個人山行その4 飯豊連峰

平成11年7月10日〜14日

 

飯豊連峰

 

本中が梅雨前線に攻撃される7月はじめ、山岳地帯においては高山植物の息吹が聞こえるようになる。気温の上昇によって蓄えられた雪が解け始め、半年振りに黒い大地が顔を現すとき、山は僕らにすばらしい自然の贈り物をくれる。それは、すなわち高山植物の一大スペクタクルである。

  

豊連峰は、そんな高山植物たちを楽しむのにはもってこいの山域である。最北の朳差岳を起点に2000m級の高度を保ち、三国岳へと抜ける稜線には多くの樹木が育まれている。日本海の影響を強く受け、冬季の北西風がもたらす多量の積雪よって高山植物たちが生まれる土壌をつくっているのだ。今回の山行は、高山植物をテーマに飯豊連峰にチャレンジしてみた。

 

月9日(金)、午後8:00に出発し、東北道・磐越道を経て会津若松インターへ。そこから国道121号と県道を通って山都町川入に到着したのが7月10日(土)の午前1:00になっていた。途中の道が崩落によって迂回となっており、一山こえてやっとのことで辿りついたとのことであった。今回、一緒に登ってくれる仲間は松下さんと田谷さんだ。両名ともかなりのベテランで、花の名前をはじめ色々なことを教わった。とくに、行動食が実に豊だったのは幸せだった。

 

かばかりの睡眠をとって、午前4:45に川入キャンプ場を出発した。ダートの林道を少し歩き、ブナ林を稜線へとひたすら登る。途中に笹平など開けた場所を見つけては休憩し、これからの長い行程に備えた。地蔵山の巻き道では豊富な水量の水場に恵まれ、いよいよ稜線へ。

 

が峰を慎重に攻略したあとは主稜の始まりである三国岳へ。ここらへんからちらほらと高山植物が顔を見せるようになる。最初に見つけたのがヒメサユリだった。ピンク紫の花は本当にきれいだ。登山者に挨拶せんばかりに咲いていた。

 

蒔山を越え、いくつかのアップダウンを繰り返していくと雪渓がお目見えだ。このときはガスっていたので慎重にトレースをキックステップでなぞる。しばらくミヤマキンポウゲやチングルマ、イワカガミなどに見守られて切合小屋へは10:30に着いた。

 

 

山信仰を思わせるような「草履塚」「御秘所」などという地点を抜け、「御前坂」を経て飯豊神社へは12:30に無事到着。この坂は一気に詰める急坂で、今回の飯豊主稜の中でも特にきつかった。ただ、あたりは高山植物の宝庫でエーデルワイス(薄雪草)やニッコウキスゲなどがあふれんばかりに咲いていたので疲れもふっとぶ感がした。

 

豊本峰(2105m)へは飯豊神社からはすぐのところにあって12:45に登頂した。あたりはあいにくのガスで展望はきかない。山頂は北アルプスなどと比べるととても質素で、ただピークをあらわす看板と道標があるだけであった。僕らは山頂でお茶を飲んで疲れを癒すとすぐに西へ向かった。

 

西小屋へ着いたのは午後2:10。すぐにテントを張って大日岳へのピストンアタックの準備をする。ここの御西小屋の御主人はとても親切な方で、登山者に対して細かい配慮をしてくれる。テント場もよく慣らしてあって、すぐ下には雪渓もあったので夜のお楽しみ品を冷やして歩き出した。

 

インピーク大日岳へ着いたのが午後4:00。途中に熊の糞が転がっていて鈴を鳴らし鳴らし藪を抜け、文平の池を眼下に雪渓をトラバースしてやっとのことで目的地へと辿りついた。山頂は飯豊本峰よりも渋く、行き交う登山者には一人も会わない。半径3km以内には、今僕らしか地球上にいないのだ。そして僕らが今見ている景色は何千年昔と同じ光景なのだ。視界には人工物など一切ない。ありのままの自然がそこには広がっていた。

 

 

久の自然を肌で感じた僕らは、小屋前のテントで酒を楽しみ、山について熱く語った。焼酎をきりりレモンで割った特製レモン杯はとびっきり美味かった。松下さんには山の本をいくつか教えてもらい、山の歴史や先人の苦労などを聞いた。僕にはこの時間がとても短く感じたが、今までの登山経験にない新鮮な何かを得たような時間だった。

 

風と雨に打たれて過ごした夜は、テントのポール強度との勝負であった。僕らのテントは梅雨前線からの強い風によく耐えた。僕の寝袋はぐっしょり濡れてしまい、テントの片隅は水溜りとなっていた。ゴアテックスの雨具を着て寝ていたよかった。ポールが折れないように膝を曲げて支えていたので風の衝撃が僕の体にもろに感じる。ただ、不思議なことに、こんな状況でもなんだかワクワクしてしまう自分であるのが面白い。眼を覚ますと、ちょうど起床時間の午前4:30だった。

 

い強風の中、テントを撤収し帰路を急ぐ。ここでも小屋の主人は親切で、山男の男気を感じた。松下さん、田谷さん両名とも元気で、昨日歩いた道を引き返す。帰りは荷物もだいぶ少なくなっているので速い。昨日みた高山植物たちも嵐に負けずに地面に張りつくばっていたのでなんだか嬉しかった。途中、草履塚で15分ほどの晴天に恵まれた。ガスが晴れて彼方の稜線がはっきり見える。僕らが今日歩いてきた御西からのルートもわかる。四方は今までのガスの中とは一変、残雪の輝く素晴らしいパノラマだ。昨晩頑張った僕らに飯豊の神様がプレゼントしてくれたつかの間の展望だった。

 

 

きに見たシラネアオイも頑張っていた。三国岳には10:25に到着し、剣が峰を経て地蔵山へ。地蔵山でグレープフルーツをかじり、その甘酸っぱさは疲れをとても癒してくれた

 

蔵山の水場からは一気に下りだ。上・中・下十五里をひとつひとつクリアーして川入の駐車場へ着いたときはみんな快い疲労感と、飯豊連峰縦走の達成感に満ちていた。それぞれ握手を交わし、お互いの健闘をたたえた。その後は、お決まりの温泉タイム。町営飯豊の湯で汗を流し、僕らは帰路についた。駐車場で食べた焼そばが妙に美味しかった。

 

(コースタイム)

 7月11日 川入 4:45 … 飯豊山12:45 … 西大日岳16:40 … 御西小屋18:20  歩行時間 約12時間

 7月12日 御西小屋6:25 … 三国岳10:25 … 川入13:30    歩行時間約6時間

 

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