099:ラッカー

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 咄嗟に避けはしたものの完全にかわすことは出来なかった。髪に、背に、不快な冷たさと臭気。
 ビリ、頭の芯まで、赤く赤く、
 気が付いた時ナルトは相手の鼻っ面に思い切り拳をめり込ませていた。

 

 

「…お前なあ…」

 わっし、わっし、わっし、

「オレは悪くねぇもん」
「だからって鼻ァ折っちまうのはやり過ぎだ」

 わっし、わっし、

「ほれ、目ぇ瞑れ」
「…ん」

 ザァッ!

「……まだ落ちねえなあ」
「もういいよ、こんだけ落ちれば上等だって」
「んー…」

 ひょいと一房摘んで、

「髪、痛んじまうなあ…」
「んなの、別にいっつもだって」
「んなことねえぞ、お前の髪、やわらかくて俺は好きだ」

 何でもなく言って、手のひらにたっぷりトリートメントを取り、なじませてくれる。

(…だからいいって言ったのに)

 胸の内あふれ持て余すほどの、痺れるような感情が、

 

 

 

 けんかをした。
 相手は隣のクラスの奴ら。
 皆で寄ってたかって意味なくはやしたてて、馬鹿にして、取り囲んで。頭に来たので睨んで怒鳴りつけてやったら、それまで遊び半分だった目が途端に残虐なものに変わった。そこらにあるものを掴んで、投げ付けられて。それでも身のこなしには自信のある方だ、払い落としたり避けたり投げ返したり、あわや乱闘になりかけたその時。
 ブシュッ。
 背後からそんな音がした。
 振り向かずそのまま横っ飛びに避けた、けれど避け切れず、髪に、背に、不快な冷たさと臭気。
 缶入りスプレー塗料、
 金の髪と気に入りのジャケットは汚らしい赤のまだら模様となり、
 血ィひっかぶってやんの、
 言われ、目の前が暗くなった。

 

 

「…どっか痛いとこねェか?染みるとか」
「………どっこも痛くねってば」

 優しいゆびさき、
 喉の奥底引っ掻かれ、
 むずがゆくてどうしようもなくなる、
 やめてくれと言いたいのに、いかないでと、哀願したくも。
 気が付くと目の奥が熱かった。
 よしよしと大きな手が髪を撫ぜる。
 ナルトはぼろぼろ涙をこぼして、
 イルカの胸に思い切りしがみついた。

 

 

 

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