■その1
東京駅から西部へ、東日本旅客鉄道の列車(東海道新幹線のぞみ・博多行)に揺られること5時間半、終着駅から九州旅客鉄道の鹿児島本線に乗って南部へ向かい、更に久留米で久大本線を乗り継いで1時間半、大分県日田市はそこにある。とある界隈では、この日田を「日本のテキサス」と呼ぶ人がいる。田園風景と人情とブルース・フィーリングに満ちた、林業とナバと焼酎と濃霧と雷(ライトニン!)の街、日田は、本作の主人公、「九州カントリー・ブルースの大統領」こと、コージー大内の出身地である。
10代の頃はボブ・ディランを愛聴していたコージー大内は、21歳の頃に本場米国テキサスのブルースマン、ライトニン・ホプキンスを聴いてテキサス流儀のカントリー・ブルースの雷に打たれ、その年に上京。座右の一枚に、ライトニンの《ライトニン・ストライクス》を掲げ、東京のアパートでブルースを爪弾く日々が続く。1980年代の終わり頃の話である。
20代後半くらいから、東京のブルースバーを中心に、弾き語りでブルースを歌うようになり、30代に突入すると、芸風を徐々に広げ始め、「自己のルーツ(日田の文化)に根ざしたテキサス流儀のカントリー・ブルース」をテーマに、唯一無比の「日田弁ブルース」のスタイルを確立する。
そして、満を持して登場したのが、本作『角打ブルース』である。ライトニンのカバーから、オリジナルの日田弁ブルースまで、コージー大内の魅力が詰まった快作である。