安達Bの「エヴァンゲリオン」

「エヴァ」にハマッてしまった安達Bが、独自の考察を試みた文章を一挙掲載します。


『THE END OF EVANGELION』〜ネタバレなし

(NIFTY-SERVE 日本映画街フォーラム(FJMOVIE) 13番会議室 への発言です)

 試写会を御覧になった皆様の書き込みを拝見して居ても立ってもいられず、早速観て来てしまいました。

 皆様が書かれていたとおりです。映像的に予想以上のものを見せられた。凄い……一夜明けた今も感じ入っております。

 どのくらい凄いかというと、例の「世界の謎」ですね、使徒とは何か?アダムはどこにいたのか?結局綾波レイって何だったの?……等などがほとんど「説明」されていない。にもかかわらず心情的には完全に納得して劇場をあとにすることが出来た、その一事を以って十分ではないでしょうか。

 もちろん説明しようとすれば出来たでしょう。「終わり方」を除き、エヴァの作品世界には当初からの緻密なプランがあったと私は確信しています。しかしその解明は電子会議室や謎本でも出来ることなんですね。THE END OF EVANGELION は敢えてそういったすべて−−テキストデータに変換可能なものを切り捨てるという選択をしたのだと思います。「説明するな。描写せよ」……すぐれたフィクションに必須のこの鉄則に、これほど忠実な作品を観ることになるとは思いもよりませんでした。

 とにかく「サードインパクト」の黙示録的映像が、ここまで腰を据えて描写された、それが完全に予想を超えていました。こういうものは誤魔化そうと思えばいくらでも誤魔化せるし、逆に真剣にやるほどにギャクになるリスクも増大する、大変危険な領域だと思うので、(こんなことを言うのは生意気ですが)、よくやったよなあ、度胸あるよなあ、とひたすら感心しております。

 エゼキエル、あるいはパトモス島の聖ヨハネも、きっとこういうものを創りたかったことでしょう。これはヴィジョナリー(幻視者)の資質だと思います。「未だかつて誰も見たことがない」(*)ものを、ここまで映像化出来るというのは。(*私、諸星大二郎の作品を未だ読んでおりませんので)

 デヴィッド・リンチ(でびりんネ(^^)、ケン・ラッセル、ピーター・グリーナウェイ、テリー・ギリアム、デヴィッド・フィンチャー……等など、いわゆる「映像で見せる」タイプの作家、それもある程度「不快な表現」も美意識の貫徹のためには辞さない、そういう映画作家の作品も一応いくつか観てはおりますが、何分にも登場人物が「変な奴」ばっかりなので、中々感情移入には至りません。(それを言えばエヴァ主要キャラだって変な奴ばっかと言われそうだけど(^^;))

 でも、『新世紀エヴァンゲリオン』の場合、TVシリーズで一応普通?に感情移入してきた挙げ句に、こういうものを見せられたわけですよ。何というか……今までにない体験だったことは確かです。映像自体が持つインパクトに「感情」が加わるのですから……これは……かなりの衝撃と言ってよいでしょう。私は今までにこういう映像体験をしたことがありません。

 それにしても、TVというメディアで、それもロボットアニメもしくは学園ラブコメとして開始した作品が、映画館で、しかも一種のアートフィルムとして終焉を迎えるとは、一体誰が予測したでしょうか。当初の枠を超え、こういう形で進化、というか形態の変化を遂げていった作品も、私は寡聞にして知りません。ファンも良くついて来たと思います。

 それは、チョッチバカっぽいと言えなくもない「ラヴ・ミー・ドゥ」から『サージェント・ペパーズ……』以降のアルバムまで、ひたすら「ビートルズ好き好き」の一心で伴走してきたファンの心意気にも通ずるものがあるでしょう。自分自身は途中からの、それもメディア的に有名になったのちのエヴァ・ファンに過ぎないので、第一回放映から今まで「完走」したあなた、あのTV版最終二話・分割公開にもメゲず製作者を信じつづけた「あなた」(もしいれば(^_^;))……そんな「あなた」を、私は心から褒めてあげたい……。

 何かを好きになるって、そしてそれが自分を裏切らず、その愛が報われるって、こんなにも「気持ちのいい」コトだったんですね。


【補完】其ノ壱〜「時をかける綾波」

(NIFTY-SERVE 日本映画フォーラム(FJMOVIE) 13番会議室への発言 97/07/25)

『完結篇』が謎のいくつかを積み残して終わった以上、各自補完、つまり「再話」するしかないわけですね。これなくして私の中のエヴァは終わりませんので、この場をお借りして書くことをお許しください。

【残された謎】

*「綾波レイ」とは一体何だったのでしょう?

*パンフレットに書かれてあるが如く「リリス」(空席になっている第二使徒?)だったのでしょうか?

*それとも「碇ユイ」、シンジ君のお母さんだったのでしょうか?

*初号機に宿っていた碇ユイの魂と、綾波レイに宿っていた魂は「同じもの」なのでしょうか?

*綾波1号、2号、3号の心はどのように連続し、どのように変化していったのでしょうか?

*シンちゃんの前から消えた綾波は、そのあと、どうなっちゃったんでしょうか?どこに消えてしまったのでしょうか?

 ……そんなこと今更どっちでもよい、と思われるかもしれません。でも、今しばらくお付き合いください。この「謎」を考えるうちに『新世紀エヴァンゲリオン』のテーマがさらに重層的に、立体的に浮かび上がって来るような気がするのです。

 それは、エヴァとは碇シンジ(ヒト)の成長物語であるだけではなく、綾波レイ(シト)が進化してゆく物語でもあった、ことを意味しています。それも「ヒト」との関係において。

 まさに「他者」を認めることによって変化してゆく「自己」の物語……。

 では、私の補完をまとめて書かせていただきます。

【綾波レイ、彼女の場合】

 「綾波レイ」……端的に言ってそれは「碇ユイの遺伝情報を持つ身体」と、「使徒(リリス)の魂」を持つハイブリッドである。それは(おそらく「アダムそのもの」と思われる)初号機に碇ユイの魂が宿ったこととパラレルであって、この一事をもってしても「使徒と人間との共存は不可能」との命題は崩れ去るであろう。

 碇ユイと綾波レイ(リリス)はそれぞれの魂を持つ別個の存在である。つまりレイはシンちゃんのお母さんではない。

 「どんなに孤独でも生きてさえゆければ」と宇宙の彼方に旅立って行った「初号機=アダム=碇ユイ」と、最後にシンジの目の前にふっと姿をあらわし、消えていった綾波は、同じ場所に去ったわけではない。

 綾波レイは使徒であり、使徒は短時間で「爆発的な進化を遂げる」存在である。そして使徒が「人の心に興味を持った」ことを忘れてはならない。おそらく第23話・綾波自爆までに使徒はヒトの心と同じ知能回路を形成し、それを「3人目の」綾波に伝えたのであろう。

 その「心」こそは第22話、アスカの精神を覗き込んで得られたもの……「痛み」を知る心、「悲しみに満ち満ちた」心である。

 そして「ヒトの心」を知った使徒、「自分自身を常に変化させ、いかなる状況にも対処、生き延びるシステム」(生命の実)を持つ使徒が選んだ進化の最終形態が、「渚カヲル」、および「三人目の綾波レイ」であった。(カヲル君はアスカの痛めつけられた心を知っていたので、シンちゃんに、あんなにも優しくできたのだろう。あの優しさが「本物」だったことが今にして分かる)

 さらに、「君は僕と同じだね」……綾波へのカヲルの言葉は『完結篇』への伏線となっている。

 第24話の渚カヲルと『完結篇』の綾波レイ、二人がシンジに対して取った行動は、驚くほどに似通っている。どちらも「最終的な選択」をシンジに委ねた、という意味において。

 それはいうなれば完全にエゴから自由な愛であり、カヲルは「生命」を、レイは「碇くんといっしょになりたい」気持ちを、シンジのために断念する。(まごころを、君に)

(ちなみに「碇くんといっしょになりたい」レイの心(第23話)、「綾波って『お母さん』って感じがした」と言われて嬉しそうだったレイの心(第15話)、これはどちらも「碇ユイ」のものではない。使徒としての、リリスの心であると思う……そうです、『エヴァンゲリオン』は近親相姦タブー「だけ」の話ではない、異種間恋愛の、切ないせつないお話でもあったのですねえ)

(ついでに言うと「妻と再会するために世界を滅ぼそうとした男」、碇ゲンドウが求めていたものもユイの身体ではなく、あくまで「ユイの心」であるのも凄い。

 「綾波の胸、綾波のふともも、綾波のふくらはぎ」より、あの初号機がいいだなんて……『エヴァ』は「至上の愛」のお話でもあったのです)

【そして綾波はどこに行ったのか?】

 第1話、ネルフに向かう途中のシンジ君が夏の日ざかりのもと、アスファルトのうえに見た「綾波のまぼろし」……憶えておいででしょうか。

 『完結篇』ラストシーンのイメージを繰り返し再生するうちに、あの第1話と、LCLの海のうえからふっと消えてしまう綾波が、私の中でシンクロしたのです。

 あれがレイちゃんの「さよなら」だったんですね。心から愛したシンジ君に惹かれるように、すべてが始まる前のあの場所・あの時間に現れたのだ、と今では思っています。

 ATフィールドが張れて、空を飛べて、しかもいまや「映画史上最大の人体」(笑)なのですから、時間を自在にゆききしても何の不思議もない、そうは思われませんか?

 春エヴァ・DEATH篇の弦楽四重奏も、もしかしたらレイちゃんの心のなかの世界かも知れません。シト代表二人・ヒト代表二人が奏でる調和に満ちた音楽……しかもあそこにいた四人の声は、とても幸せそうだった……これも今となっては少しも不吉なものではなかったと思えるのです。

【そして、あのラストシーン……】

 綾波がふっと消えた瞬間、シンジ君は深い喪失感に襲われたと思います。そして自分の横(下だったか?)には、また「包帯少女」がいる。

 そもそも「包帯綾波」を見てシンジ君は初号機に乗る決心がついたのですよね。あれはやはり「ラヴ・アット・ファースト・サイト」みたいなものだったと思います。

 しかし包帯の位置は同じでも、それは綾波レイではなかった……自分で望んだこととはいえ、その時シンジ君は「もう二度と綾波に逢えない」ことを直観したと思います。反射的に自分の選択を否定したくなったのかも知れません。(さりとて首ギューはアンマリと思えども(^^;))

 『ピアノ・レッスン』のラスト近く、エイダがピアノのあとを追って「心中」しようとするようなもの?あるいは『ノルウェイの森』のラストで混乱する主人公にも似ているかも?

 それほどに「大人になる」のは辛いことです。でも、人間であれ、ひとつの作品であれ、「何かを捨てる」ことなしに「完成」することはないのでしょう。そして喪ったものの代わりに与えられる「現実」と「他者」……

 「気持ち悪い」……考えれば考えるほどに、あれが「現実の」アスカであることを示す、あれ以上の言葉はないと思えてきます。シンジ君の涙は喪失感、そして「安堵」の涙だったのではないでしょうか。ひとつの解釈に収斂させるにはあまりに惜しいラストですが、取り敢えずそう思うことにしました。

 なお、この解釈・補完が正しいと主張するものではありません。けれども「綾波レイ」に関しては、このように物語を再構成することが、私にとっては一番「気持ちの良い」ことですので……。

 最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございました。


【エヴァ分室】現時刻をもって凍結を解除。

(NIFTY-SERVE FBOOKC 本と雑誌クリエイターズフォーラム 17番会議室 97/07/21)

 総員、第1種戦闘配置。対地迎撃戦用意……

 ……ってわけではありませんが、観て参りました、エヴァ完結篇。ファンなら速攻で劇場にゆくべし、でございましょう。

 ちゃんと「終わって」ます。そして、今なら「まだ」空いてます。(『もののけ姫』は行列・立ち見のようですけど)

 そしてあの映像・サウンドのクオリティを大画面で体験しないのは、あまりにも勿体ないです。「春エヴァ」にあれだけ人が来たのに、それをはるかに超える出来のこの完結篇が公開二日目にして座って観られるなんて……

 グッズもパンフも今ならまだ悠々買えます(と思う)。(混雑に恐れをなして公開4週目まで待った春エヴァでは何も買えなかった(;_;))

 ということで思いっきり脱力モード、エヴァグッズお買い物スペシャルいってみます。

*「エントリープラグシャープペンシル」……

 一目で「何であるか」が認識できる形態。EVΛ−01のロゴもちゃんとはいっており、手に持った感じも適度な重量感があって快適です。

 芯が詰まった場合は必死にノックしつつ、

「エントリープラグ強制射出信号、受信しませんっっ!」

 マヤちゃんごっこをして遊びましょう。

*「ペンペンアイスマグカップ」(ガラス製)……

 保冷マグなので、常温下では液状・透明な保冷剤の中をペンペンが走っているように見えます。欲を言えば姉妹品「金魚綾波」アイスマグが欲しいところですネ(水槽の中にレイちゃんがいっぱい)。

*「ネルフ浴場備品セット」……

 黄色い湯桶(赤のNERVロゴ入り)+石鹸+タオル+パウチの詰め合わせ。湿気によりネルフロゴが富士山へと変化する浴室用タペストリー……は残念ながら付いてません。

 これ持参でお風呂屋さんに行っても「一次的接触を極端にさけているね、君は」(笑)などと決して言わないように。

 ……しかし何と言っても一番役に立った?のは、角川書店刊の『エヴァンゲリオン四コマ全集』でした。映画を見て煮詰まったアタマを冷やすには最適です。「くだらな過ぎて不覚にも笑える」……大槻ケンヂさんの序文のとおりです。「解毒剤」が必要なんです、この映画、超強力ドラッグムービーですから。

 耐性のある人にとってはまさに垂涎の映画でしょう。初号機暴走参号機リンチ、殴る蹴る刺す引き裂くしゃばどすばきっ、飛び散る血しぶき……にゾクゾクする、私のような観客には……でもそうでない人の場合、しばらく立ち直れない恐れもあるので、四コマでも読んで笑って治してください。

 ではまた。

P.S.

TV東京による全26話再放送は24日からでしたね。

4日分で180分テープが4本あれば大丈夫、かしら。

P.S.II

「ネタバレなし」感想を FJMOVIE MES-13 「エヴァンゲリオン、大団円」会議室に上げました。

P.S.III

エロライターの人権より、目下「使徒の人権」が気になるワタシ……(^_^;)。