生存への道標 2

 

台風23号が近づく平成161020日の霞ヶ関。介護保険と支援費制度の統合反対と三位一体改革、一般財源化にNOを叫ぶ障害者たちが、芝公園から厚労省前まで大規模なデモ行進を行いました。車椅子にビニールシートをかぶせ、冷たい雨の中ハンドマイクを握り締めた人々はおよそ1500人。彼らのシュプレヒコールは風雨の官庁街にこだましました。

 長い夏休みの後に再開された1012日の社会保障審議会障害者部会。そこで示された新たな障害保健福祉施策である「改革のグランドデザイン案」は、支援費制度の設計自体を介護保険そのものに近づける内容といってもいいものでした。介護保険に統一するには、障害者団体だけではなく財界や多くの自治体からの反対意見もあり、慎重に討議をおこなっていくという審議会の見解が示され始めていた矢先でした。近未来の障害者施策の、いわゆる青写真の原型がやっと示されたことになるのですが、これまで何度も障害者8団体が拒絶し交渉してきた論点である「自己負担」「応益負担」「アセスメント・審査委員会」などの導入や全身性障害者等の長時間介護が必要な者への給付には一定の上限を設けるいわゆる「包括支払い案」はそのまま残されはっきりと明示されたことになります。

 それによると全身性障害者から完全にALSは別扱いにされ、医療も含めた包括的なサービスがよいだろうとして「極めて重度の障害者を包括的に支える仕組み」の項目に重度の知的や精神の障害者たちと共に示されました。









以下は関係箇所の文面です。

〈基本的な考え方〉

○一定の要件を満たす者が、自立支援計画に基づき、複数のサービスを適切に確保する仕組み(必要なサービス提供事業者の確保・調整等を利用者が行わなくても事業者によって行われる仕組み)。

 緊急のニーズに際して、その都度、支給決定を経ることなく臨機応変に対応が可能になる。

○サービスの種類や量にかかわらず、一定額の報酬を支払う仕組みとし、各種サービスの単価の設定や利用サービスの種類や量を自由に設定できる仕組みとする。

 

そして、「一定の要件を満たす事業者」の条件とは

「@ケアマネジメント機能A24時間の連絡・対応体制B必要なサービスを十分提供できる体制。(単独提供型)=自ら必要なサービスを提供できる。 (チーム提供型)=必要なサービスを提供できる複数の事業者とチームを組んで提供できる。」というようになっています。さて、このグランドデザインを眺めて、いくつかの心配な点があるので列挙してみます。

1、自己負担は応益負担となる。扶養義務者負担は廃止というが、上限は示されていないので実際の負担額によっては制度の利用に歯止めがかかるのではないか。

2、ヘルパーの確保や調整は引き続き事業者が行う。しかしALSの介護に積極的な事業者は少ない。今後も十分な介護人員を得ることができるだろうか。

3、基準該当事業者等は今後も認められるだろうか。また、「一定の要件を満たす」事業者とあるが、管理者やサービス提供責任者の資格要件が厳しくなれば、障害者当事者の自主経営は困難になるだろう。また、24時間対応の事業者で吸引を行うところは現在も全く足りていない。事業者要件を緩くしてもらわないと制度があっても実効性に問題が出てくるだろう。

4、「緊急のニーズに対応する」とあるが、患者が入院した場合はサービスはどうなのだろう。継続を求めたい。

5、また緊急のニーズがあっても規定されたサービス分しか使えないのなら、給付時間数を使い切った後はすべてが自己負担になる。結局、事業者との個人契約部分の請求額は増え、患者家族の支出は増え続けることになるのではないか。

6、「包括支払い」ということは事業者に支払われる総額が決まっているということである。当事者団体の事業所などでは今でも包括的なサービス支給を行っているところが多いが、これまでのように利用者に差額請求できなければ、ますます赤字を覚悟するしかなく、また、経営の不安定が賃金に影響すればヘルパーの労働意欲が減退してしまう。ヘルパーも事業者もボランティアを暗に要求されるようになることもあるだろう。

7、介護保険を睨んだサービス改正案であることは疑いないが、今回のことは国の地方財源移譲に伴う政策の一環として行われるだけに、今後の障害者施策の実施主体は国から地方へ移るということでもある。たとえば、居宅介護部分は保険制度として介護保険の中で行われても、移動介護等のサービス実施主体は各自治体とされている。現在でも、ALS患者の療養において地域格差は深刻だが、ますますその差が大きくなることも考えられる。

半面、改善されるかもしれないと思われる点は

1、まったく支援費制度を使っていなかった/使えなかったような地域では、ある程度の底上げにはなるかもしれない。

2、包括的支払いなので時給や時間は原則的に好きなように(誰が・は示されていない)設定してよいとされる。事業者との連携がうまく行っていることを前提にして家族が介護のほとんどを担っているような家庭では上手に制度を使用すれば安定的な介護力が得られるようになるはずである。(しかし、家族主体の介護体制からの変更は半永久的に不可能になるだろう。さもなければヘルパー事業の自営をお勧めする)

今後、さらに検討され来年の通常国会に「障害者サービス法(仮称)」として提出され、2005年の介護保険改定では統合の方向にいくでしょう。各自の自衛策としては、諦めずに地域行政と交渉を続け今のうちに支援費の枠組みをできるだけ拡大しておくことと、ALSの介護ニーズを知ってもらうことです。たとえば、新制度になっても移動介護等の対象外にされたり、必要な日常生活用具の給付を停止されたりすることがないように自分たちの存在をアピールしておきましょう。