最初は、ムシの映画か、とあんまり興味はなかった。この後に控える映画祭オープニングパーティに出るために、バスに乗らねばならないと思っていたからだ。
しかしまあ、せっかくだから途中まで、という感じで見はじめたら……。
なんという素晴らしい映画だろう!
主人公の働きアリ・フリックが「七人の侍」よろしく(ここまでの展開はまさに「七人の侍」そのもの)街に出て来たところで、この『ムシの街』のシークェンスの描きかたが、「雨に唄えば」のレビューシーンでの田舎者ジーン・ケリーがブロードウェイを歩く、というナンバーのセンス。僕はこれでうわーっとなってしまって没入。もう椅子から腰は浮き上がらない。
ムシのサーカスの連中のキャラクターが凄い。うまい。特に、てんとう虫のフランシスは日本の「タンク・タンクロー」のようなデザインと表情で秀逸だし、コンビの丸ムシの顔がいいし、他のメンバーも個性が素晴らしい。
でまた、プロットも、彼らの特技をうまく使っているし、考え抜かれた展開で、もう言うことはない。
ほとほと感心したのが、いつもなら愛らしい存在として登場する『小鳥』が最も恐ろしい恐怖の大王のように出てくるところ。くちばしを開ける時に「くわあ!」という音が入るものだから余計にそうだ。
で、敵役はバッタ。このボスの弟がヌケ作というのも御約束だが、うまい。
で、こういうレベルで感心するのは素人、と思われてもいいが、CGでここまで光を使いこなす、というテクニックにほとほと感心した。光のあたり、抜け、回りこみなどが実写そのままに再現されている。
動きもまたアニメのカクカク感がまったくない。
CGというと、人工的でメカニックでつまらない、と思っていたけれど、こんなに豊かな表情が出て、愛すべき動きをし、温かさがあれば、何の文句もない。
CGというものを使いこなしたアニメーター諸氏の才能を讃えたい。凄い。
お話も、練り上げられたもので、無駄なエピソードは一つもなく、余計なものもない。
子供をうまく使うのはディズニーの伝統だが、それも生かされていて、新女王の妹の活躍をうまく使ったアイディアは素晴らしい。
アメリカ版の声の出演はオールスターキャストだが、日本語版の声優さんも、みんな大熱演で、吹き替え版で見てよかったと思った。
これ以上何も、言うことはない。
ヒットして話題になり、少しでも多くの人の目に触れてほしい。
類似作品の「アンツ」が気になるが、この作品のような素晴らしさはないんじゃないか?と思わせるほど、愛すべき映画だ。