オースティン・パワーズ・デラックス

監督:ジェイ・ローチ


 この作品を「おシャレな……」と言ったり宣伝すべきではない。モロに「史上最強のおバカ映画」でいいではないか。その方がこの作品の賛辞になる。
 「2」映画はだいたいにおいて「1」よりボルテージが下がる。例外は「エイリアン2」くらいではないか。この作品も、まとまりとキレの良さにおいては「1」の方が勝っているのだが、いや〜、タンノウさせていただきました。
 考えてみれば、歴代おバカ映画は、バカだバカだと言われつつも、けっこうマジなテーマを内包していたり(社会批判とか諷刺とか)したものだが、この作品においては、そんなモノはまったくない。徹頭徹尾、ない。
 女神エリザベス・ハーレーが早々に退場してしまう事に不満はあるけれど、後任のヘザー・グラハム(グレイアム?)は「ブギーナイツ」以来のご贔屓だし、彼女も子猫のような可愛さを持つので、大いにけっこう。
 オープニングの、「スター・ウォーズ」風タイトルがヨイ。流れる音楽も、いかにも正調スパイ映画(「007」だけど)で、これまたヨイ。やぱり、スパイは英国に限る、と目黒のサンマのように思ってしまう。
 テレビのトークショーは、アメリカでは有名らしいけど日本では知られていないので爆発的ギャグにならなかったのが、実に悔しい。日本ならみのもんたの……と想像して笑うしかないから。とはいえ、「ピー音」連発のこの地獄のようは修羅場は凄い(^_^;)。
 どういう経緯で過去へのタイムトラベルをするのか、というのが今回の注目すべきポイントだったが、ま、この映画らしく、なんとなく済し崩しに、その方が面白そうだから、というノリ。後から、タイム・パラドックスをネタにしたギャグが出てくるが、これをやってもらえば、強引な時間旅行もすべてOK! 「バック・トゥ・ザ・フキューチャー」シリーズのように、閉じた宇宙理論に基づく世界観でのタイム・パラドックスを、それなりにマジに追求するのも「やってくれたなあ」と思うが、そもそもこの『タイム・パラドックス』をギャグにしてしまうのが嬉しい。自分3Pなんて事、たぶん今まで誰も考えた事(作品にしたこと)なかったんじゃないか?
 今回もカメオ出演の楽しさが溢れているが、特にウケたのが、ティム・ロビンスのアメリカ大統領。有名人になると、こういう楽しい遊びが出来るんだから羨ましい。
 音楽ネタはあまり判らなかったが、「アラン・パーソンズ・プロジェクト」は愛聴していたので、これだけは判ったのが嬉しい(^_^;)。こういうパロディとダジャレが横溢する映画の場合は、自分がどれだけ判ったかで他人に対して優越感(なんの意味もないが)を持てるという幸福な副作用もある。
 ワルモノが乱用する兵器の最右翼はダントツで『レーザー砲』だと思う。やはり、「ゴールド・フィンガー」でボンドさんの股間を真っ二つに切り裂こうとした恐怖の試みが人類の遺伝子に強い記憶として刻み付けられたのではなかろうか。ならばこのレーザー砲、もっと活躍して、とんでもない場所を攻撃してしまったり、という事を見せてほしかった。なんと言っても、スケールのデカイ悪事にはレーザー砲はつきものですから。レーザーが地球から外れて飛んでいった先の宇宙人が怒ってやってくる、というギャグを想像したけど、さすがにそこまでは踏み込まなかったのね。
 で、このタイム・マシンが、昔なつかし『タイムトンネル』タイプ。渦巻グルグルのチープさが堪りません。
 で、突然、借用料も超高額だったろう「ID4」のあの名場面が出て来たり、NASA映像が出て来たりして、その意味でもお金がかかっていると思わせるが、このシリーズ、前作もそうだが、ナンでもないダジャレ・シーンでとんでもなく凝って手をかけている。それが楽しいし嬉しいのですな。「ディック」「ジョンソン」「ウディ」「ウィナー」などのカットでご本人がそのために出てくるという贅沢さ。まさにバカバカしさの極みだが、こういうところをきっちり手間をかけてやっているからこそ、作品が「バカな事を本気でやってる」迫力に繋がっているのだろう……と書くのもバカバカしいほどだ。
 シモネタを毛嫌いする高名な芸人もいるけれど、この作品からシモネタを取ったら成立しなくなる。今回のシモネタはウンコ関係にもウィングを広げた。
 それと、実に汚らしい超肥満のスコットランド人(ええんかいの)を演じているのが彼だった、とパンフを見て(エンド・クレジット・タイトルは横の画面を見るのに忙しくて読む暇がない)初めて知って、さすが、スタン・ウィンストンだと感嘆。
 
 まーしかし、アチラの人たちの、ギャグに対するねちっこさには本当に敬意を表する。帰りにスターバックス・コーヒーを飲んでしまったほどに。こういうネタもやれるのが羨ましいが。
 たぶん、「3」も作られるのだろうけれど、どうなるんだろうねえと、期待すると同時に心配にもなる。ボルテージが下がっているのに続篇だけは作られる、というような事態だけは避けてほしいものだ。マイク・マイヤーズはアタマがいいから、そんな愚は犯さないだろうが。
 
(しかし、どうでもいい事かもしれないが、前作同様今回も、ユニバーサル・スタジオの衣裳部が協力しているが、ユニバーサルって、60年代の衣裳に強いのだろうか?)