日本神経学会治療ガイドラインから抜粋

ALS担当小委員会

●委員長

田代 邦雄

北海道大学神経内科

●委 員

阿部 康二

岡山大学神経内科

山本 悌司

福島県立医科大学神経内科

今井 尚志

国立療養所西多賀病院神経内科(国立療養所千葉東病院神経内科)

木村  格

国立療養所西多賀病院(国立療養所山形病院)

福永 秀敏

国立療養所南九州病院

大生 定義

横浜市立市民病院神経内科

林  秀明

東京都立神経病院

難波 玲子

神経内科クリニックなんば(国立療養所南岡山病院神経内科)

進藤 政臣

国立長野病院

岩崎 泰雄

東邦大学大森病院神経内科(東邦大学大橋病院内科)

濱田  毅

北祐会神経内科病院神経内科

●研究協力者

島  功二

国立療養所札幌南病院神経内科

青木 正志

東北大学神経内科

中瀬 浩史

虎の門病院神経内科

吉野  英

国立精神・神経センター国府台病院神経内科

佐古田三郎

大阪大学神経内科

大八木保政

九州大学神経内科

中川 正法

京都府立医科大学神経内科

近藤 清彦

公立八鹿病院神経内科

森若 文雄

北海道医療大学心理科学部言語聴覚療法学科(北海道大学神経内科)

●評価・調整委員

中野 今治

自治医科大学神経内科

吉良 潤一

九州大学神経内科

福原 信義

国立療養所犀潟病院神経内科

糸山 泰人

東北大学神経内科

 

I.はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis,以下ALS)は,進行性の神経変性疾患で,臨床上に多数の問題,解決すべき課題がある.そこでALS患者を診療する日本神経学会会員を対象にALS治療内容を体系化するガイドライン作成は極めて意義深いものである.
 ALS治療ガイドライン小委員会は,小委員長,11名の委員と9名の研究協力者,計21名で構成され,その検討項目を,病因・病態,診断・鑑別診断,病名・病期の告知,支援ネットワーク,在宅ケア,QOL評価,呼吸管理・栄養管理,対症療法・緩和ケア,薬物療法(リルゾール),薬物療法(治験薬 剤,他)および介護・福祉の11項目について委員,研究協力者が連携をとりながら素案を作成し,さらに小委員会における全体討論を行った.
 治療法や治療薬が確立されている疾患と異なり,ALSでは,EBMに基づいた文献検索のみでは,本症の治療ガイドラインの作成は難しく,そこで,日本の医療事情にあった,そして日本人の為のALS治療,ケアに関する現時点での適切なガイドライン構築を目指した.
 また,各ALS関連の研究班(神経変性疾患に関する研究班,特定疾患対策の地域支援ネットワーク構築に関する研究班,特定疾患の生活の質(QOL)の向上に関する研究班,筋萎縮性側索硬化症の診療指針作成に関する研究班,筋萎縮性側索硬化症の病態解明と治療法の開発に関する研究班,特定疾患の生活の質(QOL)の判定手法の開発に関する研究班),関連学会との密接な連絡のもとに作成を進めてきた.
 作成のタイムスケジュールとしては,2000年12月にメンバーの役割分担を決め,e-mailによるメーリングリストを構築しお互いの意見交換,2001年5月第42回日本神経学会総会でポスターによる中間報告,また小委員会を開催,2001年9月22日〜23日支笏湖において全体討論,意見交換を重ね,その後に項目担当者間の更なる意見交換の結果を纏め,全委員が再び全体に目を通したものをここに呈示した.
 全体討論において,このガイドラインの対象は日本神経学会会員であること,今回の提案は第1版であり,今後さらに解決すべき問題点について討論を継続し改訂をしていくべきであること,そして医学生教育にも役立つものとしていくことが合意された.
 先行する海外のALSガイドラインとしては,1999年のAmerican Academy of Neurology(AAN)の小委員会によるものがある.そこでのevidence-based reviewでも112の文献のうち,evidence levelでいえば,Level I 11,Level I〜II 1,Level II 14,Level III 86,とLevel IIIが圧倒的に多いこと,しかし,逆に,2000年のCurrent Treatment Options in NeurologyにおけるALS治療薬臨床試験の一覧表を参照すると,29の薬剤についての文献に基づいた33のevidence評価はLevel I 24,Level II 2,Level III 7であり,Level Iのスタデイが圧倒的に多いにもかかわらず,現在世界的にも承認された薬剤はriluzoleのみで,evidence levelが高い文献があっても実際に患者はその恩恵には浴していない事が浮き彫りとなり,ALSの疾患としての特徴を表しているといえる.

検討項目とその概略

1.病因・病態

1)遺伝性および孤発性ALSでの遺伝子変異の報告がみられているが,大多数を占める孤発性ALSの病因・病態は不明である.
2)ALSに対する多施設治療試験での電気生理学的endpoint研究がIbレベル以外は,臨床疫学,病理学,生化学,免疫学,遺伝子研究のevidenceレベルはII〜IIIレベルである.

2.診断・鑑別診断

1)診断にはEl Escorial 診断基準(1994年)が従来用いられてきたが,El Esocrial改訂診断基準(1998年)では電気生理学的診断が加わり,より有益になっている.
2)厚生省神経変性疾患調査研究班診断基準は2000年に改訂され,日常診療に利用されるべき診断基準になっている.

3.病名・病期の告知

1)告知は最初から患者と家族に同時に行う.
2)進行性の疾患で,リルゾールは病気の進行を若干押さえるが,治癒させるものではないことを正しく認識させる.
3)専門医療機関が,予想される諸問題に対して,サービス,情報を提供できることを説明する.
4)診断後早期からパソコンの使用を検討することが望ましい.
5)嚥下障害には経鼻経管栄養や胃ろうなどを併用して,経口摂取を楽しみながら必要な水分・栄養を補うように援助することが望ましい.
6)呼吸障害に関しては,気管切開し人工呼吸器を装着することの意味と人工呼吸器装着後の入院・在宅を含めた療養環境整備を十分に説明することが必要である.

4.支援ネットワーク

1)ALS患者とその家族がより高いQOLを維持しながら生活できるためには2つの支援ネットワーク,専門医療ネットワークと個別支援ネットワークが必要である.
2)全国横断的な専門医療ネットワーク構築,全国都道府県毎の医療ネットワーク構築,地域の支援ネットワーク構築と入院療養環境の向上と長期療養の場の選択肢の拡大が必要である.

5.在宅ケア

1)日本の現状に適応できる在宅ケアの実践を目指す.
2)在宅ケア導入,継続は,患者さん自身も「できることなら在宅で暮らしたい」という希望も強く,QOL(生きがい)の拡大という意味でも在宅ケアは今後大きな発展が期待できる.
3)病状の評価,介護者の評価,社会資源の活用,ネットワークとケアシステムの確立が在宅ケアを円滑に継続できる条件となる.
4)在宅ケアの継続を困難にする因子として,医療処置,日常生活全面介助,および罹病期間の3因子があげられる.

6.QOL評価

1)ALS患者個人のQOLに,介護負担をもった家族のQOLを組み入れた患者家族総体を取らえることが重要である.
2)QOL評価には現時点もおいては,1. を満たす簡易なスケールはなく,軽症例に対してはSIP/ALS19またはALSQ40(あるいはALSQ5)を使用することを勧める.

7.呼吸管理・栄養管理

1)ALSの呼吸筋障害による呼吸不全と球麻痺による嚥下障害は,そのまま放置すると患者の生命に関るので,その呼吸管理と栄養管理はALS患者の治療上重要である.
2)呼吸筋障害による換気不全への対応と治療としては,人工呼吸器を導入しない場合と導入する場合があるが,導入に際しては問題も含め,患者本人,家族に十分な説明を行う.
3)ALSの嚥下障害には経口摂取から,それ以外のPEG,経管栄養,IVH(経静脈栄養)などの併用も含めて,変更を勧めていく必要がある.

8.対症療法・緩和ケア

1)流涎には抗コリン薬が有効であるが,イレウスや排尿困 難に十分注意する必要がある.
2)強制笑い,強制泣きにはアミトリプチリンが有効である.
3)ALS患者の疼痛の初期治療には,非麻薬性鎮痛薬,抗炎症薬,抗痙縮薬を用いる.
4)非麻薬性鎮痛薬が奏効しなかった場合には,WHOの指針に従ってオピオイドを適宜に使用する.
5)末期の呼吸困難の治療には,安静時の呼吸困難に対しては,オピオイドを単独または酸素投与と組み合わせて使用する.高用量では呼吸抑制のリスクがあることを家族に了解してもらうことが必要である.
6)終末期の不安の治療に抗不安薬,抗うつ薬などを積極的に投与する.モルヒネの使用に際しては現段階では各施設の倫理委員会を通して対応すべきである.

9.薬物療法(リルゾール)

1)リルゾールによる治療は行うことが望ましい.ただし効果は顕著ではないことを患者に伝えた上で患者の同意を得て投与する.
2)努力性肺活量が60%以下の患者では効果が期待できないので投与しない(厚生労働省).
3)標準投与量は100mg/日.

10.薬物療法(治験薬剤,他)

1)これまでの治験薬で,唯一,有効性が確かめられているのは,北米で行われたrecombinant human insulin-like growth factor-1(rhIGF-1)のみである.

11.介護・福祉

1)ALS患者さんに対する医療,介護・福祉を経済的な側面から考えると,極めて複雑な要因が関与しており,現在,十分なEvidenceとして得られる情報はない.

12.ALS診断・治療・ケアへの対応(参照)

 ALS治療ガイドライン小委員会での検討結果の纏めを図示する.ここには,検討項目相互の流れと,ALS患者の療養にどうアプローチするかが示されている.各担当分野は等しく重要であり,ALSに現時点でどのような選択があり,また,医療サイドも何が出来るかの可能性を述べている.
 特に呼吸障害への対応は,世界的に必ずしも統一されているわけではなく,むしろ欧米と日本には大きな差があるともいえる分野である.従って,呼吸管理の項目をこの図の中に取り上げるが,他の検討項目も含めて「その概略」と,各分担項目の記載に記述した点を詳読されたい.
 呼吸筋障害による換気不全に対しては,呼吸補助を導入する場合と導入しない場合とがある.呼吸補助導入を希望し,気管切開,人工呼吸器での療養の選択,気管切開や人工呼吸器装着をしない選択,マスクによる補助呼吸のみを選択こともある.これらどの選択であっても患者・家族,そしてその治療・療養に携わる方々に対し,現在可能である全てのサポートをしていくことが神経学に携わる者の使命であるいえる.
 ここに示した図式が,日本におけるALS対応の現時点における一つの指標なることを願う次第である.

文献

  1. Miller RG, Rosenberg JA, Gelinas DF, et al.: Practice parameter: The care of the patient with amyotrophic lateral sclerosis (an evidence-based review). Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology 1999; 52: 1311-1323
  2. Mitchell JD: Guidelines in motor neuron disease (MND)/amyotrophic lateral sclerosis(ALS) -from diagnosis to patient care. J Neurol 2000; 247(S6): VI/7-VI/12
  3. Demaerschalk BM, Strong MJ: Amyotrophic lateral sclerosis. Current Treatment Options in Neurology 2000; 2: 13-22

VII.QOL評価

1.はじめに:QOLとは,その評価にあたっての前提

 Fletcher1)らは彼らの著書の最初に病気のoutcomeとして5D(あるいは6D)を挙げている.Death(死亡),Disease(疾患,症状や症候),Discomfort(不快),Disability(能力障害),Dissatisfaction(不満足),Destitution(貧困)がそれらである.病気の転帰 はさまざまな側面がある.それなのに治療効果の指標として今までは,死亡率や再発率,検査データの改善率などが主体であった.しかし,最終的に患者総体としての人生がどうなるかが問われる時代となり,生命の質あるいは生活の質(QOLが重要であるとの認識が大きくなっている.しかし,QOLを定義することは難しい.「患者のこうありたいというexpectationと実際の状況とのギャップをどう認識しているのか」,この解離が激しいほどQOLが低いことになるのかも知れない2,3).WHOはQOLについて「individuals' perceptions of their position in life in the context of the culture andvalue systems in which they live, and in relation to their goals, expectations, standards, and concerns」と定義している.
 測定にあたっては,痴呆などのある場合など,明らかに存在する主観的評価と客観的評価の相違をどう折り合わせるべきかは十分に検討されなくてはならない.言うまでもなく,QOLは患者の主観的評価ではあるが,スケールの数値を現実の政策決定に使用する時など判断に迷う場合も少なくない.Bachら4)が行った人工呼吸器装着の筋ジストロフィー患者についての調査によると患者が認識している満足度と周りの医療関係者がその患者について推定している満足度はかなり相違がある.
 また,QOLはいろいろな要素で左右される.疾病を持った患者のQOLはその疾患の重症度だけではなく,患者の社会生活や人生観,病気に対する構えなどにも影響される.実際の測定にあたっては,QOLのいろいろな側面のため,勢いドメイン(QOLに関係がありそうであると評価者が考えている下位概念:質問項目と考えてもよい)が多様となり,質問に答える時間もかかり,答えにくくなる傾向がある.このため,簡単に測定でき,かつ各病期に対応して,実用性もあるようなスケールの適用の実施は難しくなるのである.通常の評価・調査では他疾患や他の集団との比較において重要な,全般的尺度(たとえばSF-36など)と疾患に特有な事情を考慮した疾患特異的尺度の両方を使用するようにしてきた.使う尺度によっては,本研究に入る前に,妥当性(測りたいものを測っているか?)信頼性(時と測定者が変わっても正確か?)反応性(状態の変化の連動してスコアが変化するか?)実用性(実際に実施できるか)などの検討が必要である.さらに,どのような要素が該当疾患に関連性が強いのかについての判断(仮説というべきか)も大切である.WHOはQOLについて,身体的健康,精神的健康,自立の程度,社会関係,環境,精神的尊厳・宗教・信仰の6つの領域(ドメイン)を提案している.この中のどの領域を膨らまし,どの領域を削るかを目的にあわせて調整しなくてはならない.さらに,調査結果をどう利用分析するかによって一個の指数としての値を求めるのか,QOLのそれぞれの側面をうかがうプロファイルでみるのか,あるいはその両方を求めるかを決める.もちろんその尺度が対象集団に適しているかは十分に考慮されねばならないし,実施に当たっては,どのような回答方法にするのか,検査期間はどうするか,誰が評価し,回答するか?,自己記入式か,面接かなどどのように実施するか?などが決められなければならない.すなわち,どのように聞けば妥当であるか,信頼性が高いかなど十分に検討して質問表を使用しなくてはデータとして客観的に使えないのである.海外の質問表を使用するときは日本語訳をもう一度別なバイリンガルに元の言語に翻訳し直して(逆翻訳という)原著者と確認する作業が必要であるし,文化的な差異(例えば食事にナイフやフォークではなく,箸を使う)の配慮,しばしばや時々などの頻度を表す形容詞の対応の検討などもある程度済ませておかねばならない.

2.検索結果

 ‘Amyotrophic lateral sclerosis’と‘Quality of life’をMesh及びkey wordでMDconsult(電子参考情報源)とPub Medを用いて検索した.それぞれ78件,126件を抽出した.抄録を読み,どんな意味でQOLが語られているのかを検討した.「よりよい生活」や「内容の良い延命」など抽象的な意味として使われているものを除き,さらに総説(解説的なもの)を除くと次のように33件となった.
 方法論は次の13篇である.

  1. Smith PS, Crossley B, Greenberg J, et al.: Agreement among three quality of life measures in patients with ALS. Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord. 2000; 1: 269-75
  2. Jenkinson C, Fitzpatrick R, Swash M, et al.: The ALS Health Profile Study: quality of life of amyotrophic lateral sclerosis patients and carers in Eur. J Neurol. 2000; 247: 835-40
  3. Jenkinson C, Levvy G, Fitzpatrick R, et al.: The amyotrophic lateral sclerosis assessment questionnaire (ALSAQ-40): tests of data quality, score reliability and response rate in a survey of patients. J Neurol Sci. 2000; 180: 94-100
  4. Miller RG, Anderson FA Jr, Bradley WG, et al.: The ALS patient care database: goals, design, and early results. ALS C.A.R.E. Study Group. Neurology. 2000; 54: 53-7
  5. Jenkinson C, Fitzpatrick R, Brennan C, et al.: Development and validation of a short measure of health status for individuals with amyotrophic lateral sclerosis/motor neurone disease: the ALSAQ-40. J Neurol. 1999; 246 (Suppl 3): III16-21
  6. Cedarbaum JM, Stambler N, Malta E, et al.: The ALSFRS-R: a revised ALS functional rating scale that incorporates assessments of respiratory function. BDNF ALS Study Group (Phase III). J Neurol Sci. 1999; 169: 13-21
  7. Damiano AM, Patrick DL, Guzman GI, et al.: Measurement of health-related quality of life in patients with amyotrophic lateral sclerosis in clinical trials of new therapies. Med Care. 1999; 37: 15-26
  8. Jenkinson C, Swash M, Fitzpatrick R: The European Amyotrophic Lateral Sclerosis Health Profile Study. ALS-HPS Steering Group. J Neurol Sci. 1998; 160 (Suppl 1): S122-126
  9. Shields RK, Ruhland JL, Ross MA, et al.: Analysis of health-related quality of life and muscle impairment in individuals with amyotrophic lateral sclerosis using the medical outcome survey and the Tufts Quantitative Neuromuscular Exam. Arch Phys Med Rehabil. 1998; 79: 855-62
  10. Borasio GD: Amyotrophic lateral sclerosis: lessons in trial design from recent trials. J Neurol Sci. 1997; 152 (Suppl 1): S23-8
  11. McGuire D, Garrison L, Armon C, et al.: A brief quality-of-life measure for ALS clinical trials based on a subset of items from the sickness impact profile. The Syntex-Synergen ALS/CNTF Study Group. J Neurol Sci. 1997; 152 (Suppl 1): S18-22
  12. McGuire D, Garrison L, Armon C, et al.: Relationship of the Tufts Quantitative Neuromuscular Exam (TQNE) and the Sickness Impact Profile (SIP) in measuring progression of ALS. SSNJV/CNTF ALS Study Group. Neurology. 1996; 46: 1442-4
  13. Hoshino A, Shinozaki I, Shinno S, et al.: [Development of a quality of life rating scale for patients with chronic neurological diseases]. Nippon Koshu Eisei Zasshi. 1995; 42: 1069-82

 1ではALSの疾患特異的スケールとしているSIP/ALS19と全般的スケールのQWB SAとSF-36を比較しているが,相関がうまくでず,患者の病期や治療・介入によって使用するスケールを考慮すべきとしている.4は米国におけるALSのデータベース的な研究で,2と8はそれのヨーロッパ版である.米国ではSF-36やその短縮版SF-12,ALS/SIP19あるいは,次に述べる,ALSAQ40の短縮版であるALSAQ5が用いられている.ヨーロッパ版ではCarer Strain Scale(介護負担度)についても力点が置かれおり,QOLスケールとしてはSF-36が使われている.3,5はJenkinsonが中心となって作成したALS疾患特異的尺度のALSAQ40の妥当性など心理計測学的な特徴を述べている.6はALSFRS-R・呼吸機能とSIPの関連を述べ,7はAppel scaleという身体的機能のスケールと比較して,SIPがALSのQOLに有用であると述べている.身体機能のスケールと考えられるTuft Quantitative Neuromuscular ExamとSF-36との関連を9で,SIPとの関連を11,12(11ではSIP/ALS19の有用性を)で述べている.10は主な近年の薬物介入のレビューであり,その中のQOLスケールは9試験中4試験で用いられ,すべてSIPであったと述べている.13は日本の研究者が,広く神経難病のQOL評価尺度を考案している,しかし,十分な定量的な検証には至っていない.
 臨床試験は6篇である.

  1. Lyall RA, Donaldson N, Fleming T, et al.: A prospective study of quality of life in ALS patients treated with noninvasive ventilation. Neurology. 2001; 10; 57: 153-156
  2. Aboussouan LS, Khan SU, Banerjee M, et al.: Objective measures of the efficacy of noninvasive positive-pressure ventilation in amyotrophic lateral sclerosis. Muscle Nerve. 2001; 24: 403-409
  3. Hein H, Schucher B, Magnussen H: [Intermittent assisted ventilation in neuromuscular diseases: course and quality of life]. Pneumologie. 1999; 53 (Suppl 2): S89-90
  4. Lai EC, Felice KJ, Festoff BW, et al.: Effect of recombinant human insulin-like growth factor-I on progression of ALS. A placebo-controlled study. The North America ALS/IGF-I Study Group Neurology. 1997; 49(6): 1621-1630
  5. Hein H, Schucher B, Kirsten D, et al.: [Prospective study of the quality of life in intermittent self-ventilation] Med Klin. 1997; 92 (Suppl 1): 93-94
  6. Pinto AC, Evangelista T, Carvalho M, et al.: Respiratory assistance with a non-invasive ventilator (Bipap) in MND/ALS patients: survival rates in a controlled trial. J Neurol Sci. 1995; 129 (Suppl): 19-26

 17だけが薬物介入でQOLスケールはSIPを用い,あとは呼吸補助介入でQOLのスケールとしてはSF-36,Chronic Respiratory Index Questionnaire,Fatigue・mastery score analog scale of life satisfactionを用いている.Evidenceのレベルなどは表1の通りである.
 システミックレビューは1篇でコクランライブラリーからのものである.
 表1の20の論文(Miller RG, Mitchell JD, Moore DH: Riluzole for amyotrophic lateral sclerosis (ALS)/motor neuron disease (MND). Cochrane Database Syst Rev 2000; (2): CD001447)の中ではQOLについてのデータは乏しい5)
 さらに,費用効用分析が1篇ある.
21.のAckerman SJ, Sullivan EM, Beusterien KM, et al. Cost effectiveness of recombinant human insulin-like growth factor I therapy in patients with ALS. Pharmacoeconomics 1999; 15: 179-95.
 がそれで,17の研究でQOLがあがったという高用量群の患者と偽薬の患者を用いて,Appelスコアで分けた重症度について効用値(健康状態の価値付け:死が0,完全な健康が1として)を,医療関係者から取り出し,社会的見地からの計算で行いrecombinant human insulin-like growth factor I 治療がcost-effectiveと述べている.
 しかし,ALSのスケールは一筋縄では行かない.身体機能に重点をおいた今までの定量的な捉え方では不充分とする,QOLの内容についての報告も目立ってきた.
次の6篇を挙げておく.

  1. Dal Bello-Haas V, Andrews-Hinders D, Bocian J, et al.: Spiritual well-being of the individual with amyotrophic lateral sclerosis. Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord. 2000; 1: 337-41
  2. Robbins RA, Simmons Z, Bremer BA, et al.: Quality of life in ALS is maintained as physical function declines. Neurology. 2001; 56: 442-4
  3. Simmons Z, Bremer BA, Robbins RA, et al.: Quality of life in ALS depends on factors other than strength and physical function. Neurology. 2000; 55: 388-92
  4. Ogata Y, Iizuka T, Fukuhisa Y, et al.: [Factors related to subjective QOL of patients with chronic neurological intractable diseases]. Nippon Koshu Eisei Zasshi. 1999; 46: 650-7
  5. Iizuka T, Ogata Y, Minowa M, et al.: [A follow-up study on effects of ADL deterioration on QOL in patients with neurological intractable diseases]. Nippon Koshu Eisei Zasshi. 1999; 46: 595-603
  6. Ganzini L, Johnston W S, Hoffman WF.: Correlates of suffering in amyotrophic lateral sclerosis. Neurology. 1999; 52: 1434-40

 23はSpiritual Well-Being Scaleを測り,そのsubscaleのreligiousなファクターの重要性を指摘し,24ではMcGill Quality of Life questionnaireなどとSIP/ALS19を測り,後者は身体面を主にとらえており,その他の側面も考えなければQOLはつかめないと述べている.25,26とも神経難病に対して,星野が考案した「主観的QOL尺度」を用いて主観的QOLを維持するためにはADL悪化を抑えること,機能水準を保つとともに在宅療養や必要に応じて労働の機会を確保することが重要と述べている.
 その他として,次の8篇をあげておく.

  1. Gelinas DF, O'Connor P, Miller RG.: Quality of life for ventilator-dependent ALS patients and their caregivers. J Neurol Sci. 1998; 160 Suppl 1: S134-136
  2. Moss AH, Oppenheimer EA, Casey P, et al.: Patients with amyotrophic lateral sclerosis receiving long-term mechanical ventilation. Advance care planning and outcomes. Chest. 1996; 110: 249-255
  3. Bach JR: Amyotrophic lateral sclerosis. Communication status and survival with ventilatory support. Am J Phys Med Rehabil. 1993; 72: 343-349
  4. Timm HU: [The meeting between patients and professionals who treat them. Qualitative interview of patients with amyotrophic lateral sclerosis and their closest relatives]. Ugeskr Laeger. 1996; 158: 1812-1817
  5. Young JM, Marshall CL, Anderson EJ: Amyotrophic lateral sclerosis patients' perspectives on use of mechanical ventilation. Health Soc Work. 1994; 19: 253-60
  6. McDonald ER, Hillel A: Wiedenfeld SA Evaluation of the psychological status of ventilatory-supported patients with ALS/MND. Palliat Med. 1996; 10: 35-41

 これらは主に機械呼吸の装着された患者に対しての物語を中心とした症例報告あるいはケースシリーズである.33では呼吸器装着患者の精神状態を定量的スケールを用いて調査し,医療関係者の思うほど患者は絶望していないと報告している.その一方,29では長期呼吸器管理の患者の多くはある状況下になれば呼吸器の中止を求めるのではないかとも述べている.
 結局,RCTにALS特異的スケールを用いての十分なエビデンスはない.現在の流れとしては,ALSAQ40がALS疾患特異的健康関連スケールとして妥当性が欧米で認められ,その短縮版ALSAQ5が米国のデータベースに入っている6).SicknessImpact Profileを使用することもよいが,その適用は時間もとり,現実的ではない.妥当性などの検証は現状では不充分であるが,SIP/ALS19かALSAQ40(あるいはALSAQ5)を使用することが現時点でよい方法であろう.さらに重症者に対しては,身体機能が中心のSF-36やALSAQ40などだけでは,無理で,患者個々のQOL評価の引き出しや介護者の負担度(Carer Strain Index)も考慮すべきであろう7)
 付録にSIPの概要とSIP/ALS19,ALSAQ40(日本語版),SF-36 ver2(日本語版)を添付する.

3.日本における対応

 ALSのQOL評価では身体機能以外のドメインが大切であることは欧米でも認識されているが,さらに日本では呼吸器の患者が多く,患者だけではなく家族ぐるみの闘病の色合いが強い.それゆえ,患者個人のQOLに介護負担をもった家族のQOLをくみいれた患者家族総体を捉えていくことが,病状が進行してコミュニケーション障害も起こってくるため,いっそう重要になると考える.また,手法の上では,全体を見通すための,標準的定量的手法も重要ではあるが,進行していけば行くほど,家族・患者の個別性も強くなり,いわゆる質的検討も重要になってくると考えられる.これらを踏まえて,QOL評価の方面からは次の2点を研究する必要がある.現在の計画を下記に示す.

  1. データベースのパイロット調査とALSAQ40のvalidationを行う.あわせて,介護負担度のvalidationを行う.
  2. 重症者(呼吸器をつけての在宅,全介助)を中心に介護者の質的研究を行う.患者・家族のSEIQOL-DW,介護度についての検討を東大精神看護学の協力を得て行う.

注:SEIQOL-DW(the Schedule for the Evaluation of Individual Quality of life):患者個人個人にあわせて,項目を抽出し,重み付けをするQOLの描写方法8)
 QOLをOutcomeとした臨床試験は,そのスケールをどうするかについてのまだ検討途上の現状である.ある程度割り切ってスケールを暫定的に決め,各種臨床研究に用いて行かねばならない.他国で使われているものの日本語版の検証と日本独自の項目の発掘,定量スケールの限界を知った上での利用と個々のQOLの差違を認めての質的評価の導入が考慮されねばならない.
 臨床試験にあたっては,QOLがそのOutcomeの一つ,あるいは最終的なものとの認識は重要である.Sickness Impact Profileを使用することもよいが,その適用は時間もとり,現実的ではない.妥 当性などの検証は現状では不充分であるが,SIP/ALS19かALSAQ40(あるいはALSAQ5)を使用することを勧める.

文献

  1. Fletcher RH, Fletcher SW, Wagner EH: Clinical Epidemiology: The Esentials. 3rd ed. Williams & Wilkins 1996
  2. 大生定義:神経難病診療におけるQOLの評価.臨床成人病 2001;31:45-50
  3. 大生定義:神経内科疾患.池上直己,福原俊一,下妻晃二郎,池田俊也編集.臨床のためのQOL評価ハンドブック.医学書院 東京,2000,p112-116
  4. Bach JR, Campagnolo DI, Hoeman S: Life satisfaction of individualswith Duchenne muscular dystrophy using long-term mechanical ventilatorysupport. Am J Phys Med Rehabil. 1991; 70: 129-35
  5. Miller RG, Mitchell JD, Moore DH: Riluzole for amyotrophic lateralsclerosis (ALS)/motor neuron disease (MND) (Cochrane Review). TheCochrane Library, Oxford: Update Software. Issue 3, 2001.
  6. Jenkinson C, Fitzpatrick R, Brennan C, et al.: Development andvalidation of a short measure of health status for Individuals withamyotrophic lateral sclerosis/motor neurone disease: the ALSAQ-40. J Neurol. 1999; 246 (suppl 3): 16-21
  7. Jenkinson C, Fitzpatrick R, Swash M, et al.: The ALS Health ProfileStudy: quality of life of amyotrophic lateral sclerosis patients and carersin Europe. J Neurol. 2000; 247: 835-40
  8. O' Boyle CA, Browne J, Hickey A, et al.: Schedule for the Evaluation ofIndividual Quality of life (SEIQOL): a Direct Weighting procedure for Qualityof Life Domains (SEIQOL-DW) Administration Manual Department ofPsychology, Royal College of Surgeons in Ireland 1995

V.支援ネットワーク

1.支援ネットワークの必要性

 ALS患者とその家族がより高い生活の質(QOL)を維持しながら生活できるためには2つの支援ネットワークが必要である.
 1つは専門医療が円滑にサービスできる医療ネットワークである.患者や家族が必要とする時にはいつでも,またどの地域からもそれぞれの患者に最適な医療が受けられるために,全国横断的な医療ネットワークと各都道府県を単位とする医療ネットワークを構築する.ネットワークに参加するの医療施設がもっている診療機能を相互に連携して,それぞれの患者が希望する医療環境を整備する必要がある.医療ネットワークの役割は,外来診療における生活指導と患者と家族が希望する入院療養を満たすことが含まれる.
 2つには,ALS患者がどのような病期においても,その症状の程度に応じた障害や社会的不利益を援助し,生活の質を十分考慮した生活支援をすることである.どのような重度の障害をもっていても,一人の自立した人として生きがいをもち,自らが希望する生活ができるようにそれぞれの地域で生活の支援体制を整備し,患者が当然の権利としてそのサービスを受けられる社会意識を整のえることが必要である.そして最終的には,一人ひとりのALS患者を支える個別支援ネットワークが構築され,心身両面で支えるためのチーム医療と生活支援が実現できることが期待される.

2.具体的な支援ネットワーク構築とその役割

1)全国横断的な専門医療ネットワーク構築
 厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業によって「全国ALS医療情報ネットワーク」が構築され,その中で89の都道府県代表施設と265の協力施設名と専門医師名がインターネットの上で公表されている.常に最新のデータを管理し,役に立つアップデートな情報であることが大切である.さらに利用するサイドからの効果と問題点についての検証が必要である.全国横断的に各地域の神経内科専門医療施設と専門医師名を公表することは,患者が他県に移住したり,旅行等一時的な移動に際してどこでも必要な医療サービスが確実に受けられるために必要な基盤整備である.またこのネットワークは,患者や家族が病名の告知を受ける時に,また人工呼吸器を使用する等治療手段の選択に際しての自己決定時に,専門医にセカンド・オピニオンを求める場合に必須の情報源となろう.
 この他の全国横断的な医療ネットワークとして,「日本神経学会認定教育施設と教育関連施設」リストに基づくネットワーク構築がある.日本神経学会と指定されている関連機関の間で十分審議した上で,外部公表できるか,できる場合にはどのような手段で公表し,今後ALS診療に利用して行けるかを検討する必要がある.

2)全国都道府県毎の医療ネットワーク構築
 国と都道府県の共同事業として現在推進されている「重症難病患者入院施設確保事業」の中で拠点病院とその協力病院の指定,公表が義務つけられており,実質的かつ継続的な活動が期待できる.また本事業の中では,都道府県を一つの単位にして難病医療に係わるさまざまな職種が協議,決定する「重症難病医療協議会」の設置が義務付けられている.地域特異性を十分考慮したALSを含む難病医療体制が整備される.その他,少なくとも各都道府県に1ヶ所,医療から生活支援まであらゆる相談ができる「相談窓口」の開設と必要な入院を調整するためにの「難病専門員」の配置が重要である.
 これらの事業は平成13年10月の時点で,全国のほぼ半数の都道府県で企画され,稼動することによって実質的な効果をあげている.この事業の中で,特に神経内科専門医師はそれぞれの地域での難病医療および生活支援事業において,常に専門的なオピニオン・リーダーとして積極的に関与し,指導的な役割を果たすことが強く期待される.

3)地域の支援ネットワーク構築
 ALS患者が自宅および自宅の近くの場所で希望する生活を送れるためには,地域での支援ネットワークが必要になる.所轄の保健所を核にして,病院の専門医,地元医師会のかかりつけ医,保健所や訪問看護ステーションの保健婦,地域のヘルパー,日本ALS協会(JALSA)などの難病患者支援団体やボランテイアなどがチームとして支援ネットワークを構築し,具体的にケア・プラン会議を介して実質的に患者と家族を支援することが必要である.特に,在宅で人工呼吸器を使用する場合には,医療専門職だけではなく電力会社の地域担当者と救急搬送など救急隊の協力を得て,迅速に救急医療体制を整備することが必要である.

3.入院療養環境の向上と長期療養の場の選択肢の拡大

 ALS患者の療養形態として専門病院での入院療養と在宅療養が中心になるが,今後はその両者の中間的な施設として「難病ケア・ハウス」や身体障害者施設への入所が新たな選択肢として利用されるものと考えられる.これらの施設は時系列的に交互に選択され,チームとして連携利用させることによって長期療養が維持できるであろう.それぞれの選択肢のもつ医療機能と生活の自由さや環境条件を考慮し,これらを上手に組み合わせることによってできるだけ恵まれた療養環境で過ごすことができる.
 神経内科医は難病患者入院施設確保事業の難病専門員や施設所属のケースワーカーなどの協力を求め,患者と家族がその時点で最も希望する療養形態を選択できるように尽力することが求められる.
 また神経内科医には有識者として,ALS患者と家族サイドに立って地域の難病医療行政に対して提言や指導ができること,在宅療養と入院療養の環境条件を向上させる立場にあることを意識すべきである.人工呼吸器を使用して生活するなどどのような重度障害をもつ難病患者でも,それぞれが将来に希望を持ち,自らの思いで「生き甲斐」を持てる生活できる環境条件と精神的支援体制を整えてゆくことが期待されている.

4.在宅療養のための介護要員の養成

 ALSなど難病患者が在宅で安定して療養を継続できるための最も大きな条件は必要な介護要員を確保することである.現在,都道府県や市町村,保健所を核としてさまざまな階層に対する育成が行なわれている.神経内科医はその専門家として当該地域での研修,実習,育成に関心を持ち,機会がある毎に積極的に指導できる立場に立つことが期待されている.

文献

  1. Mitumoto H, Chad A.D., Pioro E.P.: Comprehensive care. inAmyotrophic Lateral Sclerosis, ed. by Mitumoto H., et al. F.A. DavisCompany, Philadelphia, USA, 1998, p.305-320
  2. Goldblatt D: Caring for patients with amyotrophic lateralsclerosis. in Smith R.A. (ed): Handbook of Amyortophic LateralSclerosis. Marcel Dekker, new York, 1992, p.272-287
  3. Thompson B: Amyortohic Lateral Sclerosis: Integrating care forpatients and their families. Am J Hosp. Pall Care 1990; 7: 27-32
  4. 佐藤猛:AS全国医療情報ネットワークの設立とモデル事業.厚生省特定疾患調査研究事業「ALS患者等の療養環境整備に関する研究班(班長:佐藤猛)」平成9年度研究報告書,1998,p.11-28
  5. 木村格:山形県における神経難病療養環境整備モデル事業に関する研究.厚生省特定疾患調査研究事業「ALS患者等の療養環境整備に関する研究班(班長:佐藤猛)」平成9年度研究報告書,1998,p.87-91
  6. 木村格:難病患者の療養環境整備に関する最終提言.厚生省特定疾患調査研究事業「神経難病医療情報整備研究班(班長:木村格)」平成10年度研究報告書,1999,p.15-16
  7. 佐藤猛,木村格:ALS全国医療情報ネットワーク事業の現況.厚生省特定疾患調査研究事業「神経難病医療情報整備研究班(班長:木村格)」平成10年度研究報告書,1999,p.19-30
  8. 木村格,佐藤猛,他:全国での支援ネットワーク.厚生省厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「特定疾患対策の地域支援ネットワークの構築に関する研究班(主任研究者:木村格)」平成11年度研究報告書,2000,p.81-104
  9. 木村格,佐藤猛,他:全国での支援ネットワーク.厚生省厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「特定疾患対策の地域支援ネットワークの構築に関する研究班(主任研究者:木村格)」平成12年度研究報告書,2001,p.1-142

VI.在宅ケア

1.はじめに

 ALS患者の在宅ケアに関する診療ガイドライン作成にあたって,学術的なevidenceと在宅ケアの経験や実践に基づいた指針の作成が必要である.そこで学術的なevidenceを求めるため,MEDLINEによる文献検索を行った.ALSとHOMEの組み合わせでは96件がヒットし,ALSとHOMECAREでは46件がヒットした.これらの文献の内訳を整理すると(一部重複もしくは除外),在 宅人工呼吸管理が最も多く21件,homecare全般についてはreviewを含め11件,QOLに関するもの2件,緩和ケア4件,その他10件であった.ただ外国の文献の多くは,在宅ケアの仕組みや制度の違いなどのため,日本の現実に適用できるものは少ないことが判明した.そこでこのガイドラインでは,主に日本の在宅ケアの実践に基づく経験的な事実をもとに,診療ガイドラインの作成を行った.

2.在宅ケア導入そして継続の条件

1)日本の現状
 ALSの長期ケアに関して,日本は諸外国に比し特異な状況にある.それは人工呼吸器装着者が多いということである.ただ呼吸器装着の場合,入院そして在宅を問わず極めて厳しい現実がある.入院の場合,病院のマンパワー不足やさまざまな保険医療制度上の制約もあり,長期入院は困難な場合が多い.そこで在宅ケアということになるが介護者の確保など厳しい問題も多い.ただ最近では介護保険制度などの実施や在宅での福祉サービスの充実により,療養環境は以前に比較して格段に進歩してきている.また患者さん自身も「できることなら在宅で暮らしたい」という希望も強く,QOL(生きがい)の拡大という意味でも在宅ケアは今後大きな発展が期待出来よう.
 ALSでは病期や重症度により,その対応は大きく異なる.まずALSと診断された時,病状が軽症で自立している場合,いわゆる通院となるが,このときの在宅療養は在宅ケアと区別して考えたい.ここで取り上げる在宅ケアは,入院ないし通院中に病状が進行し(入院の場合には退院し在宅へと移行),在宅で長期にわたりケアされる状態を指している.他の神経難病と比較した調査では,ALSは脊髄小脳変性症やパーキンソン病と比較して,罹病期間が短く,嚥下・呼吸障害などの症状,医療処置,日常生活の全面介助状態の患者が多い.そして在宅ケアの継続を困難にする因子として,医療処置,日常生活全面介助,および罹病期間の3因子をあげている.
 別の調査では,固定介護者の有無と球麻痺の有無が最大の阻害因子であると報告されている.また有意差は得られていないものの,円滑な在宅医療において,本人の延命への意思が明確であることが正の相関をとることとは逆に,家族の延命維持への意思が,負の相関を示す傾向にあるとされている.

3.在宅ケアを円滑に継続できる条件

1)病状の評価
 患者の正確な病状評価は重要である.病初期で球麻痺症状の出現をみないときは,多くの場合介護度も低く,在宅でのケアも容易である.

  1. 運動機能:上肢や下肢,躯幹の筋力低下の評価,そして日常生活動作(移動,食事,排泄,入浴)などが自立できているか,部分介助,全介助かが問題となる.
  2. 呼吸機能:呼吸不全により呼吸器が装着されているかどうか,気管切開を受けているか,また呼吸器の種類も大きな問題である.
  3. 摂食嚥下機能:嚥下障害の程度や鼻腔栄養か,胃瘻(PEG)を受けているかも問題になる.最近,便利で栄養価の高い経腸栄養剤の開発により,在宅でも比較的容易に栄養管理が可能である.
    (コミュニケーション力の評価:球麻痺がある場合は筆談が可能であるか,もしくはコンピュータなどの入力が可能であるか,など病状の進行に応じたコミュニケーションの手段を評価する.)

2)介護者の評価
 在宅ケアの導入,そして円滑な継続への最も重要な因子は,介護者の有無である.介護者がいない場合でも,ボランティアや訪問看護婦,ホームヘルパー(在宅介護人)の連携で,在宅ケアが継続されている例はあるが,極めて稀なケースといえよう.

  1. 健康状態:介護者も何らかの病気を抱えている場合も多い.在宅医療では,介護者の健康管理も重要な仕事の一つである.また長期の介護を安定して行うには,相談者や趣味の有無なども要素の一つである.
  2. 介護負担:介護者が一人の場合は,介護負担は大きい.主介護者をサポートしてくれる副介護者が近隣に居ることが理想的である.
  3. 近隣・患者家族との交流(患者会):ALS等の難病患者は,数も少なく相談する人も限られ,孤独に陥りやすい.困った時に相談できる患者会は重要である.

3)社会資源の活用

  1. 特定疾患受給者証,重症難病認定,身体障害者手帳,介護保険など公的援助の申請やサービスを受けているか.
  2. ケアプランの作成:介護支援専門員により適切なケアプランが作成されているか.ケアプラン作成にあたっては,ALSについての専門知識を持った介護支援専門員が望ましい.
  3. 訪問医療,訪問看護,訪問リハビリ
     医療保険と介護保険によるサービスがある。医療保険では訪問診療,訪問看護(毎日の訪問が可能),訪問リハビリテーションと,人工呼吸器を使用している場合には在宅人工呼吸指導管理,呼吸器の貸し出し,衛生材料の支給などがある。(詳細については介護・福祉,医療経済の項参照)

4)ネットワークとケアシステム
 ALS患者を在宅で長期にケアできるかの最大のポイントは,地域支援ネットワークと在宅ケアシステムの構築である.

  1. 重症難病医療ネットワーク協議会:平成11年度「重症難病患者入院施設確保事業」に基づいて,各都道府県で難病医療連絡会議の設置と,拠点ー協力病院の指定など重症難病医療ネットワーク協議会の設立が検討されている.今後,拠点施設を中心に,難病医療専門員の配置や入転院の紹介斡旋,情報提供などを継続的に実施していく必要がある.患者家族にとっては,できるだけ住み慣れたところで療養したいわけで,拠点ー協力病院の連携で,地域の病院に入院できる体制が望ましい(支援ネットワーク参照)
  2. 地域ケアシステムの確立:ALSの在宅での長期ケアは,主介護者となる家族とともに,在宅を支援する多くの職種の共同作業が重要である.病状は日々変化し,悪化することも多いわけで,定期的な会合を開いて情報交換やケアのやり方,緊急時の対応などを話し合うケア会議(検討会や調整会議)は重要である.職種間の垣根を超えた連携なしには,ALSケアは不可能である.

5)解決が急がれる問題点

  1. 吸引
     ALS患者が在宅で療養する時に必須の吸引と注入が,医療行為という位置付けのためヘルパーには禁止されている.吸引操作は,ALSの在宅ケアでは呼吸器装着の如何にかかわらず大きな問題である.多くの患者では一時間に最低1回は吸引を求めるため,特に夜間はそのたびに介護者は起きなければならない.家族の介護負担は過重となる.研修の機会を作るなどして,ヘルパーの吸引操作を認める方向で検討していくべきである.
  2. 診療報酬改定に向けての要望
     他の保険医療機関において在宅患者訪問看護・指導料を算定している患者については,算定できない.ALSなどの難病で呼吸器など装着しているとき,特殊な技術など要するため複数の機関からの訪問看護を必要とする場合がある.また在宅患者訪問診察料は,1人の患者に対し1保険医療機関の指導管理の下に継続的に行われる訪問診療について,1日につき1回に限り算定となっている.ALSなどの難病では,専門医療機関と地域の医療機関との連携で患者の指導管理にあたっている場合が多い.そこで専門医療機関が定期的に行う在宅医療に関しても訪問指導料を認める方向で検討すべきである.
  3. 遠隔医療
     テレビ電話やモニターなど最近のマルチメディア装置の開発により,在宅にいながら医療指示が受けられるシステムが開発されつつある.解決しなければならない課題は多いが,相手がみえて状況判断が可能になり緊急時の対応が的確にできるなどALSなど難病患者にとっては大きな安心となる.

文献

  1. 牛込佐和子,江藤和江,小倉朗子,他:神経系難病における在宅療養継続に関係する要因の研究.日本公衆衛生雑誌.2000;47:204-205
  2. 児玉知子,福永秀敏:在宅医療ALSの多面的評価について.厚生科学研究費補助金「筋萎縮性側索硬症の病態の診療指針作成に関する研究」平成12年度総括・分担研究報告書.2000,p15
  3. 福永秀敏:ALS患者の介護・在宅医療.神経内科 2001;54:41-47
  4. 近藤清彦:神経内科疾患と在宅医療.BRAINNURSING 2000;16:10-37
  5. Poulshock SW, Deimling GT: Families caring for elders in residence. issues in the measurement of burden. J Gerontol 1984; 39: 230-239


VIII.呼吸管理・栄養管理

1.はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis = ALS)は規則性をもって運動神経系を選択的に障害する系統変性疾患である.そのため,医師はALSの患者・家族に,これから先に生じる運動機能低下を予測し,事前にそれらへの対応を一緒に準備する期間をとることができる疾患であるといえる1)
 ALSの運動障害の中で,呼吸筋障害による呼吸不全と球麻痺による嚥下障害は,そのまま放置すると患者の生命に関るので,その呼吸管理と栄養管理はALS患者の治療上重要である.

2.呼吸管理

1)ALSの呼吸筋障害の位置づけ
 ALSは,発症して3〜4年で呼吸筋麻痺に陥る疾患ではあるが,日本ではここ20数年来,長期に人工呼吸器を使用することで呼吸筋麻痺を乗り越えて生活ができるようになり,入院療養から在宅療養へ移行する患者が増加してきている2-6).人工呼吸器装着後のALS患者の四肢筋,球筋,外眼筋の運動障害を長期的に観察することによって,数は少ないが全ての随意筋が麻痺する全随意筋麻痺(totally locked-in state = TLS)がALS患者に生じることが明らかになってきた7).そのためALSの呼吸筋麻痺をALS全臨床経過の一過程であり,呼吸筋麻痺後を含めた一症状であるとも考えられる8)9).しかし人工呼吸器を装着して生きるかどうかは患者本人が家族等と事前に十分検討して自己決定するものであり,医師を含めた医療チームは患者・家族が正しく判断できるように,早期から十分な情報を提示することが求められる.

2)人工呼吸器を装着するか否かに際しての説明

 病名告知をする時に医師は,将来呼吸筋麻痺のため呼吸不全に陥ることを患者・家族に説明するが,一度話しても患者・家族は十分に理解することは困難である. (1)気管切開し人工呼吸器を装着することの意味について,(2)人工呼吸器装着後の入院・在宅を含めた療養環境については,呼吸不全になる前に患者・家族が納得いくまで説明する必要がある(詳細は告知・在宅ケア・ネットワークの項目参照).
 呼吸筋麻痺時の呼吸の補助には鼻マスクによる非侵襲的な呼吸補助(non-invasive ventilation,NV)と気管切開による侵襲的な呼吸補助(tracheal ventilation,TV)があるが,NVは球麻痺の増強で継続が困難となりTVに変えなければならないないこと,TVでは気管切開孔は閉鎖できず呼吸器も外せないこと,TVでは言葉を介する以外のコミュニケーション手段も必要となること,そして,ポータブル呼吸器や吸引器の発達で,TVでも,外泊や旅行や在宅呼吸療養も可能になっていること,全国的なALS患者・家族会(Japan ALS association = JALSA)があり,互いに交流を深めあうことができるようになっていることなどは話しておく必要がある.
 さらに,呼吸筋麻痺後の入院・在宅を含めた現状の呼吸療養の環境整備が充分ではないこと6),患者・家族自身もこの解決のために,一緒に取り組んでいかなければならない状況にあることも理解してもらう必要がある(1)(「今後の課題」および,「在宅療養」「支援ネットワーク」を参照).
 ところで,換気不全での呼吸補助を受容する患者自身の態度や考えは,実際にALSの運動障害が進行した時点や,患者を支えている周囲の人間関係の関わりの変化などで大きく変動することがよく知られている10).そのため,早期から患者・家族との信頼関係を築いて,症状などの状況の変化に応じて繰り返し話し合いながら,その態度や考えを確かめていく必要がある.

3)ALSの呼吸機能低下の早期診断

A.ALSの早期の呼吸機能低下症状
 ALSの早期の呼吸機能低下の症状は,大声が出しにくい,長時間の会話が続かない,日常動作時にも息切れがしやすくなるなどがある.これらは徐々に出現し,日常の生活の中では時間をかけて自然に適応していることが多いので,自覚されないだけでなく周囲にも気づかれないことも多い.
 ALSの早期呼吸筋障害の症状は,覚醒時よりも睡眠時に現れることが多い.実際の呼吸機能低下による睡眠時の早期症状としては,なかなか寝つけない,すぐ目覚める,熟眠できない,早朝に頭痛がする,昼間うとうとして易疲労性があり,考えが集中できないなどの睡眠時の呼吸障害(sleep-disordered breathing = SDB)に由来すると思われる症状が知られている11)12).これらが持続する時は,潜在的に呼吸筋障害が生じていると考え,諸検査を含めた適切な対応が必要となる.まれではあるが,夜間睡眠中に突然の無呼吸で死に至る危険性もあり13),睡眠時を含め早期の潜在化している呼吸機能低下の臨床的評価と,それへの早急な対応はALS医療の重要な項目である.

B.ALSの呼吸機能評価法
 客観的なALS患者の呼吸機能評価法としては,%予想努力性肺活量(percent-predicted forced vital capacity = %FVC)の測定が多く用いられ,ALSでは50%以下が呼吸を補助する基準として挙げられている14)15).しかし,50%以上保たれていても疲労感,呼吸困難感のある患者は仰臥位になると換気量が有意に低下したり16),また,50%以下になっても,必ずしも臨床的な呼吸機能低下症状が現れないこともある.そのため,患者が換気不全に伴う症状を訴えたら,%FVCの検査値にとらわれずに呼吸補助を考えていくべきである.しかし,50%以下の時は症状がみられなくても,臨床症状と%FVCの評価を少なくとも3ヵ月毎に行い,呼吸補助の時期を決めていく対応が必要である14)15)
 NAMDRC(National Association for Medical Direction of Respiratory Care)のconsensus conference report17)は, Paco2を含め以下の三項目の一つが満たされれば,鼻マスクによるnon-invasive ventilation(NV)での呼吸を補助する基準にしている.このNVの呼吸補助導入の検討基準は,ALSのtracheal ventilation(TV)にも適用できる.%FVCを含めこれらのいずれかの基準を満たすALS患者には,臨床的な呼吸機能低下症状を認めなくとも,少なくとも3ヵ月毎に臨床的観察と呼吸機能の客観的評価を継続的に行い,実際の呼吸補助が遅れないようにしていく必要がある.
NAMDRCのconsensus conference report17)

  1. Paco2が45mmHg以上
  2. 睡眠中血中酸素飽和度が88%以下を5分以上持続
  3. %FVCが50%以下か最大吸気圧が60cmmH2O以下

4)呼吸筋障害による換気不全への対応と治療

A.ALS患者の呼吸補助を導入しない時の対応と手順
 呼吸補助を導入しない時では,医師は呼吸補助をしないとの判断に至るまでの過程を患者・家族との間では互いになんでも情報を出し合い,充分に相手と話しあえる信頼関係を築いて行い,その後の患者・家族が孤立化しないで生きていけるような支援体制が維持できるようにしていくことが望ましい.しかし,そのような状況でも,呼吸補助の可能性はいつでも残されていることを伝えておくことは大切と思われる.
 このような時期では,患者自身が身体的にも精神的にも痛みがなく,また,後に残された人々にも痛みが残されないように,そして,患者自身がギリギリまで生ききれるように,生きるためのケアをしていくことが大切である18).(「緩和ケア」を参照)

B.ALS患者の呼吸補助を導入する時の対応と手順
 実際のALS医療の現場では,ALS患者・家族は換気不全時のギリギリまで,気管切開による呼吸補助(TV)を受け入れることについて結論がだせないことが少なくない.そのため,換気不全による呼吸困難の時期は遅らせたいがTVは受け入れたくないとしている患者,TVを受け入れる結論はまだでていない患者,TVを受け入れてもTVにいたる時期をできるだけ遅らせたい患者に対しては,先ずNVによる呼吸の補助を勧め,NVをしながらTVの対応を考えていくことがよい.
 つまり,呼吸補助は,ある程度の自発呼吸と嚥下や発語・発声の球筋機能が保たれ,上気道が維持されている時は,先ずは,NV から始められる15)19).NVにより,低下していた自発呼吸流量は増加し,球筋機能が保たれている限りは,低下した呼気エネルギーは補充されて会話によるコミュニケーションが助けられ,換気低下で生じていた見かけ上の嚥下機能低下も改善される15)19).NVによる効果として,慢性筋疲労の間歇休息による改善,肺コンプライアンスの改善夜間低換気の高炭酸ガス血症による中枢換気ドライブ低下の抑制19),生命予後の改善20)21)22)などがいわれているが,ALSの進行の改善に関しては,%FVCの悪化の遅延化23)と増強化24)の報告があり結論は得られていない.
 NVの導入後に,球筋麻痺が増強し気道分泌物や誤嚥物の排出が困難になると,上気道機能は低下し,NVでは困難となり,TVに変更しなければならなくなる15)19).そのため,NV導入後も,TVの受け入れを患者・家族とも充分に話しあって,受け入れる時には導入が遅れないようにしていく必要がある.
 しかし,NVのマスクがあわない患者や,呼吸機能低下の当初から球麻痺が強く,NVができない場合は,始めから気管切開で呼吸道を確保したTVによる呼吸補助を行わなければならないので,充分に患者・家族と話し合っておくことが大切である15)19)

5)呼吸器離脱の問題(withdraw invasive ventilation)

 長期の呼吸療養から,TLSを含め,新たに呼吸筋麻痺を越えたALSのターミナル(「死」)の問題が検討され,TLSを新たなALSのターミナル(「死」)として,TLS患者からの呼吸器離脱の問題がでている.しかし,呼吸器離脱は,呼吸器の非装着の問題とも関係し,advanced directives(進行期の治療要望書)やdurable power of attorney for health welfare(医療に関する永続的代理委任)1)15)25)などのALS患者の生命やQOLなどに関係した倫理的諸問題を含み,これから更に深めていかなければならない課題となっている.

6)今後の課題

1)呼吸筋麻痺後の長期呼吸療養の医療環境を整備していくことが緊急の課題となってきている.現状の長期呼吸療養患者療養施設が絶対的に不足していること,コミュニケーション障害を含め質的にも量的にも時間を要する重度の看護・介護による病棟マンパワー不足のため呼吸療養患者の入院枠が限定されていること,在宅呼吸療養では主たる介護者に加わる医療的看護負荷と福祉的介護負荷などの重負荷の軽減化が遅れていることなど,在宅呼吸療養の継続を困難にしている要因1)6)26)27)に早急に取り組んでいく必要がある.
2)NVは球麻痺のない時に適用されるが,球麻痺の進行でNVからTVに移行する時,その時期を何処に置くべきかの判定基準の検討が必要である.
3)長期呼吸療養が確立されてきた現在,withholding ventilation(TVの呼吸器非装着)とALS患者では倫理的に同様の意味をもつことになるwithdrawing ventilation(TVの呼吸器離脱)を倫理的にどう考えていくか,また,TLSを含めて呼吸筋麻痺を越えたALSのターミナル(「死の時点」)をどう考えていくかは,今後の検討課題である.

3.栄養管理

  球麻痺による嚥下障害では,次の二項目の治療が要請される.

  1. 必要栄養量や水分量の確保困難への治療 〜(食物道の確保)
  2. 誤嚥と誤嚥時の喀出困難への治療 〜(呼吸道の確保)

1)ALS嚥下障害の症状の特徴

 ALSの嚥下障害はALSの運動障害の一つの球麻痺により,そのまま放置すると食事摂取困難による脱水・栄養不良や誤嚥性肺炎などで死に至るため,早期からの治療対応が必要である.
 食物の嚥下過程は,随意相の口腔期,随意相と反射相を含む咽頭期,および反射相の食道期の三つに分けられるが,早期のALSの嚥下障害は,口腔期と咽頭期の随意相の障害による症状として現れることが多い.
 一般的に患者と家族は経口摂取の継続の要望が強い.嚥下障害の対応としては,患者の協力がえられることが多く,食材の大きさ・形・柔らかさ・ねばり・トロミなどの工夫,食べる姿勢・食塊を送り込むタイミング・送り込む場所,摂食に時間をかけるなど障害に合わせた工夫を一緒にすることで,経口摂取の期間が延ばせることが少なくない15)28)(「4経口摂取の限界」の項を参照).

2)球麻痺の嚥下障害では同時に呼吸筋麻痺の評価が必要とされる

 ALSでは,球麻痺と呼吸筋麻痺とは近接して麻痺を生じる傾向がある2).そのため,球麻痺の増強で呼吸道と食物道を共通に使用している口腔・咽頭腔の諸筋群に麻痺が生じ,上気道の呼吸道としての機能が低下すると,潜在化していた軽度の呼吸機能低下が顕在化するとともに,嚥下障害が球麻痺による嚥下機能障害の程度以上に増強することが少なくない.
 呼吸筋麻痺に対するNV対応時で,球麻痺の増強で上気道の機能が低下しNVの維持が困難でTVへの移行が必須となるのとは逆に,呼吸機能低下は球麻痺の嚥下機能障害を増強する.球麻痺の嚥下障害を経過観察する時には,必ず同 時に呼吸機能を評価し,呼吸機能障害が嚥下障害を加重していないかを確かめ,常に呼吸機能障害に対する早期対応も考えていく必要がある15)28)29)

3)ALS患者の必要カロリー

 実際の食事摂取量は,患者の日常生活の状況を理解した介助者の評価と患者自身の空腹感や渇き感などから決められている15),呼吸器を装着したALSの患者の必要カロリーでは,筋萎縮および筋力低下や随意運動の減少で,必ずしも同年齢の身長・体重の体表面積から換算した標準カロリー摂取は必要としない29)

4)嚥下障害の客観的評価と経口摂取の限界の基準

 嚥下障害の客観的な評価は,透視下の造影剤の嚥下試験で可能であるが,経口摂取中止の絶対的な基準の作成は難しい15).随意筋麻痺の進行とともに経時的に体重は減少するために,体重の減少は栄養摂取低下をそのまま表示してはいない.しかし,体重が今までの10%以上減少する時には,生命予後から経口摂取のみでは限界とする報告がある29)
 また,前述したように潜在化している呼吸機能低下が球麻痺による嚥下障害を増強するために,呼吸器補助の基準とされている%FVCが50%レベル以下になる前に,PEG(後述)などの球麻痺の嚥下障害への対応を行うことが生命予後から適切とされている(15)(27).そのため,%FVCが50%以下の嚥下障害をもったALS患者へのPEGなどの対応は,食物道と呼吸道の両方の確保を視野において行う必要がある.なお,PEGの危険性は,%FVC が30〜50%では中等度,30%以下では高度である15)
 いずれにしても,検査や症状から経口摂取が限界と考えられても,患者自身と家族が,現在生じている嚥下障害では経口摂取は困難であることを自覚し受容しなければ先に進めない.
 そのため,誤嚥の頻度が増し,食事の時間が極端に延長するようになった時は,改めて,ALSでの球麻痺による嚥下障害の意味と,それによって生じる誤嚥による危険性と水分・栄養摂取低下に伴う障害を,頚部の解剖学的構造を図示しながら説明して,経口摂取以外のPEG,経管栄養,IVH(経静脈栄養)などの併用も含めて,経口摂取のみの考えを変更していくことを勧めていく必要がある.

5)球麻痺による嚥下障害の治療

A.球麻痺による嚥下障害治療を行う─呼吸機能は%FVCで50%を基準に考える

  1. 主として食物道の確保でよい場合
     呼吸機能検査で%FVCが50%以上で,誤嚥しても喀出困難がない球麻痺の嚥下障害では,食物道の確保のために,経鼻経管栄養(経管栄養)または手術的胃瘻形成術(胃瘻)が選択される.なお,最近の胃瘻は,合併症が少ない経皮的内視鏡的胃瘻造設術(percutanous endoscopic gastrostomy [PEG])で行なわれることが多くなっている28)29)31)32).しかし,造設術施行中に潜在的な呼吸機能障害が顕在化したり,比較的長期間の空虚な胃が造設後に胃内容が拡大して,横隔膜の動きに制約が生じ呼吸不全を誘発しうることにも留意する必要がある.
     しかし,%FVCが50%以上で呼吸機能が保たれていても,重度の球麻痺で頻回に誤嚥を繰り返し,経口摂取困難と誤嚥性肺炎の危険性が高い時は,呼吸道からの誤嚥物の吸引を目的に,経管栄養や胃瘻(PEG)による食物道の確保とともに単純気管切開も適応となる.
  2. 食物道とともに呼吸道の確保が必要な場合
     呼吸機能検査で%FVCが50%以下で,球麻痺による嚥下障害がある時には,誤嚥物を喀出する呼気力のエネルギー不足で誤嚥性肺炎を生じる頻度が高くなるので,食物道とともに呼吸道を同時に確保する必要がある15)27).%FVCが50%以下でNVを行っている時に,球麻痺による嚥下障害が加わりPEGを行う時は,TVへの対応も準備してPEGを施行する必要がある15)33)
     今まで食物道の確保には経鼻経管栄養や胃瘻またはPEGで,呼吸道の確保には単純気管切開と別々に行なわれてきた.しかし,球麻痺による嚥下障害がさらに進行すると,ALSでは呼吸筋麻痺が回避できなくなる.そのため,治療対応を検討する程に球麻痺の嚥下障害が進行した時には,食物道とともに同時に呼吸道を形成する気管分離・食道吻合術34)や喉頭摘除術35)の選択も行なわれる.

B.球麻痺による嚥下障害の治療を行わない
 呼吸管理の「呼吸筋障害による換気不全の治療で,呼吸の補助を導入しない時の対応」と同様の対応が考えられる.つまり,患者と家族の要望に応じて,できる範囲の経口摂取を試み,脱水に対しては補液などの処置も考慮していくとともに,患者と家族が孤立化せずに,周囲とともに生きていけるような支援体制を維持し,球麻痺による進行する嚥下障害や換気不全に由来する身体的な苦痛や精神的な不安を支えていくことが必要となる15)

6)これからの課題

 球麻痺による嚥下困難で,臨床所見または検査所見から,非経口摂取に変更する移行基準を何処に置くかの検討が必要である.

文献

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IX.対症療法,緩和ケア

 この項では,球麻痺,偽性球麻痺症状により患者の日常生活の質が落ちると考えられる,流涎,強制笑いに対する薬物療法を示す.

流涎

 ALSの流涎に対し比較試験は行われていないが,アトロピン(硫酸アトロピンR),トリヘキシフェニジル(アーテンR),スコポラミンなどの抗コリン作動を有する薬物が有効と報告されている1).これらの使用にあたっては,特にALS患者でADLが落ちている場合,イレウスや排尿困難などの副作用に十分注意が必要である.また最近ボツリヌストキシンA(ボトックスR)の唾液腺への注入が流涎に有効であるとの報告がある1).しかし特にボツリヌストキシンAは適用外使用であるため,流涎により患者のQOLが著しく阻害されている場合にのみ,添付文書に記載されている副作用を十分説明の上,患者の同意のもと,使用を考慮すべきで,安易な使用は避けるべきであろう.
 また唾液とは別に鼻腔分泌物・気道分泌物による粘稠な分泌物が多い場合は,?遮断薬が有効であると報告されている2)
 流涎に対する治療指針:水様の分泌物が主体である場合はアトロピン,トリヘキシフェニジル,スコポラミンを,粘稠な分泌物が主体である場合はベータ遮断薬を試みる.

強制笑い,強制泣き

 強制笑い,強制泣きはALS患者で頻繁にみとめられる症状で,これらに対しアミトリプチリン(トリプタノールR)が比較対照試験で有効であると報告されている3).またオープン試験であるがSSRIであるフルボキサミン(デプロメールR,ルボックスR)が有効であると報告されている4)
 強制笑い,強制泣きに対する治療指針:アミトリプチリンを用いる.有効でないか,副作用がある場合はフルボキサミンを試みる.

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緩和ケア

【ALSにおける緩和ケア(末期に限定)の定義】

 WHO(1990年)は,癌を対象とし「緩和ケアは,治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアで,痛みやその他の症状コントロール,精神的,社会的,霊的問題の解決が最も重要な課題である.その目標は,患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することであり,末期だけでなく病初期から行うものである(狭義の緩和ケア)」と定義している1).日本では医療哲学の立場から,清水は「緩和医療は,対象となる人の現在のQOLを可能な限り高めることによって,今後の余命期間に亘るQOLの積分を可能な限り高めることに寄与することを目指す」とし,癌のみでなくALSなどの神経疾患も含めてQOL評価・緩和医療・尊厳死などに言及している2)
 ALSにおける緩和ケアも,WHOのいう「病初期からのQOLを重視した全人的ケア」を目指すのは当然であるが,ここではALSの末期の各種身体的および精神的苦痛の緩和(狭義の緩和ケア)の医学的方法論に限定する.
 ALSを代表とする難治性進行性神経筋疾患の緩和ケアの広範な論議は世界的にも緒に就いたばかりである3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10).特に,人工呼吸療法や終末期医療の捉え方は,文化的・社会的背景,価値観,医療制度の違いなど様々の要因により,日本と欧米ではかなり異なっている11).さらに国内でも医療者によって大きな差異があるのが現実である.従って,緩和ケアや終末期医療の定義を明確にし共有化を図ったうえで具体的方法論を確立し普及することが必要となる.

【倫理上の考慮】

  1. 意思決定の共有
     各種療法の選択に際し,医師と患者は意思決定を共有すべきである12)
  2. 各種の治療の利益とリスクについての説明
     酸素投与は高炭酸ガス血症の悪化13)を,抗不安薬や睡眠薬は呼吸抑制を招く可能性がある.しかし,各種延命処置を選択しないことを自己決定している終末期のALS患者の場合,家族にリスクをよく説明し了解してもらったうえで,苦痛の緩和を最優先すべきとの意見もある.

【緩和ケアの目標】

  1. 患者の苦痛の軽減を最大の目標とすべきである12)
  2. 具体的症状としては,呼吸困難,不安,疼痛の軽減を目標とする.

【症状緩和の方法】

 全国の神経内科医に対する緩和ケアに関するアンケート調査では,終末期を診療する経験の多い医師ほどALS患者の苦痛の緩和を優先し,各種薬物や酸素投与などを積極的に行うのがよいとの意見が多く見られた8).しかし,日本では終末期の苦痛症状緩和の系統だった方法論やそのoutcomeの研究はほとんどないため,具体的方法論とその評価などは,1999年,Neurologyに発表されたアメリカ(AAN)のガイドライン6)を参考(一部改変)にする.

  1. 可逆的原因があれば,その治療(例:肺炎,気管支痙攣など)
  2. 間歇的な呼吸困難の治療
    1. 不安の軽減:抗不安薬,抗欝薬の内服,注射(できるだけ呼吸抑制作用の少ないもの)
    2. オピオイドの投与
    3. 酸素の投与
  3. 継続的な呼吸困難の治療(癌の疼痛緩和に準ず)
    1. オピオイドの時間毎の投与(例:4-6時間毎のモルヒネ投与,非経口または経口)
    2. 重症の場合はモルヒネの連続注入
    3. 夜間の症状コントロールにはジアゼパムやミダゾラムを追加
    4. 末期の落ち着きのなさに対してはクロルプロマジンなど向精神薬の時間毎の非経口的投与
  4. 低酸素血症に対しては酸素療法
    1. 低用量(0.5L/min)から使用
    2. 低酸素状態がなくても少量の酸素により呼吸困難感が軽減することもあるので使用してみる価値あり.
【症状緩和の評価】
  1. 疼痛
     ALS末期においては40〜73%の患者が疼痛を経験する9,14,15,16).その原因としては,関節の硬直,筋痙攣,不動による皮膚や関節の圧迫などが考えられる.抗炎症薬,抗痙縮薬,非麻薬性鎮痛薬の併用が55%の患者で有効との報告がある.ALS患者へのオピオイドの有効性については,日本では塩酸ブプレノルフィンの症例報告があるのみである17),外国のホスピスでは約80%に有効との報告があり15),AANは癌性疼痛に対すると同様にオピオイドの使用を推奨している6).日本でのアンケート調査では,疼痛に対するオピオイドの使用は13〜26%と少ないが,使用に賛成は61〜82%と多く7,8,10),ALSに対する保険適応の拡大と普及が望まれる.
  2. 呼吸困難,不安
     呼吸筋力低下による呼吸困難はALS患者の50%〜60数%にみられる9,15,16)
     オピオイドは,ホスピスに入院しているALS患者の呼吸困難の軽減に81%で良好との報告がある15).AANは末期の神経疾患患者の呼吸困難の治療にオピオイドの投与を認め,1999年のガイドラインでもこれを推奨している6).日本でのアンケート調査では,全体ではオピオイドの使用経験ありは15%,使用に賛成は42%と少ないが,使用経験のある群,ない群でみると賛成が81%,35%と大きな差がみられる8)
     酸素の効果は拘束性肺疾患を伴った低酸素血症の癌患者に有効とされ18,19),ALSにおいても有用性があると考えられる.酸素投与に関して日本におけるアンケート調査では酸素の使用および標準化は,「どちらともいえない」が半数あり,その理由としてほとんどが呼吸抑制やCO2ナルコーシスの危険性を挙げており,苦痛の緩和との間で躊躇する様子が伺われた8).特に高炭酸ガス血症のある場合は低換気性呼吸不全を誘発することがあるので家族への説明と了解を得ることが必要である.
     呼吸困難に伴う不安に対して抗不安薬の効果は有用と考えられており,AANは不安発作に対し短時間作用の抗不安薬の投与を推奨している6).日本でも抗不安薬の使用経験は92%と大多数の神経内科医が使用しており,81%が積極的に使用すべきと考えている8).また,癌患者においてクロルプロマジンが呼吸困難症状を軽減すること21),鍼灸療法も有用である可能性が示されている20)

【推奨方法】

  1. 疼痛の管理
    1. ALS患者の疼痛の初期治療には,非麻薬性鎮痛薬,抗炎症薬,抗痙縮薬を用いる.
    2. 非麻薬性鎮痛薬が奏効しなかった場合には,WHOの指針に従ってオピオイドを適宜に使用する.
  2. 末期の呼吸困難の治療
    1. 安静時の呼吸困難に対しては,オピオイドを単独または酸素投与と組み合わせて使用する.
    2. 高用量では呼吸抑制のリスクがあることを家族に了解してもらうこと.
    3. クロルプロマジンと鍼灸療法を検討すること.
  3. 終末期の不安の治療
    1. 抗不安薬,抗うつ薬などを積極的に投与する.
      (注)モルヒネの使用に際しては現段階では各施設の倫理委員会を通して対応すべきである.

【今後検討すべきこと】

  1. モルヒネの保健適応
     我が国ではモルヒネの保険適応はALSでは認められていない.今後適応承認へ向けての働きかけが必要である.
  2. ホスピスケア
     日本では緩和ケア,ホスピスケアの保険適応は癌とAIDSに限定されている.今後ALSにも適応を拡大することはできる方向で働きかけるべきであろう.
  3. Advance directive
     これは国や民族による文化的・宗教的価値観によって大きく異なり,欧米の行い方が日本においても適用される問題ではない.さらに個々人の価値観,人生観・死生観に関わる問題であるが,日本ではALSにおいて医療現場での公けの議論には到っておらず,今後の大きな課題である.特にTPPVの離脱については患者から問題提起が出てきている現実もある.この問題は倫理的にはもちろん法的問題も絡み,患者・家族,医療者,哲学者,法律家などを含めた広範な議論が行う時期がきているのではないだろうか.
  4. ALS末期の症状の有病率,QOLの調査
  5. 緩和ケアで行われている治療法の有効性の検証
  6. ALS患者とその家族のQOLの調査・比較(在宅ケア,長期入院,施設)
  7. 緩和ケアの医療教育への導入
  8. ケアギバーに対する心理的影響

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XII.介護・福祉

 ALS患者さんに対する医療,介護・福祉を経済的な側面から考えると,以下のような極めて複雑な要因が関与しており,現在,十分なEvidenceとして得られる情報はない.

  1. ALSは進行性の疾患であり,その細かな障害の出現,進行状況により多様な対応がもとめられる.
  2. 医療施設入院の場合でも診断期,長期入院,呼吸器管理の期間などで費用に関し て大きく異なっている.
  3. 在宅療養では家族の介護力,介護保険の活用の程度,在宅呼吸管理の有無などで費用のかかりかたは千差万別である.
  4. 患者さんの居住地によって様々なサービスも受けられない場合がある.
 上記以外にも現状ではALSの対応として患者さんに自由に医療,介護・福祉の選択をしていただくには多くの制限があり,今後の課題と思われる.
 したがって,今回は,現時点での医療における経済的状況と介護・福祉面での利用に関しての情報を資料として添付する.また,同時に今後の解決すべき問題点もまとめてみた.
資料:診療報酬

 ALSは神経難病の中でも身体介助量が膨大である.さらに呼吸管理を要するようになるとケアが多岐にわたり,マンパワー確保が最も重要となる.最近,各地で公的な入院施設確保事業が立ち上げられ,地域内における円滑な入転院が図られているが,しばしば受入拒否が見られる.その理由として,(1)人工呼吸器の部屋がないあるいは呼吸管理の経験がない,(2)平均在院日数が延びる,(3)診療報酬逓減制のため経営に支障をきたす,などがよく挙げられる.(1)については物理的なものであるので割愛するが,(2)と(3)について現状を把握しておく必要がある.平成12年度からの介護保険の導入とともに,従来の診療報酬制度や逓減制もかなり改訂がなされている.

【平均在院日数について】
 現在の制度では表1に示す要件を満たすものは一般病床における平均在院日数の計算対象とはならないことになっている.実際にALS患者に適用できるものは,表1の12に相当するもののみである.従って,70歳以上で6ヶ月を超えて入院したALS患者のみ平均在院日数の計算対象外になる.この状況では,70歳未満のALS患者の一般病棟での長期入院はかなり厳しいものとなる.比較的若年で人工呼吸を装着しているALS患者の長期療養環境の整備のためには,在院日数の計算対象外にされるよう行政に働きかけていく必要がある.

【入院診療報酬について】
 ここでは,医療保険適用の一般病床と介護保険適用の療養病床に分け,さらに人工呼吸器・経鼻栄養の有無に分けて,一般病床・療養病床別に入院報酬のモデル試算を示す.なお,試算には理学療法以外の個別の医療行為は含まれておらず,また看護料や特掲診療料は算定内容により変動が生ずると考えられる.

1.一般病床入院・人工呼吸器なし・経口摂取の場合:

<入院期間入院時から30日>
基本診療料:
 入院料 5,100点
 看護料(2.5対1看護,10対1看護補助) 23,130点
 入院診療料(難病患者等入院診療料) 7,500点
 入院時医学管理料 14,904点
 小計 50,634点
特掲診療料:
 理学療法(II複雑,6月以内),作業療法(II簡単,6月以内)
 小計 18,200点
食事療養費:65,100円
総計金額:753,440円/月
<入院期間6月超の30日分>
基本診療料:
 入院料 5,100点
 看護料(2.5対1看護,10対1看護補助) 22,770点
 入院診療料(難病患者等入院診療料) 7,500点
 入院時医学管理料 3,810点
 小計 39,180点
特掲診療料:
 理学療法(II複雑,6月超),作業療法(II簡単,6月超)
 小計 16,510点
食事療養費:65,100円
総計金額:622,000円/月

2.一般病床入院・人工呼吸器装着・経鼻栄養・全面介助の場合:

 <入院期間入院時から30日>
基本診療料:
 入院料 5,100点
 看護料(2.5対1看護,10対1看護補助) 23,130点
 入院診療料(難病患者等・超重症者入院診療料) 13,500点
 入院時医学管理料 14,904点
 小計 56,634点
特掲診療料:
 人工呼吸・鼻腔栄養・終末呼気炭酸ガス濃度測定
 理学療法(II複雑,6月以内),作業療法(II簡単,6月以内)
 小計 37,800点
食事療養費(特別食加算):75,600円
総計金額:1,019,940円/月
 <入院期間6月超の30日分>
基本診療料:
 入院料 5,100点
 看護料(2.5対1看護,10対1看護補助) 22,770点
 入院診療料(難病患者等・超重症者入院診療料) 13,500点
 入院時医学管理料 3,810点
 小計 45,180点
特掲診療料:
 人工呼吸・鼻腔栄養・終末呼気炭酸ガス濃度測定
 理学療法(II複雑,6月超),作業療法(II簡単,6月超)
 小計 36,110点
食事療養費:75,600円
総計金額:888,500円/月

3.療養病床入院・人工呼吸器なしの場合:

 <入院期間入院時から30日>
基本診療料:
 入院料(療養1群(I)入院管理料,加算I,感防加算) 29,730点
 看護料(夜間看護加算IIa) 960点
 入院診療料(難病患者等入院診療料) 7,500点
 小計 38,190点
特掲診療料:
 理学療法(II複雑,6月以内),作業療法(II簡単,6月以内)
 小計 18,200点
食事療養費:65,100円
総計金額:629,000円/月
 <入院期間6月超の30日分>
基本診療料:
 入院料(療養1群(I)入院管理料,加算I,感防加算) 29,730点
 看護料(夜間看護加算IIa) 960点
 入院診療料(難病患者等入院診療料) 7,500点
 小計 38,190点
特掲診療料:
 理学療法(II複雑,6月超),作業療法(II簡単,6月超)
 小計 16,510点
食事療養費:65,100円
総計金額:612,100円/月

4.療養病床入院・人工呼吸器装着・経鼻栄養の場合:

 <入院期間入院時から30日>
基本診療料:
 入院料(療養1群(I)入院管理料,加算I,感防加算) 29,730点
 看護料(夜間看護加算IIa) 960点
 入院診療料(難病患者等・超重症者入院診療料) 13,500点
 小計 44,190点
特掲診療料:
 人工呼吸・終末呼気炭酸ガス濃度測定
 理学療法(II複雑,6月以内),作業療法(II簡単,6月以内)
 小計 36,000点
食事療養費:75,600円
総計金額:877,500円/月
 <入院期間6月超の30日分>
基本診療料:
 入院料(療養1群(I)入院管理料,加算I,感防加算) 29,730点
 看護料(夜間看護加算IIa) 960点
 入院診療料(難病患者等・超重症者入院診療料) 13,500点
 小計 44,190点
特掲診療料:
 人工呼吸・終末呼気炭酸ガス濃度測定
 理学療法(II複雑,6月超),作業療法(II簡単,6月超)
 小計 34,310点
食事療養費:75,600円
総計金額:860,600円/月

 一般と療養病床における診療報酬制度上の最大の違いは,療養病床では,検査料,投薬料,注射料および処置料が原則的に入院基本料に包括されることである(表2).従って,ADLが悪く全面的介護状態で様々な処置が必要なALS患者では,診療側のコストパフォーマンスが悪化することになりやすい.例えば,一般病院における人工呼吸管理のALS患者における看護ケアのタイムスタデイーでは,看護に要する時間は一日あたり5〜7時間と極めて長時間に及んでいた1).特に意思伝達に支障をきたす段階になると,患者本人の要望を理解するまでに長時間を要するようになり,著しい負担増となる.今後,このようなALS患者の特性が反映されるよう,診療報酬制度上の看護料の改善が図られることが望ましい.

参考文献

  1. 武藤香織,泉田信行,岩木三保,他:診療報酬の逓減制が神経難病患者に与える影響について〜原価調査とALS患者・家族への聞き取りを通じて〜日本難病看護学会誌,2001;5(3):168-184
  2. 医科点数表の解釈平成12年4月版,2000,p755
資料:在宅療養(Stage別のサービス利用と費用負担)

Model
 50歳男性会社員(机上勤務)
 家族 妻45歳 長女19歳 長男16歳(全員健康)
 一戸立て(持ち家)に居住
ModelをStage別に障害,症状を定め,在宅療養生活の条件を設定,評価するが以下を留意点とする.

  1. 各Stageの重症度別の症状,障害には相当のバリエーションがあること.
  2. 家族構成,経済基盤によっては大きく変化し,制限が加わること.
  3. スタンダードなものであり,本人,家 族の希望によって増減はありえる.
  4. 心理的支援(メンタルヘルスケア)は重要であるが,ほとんど報酬はない.
  5. ケアプラン次第で制度利用は大きく変化する.
  6. 在宅療養の条件設定には地域差があること.
  7. 各サービス単価は概算であり,1ヶ月分とした.

注)重症度分類は「厚生省特定疾患神経変性疾患調査研究対象10疾患の重症度分類」を用いた.

Stage1

 一つの体肢の運動障害,または球麻痺による構音障害がみられるが,日常生活,就労に支障はない.
Model
 左下肢の軽度の筋力低下を認めるが,日常生活,就労には支障はない.

利用可能な制度,サービス等

  • 特定疾患医療受給者証の申請
  • 定期外来通院1/2wまたは1/4w
  • 難病患者等居宅生活支援事業

point
この段階ではサービス,福祉用具,制度利用はほとんどない.特定疾患も本人に病名がわかるため,申請しないこともある.初期段階の本人,家族への疾患の説明が大きな問題となる.

Stage2

 各体肢の筋肉(4)・体幹の筋肉(1)・舌・顔面・口蓋・咽頭部(1)の6部位の筋肉のいずれか1つまたは2つの部位の明らかな運動障害のため,生活上の不自由があるが,日常生活,就労は独力で可能.
Model
 両下肢の筋力低下により歩行困難.車椅子を使用するが自操可能レベル.就労は机上勤務のため継続している.

利用可能な制度,サービス等

  • 特定疾患医療受給者証(重症認定)
  • 介護保険要介護1
  • 身体障害者手帳2級
  • 重度心身障害者医療受給者証
  • 障害基礎・厚生年金2級
  • 定期外来通院1/2wまたは1/4w

必要となる福祉用具,医療機器等

  • 車椅子普通型(厚生年金より支給)無料
  • 特殊寝台(介護保険よりレンタル)12,000円 自己負担1200円
  • 福祉用具購入(シャワーベンチ介護保険より補助)8500円 自己負担850円
  • 住宅改修(手すり,段差解消介護保険より補助)100,000円 自己負担10,000円

point
 入浴時,衣服着脱時に介助を要するが家族対応で可.職場調整,住環境の整備が必要.進行する不安への心理的支援を必要とする.

Stage3

 上記6部位の筋肉のうち3以上の部位の筋力低下のために,家事や就労などの社会的生活を継続できず,日常生活に介助を要する.
Model
 歩行不能.両上肢ともに著しい障害.軽度の構音障害.電動車椅子使用.退職し,在宅療養となる.

利用可能な制度,サービス等

  • 特定疾患医療受給者証(重症認定)
  • 介護保険要介護3
  • 身体障害者手帳1級
  • 重度心身障害者医療受給者証
  • 障害基礎・厚生年金1級
  • 特別障害者手当
  • 訪問看護(医療保険)看護婦1/1w理学療法士1/1w無料交通費実費
  • 訪問介護(介護保険より身体介護)ヘルパー3/1w(2時間)24,600円 自己負担2,460円
  • 通所リハビリ(介護保険)1/1w(月4回)29,000円 自己負担2,900円
  • 短期入所(介護保険)5/1M55,000円(自己負担5,500円)
  • 定期外来通院1/1M
  • 車椅子対応リフト車(通院時の送迎)差額自己負担
  • 訪問歯科診療

必要となる福祉用具,医療機器等

  • 電動車椅子(厚生年金より支給)無料
  • 特殊寝台(介護保険よりレンタル)12,000円 自己負担1200円
  • 福祉用具購入(ポータブルトイレ介護保険より助成)20,000円 自己負担2000円
  • 住宅改修(スロープ,ドア取替え介護保険より助成)100,000円 自己負担10,000円
  • 自助具(食事用)自費15,000円

point
 訪問看護,訪問介護,通所リハビリが加わるが,家族の介護負担大きく介護負担の軽減(レスパイトケア)のため短期入所も必要.本人の喪失感,厭世観強まり,家族も疲労,ストレス蓄積し,心理的支援のニーズが大きくなる.

Stage4

 呼吸,嚥下,または座位保持のうちいずれかが不能となり,日常生活全ての面で常に介助を必要とする.
Model
 両上下肢ほぼ全廃し,臥床状態が長い.中等度の構音障害.嚥下,咀嚼ともに機能低下し,栄養は鼻導と経口.喀痰排出困難.膀胱留置カテーテル.

利用可能な制度,サービス等

  • 特定疾患医療受給者証(重症認定)
  • 介護保険要介護5
  • 身体障害者手帳1級
  • 重度心身障害者医療受給者証
  • 障害基礎・厚生年金1級
  • 特別障害者手当
  • 訪問看護(医療保険)看護婦3/1w理学療法士1/1w言語聴覚士1/1w 交通費実費
  • 訪問介護(介護保険より身体介護)ヘルパー7/1w(2時間)58,000円 自己負担5800円
  • 訪問入浴(介護保険)1/1w51,000円 自己負担5100円
  • 短期入所または入院(介護保険,医療保険)5/1M

介護保険(療養型病床群80,000円 自己負担8,000円)

  • 往診(診療所)1/2w(緊急対応要)
  • 緊急入院(backbed)
  • 訪問歯科診療
  • 紙おむつ支給事業

必要となる福祉用具,医療機器等

  • リクライニング車椅子(厚生年金より支給)無料
  • 特殊寝台(介護保険よりレンタル)12,000円 自己負担1200円
  • 吸引器(身体障害者日常生活用具)65,000円 自己負担所得税額による
  • 意思伝達装置(身体障害者日常生活用具)500,000円 自己負担所得税額による
  • エアーマット(介護保険よりレンタル)8,000円 自己負担800円

point
 全面介助となり,本人の存在否定,家族も疲労が蓄積し,攻撃的になる場面もある.ストレスの緩和のため,心理的援助に加えて,短期入所などで物理的に離れることも必要でかかわる者の支持的態度が重要である.

Stage5

 寝たきりで,全面的に生命維持装置が必要である.
Model
 完全四肢麻痺でほとんどbedrest.気管切開,人工呼吸器使用.鼻導栄養,膀胱留置カテーテル.

利用可能な制度,サービス等

  • 特定疾患医療受給者証(重症認定)
  • 介護保険要介護5
  • 身体障害者手帳1級
  • 重度心身障害者医療受給者証 *障害基礎・厚生年金1級
  • 特別障害者手当
  • 訪問看護(医療保険)看護婦4/1w理学療法士1/1w 交通費実費
  • 訪問介護(介護保険より身体介護)ヘルパー7/1w(3時間)81,000円 自己負担8100円
  • 往診(診療所)1/1w(緊急対応要)
  • 緊急入院(backbed)
  • 人工呼吸器の定期・緊急メンテナンス
  • 意思伝達装置の定期メンテナンスとversion up
  • 訪問歯科診療
  • 短期入所・入院(身体障害者療護施設等)
  • 紙おむつ支給事業

必要となる福祉用具,医療機器等

  • リクライニング車椅子(呼吸器搭載可能なもの,厚生年金より支給)無料だが差額あり
  • 特殊寝台(介護保険よりレンタル)12,000円 自己負担1,200円
  • 吸引機(身体障害者日常生活用具)65,000円 自己負担所得税額による
  • 意思伝達装置(身体障害者日常生活用具)500,000円 自己負担所得税額による
  • 人工呼吸器(業者よりレンタル医療保険でカバー)
  • エアーマット(介護保険よりレンタル)8,000円 自己負担800円

point
 人工呼吸器使用での生体管理の体制,緊急時対応の体制の整備が必要.緊張,ストレスは極限になり,「平常」になるまでの見とおしを持った支援が必要である.本人が人工呼吸器を離脱したい気持ち(安楽死)が出てくることもあり,毎日の生活の継続の意味,目標を持てるか.家族の変化等によって長期療養の場を求めることもありえる.

ALS患者の在宅療養の現状

  1. modelでは介護保険を利用したが,40歳未満では利用できない.
  2. サービス利用は身体障害者福祉,介護保険,難病患者等居宅生活支援事業となるが難病患者等居宅生活支援事業は他法優先のため,実質,意味がない.
  3. 心理的援助(メンタルヘルスケア)はもっとも重要な一つだが,評価しにくく,報酬もほとんどない.
  4. 疾患の特徴を理解した上で個人を尊重し,自己決定できるようなかかわりが必要.
  5. 疾患を理解した共通認識,目標を持ったケアチームが必要.
  6. stage1〜5までの間,本人の存在を肯定するかかわりが重要.
  7. 人工呼吸器の使用については現実に即した,公平,平等な情報提供(説明)が必要.
  8. 人工呼吸器の使用を望んでも単身者は不可能であり,家族の積極的姿勢が不可欠で生活歴のなかに深い愛情,信頼がなければ非現実的である場合がほとんどである.
  9. 医療者は価値観を押し付けてはならない.
  10. 人工呼吸器の使用はbackbedが不可欠.
  11. 本人が望んでも人工呼吸器の停止は不可能.
  12. 生体管理に必要なかかわりだけではQOLの維持,向上は困難.社会参加,mail,internetなどのcommunicationが重要.
  13. 在宅でも,病院,施設でも長期にわたる人工呼吸器の使用は条件整備ができておらず,現実的にはほとんど選択肢はないといってよい.

ALS在宅療養に関する診療報酬(2000年)

往診料(650)
在宅患者訪問診療料(830)(1時間以上+100)
在宅時医学管理料(3360)
在宅患者訪問看護・指導料(3/1wまで530以上630)
在宅訪問リハビリテーション指導管理料(530)
在宅酸素療法指導管理料(2500)
在宅中心静脈栄養法指導管理料(3000)
在宅成分栄養経管栄養法指導管理料(2500)
在宅人工呼吸指導管理料(2800)
陽圧式人工呼吸器加算(7600)
 鼻マスク式加算(6000)
 陰圧式人工呼吸器加算(3000)
在宅持続陽圧式呼吸療法指導管理料(250)
在宅寝たきり患者処置指導管理料(1050)
退院患者継続訪問指導料(360)
訪問看護指示料(300)
在宅患者訪問薬剤管理指導料(550)
在宅患者訪問栄養食事指導料(530)
退院前在宅療養指導管理料(120)
作業療法急性期加算(+60)
早期理学療法(30日以内590)