第一回 日本難病医療ネットワーク研究会  抄録

 当事者の《生きる力》を鍛える当事者による難病ネットワークの構築にむけて  


はじめに

  難病告知から始まる闘病生活が日常生活のリズムを取り戻すまでには、各職種による多方向からの働きかけと温かな見守りが患者家族にとって何よりの心の支えであり、そのネットワークの構築は最も期待を寄せているところでもある。しかし、これまでは社会的資源の乏しさなどから当事者が主体的にネットワーク作りに参加することは困難であった。とは言っても当事者本人の意志と実践によってのみ、その《生きる力》は最大限に引き出されるのであり、本人の自発的な活動こそが支援する側にとっても長年待たれていたものであろう。 本発表では東京都西北地区で在宅療養中のALS患者当事者によるピアサポートの実践と在宅介護支援さくら会研修事業のここ一年間の活動報告を行う。

T  ALS療養者当事者によるピアサポートについて  

 今日における東京都内在住ALS療養者の在宅環境整備の根幹には先駆的な患者当事者者らの実践実績があり、当事者による当事者のためのピアサポートは草の根レベルで今も広がりつつある。 難病患者が《生きるため》には制度や法の縛りも厭わないたくましさと開き直りの哲学が必要であるが、それを体現しているのが長期入院施設もない東京都に住む在宅ALS療養者たちである。
『闘え
ALS さくら会』http://www31.ocn.ne.jp/~sakurakai/

U  在宅介護支援さくら会研修事業部の活動報告  

《経緯》
  都内では練馬区在住のALS療養者、橋本操の長年のピアサポート活動により潜在的に患者家族の《生きる力》が養われてきていたが、平成15年度の支援費制度導入にともない、練馬区、杉並区、中野区などで数名の患者家族が自ら基準該当事業として支援費制度の居宅支援事業を立ち上げ、自宅を含む近隣の
ALS療養者宅への介護者派遣と支援活動をスタートさせている。このような活動を通じて自信を深めた当事者らは《与えられる側》から《作る側》へと活動の幅をひろげつつある。
 平成
15年8月、在宅介護支援さくら会に新たに研修事業部を設置。東京都の指定のホームヘルパー養成研修事業を開始し、同年9月練馬区役所地下ホールで67日の両日、日常生活支援従業者養成講座「進化する介護」第一回を開催し200名を越す多くの聴講者を迎えた。そして平成16年1月には中野区、8月には町田市で同様希望の研修会を開催し好評を得ている。
  「進化する介護」は当事者と医療専門職が協同で作るヘルパー養成研修会で、難病理解や啓発効果もその目的とするいわば一般向け障害・難病PR事業でもある。全20時間の講習のうち、時間分を講義部分とするが患者家族も講師を行うことができる。研究科目は国の基準があり「ホームヘルパーの職業倫理」2時間「ホームヘルプ概論」1時間「全身性障害者の疾病・障害の理解」2時間「基礎的な介護介護方法」2時間「家事援助の方法」1時間「医療などに関連する領域の基礎的な知識」1時間。講師基準を満たす人は事前に登録さえしておけば担当できる。後11時間分は都内ALS療養者の自宅にてOJT形式で実習を行い、利用者と気が合えばそのまま介護者として続けるケースが多い。また、協力団体から委託を受けて研修生に受講してもらい資格を授与する養成研修委託事業の意味合いもある。現在、実習受け入れ先でもある協力事業者は都内近県で20団体ほど。関東全域にわたって委託は可能である。協力団体の多くはALS患者家族が運営する当事者事業者であり、また当方の研修を受けた他の障害者団体もALS療養者の介護を請け負いつつある。この「進化する介護」を年3回ほど各地で定期的におこなうと共に、中野区内の地域センターや事業所内などで毎月10名から20名の範囲で小規模な研修講座を開いているが、現在までに当研修事業での日常生活支援ヘルパーの資格取得者は100名を越えた。

《今後の目標》
  研修事業部を独立し、特定非営利活動法人
ALSMNDサポートセンターさくら会を設立した。今後はNPO法人として幅広く活動をしていく。
@「進化する介護」地方で開催希望の当事者には支援を行うA患者家族の介護事業設立のアドバイスと指導をおこなうB従業者の悩み相談、主に電話や面接でさくら会の専門職がこれにあたるC当事者による難病講座の開催。特に告知直後の患者への啓発を行うD支援の輪を広げて政策提言へ繋げる活動を行う。E研究者に対する援助や情報提供、合同研究等をおこなう。


《解決すべき点
@日本ALS協会との協同 A事務局員の補充 B資金調達 C会員の募集方法と参加方法 D他の難病との連携 Eその他


特定非営利活動法人 ALS/MNDサポートセンターさくら会

発表者  橋本操/川口有美子 
パワーポイント使用
論文執筆予定
up 2004/09/16