの。ぐい、と引っ張り出した、それは、「…何だこれ」
少なくともソルの人生17年の中では。一度も目にしたことがないものだった。
「…MD、っていうものだよ」
「エムディー?」はあ。溜息まじりにハヤトが呟いた聞き慣れぬ単語を、オウム返し。
困ったように眉をひそめるハヤトを見、
…ああ。と、小さく、理解した。「お前の世界のものなのか」
「うん…」声は低く、沈んでいる。
(…バーカ)
こんな部屋暗くして、寝てるフリして、こっそり毛布にくるまって、
(わざわざそこまでしなくても、傷付かねえよ、…だってお前は)
「…ソル」
「悪かったな、ほら、返す」
「ソル」
「なあ」
「え?」
「それ、どうやって使うものなんだ?」にこりと笑んだ。
大丈夫、演技なんかじゃない。…こそばゆくて、そうせざるを得なかったのだから。
ハヤトは、困惑を見せた。それに苦笑。ハヤトの眼が見開かれる。ギシリ、とベッドのスプリングが鳴り、そちらに一瞬気を取られ、慌ててこちらに意識を戻し、手の中の四角い鉄のかたまりと、ソルの笑顔と。行ったり来たり、ちらちらと視線を泳がせて。
けれど結局は、滅多に見れないソルの笑顔に敗北する。
ふたつのイヤホン、二人で分けて、
月夜の中。小さく異界の歌が夜空に吸い込まれて行った。
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