065:冬の雀

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「う〜〜っ、…寒ぃってばよう!!」

 ごしごしごしごし、腕を擦り合わせる。けれど生まれた小さな熱は、すぐに風に吹かれて冬の灰色空にまぎれて消えた。子狐はてっこてっこ跳ねるように家路を急いだ。帰って、ストーブに火ィ入れて。暖まんなきゃ、指ィ真っ赤んなって、もう千切れそう。
 飯なに食おっかなあ。カップラーメン、まだあったかなあ。
 イルカ先生にこないだ貰った草餅は、確か昨日の晩飯で全部食っちゃったし。買って帰ろっかなあ、金、もってたっけ。
 ごそごそポケットを探る、指が冷たくてかたくなって、上手くつかめない。それでもなんとか引っ張り出した。銀色のが2枚、茶色のが1枚、小さい銀色の軽いのが5枚。

「……にひゃくじゅうごえん」

 却下。子狐はこっくり頷いて、やっぱり真っ直ぐ帰ろうとてっこてっこまた駆け出す。
 ばたばたと首に巻いたマフラーが風に鳴って、耳をはたく。くすぐってえなあ、ぎゅっと引っ張って直したけれどまた風に煽られてばたばた。いっぺんしばりなおそう、かちこちの手を伸ばした。
 それを誰かが突然引っ掴んだので、子狐、ナルトは驚いてぎゃっと飛び上がった。

「なーにじたばたしてんの、お前は」
「あ、…なーんだセンセー、びっくりさせんなってばよ!」

 手首を掴まれてひょいと持ち上げられる、放せよ、とじたばた。カカシはにいっと笑って、望みどおりぱっと放してやった。解放されて、ナルトは急いで体勢をなおしながら、

「…なにやってんだってば、先生?」
「いやあ」

 がしがし、と銀の頭をかき回す。灰色の空に透けて、白くきらきら光っている。

「久々にラーメンでも食いに行こうかと思って」
「…ラーメン?」

 じゅわっと口の中に、よだれが溢れる。慌ててごくりと飲み干す、カカシはにっこりしている。

「そ、そっか。オレ、オレも、これから帰ってメシ食うんだ」
「ふうん、そう」
「うん、そう…」
「………。」
「…えっと、…」
「………。」
「…じゃあ、オレ、帰るってば。明日十時、センセー遅刻すんなってばよ!」
「ちょっと待った」

 がっき。と肩を掴まれる。
 ナルトはびくりとして、再び、けれど今度は小さく飛び上がる。ひょこりと見上げれば、やはりにっこりしたカカシと目が合った。マフラーがばたばた鳴って、ナルトの頬のかわりにカカシの手のひらを打つ。ぱしぱしぱしぱし。

「な、ん、だってば」
「…あのねー」

 カカシはうーん、と顎を撫で考え込んで、

「先生、一人でラーメン食いに行くの、少し寂しいかなーとか思ってたとこだったんだけど」
「…へ?」
「ああ誰か寂しい俺と一緒に味噌ラーメン食ってくれる子、いないかなー」

 そして溜息。
 ナルトはただでさえ大きな瞳を更にくるりと大きくして、きょとんとカカシを見上げる。
 ピピピピ、
 雀が一羽。寒い寒いと言うように高く鳴いて、二人の上をピュウ、風のように飛んで行く。
 カカシはそれをぼうっと眺めている。
 ナルトはポケットの中の215円を握り締めた。
 言っていいの。言っていいのかな。
 カカシがゆっくりとこちらを見下ろす、
 そうして、にっこりとまた柔らかく笑むのだ。
 冷えて真っ赤になった頬が、ぱあと花開くように生意気そうな笑みに彩られた。

「……そこまで言うならオレが一緒に行ってやるってばよ!」
「あ、そう?」

 嬉しいなあ、言って、ぽん、頭を撫でて。

「でもオレ金ないから、センセーの奢りね!」
「はいはい」

 冬の空の下、二人、手をつないでてっこてっこ。歩き出した。 

 

 

 

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