ブリジット・ジョーンズの日記 (DVD)
監督:シャロン・マグワィア
レンタルで見たのだが、あまりに愛しくなって、ディスクを買ってしまった。
この作品の主人公はロンドンに住む三十二歳の独身女だが、彼女のキモチというものは、都会で一人暮らしが長い者には男女の違いなく共感出来る事だと思う。結婚に焦るかどうかは別にして、やっぱり一人は寂しい。
で、この作品の成功は、もちろん秀逸な原作のせいだけど、主演のレニー・ゼルウィガーの魅力に負うところも大きい。
この作品のために6キロ太った成果がでていて、実になんというか、「小デブ」の悲哀が出ているのだ。「小デブ」だからこその愛敬も、ドジに見えるところもなにもかも。小デブ〜大デブ歴37年の僕は、実に共感するなあ。
彼女は懸命に、いじらしいまでに一生懸命に生きている。しかし、ドジである。マズッたり他人にあれこれ言われても、泣きたい気持ちを押し殺して、ぷっくりした顔に笑顔を浮かべて明るく振る舞っている姿は、実にけなげではないか。切ないではないか。
初めて見たときは、イギリス映画ならではのビター・ユーモア(自分のドジぶりを笑うところにユーモアが発生しているのだが、その見方が自分にも実に辛辣なのがイギリス流だ)に笑い転げたのだが、二度目に見ると、彼女のけなげさに涙が出てきて困ってしまった。
主役を演じたゼルウィガーと役をごっちゃにして論じてしまっているが、それほどゼルウィガーは、ブリジットそのものになっていたし、見る側も完全にそう思ってみているのだ。「演じている」のは当然なのだが、これほど女優の存在を意識させなかった映画も少ないのではないかと思う。
とはいっても、このブリジット、小デブでドジだからモテないのかと言うと、そんな事はない。プレーボーイのニクイ男にもモテるし、幼なじみのぶっきらぼうな弁護士にも好意をもたれ愛を告白される。けっこうモテているのだ。
少女漫画(ラブコメ部門)の黄金のパターン「ドジでおっちょこちょいでブス(でも本当は可愛い)女の子が騒動を巻き起こしながら、結局は白馬の王子さまを獲得する」を完璧に踏襲している、と思ったが、さもありなん。この作品は(原作共々)オースティンの「高慢と偏見」を下敷きにしていたとは。いや、当時イギリスで大人気だったテレビドラマ版のキャスティングをまんま戴いたり(弁護士のダーシー。名前まで同じ)、ということをしている。僕は不勉強と言うか教養に欠けているというか、このオースティンの古典も読んでいないし、テレビドラマ版も見ていないのだが、この作り方は実にウマい、と思う。
イギリスの観客には「これ、オースティンなんだよね」とウィンク出来るし、作っている側もそのイメージでやっているんだから、ダーシーはイメージぴったりだろう。その自信は、事情をまったく知らない無知な日本人にも伝わって、「あのダーシー役はうまい」と思わせるのだ。
で、プレイボーイ役のヒュー・グラントが、実にうまい。ハマっている。魅力的だし、残酷な所も美しい、という感じ。
あと、ブリジットのお父さんを演じた俳優が、船越栄一郎が老けたらああなるだろうと思われる顔と演技だったのには驚いたし、笑った。
実際、愉快で友情に厚い3人の友がいて、なんだかんだ言ってもけっこうお洒落なアパートに住み、マスコミを転職して、ブリジットは結構幸せじゃないかと思う。ロンドンに行けば、まったくダメダメな東京と違って幸せが待っていそうに思ってしまうOLも多いんじゃないかと思う。しかし、東京で起きないことはロンドンでも起きないのだ。徳島で起きないことが東京で起きないのと同じように。
とにかく、この作品は、見る側の気持ちをあったかくしてくれる。友達っていいなあとしみじみ思えるし、一生懸命生きてれば何かいいことあるさ、とも思わせてくれる。
最近やたらと『癒し』『癒し』と言われるのが凄く嫌なのだが、実際問題、都会で一人暮らしを十年以上(オレはもう二十年を突破したが)続けていると、結構、あれこれが辛くなってくるものだ。そこのあたりの気持ちを実にウマく掬い取って、「まあいいじゃないの」と言ってくれているような作品なのだ。メゲたときに見直したら励ましてくれる作品だ。そういう映画は幾つかあるが「恋人たちの予感」と並んで、この秀作も、オレを慰め励ましてくれることだろう。