034:手を繋ぐ
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「ヨルダ、おなかすいてない?」
そう問い掛けたイコに、ヨルダは薄い灰の髪をかすかに揺らし、小さく目を見開いた。
ご・は・ん。言いながら、自分のおなかをポンポンと。
それでもヨルダは静かにそこに立ち尽くしながら、じっと、何も言わずにイコを見ている。
イコは困って首を傾げたが、あきらめて、また薄い手を握り締めた。
やわらかな熱が、少年の胸の内をチリチリと心地良く焼いて行く。「僕は少しすいたな。この城、食べ物ってあるのかな。前に本で読んだことがあるんだ、大広間ってとこでこういう城に住んでる王様はすごいごちそうを食べるんだよ。君は食べたことある?」
ヨルダは静かに微笑んでいるばかり。
「…あんな牢に閉じ込められてたんだもんね、ないか。…うん、僕もないけど」
トットットッ。
風のざわめき。鳥の鳴き声。かすかな潮騒。
その中を、軽快に過ぎて行く、二人分の足音。「あっ、それじゃあ」
きゅ、と。
少し強く、手のひらを握り締めた。「この城を出たら、一緒に食べようよ、お祝いに!」
さらさらと、かすかな衣擦れの音を立て。
彼女の服が、羽のように空を舞う。「僕、料理するのうまいんだよ」
「………、」
「いっぱい果物も切ろう。スープもパンも食べ切れないくらい作ろう。花も摘んで飾ろう。魚も釣るよ。テーブルがあふれるくらい、いっぱい。ね、きっと楽しいよ」
「イコ」
「えっ?」
少女の唇が、やわらかに笑む。
「ノノモリ」
…何を言われたのかは、わからなかったけれど。
その微笑みがとてもきれいだったので、イコも歯を剥き出し思いきり笑った。
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