ハウルの動く城

監督:宮崎駿

 初めに告白しておかねばならない。
 宮崎アニメは、みんなが騒ぐし、乗り遅れた事もあるし、元々あまりアニメに関心がなかった事もあるしで、妙な拒否反応があって、劇場では全然見ていない。もちろん昔の「東映まんが祭り」では見ているかもしれないけれど、「ルパン三世・カリオストロの城」以降の巨匠・宮崎の作品は見ていない。この前の「千と千尋の神隠し」もチケットをいただいたのに行かないままだった。あ。「火垂るの墓」を見に行って「トトロ」は見ました。「火垂る」でがんがん泣かされて、トトロを見て癒されましたなあ。
 が。
 今回は、昔のヨーロッパが舞台、ということもあるし、久石譲の音楽が魅力的だったので、やっと、見た。

 感動してしまい、どうしようかと思った。
 あれよあれよという感じの導入部ですっかり魅了されてしまった。
 生まれ育ったわけでもないソフィーの住む町が、妙に懐かしくて、あの音楽が流れると、胸が痛くなって、無性に涙が流れて、困った。不思議だなあ。どうしてなんだろう。
 蒸気がエネルギーのすべてな、蒸気機関が高度に発達した「この世界ではないパラレルワールド」の、ローテクの肌触りの温かな世界だからだろうか。
 ソフィーの町やハウルの家がある町の佇まいは、記憶にある。僕の感じだと、スイスのローザンヌ。映画では海だけど、あれはレマン湖の感じ。町からみえる湖の眺めが、実にローザンヌなのだ。路面電車が走り回ってるのはウィーンのようでもあるしチューリッヒのようでもあるしブラチスラバのようでもあるし。町並みはハンザ同盟都市のリューベックみたいだし。どっちにしても中部ヨーロッパだ。ヨーロッパの中でもいちばん昔の佇まいを残している美しい町。

 宮崎さんが描くヒロインは、みんな凛とした美しさがある。この映画のソフィーもそう。倍賞さんの声が少女にしてはちょっと苦しいかと思ったけど、ほとんどが老婆になってしまう場面だから、納得。(というと失礼か。倍賞さんでなければこの二人は演じられないだろう)
 ハウルはモロに少女マンガのヒーローだから、見ていて気恥ずかしい。声もキムタクだし。でもね、見ていると、もう、理屈抜きで感動してしまうのだなあ。

 お話はよく判らないところもある。戦争を止めさせようと、孤軍奮闘して傷ついてしまうハウルと、彼をなんとか助けようとするソフィーの姿を見て、王様付きの魔女が考えを変えて戦争を止める話、とまとめてしまうと、あまりにこぼれ落ちてしまう事が多すぎる。
 荒地の魔女とか、悪役が憎たらしくなくて愛すべきキャラクターなのが、いい。王様付き魔女のスパイ犬がまたいい表情をしていてちょこまか動くのが可愛いし。

 とにかく、圧倒されてしまって、なんだか胸掻きむしられる場面の連続で、きちんと観賞出来たとは思えない。何度か見ないと。

 レトロなマシンたちの造形が素晴らしいし……。
 あ。僕は冒頭から、「カカシのカブ」に妙に感情移入してしまい、ずっとどこまでも付いてきて影にひなたにソフィーを助けてやるあの健気な姿がとても好きになったのだが、ラストであっけなく失恋してしまって去ってしまうのは可哀想だったなあ。

 そして、音楽。メインテーマを新日本フィルが演奏しているが、これがまた、曲も演奏も素晴らしいの一語。心に染みる。しみじみといい曲だ。久石譲は、もっともっと世界的に有名になって、世界中から映画音楽の以来が殺到すべきだと思う。

 今まで知らなかった世界(今ごろナニ言ってるんだ!という事なんだろう)に出会えて、かなりのショック。もちろん素晴らしいショックだ。
 しかし、この懐かしさの正体はなんなんだろう?
 それと……おばあさんを大切にしなきゃ、と思いました。おばあさんの心の中には娘さんが生きてるんだもんね、どんなばあさんにも。