036:きょうだい
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「あの二人ってほんとに仲良いよねえ」
何気なく呟かれた言葉。
もちろん何の気なしに、
けれど一部にとっては、…大分、深い意味を持つその言葉。
純なる兄カイルは、妹のそんな一言を武器の手入れの片手間に『そうだな』と受け流した。ヤードも薄く微笑んだだけで、茶を淹れる手を休めはしない。ゆっくりと葉がひらいていくさまを嬉しげに眺めながら、ゆるゆるとそれを湯呑みに注いで行く。「まるで兄弟みたい」
「…兄弟、ねえ」毒蛇だけが、うっすら笑みを浮かべそんな二人を遠く見ていた。
そして当の本人たちはといえば、そんな評価もどこ吹く風…否、そもそも聞こえてもいない。時折笑いさざめきながら、船首から下の波間を覗き込んだり、空を行く鳥の色をとらえて教え合ったり、その合間、菓子を口に運んで味を教え合ったり、互いをかまうのに忙しそうだ。確かに傍目から見れば、仲の良い兄弟に見えなくもない…ことは、ないのだが。「……うーん」
あざとい彼女の目は誤魔化せない。
他の誰をもを騙し通せてもだ。
まあ、なにしろ、本人たちに騙す気そのものがない上、本人たちも気付いていないのだから、皆が気付かなくてもしかたのないことなんだけれど。「困った子たちねぇ」
「へ?なにが?」
「あー、ううん、こっちの話よ」にっこりと艶やかな紫の唇が笑みを形作る。毎日潮風になぶられながらもなめらかさを失わない頬へ(それはもちろん、日々の努力のたまものに他ならない)そっと手のひらを添えて、愛すべき善人たちが首を傾げているさまを見守る。
まったく、可愛いったら。
花散らしちゃって、もう、やってらんないわよ。
心中、肩をすくめながらも、けれど胸内はあたたかだ。
もちろん少しばかり眉はひそめるけれども、
でも、まあ。
ねえ?愛し合ってるんなら仕方ないじゃない?
「ソノラー」
「もう、だから何ー?スカーレルなんか変だよ、にやにやしちゃって」
「シアワセなのよ。あんたも早く彼氏作んなさい。それで、あたしに見せて頂戴な」
「…にゃ!?」
「ぐほっ!」うふっ、笑いながら鼻先つつき、言った瞬間、
せっかくの極上の茶を、カイルが惜しげもなく吹き出した。
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