第二章
「送信者 アル」
「まったく…あんたに着物姿を見せんのは、闘牛に赤い布見せるのと同じで…」ブツブツ文句を言いながらも、俺も普段着に着替えて外に出た。最寄りの駅から電車で二つ目のところに、この辺りでは一番大きな神社がある。改札を出るとすでに初詣客で、ごったがえしていた。「はぐれないように注意しないとな」そう言ってから「おおっと!『ぢゃあ、迷子にならないように手をつなぎましょう♪』なんて、ふざけたことは言うなよ!」と、慌てて付け加えた。
「送信者 アブ」
「……じゃあ、こうしましょうか」すかさず彼の腰に手を回して体を密着させ耳元で「あの…怒ってない?」と、怖々聞いてみた
「送信者 アル」
「さ.わ.る.な!公共の場でそういうことすんなって何度言ったら…大の男がべたべた寄り添って歩いてたら周りが退くだろ?あんたの辞書には“羞恥心”とか“道徳”とかいう文字はないのか?!」宮市さんの手を払い除け、ひといきまくしたててから「まあ…着物のことは、すげぇムカついたけど…俺も夢中になっちゃったしな…」ニカッと笑った。「でも最初に殴り飛ばしてやめさせるべきだったか?だけど、あんた止まんないしな…」
「送信者 アブ」
「ハァ〜…殴られたら…さすがに退くでしょう…私にだって道徳心はありますから……しかし君そんなに私を殴りたいの?」
「送信者 アル」
「殴りたいわけじゃねえよ。そうしてたら、目が覚めて、冷静になってくれたかなと思って…無理だったかもしんないけどさ」
「送信者 アブ」
「本当、今回は君の大事な大島まで台無しにしてしまって申し訳なかったです…情事は最高でしたが……君のご両親の気持ちを考えると……ハァ〜…」
「送信者 アル」
「そりゃまあ…新年早々、男とHして着物汚しましたって言ったら、ひっくりかえるよな…」俺は、ポリポリと頭をかいた。「まあ、なんだ…とにかくクリーニングして…あっ、くれぐれも言っとくけど、俺、自分でクリーニング屋に持って行くの嫌だからな」
「送信者 アブ」
「私もスーツがクシャクシャに……なので一緒に持って行きますから安心して下さい。君の着物姿も最初で最後……大変残念ですが仕方ないですね……ハァ〜…」
「送信者 アル」
「ハァ〜って…あんたが発情して押し倒さなきゃすむ話なんだけど…」呆れて宮市さんを見つめた。
「送信者 アブ」
「だから申し訳なかったって言ってるじゃないですか……でも…あれは、あの姿は反則って言うか…あんなの見せられて、我慢しろって方が……それで二度と見せないってちよっと…なんか…」段々ムカついて来た…
「送信者 アル」
「あのなぁ…俺の着物姿見て興奮して押し倒すのは、世界中探してもあんたくらいのもんだよ!で、あんたと迂闊に着物着て外、歩けないだろ?いつムラムラするかわかんないだろ?歩く危険人物なんだよ!」
「送信者 アブ」
「そんな事より君さっき私の前では二度と着ないって言いましたね……………じゃあ…誰の前なら着るんですか?」睨みながら話した
「送信者 アル」
(また始まったよ…)「いいか、冷静になってよく聞けよ!さっきも言ったけど、あんた以外の誰も、俺の着物姿でムラムラしないから平気なの!あんたは闘牛になっちゃうから危険!」
「送信者 アブ」
「失敬な!私はいつでも沈着冷静です!!……じゃあ…プレイとして着物使用!これならどうです?」
「送信者 アル」
頭痛くなってきた…「わかったよ…浴衣で温泉旅館ごっこ…気がすむまで、ということでどうだ?…それで免疫つければ?」
「送信者 アブ」
浴衣……温泉…ごっこだと?!「違う!着物です!き・も・の!大島とまでは行かなくても、キチンとした着物でヤりましょう!!」
「送信者 アル」
「…その着物…誰が用意すんの?いちいち毎回着付けすんの?汚れたらいちいちクリーニングで洗いはりすんの?贅沢な遊びだな…つきあってらんないよ!」
「送信者 アブ」
いつもいつも私の意見には文句ばっかり「………それもそうですね!!そこまでお金かける価値ないですよね!!やる事一緒だし中身も変わりませんし!!」かなり拗ねた…(初喧嘩勃発?!)
「送信者 アル」
「おい、こらっ!ちょっと待て!俺には、金かける価値ないってか?やること一緒で中身変わらない?!失礼だぞ!その気になったら、あんたなんか俺にメロメロの骨抜きになんだよ!」
「送信者 アブ」
「へぇ〜…面白い!では骨抜きにして頂こうかな?!…………って、言うとでも?!残念ですがその手には乗りませんよ!フンッ!」
「送信者 アル」
「こ…の野郎!俺の着物姿に興奮してレイプまがいのことしといて、味しめたら、着物プレイしましょう♪とか言っといて、なんだよ、その態度は〜!!」…いつもなら、人の目を全く気にしない宮市さんにストップをかけるのは俺の役目なのに、すっかり二人ともエキサイトしてしまい、人込みのど真ん中で、かなり怪しい会話を繰り広げていた…
「送信者 アブ」
「……だから再度やる価値もないって言ってるじゃないですか!」着物姿もプレイも断られナーバスな上に彼特有の容赦のない暴言に怒りを押さえる事が出来なかった
「送信者 アル」
「ヤる価値ないだと〜!俺は浴衣で妥協しようって言ったじゃないか〜もういいよ!」人込みを掻き分け、ズンズン先に歩きだした
「送信者 アブ」
勝手に先々行く彼の後をついて行きながら「誰が妥協してくれって頼んだんですか?私は一言も浴衣がいいなんて言ってませんよ!人の話しをよく聞きなさい!」
「送信者 アル」
もう宮市さんのことは無視!いつの間にか本堂までたどりついていたので、賽銭投げ入れて腹立ち紛れに鈴をジャカジャカ鳴らして派手な音させて柏手をうった。それから一生懸命拝んだ。
「送信者 アブ」
いくら話しかけても彼は無視!で、お賽銭を投げ鈴をいかにも(俺は今猛烈に怒ってます!)と言いたげに鳴らしている……彼の隣が空いたので私もお賽銭を投げ目を閉じて手を合わせ精神を落ち着かせ(え〜…と、今年も相澤君と仲良く一緒に居られますように………あれ?)そうなのだ、結局こうなるのだ。自分で自分に呆れながら横目でそっと彼を見つめた…
「送信者 アル」
俺の横で手を合わせている宮市さんをのぞき見ると目が合った。「あんた、神様信じないんじゃなかったの?さっき結構、罰あたりなこと言ってたから、ちゃんと拝んどくほうがいいぞ」そう言ってから「何、お願いしたんだよ?」ボソッと尋ねた
「送信者 アブ」
突然目が合ってドキッ!とした…彼の問いに本当の事言ったりしたら絶対必ず確実にバカにされるから「えっ?!あっ…こ、今年も仕事が上手く行くようにって………君こそ随分真剣でしたが何お願いしてたんですか?」
「送信者 アル」
「あんた…俺たちがつきあってんのは、神への冒涜だって言った」俺は真剣な表情で彼を見つめた。「だから、これからもずっと宮市さんと一緒にいたいけど許してくださいって頼んだ」
「送信者 アブ」
……頭の中が真っ白になった…「う、うそぉ……だっ‥だって無視してさっさと行ってしまったり恥ずかしいとか羞恥心がないとか…どう考えたって嫌われてるとしか……なのにそんな事お願いしてくれていただなんて……」もぅ…泣きそうだ
「送信者 アル」
「へへ…正月だからな。たまには素直になんのもいいだろ?」ニッと笑いかけた
「送信者 アブ」
……こんな素直な彼に嘘を付いてしまった…罪悪感で潰されそうだ……「相澤君…実は、私も本当は今年も君と仲良く一緒に居られますようにってお願いしたんですが…絶対笑われると思って言えませんでした……すみません……」
「送信者 アル」
「じゃあ、お互い同じことお願いしたんだな。改めておめでとう、今年もよろしくな」
「送信者 アブ」
「こちらこそよろしくお願いします…あの、手繋いだら……やっぱりいいです…早く帰りましょう!」
「送信者 アル」
俺は、周りが人でいっぱいでもみくちゃになってるどさくさに紛れ、宮市さんの唇に軽くキスした。「ここでは、これで我慢しろ!続きは帰ってからだ」俺は彼を残し先に歩きだした。
「送信者 アブ」
一言言い残し一度も振り返らず人込みに紛れ混む彼の背中を見失わないように見つめながら後を追いかけた…ったく、こっちが迫れば逃げるくせに遠慮すれば挑発する…やれやれ王子様の相手も楽じゃない。でも、まっ!私以外彼のお守り役は無理って事で。今年、いや、これからもずーっと仲良くやって行きましょうね♪とりあえず新年なんで今年もお守り役謹んでお受け致しますからね!相澤君♪
おしまい
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