ドッグ・ショウ! (DVD)

監督:クリストファー・ゲスト

 ドキュメンタリー・タッチのインタヴューで主な登場人物たちの紹介がなされるが、いっこうにメイン・タイトルが出てこないし、えんえんとインタヴューが続く。
 なんじゃこりゃ、と思いつつ見ていくと、出てくる人たちがみんなヘンなのだ。ヘンと言っても奇人変人の類ではなく、上昇志向のヤッピー夫婦とか冴えない夫に異常に男性経験豊富な妻、オカマのカップル、死にかけの夫のグラマー妻とレズの相手、一見マトモだが犬と話せると信じ込んでいる男、というように、近くにいそうな「濃い人たち」ばかり。
 この「擬似ドキュメンタリー」という手法と言うかスタイルは、この作品の監督、クリストファー・ゲストが創始したと言っても過言ではないものらしい。「サタデー・ナイト・ライブ」で架空の黒人野球選手のドキュメンタリーを作って流したのが始まりだったそうで、年季が入っている。
 この手法は、実に頭がいい。ドキュメンタリーなら、山ほど素材を撮って、使える部分だけ繋いでいくから金と時間が掛かるのだが、フィクションでこれをやると、ぽんぽん話を飛ばせるし金も掛からない。(しかしメインの舞台は大ドッグ・ショウだからそれなりに掛かっているのはもちろんだ)
 この作品、ドッグショーに出てくるのは、犬好きというよりも自分が可愛い人たち(まさに「虚栄の市」)だ、ということを喝破していて、それゆえに描き方が辛辣だ。
 上昇志向の弁護士夫婦はお互いカリカリしていて犬が本当に可愛そう。高学歴高収入のインテリって可哀想、と実にまったくなんというか、そう思ってしまうし、連中ならこんな感じなんだろうというそのステレオタイプさに納得してしまう。痛いけどおかしい。
 おかしいといえば、行くところ行くところ昔馴染みの男が出現するフェロモン出しまくりの色気妻。これがランニング・ギャグになっていて実におかしい。共同脚本家が演じる「両方左足の男」(この設定はどういう必然性があるのだ?)は毎月カードの払いに四苦八苦しているビンボーな感じがイイし、女房の昔の男が続々出現するのに「さすがの俺もこれ以上我慢できない」という冴えない男の悲哀を出していて秀逸。
 彼らの世話を焼く羽目になる人のいいホテルマンや、教養のないバカを喋りまくる実況アナウンサーと忍耐の人である解説者(妙にチャールズ皇太子に似てるのがまたおかしい)も入ってきて、このおかしさというのは、なんと説明したらいいのだろう。まさに「擬似ドキュメンタリー・コメディ」だからこそ出せる、虚実入り交じったというか、もちろん全部虚なんだけど、妙にリアルなおかしさがある。
 後日談もきちんと入っていて、その入念さにはニヤリとさせられる。
 よくやるよなあ、と感心したが、アメリカン人の、笑いに対する貪欲さには脱帽する思いだ。