生存への道標 3  2005720

《 障害者自立支援法、国会審議はじまる 》 JALSA66


昨年以来、厚労省と障害者団体の間で検討されてきた障害者自立支援法案も今国会で審議が始まりました。しかし、多くの難問を抱えた法案を通すことはできないと危機感をもった各障害者団体は、「このままでは自立できない!このままでの成立は認められない!」と合同でデモ実行委員会を結成しました。そして、緊急大行動の呼びかけに応じて、75日に日比谷公園に集結した国会請願デモは11,000人を越えました。

私の子どもに負担を求めることはできない!デモ隊の先頭

◆争点 ALS患者の在宅療養

 まず、法案に対して障害者団体は問題点として以下を挙げています。

@定率自己負担の導入(最高4万200円)A知的障害者の移動介護の個別給付中止B各市区町村での障害区分間の流用禁止C専門家による審査会の設置D重度包括支援の中身が不明E精神障害等の通院公費助成凍結F施設における自己負担増額 

一昨年来、日本ALS協会でも厚生労働省障害福祉課との度重なる直接折衝をおこない、橋本操会長も他団体に混じってロビー活動をしてきました。最重度であるALS等の在宅療養にいったいどれくらいの予算がいただけるのかは、他障害にとっても大変に重要です。つまり、ALS以外の重度障害者の給付上限額も見えてくる話なので、今回の法案騒動の大きな争点でもあるのです。

 

◆厚生労働委員会の質疑応答から

さて、以下に衆議院の厚生労働委員会で提出されたALSに関連する質問や答弁を抜粋してご紹介します。(実際にはもっと多くの方々が重度障害者の自立に関して質問されていました)

511日には石毛えい子議員(民主)が「包括支援どういう障害者を想定しているのか」と質問されました。それに対して厚労省側の回答は「重度包括支援はALSなど極めて重度の方が、ホームヘルプ、デイサービスなどパッケージで支給するしくみ。その範囲はモデル調査踏まえやっていく。」でした。

また、18日には五島正規議員(民主)が以下のような質問をされました。「自己負担は個人単位か、同居人か、扶養義務者か、明確にお答え願いたい。常識的に考えたら個人負担か生活義務者負担しかないのではないか。それ以外は考えられない。介護保険が1割なので1割でいいという議論が成り立つのか。この法案は介護保険との統合を考えていると思うが、その時障害者福祉のどの部分で生かされていくのか。審査会と区分の決定はどういう人でやるのか。障害者団体から当事者の意見を聴取してくれとある。聞くことは必要だろう。自立とは自分のこと自分で決められることではないか。」

「サービス1割負担が利用の阻害要因になることにもなる。この法案が成立しなかったとき今年度の予算の執行はどうなるのか。来年度の予算編成の見通しを聞かせて頂きたい。」

この五島議員の質問に対して厚労省側の回答は「支援費は制度維持困難になり、地域格差もある。財政的には義務経費化できっちりやれるようになるメリットがある。今回の法案で自立して普通にくらせる社会づくりを考えている。具体的には、市町村中心に障害に関わらずサービスを提供し、雇用との連携で就労を図り、身近なところでサービスが受けられる、手続きの透明化明確化で全国どこでも公平につかえる制度となる。」また「市町村でやってもらうためには国・都道府県のバックアップが必要で現行は不十分。義務経費でしっかり負担する。国が楽になるのも事実だが市町村も楽になる。どういう取り組みをしてもらうかの計画は数値を入れ国に集め予算要求する。補助金は確保する。枠組みはできたが、第2第3の改革が必要。」「自己負担は基本は個人単位と考えているが、医療の家族扶助・税制の控除受けており、もうひとつ知恵をしぼらないといけない。関係者に意見きいて答えを出す。定率負担と収入に着目した月額負担は上限を設定。他の制度と比べ整合性のあるものにしておきたい。年金だけの人や資産の乏しい方もいるから減免を作る。安心して暮らせるような社会をつくりたい。」「支給量は市町村が決定する。市町村が家族、介助者の話しを聞くのは当然。そのなかで審査会は専門的公平中立的意見を述べる。一律に審査会で本人にきくとか、障害者が委員に入ることを書くのは難しいが、専門性をもった障害者が入るのはあたりまえのことだと思う。」「地域生活支援事業は効果的に柔軟にできるものを法定化した。コミュニケーション支援・移動は必ず行わなければならない事業。自治体は計画に入れる。国は予算の範囲内で1/2を補助する。必要な財源確保は最重要課題で取り組む。仮に成立しなかった場合、支援費の17年度に大きな影響は必至。12月までは補助金なので、その後負担金となるため、執行は10ヶ月分でやらないといけない。2ヶ月分の予算170億が欠損となる。昨年は補正を組んだ。法案が通らなければ昨年の措置も問題が大きくなる。障害者自立支援法案、是非、成立させてほしい。」などと回答。

また、6月7日には介護派遣事業者の立場でJIL(全国自立生活センター協議会)の中西正司さんがALSの在宅介護の状況にも触れ「@日常生活支援の単価の低さA場合によっては2名以上の介護が必要であることB24時間介護が必要であることCヘルパーの研修費が事業者負担であることD吸引など医療的ケアの問題Dレスパイトの入院先確保も困難である」などについて陳述されました。

それを受けて、福島豊議員(公明)は「重度包括という新しい制度、ALS、最重度の人が安心して暮らせるのか?一人ひとりのニーズにも対応する必要がある。政省令になるとは思うがどのようなことが必要なのか。」と質問、中西氏は「精神的サポートやベテラン介助者でないと対応できないこともある。介助も一人では対応できない。新しい介助者には研修に数ヶ月が必要。カナダでも数ヶ月間は研修期間として同時並行的に新人介助者が入れるような制度設計をしている。包括制度は単価をまとめて安上がりにするというのが濃厚。これでは介助を引き受ける事業者がなくなってしまう。」と答えました。

また、阿部とも子議員(社民)からも「支援法が成立したらALSの呼吸器利用者はどうなってしまうのか、と思っている。きわめて命が逼迫している思いがあると思うが、政省令に委ねられている。この点についてどのように明確にすればよいのか意見を聞きたい。」と質問があり、中西氏は「在宅ALS患者の84%は家族中心の介護、介護保険の自己負担でくたびれて支援費の利用までいかない。夜間も家族が寝ないで介護をしている。また一人暮らしになると呼吸器の故障などもあり危険である。だが非常に限られた金額で今もやっている。情報で聞く一ヶ月80万で24時間やろうとするとヘルパーの時給は300円になる。とてもやれない。包括制度では医療制度との関係で介護従業者にも専門資格が要件にならないか。専門職の人数は限られているのだから、やってくれる人がいなくなる。」と答えていました。

また、国会請願デモ行動の翌々日78日には、福島豊議員が再びALSに触れて「ALSの呼吸器利用の方、努力を家族に求めるのは不適切。痰の吸引がホームヘルプで認められたが可能な事業者は限られている。長時間サービスの単価設定やヘルパーに医療行為をさせたくないなどの点について見解を。」と質問をされ、部長は「痰の吸引のできるヘルパーは患者の努力でも増えつつあるがまだまだ少数。支援体制も充分ではない。可能な限り行うことでは訪問看護士とホームヘルパーの連携極めて重要である。効果的な支援のありかたを厚生労働科学研究でサービスの研究をしている。重度の方にふさわしい支援のありかたの検討に努めてまいりたい。」と回答しました。

今後、法案の成否によって在宅療養の状況は大きく変わっていきます。いずれにせよALS等の重度障害者の在宅療養を支える制度の姿は現時点ではまったく見えていませんが、厚生労働省では今後は患者会や当事者も含めた研究班で枠組みを作っていくと発表しています。